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第42話 絶叫

 ォショウさんには一切の隙がなく、逃げることも攻撃することも諦めてしまいそうになる。

 この危機的状況で対抗できるのは閃刀せんとう雷覇らいは』だけだと思う。

 ォショウさんの居合い斬りが速いか、ライハの瞬間移動が速いか。

 僕の額から大粒の冷や汗が流れ落ちた。


「シムカ卿、爛刀らんとう珀亜はくあ』は我らが見つけ出し皇帝陛下へ献上した。これから拷問がなされる」


「ハッタリはよせ。この短時間でハクアが見つけられるものか。儂は戻らんぞ」


「信じる信じないはシムカ卿次第だ。だが、今の世に刀の勇者はいない。どういう意味か分かるな」


 シムカさんが唇を噛み締め、血が滲む。


「貴様!」


「爪から始めて最後は心臓を吹き飛ばす。500年前と同じ苦しみを与えよう。皇帝陛下からのお言葉だ。嫌なら我と共に来い」


「ォショウさん!」


 閃刀『雷覇』を構え、シムカさんの前に出たけど震えが止まらない。

 このままシムカさんの手を握って瞬間移動するか。


「やめろ、おサヤ。儂は投降する」


「ダメだ、シムカさん!」


「ヴィオラたちも大切な義姉妹じゃが、ハクアは儂の本当の姉じゃ。何があっても守らねばならん」


「嘘だったとしてもですか!?」


「そのときはハクアを頼む。じゃが、時が来るまで絶対に鞘に納めるな。興味本位で納めてみろ、この世界が吹っ飛ぶぞ」


 ォショウさんを警戒しつつ、僕の耳元で囁いたシムカさんは両手を上げながら歩き出した。


「シムカさんをどうするつもりですか? ナイトオブクワットロ同士の争いは禁止のはずです!」


「シムカ卿はナイトオブクワットロから除籍された。我は規則と同盟に則りサヤマ卿には手を出さん」


 そういうことか。

 これから二人はどうなる?

 シムカさんもハクアもヴィオラたちと同じように後宮で働き、拷問を受け、死なない為に刀になったはずだ。

 そんな苦しみをまた味合わせるわけにはいかない。


 今すぐにでも攻撃したいけど、それをすると規律違反になってしまう。

 それにコンマ数秒の差で負ける可能性もある。

 どうする……。


「元ナイトオブクワットロのシムカがこうもあっさり陥落するとは恐れ入りましたぞ」


「ゼィニク!?」


 嫌らしい笑みで全身をなめ回るように見るゼィニクの手がシムカさんの肩を抱く。


「確かにシムカ卿は貰い受けた。ゼィニク殿、シムカ卿は我が皇帝陛下の元へお連れしよう」


「それには及びません」


 突如、転移魔方陣から現れたナガリの手がシムカさん頭を掴んだ。


「なにっ!? つるぎの勇者殿が何故ここに!?」


「やめろ、離せ!」


 シムカさんが叫んでもナガリはその手を離さなかった。

 ナガリの手からは真っ黒な光が放たれ、シムカさんの頭を覆い隠している。

 風が逆巻き、ォショウさんも僕もゼィニクでさえも近づけない。

 そんな中で痛々しいシムカさんの叫び声だけが廃城に響いた。


「嫌じゃ! 擬刀化したくない! 『』になんてなりたくない! ハクアァァ!」


 擬刀化を解いたヴィオラとライハも一歩も動けず、唇を噛み締めながらシムカさんが一本の刀になる光景を固唾を呑んで見続けた。


 その刀は反りも峰もない直刀だった。

 本来、峰のある部分には小さな凹凸があり、別の何かがはまりそうだ。


「これが絢刀けんとう詩向しむか』か。良くやった、ナガリ殿」


 ナガリの手に握られた刀が再びゼィニクの手に渡り、ナガリは転移魔方陣の中へ消えて行った。


「これは一体どういうことだ!?」


「まだ分かりませんか。このシムカこそが皇帝陛下が求めていた刀の一本だったのですよ。灯台下暗しってやつですな」


 しまった。

 ナガリのスキル『従属』があれば強制的に擬刀化させることなんて簡単だ。

 とにかく、シムカさんを助けないと。


「何にしてもその刀は献上すべきだ。このまま王宮へ戻るぞ」


「何をおっしゃいますか。ここであの無能を消して、残りの刀も手土産と致しましょう。ナイトオブクワットロであるあなた様の手は汚させません。わたくしめがやりましょう」


 絢刀けんとう詩向しむか』を構えたゼィニクが一歩ずつ近づいてくる。

 しかし、その姿はあまりにも素人だった。

 まだ距離はある。『美蘭ヴィオラ』でも『雷覇らいは』でも攻撃は可能だ。


「なんだ、怖じ気づいたのか無能め」


「やめろ、ゼィニク殿。皇帝陛下の命令は刀の回収である」


 ゼィニクの肩を掴もうとしたォショウさんの体が浮き上がり、壁にぶつかって床に倒れた。


「な、なんだ!?」


 ヴィオラとライハが同時に擬刀化する。

 僕は響刀きょうとう美蘭ヴィオラ』を抜刀して奏で始めた。

 しかし、その音色がゼィニクに届くことはなかった。


「ハハハハハッ! どうした、無能!」


「閃刀『雷覇』、格式奥義――電煌雷轟でんこうらいごう


 雷光を放ち、崩壊した天井の隙間をぬってゼィニクの頭上に雷が落ちる。


「わしには効かんぞぉぉぉぉ!」


 ゼィニクが一振りするだけで謎の力が働き、稲妻が離散してしまった。


「こんな刀が隠れていたとのは驚きだ。『』とはどれほどの物か見たくなったぞぉ」


 嫌らしく笑うゼィニクの背後から核刀かくとう澄和すみわ』を握ったォショウさんが突貫したが、またしても吹っ飛ばされて床を転がる結果となった。


「さて、ナガリと合流して『作成』を行おうではないか。記念すべき新皇帝の誕生である!」


 転移魔方陣を展開させたゼィニクが消え、廃城は静けさに包まれた。

 頭を打ちつけたォショウさんに駆け寄ると弱々しい声で「スミワを託す。レィジーン卿を助けろ」と言い残し、意識を失った。

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