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第41話 姉想いな刀姫

「ヴィオ殿は強いでござるなぁ」


「センナが弱すぎるのよ」


「やーい。センナのざーこ」


「クシマも人のこと言えないけど」


 なんだかんだで仲の良い四人がボードゲームで遊んでいる。

 そんな彼女たちを眺めながらヒワタが淹れてくれた紅茶を飲んでいると書類業務の疲れも一気に吹っ飛んでしまうな。

 

「鞘の勇者様はいますか!?」


「アリサ皇女? そんなに慌ててどうしました?」


 優雅な午後のティータイムに似合わず、いつもなく焦った様子のアリサ皇女が突然現れた。

 額からは玉の汗を流していて、いつもの余裕の笑みがない。


「お願いがあります。シムカを助けて下さい!」


 顔を見合わせた僕たちはひとまずアリサ皇女に紅茶を出して落ち着いて貰うことにした。


「助けるってシムカさんに何かあったんですか?」


「皇帝が動き出しました。『』を作成するつもりです。シムカはハクアを連れて追手から逃げ延びたはずです。ここには来ていませんよね!?」


「はい。クッシーロには来ていません。あの、『刃』ってなんですか?」


 以前センナが口を滑らせていたけど、結局それが何なのか僕は教えて貰っていない。


「『刃』は二本の刀を合わせることで作成できる十一本目の刀です」


「十一本目!?」


 咄嗟にヴィオラたちの方を向くと彼女たちは気まずそうに視線を逸らした。


「ヴィオラ、どういうこと? みんなは知っていたの?」


 みんなが静かに頷く中、クシマだけはいつものように笑顔だった。


「わたしたちも信じていなかったのよ。この500年、一度も『刃』なんて作成されなかったし、すっかり忘れていたわ」


「お父様も想定していかなったようです。私たちを作成する中で誤って十一本目の可能性を創りだしてしまったと言っていました」


「あたしを打ったからだ。あたしが両刃になったから、お父様のスキル『作成』のレベルが上がったんだよ。クソッ」


「それは関係ないよー。クシマ的にはあの二人は最初から一つだったよー」


「ハク殿もシム殿もお互いを一番に想っておられるでござるからなぁ」


 それぞれの意見が飛び交い、なんとなく理解できた。

 シムカさんとハクアが皇帝陛下の手に渡ることを避けたいってことか。


「ハクアを隠した後でシムカも身を隠すはずなので誰よりも先に保護していただきたいのです。恐らくォショウが来ます」


「分かりました。どこに向かえばいいですか?」


 アリサ皇女は地図を広げて明確に一カ所を指さす。そこはグルメで有名なガッター二ィ領の端だった。


「ヴィオラとライハと一緒に行くよ。みんなはクッシーロをお願い。センナ、もしもシムカさんが来たら教えて」


 ライハの瞬間移動が終わり、目を開けると廃城の中にいた。

 今にも崩れ落ちそうな床を慎重に進むと一人の女の子が膝を抱えていた。


「シムカさん?」


「ッ!? なんだ、おサヤか。随分と速いのじゃな。アリサの手引きか知らぬが、儂は皇帝の元には戻らんし、おサヤの鞘に納まるつもりもないぞ」


 彼女が立ち上がり白髪のポニーテールが揺れる。


「鞘に納まらなくても構いません。あなたを助けたいんです」


「いらん。いつか言ったはずじゃ。十姫刀を一カ所に集めるなと」


「もちろん、覚えています」


「では何故じゃ! 儂は穏やかに過ごす為にこの500年で一度も擬刀化せず身分を偽り続けた。ハクアを誰にも渡さない為にどうすれば良いか考え、アリサの助言でナイトオブクワットロにもなった。ハクアだってこの500年で一度も人の姿に戻っておらんのだぞ! それなのに、それなのに!」


 体を震わせるシムカさんの目に涙が浮かぶ。


「じゃなければ誰があんな奴に。儂らの身体を痛めつけた奴の末裔に仕えるものか!」


 その姿に会合のときの様なクールさはなかった。


「勇者の召喚なぞ行うからこんなことになったのじゃ! 鞘の勇者も剣の勇者も必要なかった。この500年間、平穏に過ごせたのに!」


 これまで蓋をしていた感情が爆発したように言葉が溢れてくる。

 誰よりも我慢していたのはシムカさんだったんだ。


「すみません。僕が興味本位で刀を集め始めたから」


「その通りじゃ! 忠告したのにアリサに踊らされおって! 儂はもう知らん!」


 一見クールでヒワタと同じようにお姉さんポジションのようだけど、我慢強い普通の女の子だ。

 これまでずっと一人で頑張ってきたのに、その努力を水の泡にするようなことを僕がしてしまった。


「アリサ皇女がシムカさんを助ける為にクッシーロに駆け込んで来ました。僕は言われるままにここに来たのでアリサ皇女の考えは分かりません。でも、シムカさんを見捨てることはないはずです!」


「儂の心配などせずに自分の心配をすればよいものを。あの子は本当に命を落としかけたのじゃ。それなのに、皇女になってまで……」


 一歩ずつシムカさんへ歩み寄る。

 この場で彼女を収集するつもりなんてない。

 とにかく、ォショウさんと鉢合わせする前にガッター二ィ領を去らないといけない。


「シムカさん、ひとまずクッシーロへ行きましょう。詳しい話は他の子たちを交えてでも――」


「逃がさんぞ、シムカ卿、サヤマ卿」


「……ォショウさん」


 騎士団最強の男は剥き出しの刀を持ったまま柱の影から現れた。

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