第20話 帝国最強騎士団の会合
一夜明け、ナイトオブクワットロの会合場所へと向かう。
帯刀するなというお達しの為、ヴィオラとヒワタはお留守番だ。
円卓には合計四つの椅子が設けられている。
一番乗りで会場入りし、僕の名前が彫られた札が置いてある席の前に立ち他の人を待つ。
「早いな、サヤマ卿」
騎士服の上から法衣を羽織るォショウさんが僕の対面に座り、着席を促した。
「ドクタャブに勝ったんですって〜。でも彼は四天王最弱なのよ〜! なんちゃって〜」
右隣の椅子に腰掛けながらお約束のセリフを言う女性は真っ赤なルージュをひき、露出度の高い騎士服を着ている。
反対側には白髪をポニーテールでまとめ、きっちりと騎士服を着こなす女の子が無言で着席した。
「では、始めよう。まずは自己紹介から」
このラウンジはナイトオブクワットロのみが入室を許される場所で皇帝や皇女も立ち入ることが禁止とされているらしい。
「我が名はォショウ。皇帝陛下よりナイトオブハートの称号を賜り、首席の座についている」
この人の所有している刀については知っている。
ォショウさんがこの騎士団の中で最も強いなら、あの同盟の話はありがたい申し入れだったようだ。
「あたしはナイトオブラバーのレィジーンよ~。さっきは冗談っぽく言ったけど、ドクタャブって金儲けしか頭にない医者上がりだから皇帝陛下への忠誠って言われてもね~。末席くんの方が信頼できそうね~」
この場にヴィオラがいたら彼女の豊満な胸を引っ叩きにいきそうだ。
レィジーンさんについては全く情報がないから気をつけないと。
「ナイトオブパワーのシムカじゃ。次席を務めておる」
腕を組んだまま片目を閉じて自己紹介する女の子。この人が二番目に強いのか?
それにパワーってなんだ。そんなに力が強いのかな?
三人からの視線を受け、咳払いをしてから背筋を伸ばした。
「鞘の勇者としてこの世界に召喚された佐山 冴也です。この世界のことはまだ知らないことばかりで、ヴィオラたちがいないと何もできません」
「謙遜するなサヤマ卿。二本の刀を持ち、クッシーロ領の在り方を変え、ナイトオブクワットロの一人を破ったという功績は大きいぞ」
改めて羅列されるととんでもないことをしていると気づかされる。
こんな結果になるなら追放してくれたゼィニクに感謝した方が良いのかもと思ってしまうほどだ。
「響刀『美蘭』ってずっと隠されていたんでしょ~。十刀姫なんて簡単には見つけられないのにどうやって手に入れたの~?」
「偶然出会ったアリサ皇女に貰ったんです。そしたら偶然奥義が使えて敵を倒すことができました」
「そ、そうなんだ~」
レィジーンさんの頬が引き攣っているように見えるけど、そんなに変なことを言ったかな。
「響刀『美蘭』はアリサ皇女殿下が所有されていたのだな。それならばこの国のどこを探しても出てこないわけだ。皇帝陛下相手によくやる」
豪快に笑うォショウさんなら僕の疑問に答えてくれるだろうと期待しておそるおそる聞いてみることにした。
「十刀姫ってなんですか? みなさんはどこにどの子がいるか知っていたんですか? 全員を集めると何か起こるんですか?」
早口になってしまったけど、あまりナイーブなことをヴィオラやヒワタには聞きたくない。アリサ皇女にははぐらかされてしまったから聞ける相手がいないんだ。
「十刀姫とはサヤマ卿と同じ世界から来た"刀の勇者"が打った刀としか聞かされていない」
「どこに保管されているかは明確にされていないわ~。所有者が代われば所在も変わるからね~」
「全部集めても何もよいことは起こらぬ。どれも強力ゆえ一本で十分じゃ。全部を持とうと考える者はおらん」
三人がそれぞれの質問に答えてくれたことで少しはスッキリしたけど、まだ納得がいったわけじゃない。
やっぱり素直にヴィオラたちに聞いた方が良いのかな。
「ナイトオブクワットロになったからには皇帝陛下の命令は絶対であり、騎士同士の争いは禁止だ。サヤマ卿はアリサ皇女付きの騎士だから、我らよりも仕事が多いかもしれんな」
またしても豪快に笑うォショウさんが席を立ち、初会合は終了となった。
「じゃあね、末席くん。あたしの領地にも遊びに来てね~」
二人を見送っているとナイトオブクワットロ次席のシムカさんが僕との距離を詰めてきた。
「な、なんでしょう?」
「皇帝陛下には気をつけるのじゃぞ。それから十刀姫を一カ所に集めようとは考えぬことじゃ。よいな?」
「でも、もう一人の勇者は刀集めを依頼されています」
「儂らが存在する限り全部を集めることは不可能じゃ。問題は剣の勇者ではなく、おサヤの方じゃな」
しなやかな指が僕に向けられ、ゆっくりと腰へと向かう。
おサヤってなんだか気恥ずかしい呼び方だな。
「アリサがヴィオラをおもちゃ箱から出したということはおサヤは何か大きなことを成し遂げるのじゃろう」
「アリサ皇女にこのことを聞いても?」
「答えてくれるとは思えぬが、聞くだけならタダじゃ」
ポニーテールを揺らしながらラウンジから出て行く。
僕も彼女を追うように扉に手をかけた。
この十個の鞘に全ての刀を納める日は訪れるのだろうか。
そして、僕は元の世界に帰ることができるのだろうか。
そんな疑問と不安を抱きつつ、ヴィオラとヒワタの待つ客間へと戻った。
※ラバー=愛好




