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神隠し  作者: デベ
2/9

惨劇

「んんー!・・・あれ、どこだここ・・・?」

目が覚めると見知らぬ場所にいた。

「頭がぼーっとしてるな・・・。」

そうだ、確か授業中に耐えきれずに居眠りをしたんだ。

それで気がついたら授業が終わって、8割はいなくなっていたな。

残ってるのは俺も含めて寝ているやつらだけだった。

『寝てたんじゃなくあれは―――だった。』

そんで近くで寝ているやつを起こそうとしたら、後ろから声をかけられたんだ。

『違う。本当に―――かを確認しようとしたんだ。』

そんで肩を貸してもらって保健室に来たんだったな。

「あれ?そういえばあの人はどこにいったんだ。」

保険室の中を見渡すが誰もいない。

時間はあれから1時間しか経っていないようだ。

ここにずっといてもあれだし、あの人を探そう。

ベットから降りて廊下に向かう。

その時、何故か視界に掃除用具箱が目に入った。

『見るな。』

何故か酷く気になる。

『それは開けちゃいけない。』

ちょっと開けてみよう。

『そこにはきっと―――が。』

取っ手に手をかける。

『やめろ』

そのまま開く。

「―――――――。」

掃除用具箱の中には当然のように掃除用具が入っていた。

「まあそうだよな。何を警戒していたのやら。」

気を取り直して廊下に出る。

あの人はどこに行ったのだろう。

物音一つしない廊下を進んでいく。

あてもなくフラフラと歩く。

俺の脚は音楽室へと向いていた。

肩を借りたときに感じた臭いが、そっちの方から漂ってきたからだ。

脚が動くままに音楽室へと入る。

本来なら部活動をしている連中がいてもおかしくない時間だ。

しかしその教室には誰一人いなかった。

そのまま教室の中を見渡して見る。

「・・・音楽準備室か。」

音楽室だからか自分の声が酷く響いた。

フラフラとした足取りで音楽準備室に近づいて行く。

中から例の臭いがする。

おそらくあの人もここにいるんだろう。

ドアノブを捻ってドアを開く。

そこには――――。

「やあ、目が覚めたみたいだね。」

予想通りあの人、青年がいた。

「あ、はい。おかげさまでぐっすり寝れました。」

「あははは。それは良かった。」

笑顔で迎えられたので若干緊張を解く。

「そういえば君さ。」

若干声のトーンが落ちたような気がした。

「保険室の掃除用具箱は見たかい?」

なぜそんなことを聞くのだろう。

よくわからないが正直に答える。

「はあ・・・。何か気になったんで見てきましたけど・・・。」

「あははは。そっかそっか。―――を見たんだ。」

よく聞こえなかった。

何を見たというんだ。

「わからないって顔してるね。脳が理解するのを拒否しちゃったのかな。」

「はい?なんのことですか?」

青年はよくわからないことを言っている。

「うん。どうやら君は脳の一部が壊れちゃったみたいだね。」

「え!そうなんですか!?」

「くすくす。自覚がないんじゃ絶望的だ・・・。」

「笑いごとじゃないですよ!?なんとかならないんですか!?」

「あははは!脳がいかれたんじゃどうしようもないな。」

「そんな・・・。」

「ふふふ。君はもっと心配すべきことがあると思うんだけどね?」

「え?何がですか?」

「やっぱり脳が壊れてるね。簡単に言うとね君も用具箱にあった―――と同じになるってことさ。」

どうも耳の調子がおかしい。

一番重要な部分が聞き取れない。

「すいません。聞こえなかったんですが、用具箱にあったなんでしょう?」

「そうかそうか。用具箱じゃなくてもいいんだけどね。」

「他にもどこかにあるんですか?それって俺も見てます?」

「あははは。もちろんだよ。だって、君の目の前に転がってるじゃない。」

青年がそう言った。

俺は目の前を見てみる。

そして顔を回して準備全体を見回す。

「どこにあるんですか?何も見当たらないんですが。」

「あははは。やっぱり脳がいかれたみたいだね。こんな大量に転がってる―――が見えないんだから。」

まただ、俺にはどうしても一番重要な場所が聞こえない。

転がっている何が見えないというんだろう。

俺の目の前には―――しかないのに。

青年の言うことはよくわからない。

「まあいい。君にこの薬をあげるよ。」

「なんですかこの薬?」

「楽にしてくれる薬さ。」

「麻薬とかじゃないですよね?」

「あははは。あんな一瞬の物じゃないよ。永い間楽にしてくれる薬さ」

「ふーん。じゃあ好意に甘えていただきます。」

「はい。水だよ。」

「ありがとうございます。・・・なんかこの水、鉄臭くないですか?」

「そんなものだよ。」

「そうですか?それじゃあいただきます。」

鉄の臭いがきつい。

これは一気に行った方がよさそうだ。

「んっ!」

「おお!一気に行ったね。」

「不味い・・・。」

「それはそうだろう。それがうまいなんて言ったらそいつは人間じゃないよ。」

「そうなんですか・・・。」

おかしいな瞼が重くなってきた。

凄い眠気だ。

耐えられそうにない。

「すいません。なんか眠くなってきました・・・。」

「薬の効能だよ。君は気にしなくていい。」

「・・・そう・・・ですか・・・。」

俺は意識を保てずそのまま床に倒れる。

床はなぜか水浸しだった。

しかし、俺はそのことを理解する前に意識が落ちてしまった。



「そう、気にしなくていい。」

そういうと青年は今しがた倒れた少年に近づいて行く。

「君もすぐ、そこに転がっているその子と同じ末路を辿るんだから。」

倒れた少年の隣には血まみれの死体が転がっていた。

彼が通ってきた音楽室・音楽準備室の壁という壁は真っ赤に染まっており、赤く染まっていないところなどなかった。

「君はゆっくりと始末してあげるよ・・・。ゆっくりとね・・・。」

そしてその学校から青年以外の生物は消えた。



事件が発覚してから警察が現場検証をした結果。

その日、学校を欠席した生徒以外の全ての人物が殺されていた。

遺体は遺族に返されたが、ただ一人だけ、どんなに探しても、血液どころか毛の一本も見つからない生徒がいた。

まるで、神隠しに出会ってしまったかのように、その少年がいた痕跡はなくなっていたという。

その少年がどうなったのか、唯一遺体の見つからなかった遺族は、今も懸命に目撃情報を探しているのだそうだ。

なんか終わったような気配ですが、実はまだ続くのです。

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