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76ページ目 各々のクエスト

「残りのクエストはこんなもんか。良い事ではあるけど、戦闘が必要なクエストはめっきり来なくなったな」


「基本的に簡単なお手伝いですね。二手どころか三手……何なら一人一人で受けても問題無さそうです」


「じゃそうするか。ゼッちゃんは執事が居るし、サチはまだ色々謎だから誰かとペアになるとして、他は自分達で終わらせるか」


 サチの性教育について一段落付けたホムラ達は全員で集まって受けられるクエスト一覧を見ていた。

 戦闘関係のクエストは少なく、殆どが簡単な物。その分得られる資金も少ないが、基本的にホムラ達は全員で使っているので余裕はあった。

 それに加え、ホムラを初めとして執事やメラン、サチは自分の欲しい物なども購入しないので貯金はそれなりだ。


「何か楽しいクエストとか無いの~?」

「ゼッちゃん。楽しい楽しくない問わず、クエストは人助け。必要な事ですよ」

「はーい」


 戦いが少ないのもあり、退屈そうなゼッちゃん。しかし執事に言われ、空返事をする。

 前までならこの場で執事のもう片方の腕が吹き飛んでいた事だろう。ゼッちゃんも本当に丸くなった。


「じゃあ私はこれにしよっかなぁ。行ってきたばかりだし、軽めのをねぇ」

「では私はこれを……」

「私はこれかな。私も連続だし」

「私はこれに致します」

「じゃあボクはこれー!」

「お供致します」


「私は……どうすれば……」


 並んだクエストをトキ、セイカ、フウ、メラン、ゼッちゃんの順で選び、執事は当然ゼッちゃんに同行する。

 サチは何をすれば良いか分からず悩んでおり、ホムラがその手を取る。


「じゃ、サチは俺と行くか。初クエストって訳じゃないけど、まだ慣れていないみたいだからな」


「うん……ホムラと一緒なら嬉しい……」


 悩むならばとホムラが同行する。

 この一ヶ月でホムラ以外とも行動しているサチだが、何だかんだやはりホムラが一番落ち着く相手のようだ。時点でゼッちゃんと仲が良い。ゼッちゃんの明るい性格もあるが、人類の敵を謳われる者同士気が合うのだろう。

 セイカやトキもサチとホムラ、二人の行動ならば指摘したりしない。サチは二人と違って間違いは起こらないと分かっているからだ。


「今日の分の日銭と街への復興資金。一ヶ月前に俺が攻めた国への復興資金を集めるか」


「アハハ……勝利した筈ですのに出費が逆に増えてしまいましたね……」


「国の立て直しってのはそんなもんだろうさ」


 クエストを多く受ける理由は資金集め。ホムラ達はあまり使わないにせよ、街や国に使うので大金が必要なのだ。

 何はともあれ、ホムラ達は受けるクエストを決め、各々(おのおの)で行動を開始した。



*****



 ──セイカのクエスト。


「それでは、家畜の世話。それと野菜の水やりなどを頼みます」

「はい。お任せください」


 セイカが受けたのは牧場と畑の仕事。

 やる事は主に家畜や野菜の世話であり、結構時間も掛かるもの。

 しかし報酬には資金のみならずミルクや採れた野菜などがあるのでかなりお得なクエストである。


『『『モォー!』』』

『『『メェー!』』』

『『『ヒヒーン!』』』


「はいはーい!」


 依頼主にバレぬよう炎魔法を使い、家畜の誘導。小屋に入れて餌をやり、食しているうちに糞などの処理。そして野菜に水を上げて牧草を運んだりなどかなり世話しなく、王族なら絶対にやらなさそうな事である。

 そしてこれがわざわざ“クエスト”として依頼されていたのにも理由はある。


『ガギャア!』

「動物達を狙った魔物……! 何処か行ってください!」

『ギャウ!?』


 殺生はなるべく避ける。魔物の嫌う炎で牽制して追い払い、家畜を守った。

 基本的に縄張りから出ない魔物だが、食料を求めて時折人里にも現れる。だからこそのクエスト扱いという訳だ。


「これ……一人じゃ大変ですね……」


 トキのみならず他の冒険者達も居る。しかも殆どが一人。なので労力は分担出来るが、王族という身分を隠す為にも魔法をあまり使わないようにしているので大変そうである。


「君一人? 良かったら」

「すみません。次の仕事がありますので」

「あ、そう……」


 そして下心丸出しの者も近付いて来る。ある意味魔物よりも警戒しなくてはならない存在であり、セイカは肩を落とす。


「しかし、少しでも鍛えてホムラ様の為にならなくては……!」


 セイカがこのクエストを受けた理由は、報酬だけではない。基本的に力仕事なので肉体を鍛える事も出来る。ホムラの為にも鍛え、役に立とうという気概で受けたのだ。

 何にせよ、順調ではあった。



 ──トキのクエスト。


「お、ホムラさんとこのローブの君が受けてくれるのか」

「そうだねぇ。近場だから丁度いいかなって」

「成る程な。んじゃ、客の相手は頼んだ。まっ、まだ復興中だから少ないけどな!」

「お任せあれ!」


 トキが受けたクエストはいつもお世話になっている酒場の手伝い。顔馴染みの店主がおり、近場なので受けたのだ。

 基本的に接客。顔は隠しているが、顔を隠しているからこそ既に有名であり街のお客さんも普通に受け入れてくれるだろう。


「いらっしゃいませー!」

「お、今日は嬢ちゃんが店員さんか! 良いね! 見飽きた店主じゃなくて可愛い子なのは!」

「オイオイ、なんだその言い草はよ! てか、嬢ちゃんはローブで顔隠してるだろーが」

「ローブ越しでも美人さんってのは分かるぜ!」

「アハハ……こちらになりまーす」


 他愛ない会話をしながら接客をする。客のテンションは高いが、トキも高い方。一先ず居心地の良い職場ではあるようだ。



 ──フウのクエスト。


「この範囲の掃除ですけど、本当に一人で大丈夫ですか?」


「大丈夫です。私、こう見えて色々出来るので!」


「そうですか? それなら良いですけど……私達もおりますので遠慮無く頼って下さい」


「はい、ありがとうございます」


 フウが受けたクエストは屋敷の使用人。何人かのメイドさんもおり、何手かに別れて掃除などをするのだがフウは一人で広範囲を請け負った。

 それについて心配してくれたが構わず返し、会釈して別れる。

 人の気配が無くなったのを確認し、フウは隠し持っていた杖を構えた。


「風の精霊よ……その力を我に与え、微力な回転を生め。埃を飛ばせ“ミニトルネード”!」


 小さな竜巻を起こし、自立させて広い渡り廊下を掃除する。

 表面上の汚れはこれで取れる事だろう。

 それ以外にも使用人の仕事は様々。この一ヶ月でメイドのノウハウをメランから色々習ったのもあり、フウにとっては簡単な仕事だった。



 ──ゼッちゃんと執事のクエスト。


「君達が? 幼い子供に隻腕の男性……結構危険だけど大丈夫かい?」


「大丈夫! ボク強いから!」

「ええ、私も大丈夫です」


「そうかい? じゃあ、頼んだよ。最近は戦争が止まって魔物達がよく人里に降りてくるようになったからね……街の防衛……任せて良いね?」


「はい。ごゆるりとお寛ぎ下さい」


 ゼッちゃんと執事の受けたクエストは、戦争が止まった事で逆に増えた魔物の処理。

 魔物は元々人などを好んで食す。戦争が続いていた頃は戦場の死体などを食していたのだが、戦争が止まった今、人肉を中々食えなくなっている。それもあり、気性の荒い魔物が人里に下ってまで人を襲っているようだ。

 そんな魔物達を街に近付けさせず、打ち倒すクエスト。生かす必要も無いのでゼッちゃんにとっては好都合なクエストである。


『『『ガギャアアアァァァァ!!!』』』

「あ、出てきた! 結構大きいねー!」

「ゼッちゃんが一人で?」

「勿論! 逆にボクだけに任せて!」


 現れたのは熊のような形をした六メートルはある巨大な魔物。しかも複数匹。つまり一家総出で人を食い殺す為にやって来たのだろう。

 そんな魔物を前にしてもゼッちゃんは余裕の表情を崩さず、執事も全く焦ってなかった。


『『『アアアアアァァァァァァ!!』』』

「うーん……けど、どれくらい倒せば良いんだろう? 殺しても殺しても出てくるかな?」

「おそらく数十体を倒し、その死体を魔除けに使えば近付かなくなると思いますよ。まあ、加工は街の人達の負担ですけど」

「そっか! じゃあボクは沢山殺せば良いだけなんだね!」

「ええ。もちろん、“魔物”に限った話です」

「うん!」

『『『─────』』』


 騒がしかった熊型の魔物は無数の鋭利な岩の槍によって貫かれ、絶命していた。

 大したものではない。ただ単に襲って来た魔物は一匹居れば街を壊滅させる力を有した存在であり、相対したのがいくつもの国を滅ぼせる存在だけだったのである。

 ゼッちゃんのクエスト。こちらも問題無く進んでいた。



 ──メランのクエスト。


「本当に行けますか? 道中には狂暴な魔物も……」


「ええ、問題ありません。薬に必要な薬草を持ってくるとして、いくつ必要ですか?」


「あればある程困りませんけど……最低限3桁は……ダメそうなら2桁でも」


「では、4桁持ってきます」

「え? それは流石に無茶では……」

「問題ありません。では」

「あ……」


 メランのクエストは薬草の収集。戦争が無くとも怪我や病気はある。なので危険な山に薬草を摘みに行く必要もあるのだ。

 しかし依頼主ですら気が引ける程の危険地帯。名のある冒険者が来てくれるかと思ったようだが、来たのはメイド服を着た女性一人。色々と不安もあるらしい。

 このメイドが大抵の冒険者を容易く滅ぼせる存在という事には、当然のように気付けない。

 こちらもほぼ確実に問題は無いだろう。


 セイカ、トキ、フウ、ゼッちゃんと執事。そしてメラン。彼女達は余裕を持ってクエストをこなしていた。



*****



 ──ホムラとサチのクエスト。


「此処が依頼の場所か。殺風景な所だな」

「最近まで戦争してたみたい。だからこうなのかな」


 クエストを受ける為、ホムラとサチは目的地である高原に来ていた。

 依頼主とは既に契約を終えており、何故か先払いで大金を貰った。

 それ程までに危険な場所という事は明白で、此方は危険過ぎる故に残っていたクエストである。


「“ドラゴン退治”。か。敵意があるかは分からないけど、“危険なドラゴンを退治して欲しい”。シンプルだな」


「何で退治するの?」


「さあな。情報は殆ど無い。何百年も前に人間が去った地にドラゴンが巣を作ったから案じたんだろうな。既にそのドラゴンによる死者も数百人は居るみたいだ。しかも、“悪竜”と呼ばれる種で手を出すどころか自ら赴いて人々を襲うとか」


「ふうん……」


 ホムラが受けたクエストは“悪竜”を謳われるドラゴンの討伐。

 人里にも被害が及んでおり、説明を聞く限りかなり危険らしい。先払いで済ませ、依頼主が此処に来ないのも頷ける危険度だ。

 人間のエゴによって討伐される魔物も多い中、悪竜は生存争い。なるべくして討伐される存在という事。これもまたエゴだとしても、他の魔物とは根本的な部分が違う。


「目的地は山の向こうの更に奥。昔の人は何でこんな険しい所に造ったのか。いや、険しいからこそか」


「まだ行くの?」

「ああ。この辺りでよく見掛けるらしいけど、此処に居ないって事は山奥の城に居るって事だしな」

「分かった」


 あくまで依頼の場所は此処だが、今はドラゴンらしき影は無い。なので巣となっている城で休んでいると考えるのが妥当な線。

 セイカ達が順調に依頼をこなす中、ホムラとサチもその場所へ向かった。

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