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第51話 勇者の役目

「こうしてハクアと共にいられるのはおサヤのおかげじゃな。礼を言うぞ。これで儂も自由じゃ」


「シムカさんは自由が欲しかったんですね」


「さぁ、儂を鞘に納めよ。この身も心も捧げると誓おう」


 擬刀化したシムカさんを右腰にある多方向を向いた矢印の模様が施されていた鞘に納刀すると情報が開示された。


 絢刀けんとう詩向しむか

 否定することに主眼を置いて創られ、"圧死"を象徴としている。

 あらゆる力を自由自在に操ることが可能な刀。限界まで圧力をかけ、重要臓器を破裂させて死に至らしめる。


「シムカさんには手こずったよ」


「褒めても何も出んぞ」


 すぐに女の子の姿に戻ったシムカさんが僕の隣に立つ。

 これで九人の刀姫がこちら側に立ち、ハクアだけが反対側に立っている。

 アリサの思惑通り、最も危険と言われている刀を最後に収集することにした。


「わちもお前様を気に入った。じゃが、わちを鞘に納めるということは十刀姫の最期を意味する。それがお父様の言葉じゃ」


 彼女たちのお父様はスキル『作成』によって、最後まで当時の皇帝に抗い続けたアリサを劇刀げきとう蟻彩ありさ』にして命を救い、ハクアに遺言を残して力尽きたという。


 僕は左腰の一番下に装備した鞘をベルトから抜き取った。

 その鞘は漆塗りの上から燃え上がる炎の模様が施されている。


「他の者がそれでよいなら、わちを鞘に納めてくりゃれ」


 後ろを振り向き、並んでいる彼女たち全員を見る。


 ヴィオラ。一番最初に契約して僕をここまで導いてくれた子。

 ヒワタ。処刑道具の人生から抜け出し、僕を支えてくれた子。

 センナ。大切な人を守る為に自分の信念を曲げない義理堅い子。

 ライハ。不器用だけど、誰よりも周りが見えている優しい子。

 クシマ。愛情表現が歪なだけで誰かに構われていたい寂しがり屋な子。

 スミワ。常に冷静で僕の心を救ってくれた清らかな子。

 アイシャ。愛に生き、愛のために死ねる、慈愛に満ちた子。

 アリサ。目的の為にひたむきに前に進み、未来を掴める強さを持つ子。

 シムカ。常識に囚われず、自由であり続けることを夢見る子。


 こんなにも多くの女の子が僕に力を貸してくれた。

 だから、今日まで生き抜いてこれたんだ


 ずっと考えていたけど、彼女たちにとっての幸せが何かは分からない。

 でも、僕は与えられたスキルで作成した鞘に納めることが答えだと信じている。

 この刀がある限り争いは続くし、彼女たちは苦しみ続けるだろう。

 だったら僕が全ての刀を封印する。それが鞘の勇者としての役目だと思うから。


「ハクア。僕はきみも鞘に納めるよ。そのときに何が起こるのかはアリサが教えてくれた。きみたちを破壊する」


 無言で近づくハクアは擬刀化して、僕に手の上に乗る。

 専用の鞘と爛刀らんとう珀亜はくあ』が触れ合うとホログラムが浮かび上がった。


「「「お父様!?」」」


 一斉に驚く九人の女の子たち。ハクアも僕の手の中で震えた。


 僕が頷くとホログラムの刀の勇者も頷く。

 覚悟は決まっている。

 でも、その前にやることがある。


「アイシャ、僕とみんなの血を混ぜるんだ。アイシャとハクアも忘れずにね」


 ハクアが擬刀化を解いても刀の勇者のホログラムは消えずに僕たちを見守ってくれている。


「分かりました。僭越せんえつながらこなたが皆様を切らせていただきます」


 相変わらず真面目なアイシャが順番に腕を切っていき、十刀姫の血液と僕の血液を混ぜ合わせた。


「これでいいんですよね」


 僕の声は聞こえていないはずだけど、またしても刀の勇者は頷く。


「きみたち全員と契約を結ぶ。異論は認めない!」


 ハクア以外を鞘に納め、スキル『契約』を発動するとこれまでに縁が生まれなかった子たちとも繋がっていく。

 僕の十本の指には彼女たちの鍔と同じ形の指輪がめられた。

 嬉しいことだけど、いくらなんでも派手すぎるな。


 爛刀らんとう珀亜はくあ』を鞘に納め始める。

 この鞘の中には起爆スイッチが隠されているはずだ。

 『珀亜』を納めたとき、スイッチが押されて契約した全ての刀が爆発する仕組みになっていると踏んでいる。


 一番最初に『珀亜』を収集していた場合、唯の自爆で終わってしまう。

 途中で『愛紗あいしゃ』を収集していなけば全員との縁が生まれない。

 僕に与えられたのはたった二つのスキルだけど、その二つだけで十分だったんだ。


爛刀らんとう珀亜はくあ』、格式奥義――自暴死姫じぼうじき


 カチッ!


 キツく目を閉じて納刀しても、いつまで経っても衝撃は訪れない。

 鞘の中からは時計の針が進むような音が聞こえる。

 大爆発までの秒読みが始まったようだ。


「その覚悟、見事なり。もう一度聞くが本当にこの刀も託してよいのか?」


「はい。十刀姫も蛮刀ばんとう長利ながり』も僕がこの世界から消します。勇者は不要になり、仮に500年後に勇者が召喚されても役目はないでしょう」


 ォショウさん、レィジーンさん、トゥリョウさん、他にもこの場に集まってくれた全ての人に頭を下げる。


 耳をつんざくような音が鳴り響き、爛刀『珀亜』を中心に光が収束する。

 十一本の鞘に十一本の刀を納めた僕は立ったままで意識を失った。


 爛刀『珀亜』

 爆発力に主眼を置いて創られ、"爆死"を象徴としている。

 刀身から可燃性の粉塵をまき散らし、連鎖爆発させて周囲にいる者全てを死に至らしめる。

 鞘に納めたとき、世界を崩壊させるほどの大爆発を起こす。十刀姫を破壊できる唯一の手段である。


 絢刀『詩向』、収集完了。

 爛刀『珀亜』、収集完了。

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