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第25話 古風な刀姫

 僕たちは屋敷の和室に敷かれた布団に横たわる男性と対面した。


「お邪魔しています。佐山 冴也と申します」


「ゴホッゴホッ。まともに会話できなくて悪いな」


 見るからに辛そうな男性との会話を諦め、隣で正座しているセンナから事情を聞くことにする。


「主殿はここから遥か北方にあるクッシーロ領の元領主でござる。あるときドクタャブがやってきて決闘を挑んできたでござるよ」


 僕の腕に寄りかかってきたヴィオラは今にも寝てしまいそうだ。

 ヴィオラさん、もう少し興味を持ってあげて。


「まさかクシマもいるとは思っておらず、ブスッとやられてしまったのでござるよ。幸いにも即死ではなかったのでござるが一気に衰弱してしまって」


「それでも地域を丸ごと刀で囲うってやり過ぎじゃない?」


「ドクタャブが何人もの追手を放ったから仕方なかったのでござるよ」


 心底申し訳なさそうな顔で頭を下げるセンナにこんなことを言いたくないけど、イガイガ領主からの依頼も完遂しないといけないから僕は心を鬼にした。


「実はイガイガ領の人たちが困っているんだ。きみのことを蜘蛛の化け物だと思っているみたいだよ。ドクタャブはもう追ってこないからこの地域を開放してくれないかな?」


「それは構わないでござるが……」


「もしよければだけど、きみの主殿をクッシーロ領に移動させるのはどう?」


「えぇ!? そんなことができるでござるか!?」


 目を見開くセンナが横たわる男性を叩く。


「できるわよ」


 僕に寄りかかりながら黙って髪をいじっていたヴィオラが口を挟んだ。


「わたしの主人は今のクッシーロの領主でナイトオブクワットロだもの。多少の無理は聞けるわよ。ここに来たのもアリサの指示だしね」


「えぇぇぇぇぇぇ!?」


 そんなに大声を出さなくてもいいのに。

 いちいちリアクションが大きい子だな。


「領主様でござったかぁ。これは大変失礼しましたでござるぅ。主殿はナイトオブクワットロにはなれなかったのにすごいでござるなぁ」


 センナと話しているとなんだか癒やされるんだよな。

 ヴィオラも機嫌が良さそうだし、この二人は相性が良いのかもしれない。


「ん?」


 ヴィオラに肘打ちされて、彼女の方を向くと脳内に直接話しかけてきた。

 内容は「刀集めの話はしなくていいの?」というものだったので、無言で首を横に振っておいた。

 今はセンナの心配事を解消してあげることを優先したいからね。


「じゃあ、早速移動を開始したいんだけど主殿は歩けないよね。どうしようかな」


 クッシーロまでは長旅になるから体への負担を考えると転移が第一選択だけど、どうしたものか。


「心配ご無用です。移送はわたくしが請け負います」


 なんと、座敷には似合わないドレス姿のアリサ皇女が正座していた。

 毎度毎度、神出鬼没なアリサ皇女だけどヴィオラは全く驚かないんだよな。

 反対にセンナは飛び退いてるし。


「アリサだ! 久しぶりでござるなぁ」


 飛び退いた割にはおっとりさんなんだよな。


「転移できるのですか?」


「わたくしの部下にお任せください。鞘の勇者様はナイトオブシースとしてイガイガ領主への任務達成の報告後、このポイントまでお越しください」


 渡された紙に示された場所を確認していると、布団に横たわる男性とセンナの下に転移魔方陣が浮かび上がり、一瞬にして姿を消した。


「上手くわたしたちを利用したわね」


「一応、皇女ですから」


 微笑んだ彼女はドレスを翻し、音もなく消えた。


「行きましょう、あなた」


 イガイガ領主の元に戻ると官邸の執務室に案内された。

 クッシーロの官邸よりも和の要素が取り入れられている。


「おぉ! さすがはナイトオブクワットロのお一人だ! これで町人の不安も取り除けるでしょう。ありがとうございました」


「では、僕たちはこれで失礼します」


「お待ちください。お礼の品でございます。どうかお納めください」


 僕としてはセンナと元クッシーロ領主に接触できただけで満足だからお礼とかはいらないんだけど、ヴィオラは遠慮なくそれを受け取った。


「強い者が多くを得るものよ。受け取らなければ示しがつかないわ」


 やっぱりヴィオラについてきてもらって正解だったな。

 官邸をあとにして、指定されたポイントに向かうとアリサ皇女が用意した転移魔方陣が設置されていた。

 転移は一瞬で完了し、瞼を開けるとクッシーロ領官邸の執務室でヒワタをはじめとする大勢の仲間たちが出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、サヤ様」


「ただいま、ヒワタ。早速だけどセンナのところに案内して。あの男の人を治すよ」


 僕は葬刀そうとう紅縞くしま』の鞘をベルトから抜き取り、颯爽と歩き出した。

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