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恋人未満  作者: 葉月
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女性視点

最近コスプレ見に行ってない事に気が付き、そこから膨れ上がった、妄想です。自己発電です。

まだ肌寒い今日この頃…


「だ、大丈夫ですか!!!?」


 そう声をかけたが、声をかけられた方は目を閉じられており顔は蒼白である。何度か声をかけたが、一瞬薄く目を開きこちらを見たがまたすぐに目を瞑ってしまった。


 どうしたらいのだろうかと、途方に暮れる。流石に地面に寝かせてしまうのはどうかと思い、せめてと思い頭の下にタオルを下に敷いた。

 この顔面蒼白の男性は、私の方に半分覆い被さるように倒れ込んできたので、私は男性の半分下敷きに後ろに倒れた。今日はカツラをかぶっていたおかげで思い切り頭はぶつけはしなかったがお尻が痛い。背中はリュックのおかげで痛くはなかった。

 何度か男性に声をかけた。周りに助けを求めようと視線をさ迷わせたが、車道や私達がいる歩道のすぐ隣を沢山の人々が行き交うが「何?」っとこっちをチラリと見るが我関せずといった感じで通り過ぎて行く。コスプレイヤーやカメコ、この雰囲気を楽しむ為に来た人々は今私の状況は目に見えないのかそれとも面倒なことには心を閉ざすフィルターでもかかっているのだろうか。

 

 私はとにかく助けを呼ばなければと思い、携帯を取りだし119で救急車を呼んだ。

 歩行者天国で車は通れないが緊急車は通れるはず…だが、これだけの人が行き交って果たしてここまでこれるのだろうかと心配になったが、脇道を縫ってきたのか、警備員や警察官に誘導されやって来たのか、答えは分からないがタンカーを持った救急隊員がやって来た。


 状況は電話で話していたが、軽く掻い摘まんで隊員に告げ男性は運ばれていった。そんな私の周りでは「え?何々」など、声が聞こえるが男性が倒れてから誰一人私に声をかけてくる人は最後までいなかった。




 「楽しむぞ!」


 って意気込んでコスプレまでして今日のイベントにやって来たが、私の気持ちはしぼみ、もう楽しむという当初の気持ちは消えてしまったのでさっさと帰ろうと思い、更衣室に向かった。

 更衣室に向かっている途中何度か「写真を撮ってもいいですか?」っと声を掛けられたので、リュックをおろしポーズを取った。話し掛けてきた人が先程の事を知らない人かもしれないし、「何故助けてくれなかったのですか?」何て声を上げたところで、冷たい目で見られるのは分かりきったことだ。

 その後何とか更衣室までたどり着き、私はさっさと着替え始めた。朝着替えるときは長蛇の列に並び、着替えのテントの中に入っても人がごった返して着替えも化粧も一苦労したのに、今は閑散としている。おかげでサクサクと着替えられ、家に帰った。




ーー

ーーー


「渡邊さん、3番に〇〇商事の萩野様から、見積もりの件でお電話です!」


「はい、…お電話かわりました、渡邊です。いつもお世話になっております。先程お送りした………」


 カタカタカタカタ


「渡邊さん、これこう言う感じにフォーマット作って置いて?あー、時間かかるから今月中でいいかな?お願いね」


「畏まりました」





ーー

ーーー

 繁華街の明かりで星は1つも見えない空を見ながら思いにふける。


 ―――今日も疲れたなぁ


 あの、イベントから約一月経った。あの人はどうなったのだろうか…。何度も頭に過ったが名前も年齢も連絡先も分からないので知ることも出来ない。救急隊員も来たことだし大丈夫だったと思う。もし不幸な事になっていたら警察から連絡が来るかも知れないし…来るのかな?でも、いつかまた、「あー、そんなこともあったな」っと思い出せるようになるだろう。


 カッカッカッカッ…ハイヒールの踵の音が段々と近づいてくるその方向を見ると、今日待ち合わせしていた友人の友梨香が待ち合わせに遅れてやって来た。


「凛ちゃんごめん、遅れた!待った?ごめんねぇー!もう聞いてよ!さっにね……」


 会った瞬間からマシンガントークがいつも始まるので私は話を聞きながら、飲みに行く居酒屋に向かう。



「いらっしゃいませ、2名様ですね?おたばこ吸われますか?」


「いえ」


「お席にご案内いたします」


 そう言って男性の店員さんに席に案内される。店内は喧噪に包まれていた。ここは大部屋もあるため、きっとそこからの声だろう。店員さんが少し申し訳ない顔をし謝罪を口にしたので、気にしないと伝えた。

 時期的に新入社員歓迎かもしれないし、それは仕方がないことでもあるし、寧ろ店員さんは悪くない。


 友人と飲みながら食べながら、色々なことを話した。


「それでさぁ、同僚が仕事中なのに彼氏といちゃいちゃして!仕事しろっての!今給料貰ってる時間でしょ!?逢い引きの時間じゃねぇーーよ!!」


「仕事中はないわー、ってか友梨香たまってんなぁー」


 友梨香は愚痴った後生中を飲み干し店員さんに、おかわりを頼み、私に向き合うと「当たり前でしょ!?」っと言ってポテトフライを貪った。


「こちとら、彼氏と別れて約1年よ?細かく言えば8ヶ月も彼氏居ないのよ?しかもあんの浮気野郎!!、腹立つのよ聞いて!?あいつサークルのSNSに「愛の結晶」とかいって子供の写真上げてたのよ!!?可笑しくない?私と分かれて8か月よ?可笑しいでしょ?キモいでしょ!?最低よ!!」


 友梨香の元彼は大学のサークルが同じで約3年付き合っていたのだが、元彼は会社の同僚と付き合うからといわれ別れたらしいんだが…まぁ、結果はこれである。


「うー…彼氏欲しい、いや恋愛したい…凛は最近何かないの?彼氏とか?彼氏とか?彼氏とか?」


「「か」の字もない、寧ろこの喪女に彼氏が出来るとでも?友梨香見たいに可愛けりゃ彼氏の一人や二人…」


「いや、2人居たら駄目じゃん、浮気だから!もう…せっかく凛ちゃん可愛いのに、なんでファンデだけのメイクなのよ!それにその適当に後ろに1つに括った髪…もっと頑張ろうよ!」


「えー、朝起きられない?」


「女磨けよ!」


「磨いてこれよ」


「口を慎めこのヤロー」


 そんなくだらない話をして楽しんでいたのだが、途中トイレに行きたくなり席を立った。飲みに行ってトイレに行きだしたら続くからそろそろお開きにしようかと、考えながら席に戻ろうとしたとき、大部屋のお客であろう人2人が前から来て驚いた。あの時の男性である。


 男性はもう1人の男性に肩を組まれ、でも楽しげに会話をしていた。


(「元気になったんだ」)


 良かったと心からそう思った。相手は気を失っていたので私の顔は知らないし、別にお礼を言って欲しいわけでもないので私はそっと端に少し寄りながら歩いてすれ違った。



 友梨香もトイレに席を立ったので、お開きにしようと言うことになり店員を呼んだ。

 2人で帰り支度をしていると、ちょうど大部屋の人達が出て来たので、その人達が出てから店を出ることにした。




「さっむーー!」


「うー、まだ寒いねぇ?」


 外に出るとまだ、先程の団体さん達がいた。友梨香お二人横を通って通り過ぎ駅に向かう。


「もう4月なのにね?温暖化何処に消えた?って話よ…ぁー、もう明日はジャケットにしようかな」


「頑張ってー、私は明日から3連休だわ」


「本当、なんで土曜日に出勤なんてしないといけないのか……はぁ…」


 くだらないことを話をしていたら友梨香の乗る駅に着いたので、友梨香と別れ私も駅に向かうため歩き出した。



「すみません…」


 誰かに声をかける声が聞こえたが自分ではないと思い速度を落とさず歩き続ける。


「あの、すみません!」


 そう言って腕を掴まれた。

 驚いて後ろを向いて振り払おうとして気がついた。「あの時の男性」である。

 私が振り返り止まったことが分かると男性は手を離した。


「き、急にすみません」


「いえ」


「「…………」」


 目が泳ぐ男性。何秒経ったろうか。たぶん一瞬なんだろうが、沈黙が何故かとても長く感じる。あまりにもどうしたらいいか分からず話し掛けた。


「えっと…あの時の方ですよね?」


「あっ、はい…あの時はありがとうございました。怪我は御座いませんでしたか?」


 怪我は…ないっちゃない。お尻が痛かったので青たんになっただろうが、見ていないので知らない。それにもう一月も経った。


「大丈夫でしたよ。そちらも大丈夫でしたか?」


「良かったです。私は過労で…あ、でも、もうデスマー、いえ、仕事が一段落したのでもう大丈夫です。本当救急車を読んで下さりありがとうございます」


「いえいえ、でもよく私と気がつきましたね?」


「声をかけられて、顔を見た記憶が一瞬あったので…ただ違ったらと思って…それにあの時はその…今と装いが違いましたので、呼び止めたはいいのですが言葉が出なかったです…あっていてよかったです」


 化粧もカツラも目の色も違ったんだけど…会社の人にバレてないよね…。


「そ…うなのですね…とにかく元気になって良かったです」


「ありがとうございます」


「では」


「え?…あ、はい……ありがとう御座いました」


 お辞儀されたのでこちらも軽くお辞儀をしてその場を辞し、自分が乗る電車に向かった。






―――

―――――

 翌週の金曜日

 今日、まっすぐ家に帰る。残業したが許容範囲内だ。そう言えば、先週ここであの男性と会ったなぁ。っと思いながら駅に向かう。

 まだ服屋などは開いており金曜日と言うこともあいまってか人が多い。歩いているとドラッグストアで見たことのある男性に気がついた。向こうもこちらにちょうど気がついた。


「「あっ」…こんばんは」


「こんばんは、今帰りですか?」


「はい、えっとそちらもですか?」


「あ、そうですが、名前名乗ってなかったですね。僕は、板垣悠人と申します」


「あ、私は渡邊凛と申します。前回デスマーチ…でしたかね?まだ続いてるのですか?」


「?あ、もう終わりましたよ、もう今はいつもの就業時間ですよ」


 ?今20時なんですけどー…いやこれは突っ込んではいけない奴ですね…この人の頭にクエッションマークが見えてくる気がします。


「そ、そうですかお疲れ様です」


「お疲れ様です。……僕、今からご飯食べに行くのですがご一緒にどうですか?お礼として奢らして下さい」


 確かにお腹が先程から鳴っているし、でもお礼って別にたいしたことしてないのだから断るべきか…


「この時間だと居酒屋になりますが……、すみませんあまり面識がないのに誘ってしまい…」


 男性は首に片手を当てて申し訳ない顔をして謝罪してきたので、何だかとても罪悪感に嘖まれた。


「い、いえ、行きましょうか?お誘いありがとうございます。それにお礼は別に良いですよ、当たり前なことをしただけです。割り勘で行きましょう」


 そう言うと男性は、気を遣わせたと思ったのかまた申し訳ない顔を少しし、お薦めのお店があるのですと案内してくれた。


 そこはこじんまりとしているが人がそれなりに入っておりとても賑わっていた。板垣さんが店長らしき人に2名行けるか聞き、席に着いた。


 席に着いた後、お酒を飲みながら当てをつまみ自分のことをお互い話し合った。

 板垣さんは私の2つ年上でエンジニアの仕事に就いているそうで、この間のデスマーチはある人が取ってきたのが仕様変更変更で納期が厳しくなり、途中から参加したらしい。長い人で約半年デスマーチだったらしく、板垣さんは「僕は4か月ですんだので良かったですよー」っと……そんなにエンジニアの仕事は大変なのだと知ったのだがいつもそうではないらしい…いつもは……


 なんだかんだで仲良くなりSNSの交換をしその後別れた。お会計は勿論割り勘でと言ったのだが、板垣さんに押し切られてしまった。少し罪悪感を感じる。救急車を呼びはしたがとくに何も出来なかったのに、夕食を奢って貰うなんて…申し訳ない。


 家に帰り携帯を見るとSNSが来ていた。


『渡邊さん、今日はありがとうございました。

楽しかったです。また宜しければ飲みに行きませんか?』


 私は鞄を定位置に置き返事を返した。


『板垣さん、こちらこそ楽しかったですし、ありがとうございました。それからご馳走様です!また行きましょう!次は割り勘で!!』


 そう、送った後私は携帯をベッドの横の充電器に指しお風呂に入り寝た。


 板垣さんとの会話は楽しかったので良い友人が出来たと思った私はまさか彼と付き合うことになるなんて、喪女で告白もされたこともない凛には想像がつかなかったが、それはまた別のお話……。

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