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神隠し  作者: デベ
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首なし:後編

サーバートラブルのせいで同じの2回投稿してしまったので、総書きなおしをしております。

翌朝、会社に向かう途中、昨晩女と出会った場所に妙な人だかりが出来ていた。

何か嫌な予感がした。

「ちょっとすいません。これは何があったんですか?」

野次馬の一人に事情を聞く。

「どうも夜中に女性が一人、酔っぱらいの運転してた車に撥ねられたらしいのよ~。しかもその女性は街灯と車に挟まれたせいで体の一部が潰れてなくなっちゃったみたいよ~。」

背筋を一筋の汗が伝った。

あの女はあれからもずっと何かを探していたのか。

「そうですか・・・。ありがとうございました。」

気のよさそうなおばさんにお礼を言うと、その場を早足で離れた。

だから帰れと言ったんだ。

ふと足元を見ると、安物っぽい指輪が転がっていた。

事故現場から数百メートル離れているが、なんとなくあの女が探していたのはこれだと感じた。

今から戻っても会社に遅れるだけでいいことはないだろう。

帰りに供えてやろうと考え、会社への道のりを急いだ。


その日の帰り道、また残業で遅くなってしまった。

昨晩と同じ道を歩いて行く。

今朝見かけた事故現場にはもう人だかりはなく、その代り花束が置かれていた。

通勤途中に拾った指輪をその花束の所に置いてやった。

そして手を合わせ黙祷した。

『ありがとう。』

どこからか、あの女性の声がした。

それを聞いて心が軽くなった気がした。

どうやら本人にも気付かなかったが、罪悪感があったらしい。

直後、誰かが道路を裸足で歩いているような音が響いた。

その音が徐々に近づいてくる。

急に体が重くなったように、身動きが取れなくなった。

『逃げて。』

またあの女性の声が聞こえた。

すると、先ほどまで感じていた体への圧迫感が消えた。

全力で走り出す。

少し走ってから思わず後ろを振り返り、その音を発している者を確認した。

気のせいだと思いたかった。

振りかえったとき、ちょうどそれは街灯の下に来ていた。

それは首から上がなく手には大きめの鋸を携えていた。

足の骨が折れているのか足を引きずるようにこちらに向かって来ていた。

恐怖で足を止めそうになる。

『足を止めちゃ駄目。』

三度、あの女性の声が聞こえた。

その声で止まりかけた足を動かす。

そこから後のことはよく覚えていない。

全力で家まで辿り着き、布団に潜り込んだような気がする。


次の日、同じ道を通って出勤する。

若干寝不足だがそうも言っていられない。

同じ道を歩いていくと女性が事故にあった場所にまた人だかりができていた。

「何があったんですか?」

昨日とおなじおばさんがいたので事情を聞く。

「また事故があったらしいのよ~。今度も酔っぱらいが運転する車がそこの街灯に突っ込んだらしいんだけどね~。運転してた人が死んじゃったみたいよ~。」

何か、悪寒がした。

「その人の首がなかったってことは・・・。」

なんとなくだった。

本当になんとなくそう思った。

「あら~?よくわかったわね?そうなのよ~。昨日の女性と同じでまた首がなかったんですって。」

おばさんがまだ何かを言っていたが、まったく耳に入ってこなかった。

あの時、女性の声が聞こえなかったらおそらく・・・。

おばさんにお礼を言って、会社に向かって歩きだした。

そして二度とこの道を通らないと心に決めた。


その日は定時で帰ることが出来た。

あの道を通ることだけは避けたかったので電車で帰ることにした。

電車に乗ればあの道を迂回するように家に帰ることができるからだ。

座席に腰を下ろす。

誰かの声が聞こえた気がした。

「?今『駄目』って・・・。」

電車が出発した。

そこで気がついた。

しかしあまりにも気がつくのが遅かった。

何故、帰宅ラッシュのはずの時間帯に、他の乗客が誰もいないのだ。

自分の鼓動が速くなるのを感じた。

後ろにある車両間のドアが開く音がした。

それに続くように音が聞こえてきた。


誰かが裸足で歩いているような音だった。


徐々に近づいて来る。

一歩、近づいた。

また一歩、近づいた。

そしてその音は背後まで来ると止まった。

恐怖により後ろを振りかえることができない。

歯の根が合わない。

肩に手を置かれる。

この世の物とは思えないほど冷え切った手だった。

耳元で風を切るような音がしている。


あの道を通れば、助かったのに・・・。


そう、聞いた気がした。

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