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第37話 同盟締結

「よく来てくれた。噂は聞いているぞ。すでに五本の刀を集めたそうだな」


「はい。彼女たちには毎日助けて貰っています」


「結構。だが、褒められることばかりではない。つるぎの勇者を仕留めきれずにいるな。多くの人を救いたければ時に覚悟が必要となる。それが、その刀を持つ者の務めだ。精進するように」


「はい」


 最強の座につくォショウさんの言葉が重くのしかかる。


 今いる執務室は和室で、しかも日本茶が出てきた。

 驚いていると襖が開かれてスミワが小さな子供と一緒に入ってきた。


「ォショウ、この子を保護したいのです」


 やれやれと言った風にスミワの後ろに隠れている男の子の前にしゃがんだォショウさんはごつい手で少年の頭を撫でながら微笑む。


「今日からここがきみの家だ。このお姉ちゃんに案内してもらいなさい」


 スミワと少年を見送り、正座するォショウさんは恥ずかしそうに頬をかいた。


「うちの領では孤児院を経営していてな。スミワが捨てられた子供を各地から拾ってくる。その子たちが大人になり運営をしてくれている」


 以前、会ったときに「同じ弱き者に助力する男として」と言っていたのは、このことだったのか。


「今日はどのようなご要件でしょうか」


「そんなにかしこまらなくて構わん。同盟の話を進めようと思っているだけだ。領地を見て、我の考えを聞き、同盟を締結させたい」


 最近では領主同士の争いが勃発していると聞くし、同盟の話はありがたい。

 領地の中を見て回ると圧倒的に子供が多かった。


「サヤマ卿よ。今から治療をするから場所を移すぞ」


 案内された場所は古い診療所で診察台には僕と同い年くらいの男が寝かされていた。

 ォショウさんは核刀かくとう澄和すみわ』を持ち、居合いの構えを取る。


「なにを?」


「『澄和』は人の心を斬れる。心を病んでしまった者を治すことに関して、これ以上の治療法を我は知らない」


 本当に斬ったのか、全く見えなかった。

 鞘を持っていたならば完璧な居合い術に違いなかっただろう。


「これが我の仕事だ。ここにいる子たちは親に捨てられたり、親を殺されたりした者ばかりで精神的に疲弊している子も少なくない。スミワは彼らを救ってくれる」


 これがナイトオブハートの名を与えられた理由か。

 クッシーロ更生施設も似たような場所になっているし、同盟の話は受けておいて良いだろう。


 官邸へ向かって歩いているとスミワが僕の手を凝視していた。


「ォショウ、稽古をつけてあげて欲しいのです」


「ん?」


 ォショウさんに手を取られる。

 僕の右手には豆が大量にできて固くなっている。

 これは日々、ライハを振ってる結果だけどあまり見られたくないものだ。


「なにも恥じることはない。サヤマ卿はアリサ皇女殿下の選任騎士なのだから力をつける義務がある。見せてみよ」


 場所を移して、巻藁まきわら相手に試し斬りを披露する。

 案の定、刀は巻藁の途中で止まり、真っ二つにすることは不可能だった。


閃刀せんとう雷覇らいは』か、良い刀だ。あとはサヤマ卿の技術の問題だな。どれ、手ほどきしてやろう」


 斜めに斬りつける袈裟斬けさぎりもできないのに、ォショウさんは水平斬りまで指導してくれた。


「スミワは刀身がブレると心のみではなく体も斬ってしまう。我も細心の注意を払っているが、何度やっても人を斬る感覚には慣れん。サヤマ卿も刀を振るうときは注意しなさい」


「はい」


 こういう風に教わるのは久々だ。

 元の世界ではヴァイオリンのレッスンを受けていたけど、こんなに緊張感はなかった。


「それでサヤマ卿。同盟の件はどうだろうか」


「はい。喜んでお受け致します」


「それはありがたい。では何があってもクッシーロ領にだけは侵攻しないと約束しよう」


 ん?

 なにか変だ。でも、何が気になっているのは明確には分からない。

 だから僕も同じ文言を復唱しておくことにした。


「ヴィオラ、ヒワタ、センナ、ライハ、クシマ」


 唐突に指を折りながら仲間たちを呼び始めたスミワが僕を見つめる。

 やっぱり何を考えているのか分からない彼女は不敵に笑った。


「これで五本。十本集まればじぶんたちは変われる」


「え!? どういうこと?」


「お父様からのお言葉なのです」


 この先は何を聞いても質問に答えてはくれなかった。


 帰路についた僕たちの会話はセンナがスミワに対して余計なことを言わなかったことを褒めて欲しいというもので、癒やされながらクッシーロ領へと戻った。

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