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80ページ目 呪いの解き方

「よし、これで傷は治ったな。では早速……」

「待ってください。メグミさん。俺とトキと執事さん以外は治療で魔力消費しましたし、最低でも今日は休みませんか?」

「む? それもそうだな。エルフの国の現状は気になるが、私の所為で疲弊した。流石に此処で我が儘を通す訳にはいかないか」


 傷が完治したメグミは早速行動を開始しようとするが、ホムラによって止められた。

 あの傷の治療には精密な魔力コントロールが必要不可欠。故にセイカ達は多少疲れており、自分が原因でこうなったとなればメグミも黙認するしかなかった。

 その辺りも四宝者らしく、ちゃんと心得ているらしい。


「わーい! 新しい回復魔法覚えたー! これで怪我人どんどん治そーっと!」


「ゼッちゃん様。それは魔法ではなく、魔術です」

「えー? ややこしいよメランー!」

「そう言われましても……」

「このダメージは有効活用出来る。誰にぶつけよう……」


 約二名はあれ程の力を使っても何とも無いが。

 その辺りは流石というべきだろう。


「まあ、取り敢えず昼食でも食べながら話し合いましょうか」


「そうだな。急いては事を仕損じるとも言う。昼食を摂るくらいの余裕は無くてはならないか」


 今の時間帯は昼時。なので昼食を摂りながら話し合う事にした。

 早速準備に取り掛かり、メグミとエメラは休憩して昼を待つ。

 それから十数分後、昼食が完成して食事が始まった。


「それで、今回の大ボスは“人類の敵”だ。“虚無の境地”ではなく、“最凶最悪”も此処に居るから候補は“絶望の象徴”か“厄災の王”だが……」


「それなら“厄災の王”ですね。俺の仲間であるゼッちゃんがその“絶望の象徴”だった存在ですから」


「……ッ!? ゴホッ……! ゲホッ……! ま、まさか人類の敵を二人も仲間にして居るとは……恐れ入ったぞホムラ……」


 候補は必然的に絞られた。何故なら虚無の境地ではなく、絶望の象徴と最凶最悪も此処に居るからだ。

 それを聞いたメグミは噎せて胸を叩きながら水を飲み干し、ホムラ達は改めて話し合う。


「“厄災の王”……厄災か。基本的に災いの類いだけど、前例が前例だからどんな風に戦うかは想像が難しいな」


「虚無の境地もゼッちゃんもサチさんも、異名とはあまり関係ありませんでしたもんね。まあ、虚無の境地は“虚無”が魔法を使わない事なら合っていますけど」


「ゼッちゃんも同じ技を使ってきたり、サチが無効化した攻撃を返されたり、相手にすると異名通りになるんだけどな」


「あくまで異名は第三者からの観点からなるモノなのかもしれませんね」


 考えるのはどの様な力を使うか。

 純粋に物理的に仕掛けてくる虚無の境地はともかく、能力のコピーやキャンセルでは異名とも合わない。しかし、ホムラとセイカが言うように敵に回したら最後、異名通りの結果になって相手からしたら堪った物ではないだろう。


「それなら、厄災の王も第三者からなる考え方か。存在するだけで厄災を振り撒いたりするとかか」


「考えられますね。人類の敵が戦った場所は災害みたいな結果になる。“虚無の境地”は一つの国が壊滅状態になって一つの系統が全滅。“絶望の象徴”は一つの街とそこから数キロが壊滅。“最凶最悪”はサチの性格的に特に無いですけど、一国が戦争で無敗を遂げ、大国に成り上がった。影響力は十分です」


 メグミが言い、その全ての現場に居合わせたホムラが頷いて返す。

 相対した時と戦闘後の結果。それが異名になったとしたら厄災の王の能力を当てるのは難しいという結論に至る。


「しかし、今までの話を総括するとメグミさん達が厄災の王に直接会った訳じゃないんですね。そもそも“人類の敵”で、“虚無の境地”ではないという情報しか得られていなかった訳ですから」


「そうだな。そもそもダークエルフに力を貸しているのが“虚無の境地”でないと言うのも、“虚無の境地”なら直接攻めて来るから違うだろうと考えただけだ」


「確かに。それなら確定的ですね。虚無の境地なら直接襲撃する。自分が現場に赴くタイプの上司ですし」


 虚無の境地でないのは推測。しかしそれはほぼ確定だろう。

 メグミも厄災の王には会っておらず、ダークエルフの存在だけ分かっていた。しかしそれならばと、また新たな疑問が浮かんだ。


「……という事は、“四宝者”が三人集まり、エルフとの協力があってもダークエルフにのみしてやられたという事になりますね。流石にそれは信じられない」


「それについては面目無い。実際そうなんだからな。私もまさかダークエルフがあれ程までの強さだったとは思わなかった」


 メグミ達“四宝者”がダークエルフにのみやられる。それをホムラは信じられなかった。

 “人類の敵”には敵わないが、“四宝者”は全人類の最高峰。いくら魔法や知力が高いエルフ族のダークエルフが相手でもそうなるのは難しい気がするが、メグミのバツが悪そうな表情を見る限り本当にそうなのだろう。

 それについてエメラが小さく挙手し、ホムラ達に話す。


「あの……それは普通に変だったよ……ダークエルフは私達よりも好戦的だけど……実力で言えばあまり変わらない筈だから……」


 それは、本来のダークエルフはそんなに強くないとの事。実力自体はそれなりなのだろうが、エルフと拮抗するくらいのようだ。


「成る程な。そうなると厄災の王が関わってから強くなったって感じか。良い情報だ。ありがとう、エメラ」


「う、うん……」


 これは確かな情報。ダークエルフが強くなったという要因には確実に厄災の王が一枚噛んでいる。

 少しは話もまとまった。昼食も終わり、これである程度の情報も得られた事だろう。後はその場に向かい、事を考える方が良さそうである。

 食器などの洗浄も終わり、メグミ達の騒動も会ったので昼からはクエストも受けず、のんびりとリビングで休んでいる時、メグミがホムラとセイカの近くに寄って話した。


「それで、あれから一ヶ月は経ったんだ。そろそろ初夜は終わらせたか?」


「……!」

「……。貴女にはそれについて教えていない筈ですよ……」


 話したのは低俗な事。セイカは動揺し、ホムラはメグミに初夜やそれ関連の事は教えていない筈と訝しむ。

 メグミは笑って返した。


「ハッハ、態度を見れば分かる。しかしその様子、まだのようだな。ホムラ。君は意外と奥手なのか?」


「……まあ、それは別に」

「ホムラ様は……私と……」


「そうみたいだな。しかし、君達はまだまだ若いからな。チャンスはいくらでもある。私も早く子供が欲しいよ」


 しみじみと話す。貴族なら既に子供が居る頃合い。メグミはその年齢的に色々と思うところもあるようだ。

 ホムラとセイカは改めて言われると照れ、互いに目を逸らした。


「そうだ。メグミさん。人生の先輩として一つ聞きたい事があるんですけど良いですか?」


「ん? なんだ?」


 いつもはそんな事が無いのに恥ずかしいという感覚。それについてホムラはメグミに訊ねた。


「時折、不思議な感覚があるんですよ。俺。何となくモヤっとした感覚があったりして。個人的には何かの呪いかと思っているんですけどね」


「あ、それ私もあります。ホムラ様が他の方と話しているだけでモヤっとした不思議な感覚に……」


「モヤっとした……? フム……成る程な」


「何か分かるんですか?」


 それはホムラ達がたまに感じる不思議な気持ち。

 メグミの言葉を聞く限り思い当たる節があるようで、トキとフウも乗り出した。


「あ、それ私もある!」

「私もたまにありますね……」


「フウ、トキ。君達もか」


 そんな四人を見、メグミは不敵な笑みを浮かべる。それと同時に言葉を続けた。


「四人が“それ”になってしまうとはな。それは少し厄介なモノだ」


「やはり呪いの一種ですか?」


「そうだな。凄く質の悪い呪いだ。こればかりは名のある医療魔法使いでも治せん」


「それ程の……」


「しかし、治す方法はある。これから言うのはいつもみたいな冗談じゃないぞ? いや、いつも本気で言ってはいるんだがな」


「……? その方法は……?」


 話を聞く限りかなり悪質な呪いとの事。ホムラ、セイカ、フウ、トキの四人は静聴し、メグミは笑って言葉を続ける。


「君達四人で子を残せば良い。ただそれだけだ。今の生活は既に同棲している状況。だから確かな繋がりが生まれれば解決する呪いだ。別に多重婚がこの世界では禁止されていないからな。これはマジも大マジ、大本命だ」


「「……っ」」

「「……っ」」


 その言葉に四人は息を飲む。

 いつもみたいな軽い冗談でないのは前置きからしても確かにそうらしく、解決策はそれしか無いのをメグミの真剣な表情が物語っていた。


「……。期限はいつまで? それが呪いならそれによって死ぬ可能性もあるという事ですからね」


「期限なんてない。治る者は自然と治る事もあるが、引きる者は一生引き摺る。それによって命を自ら絶ってしまう者も屡々(しばしば)。君達はおそらく全員が自害せずに一生引き摺るタイプ。何なら心の底で自分は相応しくないとでも思っている筈。だったら結婚するしか無いだろう」


「……冗談ではないみたいだな。セイカ、フウ、トキ」

「その様ですね……」

「まさかそんな呪いに掛かっていたなんて……」

「結婚かぁ……私はしたいけど……何か複雑……」


「フフ、まあ事を急ぐ必要も無い。それを乗り越えればまた一つ成長する事も出来るんだからな。人生の強化イベントとでも言っておこうか。どちらに転ぶかは自分達次第だ。……私にはまだ降り掛からない事だけどな……」


 何も間違っていない、呪いの解く方法。

 ホムラ達は複雑な表情をしており、一先ず色々と考えるのだった。



*****



「ハッハッハ! 全員で風呂に入るのか! それは良いな。しかし、執事は来ないようだ」


「あの方は紳士ですからね。私達の裸体を見る資格が無いと考えているようです」


「ほう? それはキッチリしている。寧ろ堅いな」


 その日の夜、今回はメグミやエメラも含め、全員で大浴場に入っていた。

 メグミにはメランが話しており、執事の堅さに苦言を申す。

 そして、それはそれとしてトキはメグミの体をジッと見ていた。


「分かっていた事だけど……セイカやメランよりも大きい……しかも彼女は貴族……それなら貴族でも希望はあるって事? ううん……彼女には四宝者の資格がある……もしや四宝者だからこそあの大きさに……? まさか、最初の方に見たモノが一番大きかったなんて……」


「トキは何をしているんだ? 私の胸を見ているが」

「私もよく見られますね。しかも恨みを込められて」

「フム……同性愛者では無さそうだが、やはり興味はあるのか」


 視線を感じ、特に変なことも考えず二人は話す。どうやらトキの中での暫定一位はメグミのようだ。

 そんなトキはチラリとエメラの方を見た。


「エメラ。貴女は私の味方……多分、おそらく、きっと、私より小さい可能性がほんの少しある……!」


「え……? 何の事……」

「気にしなくて良いよ。エメラちゃん」

「エメラ! フウ! 私とサチちゃんと遊ぼ!」

「うん、ゼッちゃん」

「うん……」


 エメラに微かな希望を抱くトキ。それについてフウは一蹴し、エメラの手を引いてトキから離れた。そのままゼッちゃん達と遊ぶ。

 賑やかな浴場。そこでホムラとセイカは隣り合わせで浸かっており、ボーッと天井を眺める。


「それが呪いを解く唯一の方法か……」

「ホムラ様……私はいつでも覚悟はしています……それがお互いの為になるのは明白です」

「俺もそろそろ覚悟を決める時か。けど、明日以降はまた戦争がある。今回はあやふやにせず、厄災の王との戦争が終わったら真剣に悩むとするよ」

「その時点であやふやな気がしますけどね……」


 呪いを解くにはそれしかない。分かっているのだが、長く生きるつもりのない自分が多重婚をするのは烏滸おこがましいと考えている。

 故に、やはり曖昧になっていた。

 しかし、セイカはかなり出来た女性である。


「ホムラ様。私はいつでも、何ならこの場でも受け入れます。貴方様の覚悟がお決まりなら、ホムラ様の子を産みたいです。ですが、貴方の気持ちが第一。私はもう、貴方様がそう仰る日まで何も言いません」


「セイカ……」


 牴牾もどかしいが、全てを受け入れる。つまり、ホムラから名乗り出るまで催促はしない事にしたようだ。

 ホムラは横目でその真剣な表情を見やり、浴槽の湯を顔に当てた。


「分かった。次の戦争……厄災の王との戦いが終わったら覚悟を決める」


「はい。もちろん、私だけではなく、トキさんとフウさんの呪いも解いて下さいませ。出来れば私を最初にして……」


「……ああ。そうだな。んじゃ、それまで体力付けなくちゃならないか……」


 別方面での覚悟を決めた。

 受け入れるか受け入れないか。ただそれだけ。そもそも夫婦になる予定のホムラが受け入れないのがおかしかっただけである。

 そのやり取りを経て、風呂から上がり、就寝。その日は終わる。

 そして、夜が明けた。


「さて、行くか。スイ達の手助け。厄災の王との戦いに」


「はい、ホムラ様!」

「今からドキドキしてきた……」

「最近はのんびりしてたもんねぇ~」

「レッツゴー!」


 ──翌日、朝食を摂ったホムラ達は屋敷の外にて集まっており、ホムラが言う。それにセイカ、フウ、トキ、ゼッちゃんが順に返し、十人はエルフの国へと向かうのだった。


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