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第35話 ゼィニク、重大な事に気づく

【ゼィニク視点】


 中継を見ていたわしは思わず映像を映し出しているアイテムを床に叩きつけた。

 全国放送で葬刀そうとう紅縞くしま』を落札する様子が流れ、その後ナガリが罪のない人々を刺したシーンが流される。

 映像は途中で切り替わり、次に映し出されたのは必死にオークション会場から人々を救出している鞘の勇者だった。


 誰が見てもつるぎの勇者が悪で鞘の勇者が正義だと思うだろう。

 わしは間違いなく人選を誤ったようだ。


 最終的に葬刀『紅縞』は鞘の勇者の手に渡り、ナガリは全てを失った。

 贋作がんさくである海刀かいとう櫛灘くしなだ』はもっての外だが、両刃である『雷覇らいは』も細剣レイピアである『紅縞』も失ってしまえば奴に扱える刀はもうないだろう。


 わしは本棚から何十年にも渡って探し出したボロボロの書物を取り出してページをめくる。

 『刀の書 其の弐』

 十刀姫を作成した刀の勇者が残した物で全ての刀の名前と絵が書かれている。

 一番最後は『』という意味深な文字だけが書かれたページだ。


 鞘の勇者が所有している響刀きょうとう寒刀かんとう糸刀しとう閃刀せんとう葬刀そうとうの五本。

 ナイトオブハートの核刀かくとう、ナイトオブラバーの結刀けっとう、ナイトオブパワーの爛刀らんとうで合計八本。


 残念なことに残りの二本の刀について書かれたページは途中から破られていて正式名称が分からない。

 分かっていることは劇刀げきとう絢刀けんとうというものだけだ。

 一体どこにあるのか、誰が所有しているのか。

 わしだけでなく皇帝陛下も全ての所在は知らないはずだ。

 でなければ、わしを介して勇者に刀集めを命令するはずがない。


 先代の皇帝は平民出身の脳筋だったから十刀姫に興味はなかったようだが、当代の皇帝陛下はちょうど500年前の皇帝の子孫だというし、不思議な巡り合わせだ。


 とにかく刀集めに関してナガリはもう使い物にならん。


「潮時だな」


「ほぅ。そうやって勇者を追放するのじゃな」


 聞き慣れない声に振り向くと白髪の女が壁にもたれ掛かっていた。


「ナイトオブパワー!?」


 背中に刀を背負う彼女は腕を組んだままで動こうとはしない。


「皇帝陛下がお呼びじゃ。王宮へ顔を出せ」


「ま、まさかナイトオブクワットロのお一人が伝言役とは恐れ入ります」


「儂が手隙てすきだっただけのことよ。して、つるぎの勇者はどこじゃ?」


 直接顔を合わせる機会はほとんどなかったが、表情から感情の読めない女だ。

 ナガリは帝都のオークション会場にいる。この騒動は耳に入っていないのか?


「そろそろ戻る頃でしょう。何か御用ですかな?」


「いやなに、ちゃんと顔を見ておこうと思っての。ナイトオブシースと同じ世界から来たのなら興味がある」


「もしよろしければ差し上げましょう」


「ふっ。いらぬよ。一目見たら帰る」


 構うなと言わんばかりに彼女が両目を閉じて何分経っただろうか。

 突如カーペットが光を放つ。

 転移アイテムを使用して戻ってきたナガリはすぐに上着を脱ぎ捨て、踏みつけた。


「クソ! クシマの奴!」


「ほぅ。おサヤと違って野蛮な小僧じゃのぅ」


「なんだ、てめぇ」


 片目を開けて、小馬鹿にしたように笑うナイトオブパワーと苛立つナガリが一触即発の状態となっている。


「ナイトオブクワットロのお一人だ。口のきき方に気をつけろ。葬刀『紅縞』も鞘の勇者の手に渡ったようだな」


 呆れ返って言葉をないわ。

 さて、どうやって厄介払いするか。


「こいつがどこの誰かなんて関係ねぇ! おい、背中の刀をよこせよ」


「威勢の良いガキは嫌いじゃないが、これは渡せんな」


 興奮状態のナガリがナイトオブパワーに掴みかかる。しかし、ナガリはいとも簡単に腕を掴まれ豪快に一回転して床に背中を叩きつけられた。


「ッ!?」


 二人の手が触れた瞬間ドス黒い光を放ち、ナイトオブパワーは咄嗟に手を引いて背中に隠した。

 誰が見てもナイトオブパワーの方が優勢だが、彼女にとってそうでないらしい。


「今の感覚はなんだ。『従属』じゃねぇな」


 仰向けのままでそんな事を呟くナガリに背を向けたナイトオブパワーに先程までの余裕はない。

 まるで逃げるように歩き出した。


「確かに伝えたぞ、ゼィニク」


「はっ。承知致しました」


 必死に動揺を隠しているようだが、隠し切れていないぞ。

 一体、何に怯えているのだ。


「さっきのはスキルか?」


「俺にも分からねぇ」


 ナガリのスキルは『従属』と『作成』だ。

 『作成』は発動できないと言っていたが、さっきのがそうだとすればどうだ。


「まさか……そんなことが。フフフ、ハハハ、アハハハハハッ!」


「お、おい。おっさん」


 こいつはまだ使える。

 それに皇帝陛下を出し抜けるかもしれん。

 わしはまだ皇帝になれる可能性を秘めているぞ。


「ナガリ殿よ。共に最強の刀を作ろうではないか」


「なんだと?」


「あの無能を打ち負かし、誰が最強か知らしめる。そのためにはナガリ殿のスキルが必要だ。これからも協力して欲しい」


 ナガリの顔がほころぶ。

 口が悪く、野蛮な態度であったとしても所詮は子供よ。

 ボロボロになるまで使い古してやるわ。

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