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第12話 剣の勇者、皇女様から咎められる

【ナガリ視点】


「領地の賊狩りをしているという噂は本当のようですね」


 突然、来訪してきた皇女がゼィニクのおっさんに詰め寄っている。


「賊が貴族たちの馬車を襲うからです。ナガリ殿が掃討してくれるおかげで我が領地の安全性は日々高まっております」


「今月だけでもう十五件ですよ。いくらなんでも多すぎます。これまでの記録にはない数字です」


「最近の賊は活発なのでしょう」


 皇女が俺を睨みつける。

 その生意気な目をだらしなくしてやりてぇぜ。


「増税」


「ギクッ!?」


「人々が嘆いていましたよ。飢えを凌ぐ為には盗みを働くしかない。ここで死ぬなら移住食を確保できる刑務所に入りたいと。クッシーロでも構わないとまで言われています。これまでは目を瞑っていましたが、やり過ぎましたね」


 おっさんの脂汗で高級カーペットが汚れていく。

 かげでそんなことをやってたのかよ。

 まぁ、その貧乏人を狩って俺は貴族から金を巻き上げてるわけだがな。


「ク、クッシーロの名まで出ているとは……」


「クッシーロってなんだよ?」


「遥か北方に位置する極寒の地で、皇帝陛下直轄の監獄が存在する。一度収監されると二度と出られないとの噂だ。あの領地には流行病も多いと聞く」


「数年前よりクッシーロ監獄の管理権は領主となったドクタャブに渡っています。流行病は……少々気になるところです」


 そんな寒いところでの生活なんかやってられるかよ。

 俺はここから出ていかねぇぞ。


「とにかく税を軽減しなさい。これは命令です。従わないとあなたがクッシーロ監獄行きになりますよ」


「ひぃぃぃ。お許し下さい。クッシーロだけはっ!」


 あのおっさんが土下座するなんてよっぽど嫌な場所なんだな。


「冗談です。今やクッシーロ監獄はクッシーロ更生施設と名を改め、多くの病める人々を受け入れています」


「は?」


「あら? お聞きになっていませんか? 極悪人収監施設クッシーロ監獄は鞘の勇者様が解放し、その在り方を変えてしまいましたよ」


 ……は?

 鞘野郎が土地を手に入れただと!?


「ま、まさか。ご冗談を!? あの者にそのような力があるとは思えません」


「鞘の勇者様は二本目の刀として寒刀かんとう氷綿ひわた』を収集されました。皇帝陛下の勅令によりクッシーロ監獄の全権はドクタャブから鞘の勇者様にゆだねられています」


「『氷綿』!? 帝国始まって以来の極悪人タイザィによって盗み出され、多くの血を浴びたという刀がクッシーロにあったのか!?」


 おいおいおい。なんだよ、俺の刀よりも強そうじゃねぇか。

 雷を落とすことしかできねぇ、『雷覇らいは』なんかとじゃ比べ物にならねぇぞ。


「鞘の勇者様はナイトオブクワットロに近づきつつあります。彼らと接触する日も近いでしょう。小遣い稼ぎしかできない者では勝ち目はないでしょうね」


「女ぁ!」


「やめろ、ナガリ殿!」


 皇女に飛びかかる俺の腕を掴んだのはおっさんではなくライハだった。

 いつもは俺を見下した目をしているくせに、今は信念のこもった目で睨みつけてきやがる。


「退け」


「嫌だ。クズの言うことは聞かない」


 怒り心頭の俺は問答無用でスキル『従属』を発動し、ライハの頬を引っ叩いた。


「ライハ!」


「あぁ! 貴重な刀が!」


 皇女とおっさんが駆け寄り、ライハを庇う。

 なんだよ、俺はそいつのご主人様だぞ。道具をどう使おうが俺の自由だろうが。


「あなたのような方が勇者などとわたくしは認めません」


「お前の考えなんて関係ねぇ。俺は実力でナイトオブクワットロに入ってやるよ」


「あなたが皇帝陛下に忠誠を誓えるのですか? わたくしは絶対に推薦いたしません」


 皇女はよく見るといい体つきをしていた。

 これは楽しみが増えたな。

 俺の実力を認めさせた後でたっぷりと堪能させてもらうぜ。


「ゼィニク、誰とともに歩むべきか熟考するべきでしたね。あなたは人選を誤った。わたくしからは以上です」


 転移魔法陣の中に消える皇女の背中を見送ったおっさんは息を荒くしながらライハの肩を抱いていた。


「おぉ、可哀想に。頬を冷やさなければな。おい、ライハを部屋へ連れて行け」


 おっさんは使用人にライハを任せ、俺の元へ歩み寄るとこれまでにない鬼のような顔で睨みつけてきやがった。


「なんだよ?」


「アリサ皇女殿下の言う通りかもしれん。ライハの回復を待ち、クッシーロへ向かえ。クッシーロの領主であるドクタャブをあの無能と接触させるな」


「はぁ? それなら俺が鞘野郎を倒せばいいだけの話だろ」


「ならん。ドクタャブはナイトオブクワットロの一人だ。なんとしても無能と接触させるな。お前が本物であれば奴から刀を奪ってみせろ。無能のそのあとだ」


 なるほどな。

 その領主から刀を奪いつつ、ナイトオブクワットロの席も奪おうって算段か。

 おもしれぇ。


「で、そいつもライハと同じような刀を持ってるのか?」


葬刀そうとう紅縞くしま』の所有者だ。気を抜くなよ」


 おっさんまで完璧に態度を変えやがった。


「これで確信した。増税の件もクッシーロ監獄の件も黙認していたアリサ皇女の動きが活発になったのはあの無能のせいだ。放置すれば我らの破滅に繋がる。心してかかれ」


 クソッ。このままじゃ、やべぇじゃねぇかよ。

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