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第27話 剣の勇者、刀を捨ててしまう 

【ナガリ視点】


 賊討伐の依頼を受けてわざわざ北部まで出向いてやったのに安っぽい歓迎をされて苛立つが募る。

 ここのところ、全てが上手くいかねぇ。

 鞘野郎が帝国最強騎士団に招かれる瞬間を目の当たりにするし、どこへ言っても奴の噂話を聞くし、最悪の気分だぜ。


「明日の朝からこの辺一帯を根城にしている賊を片付けに行くんだ。景気よく行きたいじゃねぇか。なぁ、町長さんよ」


「も、申し訳ございません! 申し訳ございません!」


 ウェイトレスと共に平謝りする様子を見て閃いた。

 この女で景気を付けようじゃねぇか。


「おい、女。興奮しちまって今晩は寝られないかもしれねぇ。俺を寝かしつける手伝いをしてくれよ」


「そ、そんな」


つるぎの勇者様、どうかご容赦ください!」


「おいおいおい。立場が分かってねぇのか? 俺が賊から平和な生活を取り戻してやるって言ってるんだぞ。女一人でガタガタ抜かすな」


「やめなさいよ、ゲス野郎」


 絶望の表情で震えている女の腕を掴もうとしたとき、ライハが口を挟んできた。


「てめぇも分からねぇ奴だな。おしおきが必要か?」


 スキル『従属』を発動し、ライハの首輪を締めあげる。


「あがっ!? ゴホッ!」


「きゃあぁああああっ!」


 悲鳴を上げる女たちを庇うようにライハが立ち上がった。


「鞘の勇者に負けた腹いせなんてみっともない。それで勇者を名乗るなんて品位の欠片もないクズめ!」


「てめぇ! そうかよ。分かったぜ。今日限りでお前との関係を終わりにしよう」


「はぁ? あたしがいないと何もできない腰抜けのくせに」


 おれを否定する刀なんて要らねぇ。

 店を出た俺はライハを引きずりながら町を出て真っ暗な山を登っていく。


「はぁ、はぁ、はぁ。俺のスキルに縛られたまま封印されろライハ。お前は二度と朝日を拝めねぇ」


 強制的に閃刀せんとう雷覇らいは』へ戻し、漆黒の夜空へ掲げる。

 そして山の頂上付近にある巨大な岩を目がけて一気に振り下ろした。


「これでお前を抜ける奴はいなくなった。仮に抜けたとしても俺のスキルからは逃げられねぇぞ」


 明日からは小言を聞かなくて済む。

 おっと。肝心なことを忘れてたぜ。


 大岩に突き刺さった閃刀『雷覇』を放置して山を下り、朝日に出迎えられた俺は町の鍛冶屋へと入った。


「よぉ。頼んだものはできたのか?」


「ナガリ殿、そんなに待ち遠しかったのか。これでどうだ。言われた通り、両刃にして剣のように仕上げ直したぞ」


 俺は受け取ったばかりの刀を舐め回すように見る。

 荒れ狂う波を表現しているような波紋が最高にイカしてるぜ。


「上出来じゃねぇか。『雷覇』と比べても見劣りしねぇ。気に入ったぜ」


「本当か!? やった、遂にやったぞ!」


 刀鍛冶は人目もはばからず泣いて喜んだ。

 何がそんなに嬉しいのか知らねぇが、これで十本のうちの一本が手に入ったわけだ。

 『雷覇』は捨てちまったが、ゼィニクのおっさんに文句を言われたら取りに来ればいい。

 なんせ俺しか抜けないんだからな。

 次に会ったときは泣きっ面を拝んでやるぜ。


「おい、こいつの名前はなんだ?」


「ぐすっ。あぁ、これは海刀かいとう櫛灘くしなだ』だ! 水を操ることができ、"溺死"を象徴とする最強の一振りだ!」


「海刀『櫛灘』か。いいじゃねぇか。これで賊の根城を丸ごと沈めてやるぜ」


 さっさと依頼を終わらせて金を貰ったらクッシーロの施設を攻め落としてやる。

 この刀があれば、絶対に勝てる!

 鞘野郎の持ってる二本の刀を奪ってウハウハな生活を送らせてもらうぜ。

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