89ページ目 人類の敵の存在・騒動解決
──“ダークエルフの拠点・外部”。
「──という事で全ての首謀者、厄災の王は捕らえた。その仲間のダークエルフもな。今から第三拠点に戻って処罰を決める事にする」
「さ、流石ですね。ホムラ様……。まさか捕虜を助けに来たら全てを壊滅させてしまうなんて……」
「ゼッちゃんが居てくれたからだ。かなり楽になった」
「えへへ。ボクも頑張ったよ!」
「お疲れ様です。ゼッちゃん」
厄災の王とダークエルフ達を拘束し、合流したセイカ達に経緯を説明した。
そう、今回の目的はあくまで囚われたエルフ達を助ける事。その後で陣形を組んで改めて赴くつもりだったが、気付けば全部が終わっていた。
しかし、考えてみれば今回の戦力。執事とメラン、四宝者達がおらずとも闇魔法使いのホムラに“人類の敵”であるゼッちゃんとサチ。国一つどころか全世界を手中に収める事も可能な戦力が此処に集っている。こうなるのはパーティ編成の時点で分かっていた事なのかもしれない。
「久し振り。王様」
「おお、最凶最悪か。久しいな。いや、サイかサチと呼んだ方が良いんだったな」
「うん」
そして当然、厄災の王は最凶最悪ことサチとも知り合いの様子。
この“人類の敵”同士のコミュニティ。決して仲間という訳ではないが、敵対している訳でもない。不思議な繋がりである。
「そう言や、“人類の敵”って全員が別の存在と会った事あるんだな。見た目年齢が20代から30代前半の虚無の境地や50~60代くらいの厄災の王はともかく、ゼッちゃんやサチとも知り合いなのは何でだ?」
「ボク?」
「ん?」
「フム……」
考えてみれば変な話だ。
ゼッちゃんは気付いたら“絶望の象徴”と言われていたらしく、まだ成人もしていないサチもおそらく同じ。そんな者達が敵対もしていない知り合い。
本当の年齢が分からない“虚無の境地”と“厄災の王”は知り合いでもおかしくないが、ゼッちゃんとサチは見た目通りの年齢と考えておかしな事だろう。
それについてホムラが訊ね、厄災の王は言葉を発した。
「ワシは先代の“絶望の象徴”や“最凶最悪”とも会っている。だからまあ、今のゼッちゃんやサイと会うのは不思議じゃない」
「……!」
──そしてそれは、衝撃の事実だった。
“先代”。やはり“人類の敵”は世襲制。血縁などではないが、その名を受け継ぐものではあるらしい。
反応を示すホムラ達に向け、エルフの拠点に戻る道中、厄災の王は歩みながら話した。
「そうだな。まずは主の質問に答えよう。何故知り合いなのか。それは必ずそうなるからだ。“人類の敵”同士は必ず会う事になるからの」
「……? 答えになってないぞ。その言い方、まるでゼッちゃんとサチが“人類の敵”になって、アンタと会う事が定められていたみたいじゃないか?」
「みたいではなく、それが事実なのだ。そうなる者は初めから決まっており、その者同士が“人類の敵”になった時他の存在とも必ず一回は出会う」
「ふうん? けど、“人類の敵”になる。か。それも変な言い回しだな。アンタの説明を聞く限り、生まれた時からそう定まっているって事なのに、その言い方じゃ生まれた瞬間は“人類の敵”じゃないって事になる。“なる”って表現は後天的なものだからな」
厄災の王がゼッちゃん達と知り合いの理由は、会う事が決まっていたから。
それも変だが、それとは別に厄災の王の言い回しが気になった。
本人は質問に応える。
「フム、そうだな……出所を考えれば主の闇魔法と同じ。突発的に現れるのだ」
「闇魔法と同じく?」
「ウム。つまり“人類の敵”は先代が死したらこの世に別の器となる者が自動的に現れるという事だ。その者は“混血”か、一つの系統であっても不思議な力を持つ。思い当たる節はあるだろう?」
「ああ、まあな」
確かにゼッちゃんやサチは不自然な魔法を使う。
似たような魔力を込めれば間接的に再現出来るが、それよりも遥かに洗練された“模倣”。
そして相手の力を消し去り、単一の力を己の物として一度だけ扱えるようになる“無効化”。
仲間の強化と回復を同時に行えるようになる厄災の王の力や、身体能力や肉体的強度が大きく増す虚無の境地の力。
その全ては、少なくとも現在は観測されていなかった魔法。
厄災の王は言葉を続ける。
「全世界にて、たった四人だけが持つ力。それが“人類の敵”の証拠。異物は弾かれるのが世の理。自然と人々と争うように仕向けられてしまうのだ。最終的にその名が広まり、“人類の敵”と呼ばれるようになる」
「それで態々“なる”って言い回しをしたのか。けど、不自然な力ってなら俺の闇魔法やトキの魔法もある。トキの魔法については詳しく教える訳にはいかないけど、それは“人類の敵”にならないのか? 少なくとも闇魔法の俺は人類に宣戦布告したぞ」
「そうじゃな。言ってしまえば主らは“人類の敵”の成り損ない。かの。失礼な言い方じゃが、どの系統にも属さない異能を持ちながら“人類の敵”にはなれなった存在という事じゃ」
「成り損ない……ね。割としっくり来るな。俺もトキも形はどうあれ世界を敵に回している。それだけで“人類の敵”は謳われていない。けど、闇魔法の俺は“人類の敵”とはまた別の存在になると思うんだけどどうだ?」
「……?」
他の魔法とは違った力。それが“人類の敵”の証明。しかしホムラは、ホムラの闇魔法はそうではないと思えた。
小首を傾げる厄災の王へ説明を続ける。
「俺の知り合いに魔族が居るんだ。その知り合いは、闇魔法は“魔王”になる為の存在……的な事を言っていた。伝承じゃ魔王は間違いなく“人類の敵”みたいな立ち位置だけど、もう既に四人居るのに生まれてくるのは変だろ? “虚無の境地”。“絶望の象徴”。“最凶最悪”。“厄災の王”。それとは別ジャンルでの“人類の敵”にでもなるのか?」
「フム……それについては初耳じゃ。“星の裏側”には何度か行った事もあるが、魔族はワシに協力もしてくれんからの。何度も追い返されてしまった。伝承での闇魔法は知っているが、あくまで“人類の敵”の一環かと思っていた」
「“虚無の境地”と魔族は知り合いなのに、アンタは弾かれるのか。まあ、その性格が魔族と合わないのは何となく分かるけど」
「ハッハッハ! そう言われては敵わんの!」
結局のところ、闇魔法と“人類の敵”に関わりがあるのかは分からなかった。
他にも色々と聞きたい事はあるが、今は一刻も早くエルフ達を返すべき。険しい道中なので話をする余裕も無くなると考え、一旦この話は切り上げた。
「取り敢えず、アンタが“先代”とやらと会った事があるのと、“人類の敵”はそう呼ばれる事が定められているのは分かった。俺が聞きたかったのは一先ず何でアンタらが知り合いだったのかだけだし、判決で死刑にならなければまた色々と聞くとするよ」
「フム、そうか。ワシも生きられると良いの」
「それを決めるのは被害者のエルフ達だ」
“人類の敵”については色々と詳しそうだが、ホムラの目的はそれではない。なので保留。エルフから慈悲を与えられた時だけ聞くとするのが良いだろう。
「ね、ねぇ。エメラ……彼らの話って……」
「闇魔法に人類の敵……それって不味くない?」
「私達、生きられるのかな?」
「大丈夫だと思う。ホムラは信頼出来る。ゼッちゃんとサチも多分。厄災の王は帰ってからだけど」
ホムラ達の話を聞き、“闇魔法”や“人類の敵”に流れる悪い噂について知っているエルフ達が怪訝そうな表情でエメラに訊ねた。
確かに存在を知っているなら警戒するのが普通だろう。そもそも闇魔法使いや人類の敵がそう言った者達だ。
エルフも過大解釈なら“人”の括りに入る。エルフの敵にも成りうる存在であり、実際に“厄災の王”は敵だった。
しかしホムラ達の人の良さを知っているエメラは大丈夫と告げ、先に進む。
それからまた四日後、厄災の王とダークエルフ達は本当に何もせず、穏便にエルフの拠点へと辿り着いた。
*****
──“エルフ達の拠点”。
「──それで、厄災の王達は全員捕まえましたよ」
「そ、そうか……凄いな君達は。しかし、ゼッちゃんやサチが居るのなら確かにそうなのだろう」
エルフの拠点にて、ホムラ達はセイカに話したような概要と同じ説明をした。
それを聞いたメグミ達は呆気に取られており、ホムラはその装いを見やる。
「メグミさん達も防衛は上手く行ったんですね」
「ああ、まあな。場所が場所だからか、その厄災の王によって強化されたダークエルフも少なかった。大きく変わらない実力だったから何とかなったよ」
相変わらず衣服はボロボロで身体に傷も付いているが、基本的に軽い掠り傷程度。その事から防衛は上手く運んだ事が見受けられた。
というのも、既にある程度は壊滅してしまったエルフ軍。だからこそ強化したダークエルフがあまり攻め込まずに済んだようだ。
そして当の厄災の王だが、
「普通ならば死刑にするところですが、私達が世話になったホムラ様方は彼から聞きたい事も多くある様子。よって、ホムラ様達の事を考え、エルフとダークエルフは一時的な協定を結び、“厄災の王”は魔族が“星の裏側”に監禁する事になります」
──との事。
因みに今話しているのはエルフ達の王。やはり女性。
元々心優しいエルフ達。許す事は無いにせよ、命は奪わない。
それはエルフの総意であり、今回の戦争によって死した者達の思いでもある。
何故そんな事が分かるのか。それはエルフの在り方にある。
「構いませんね?」
『はい、構いません。私達は小動物に生まれ変わりましたから』
『長きを生きる我ら、この短い生を歩み、改めてエルフに生まれ変わるとしましょう』
「……。不死身どころの騒ぎじゃないな……」
「そうですね……“自然の民”ってそう言う事だったんですか……」
「けどエルフの国以外の場所じゃ転生出来ないんだって~」
「大変だね……」
──エルフ達は森の小動物に転生した。
エルフは死する時、文字通り自然に還る。なので生前の意思を持ちながら小動物や植物に転生するらしい。確かに死したエルフは腐らず、キノコなどが生えていた。それが転生の準備なのだろう。しかし此処以外では転生出来ない制約もあるとか。
傍から見たら苦痛のようにも思えるが、会話は成り立ち欲求も少ない種族。意外と快適そうである。
「ふふ、それもこれも、ホムラ様方のお陰で御座います。我らエルフ。貴方様が望むのならば、何れ力になりましょう」
「そ、そうですか。それじゃその時が来たら頼みます」
呆気に取られているところに、先程の威厳が無くなったエルフの王が笑顔で話す。
戦力になるなら申し分無い。なのでホムラも簡単に返した。
女王は口に手を当てて上品に、小さく笑った。
「はい♪ 人間とエルフの友好の証とし、エルフ達の王である私がホムラ様との子でも──」
「間に合ってます!」
「あら、残念」
また厄介な事になりそうだったのを見計らい、セイカが引き離して守った。
人間とエルフのハーフ。それがどの様な存在になるのかは気になるが、確かに間に合っている。既にお嫁さんの候補は多かった。
「一先ず、お陰で解決致しました。子供は無理ならばこれを。“エルフの国”と“人間の国”を繋ぐ“花”で御座います。いつでも遊びに来て下さいませ。ホムラ様!」
「まあ、これくらいなら」
お礼として、ホムラには“エルフの国”の出入りを許可された。
“星の裏側”に“エルフの国”。追われる立場であるホムラにとっては拠点になる場所が増えるのはありがたい。
エルフの国での、厄災の王が起こした騒動。それは無事? 解決し、ホムラ達は元の国に戻る。
ゼッちゃんやサチ。魔族の国に続き、エルフの国と言うまた大きなコミュニティが増えた。それによる応用性も高くなるだろう。
世界。及び“虚無の境地”に対しての復讐。それにつき、また戦力が整うのだった。




