67ページ目 野盗の処理
「……さて、それでどうする? コイツら。依頼は討伐。殺すなら殺すけど」
「もう何人かは落下死しちゃってるけどねぇ~」
セイカとトキに衣服を着せた後、生きていた者は闇魔法にて縛り上げてどう処置するか話していた。
国に連れて行けば死刑。命があっても奴隷か終身刑。ライアは美人なので奴隷となるだろう。
一先ず悪人。改心する様子も無く、ホムラ的には殺す以外の選択肢は無い状態だ。
「フッ、殺すなら殺せ。醜い者達の慰み者になるくらいならアタシは舌を噛むよ。美しいまま死ねるならそれが本望だ」
「それが本望なら叶えたくないな。悪人の願いなんか聞く理由は無い。四肢を切り落として顔を削いで死ぬのを待つ方が得策だ」
「残酷だな。君は。闇魔法の使い手……シラヌイ・ホムラだったか。全世界に宣戦布告した君だが、幼い子供の前でそんな事言っても良いのか?」
「ああ、まあな。ゼッちゃんはそう言った事柄には慣れている」
「フフ、君のような残忍な者の口から出る言葉が“ゼッちゃん”か。ギャップがあるな」
「アンタも結構肝が据わっているんだな。殺される前なのにその態度。まあ、そうでもなくちゃ生きた人間をそのまま輪郭や顔立ち、体つきを残した土人形にしようなんて発想は出てこないか」
「まあな。今の君が言ったやり方をされるなら痛みなどで叫ぶし泣くとは思うが、殺されても文句は言えない事を犯している。覚悟は決めているさ」
「強がっている割には震えているな」
「怖くない訳ではないからな……さあ、やるなら早くやってくれ……やる前に性的行為に移るか? 君の性格はともかく、顔は悪くない。顔半分は火傷のような痕があるがな。そして見ての通りアタシは上半身に何も着ていない。絶好の獲物だろう?」
「するかよ」
死ぬのは怖い。それはライアも同じ。だが、死ぬ覚悟や拷問を受ける覚悟。そして凌辱される覚悟も決めている。この世界ではそれくらいの覚悟が無ければ生きて行けないので当然だ。
震えは止まらず、声も震えているが潔く目を閉じ、ナニをされても受け入れる覚悟を決めていた。
ホムラは深くため息を吐く。
「はあ。なんか俺、勘違いされているな。セイカが居るし、他の女性には手を出す訳に行かないのに。てか、本当にすぐ体を売ろうとする人が多いな。まあ、貴族や王族。国の兵士から野盗とか、女性が捕まったら自ずとそうなるから分からなくはないけど」
「セイカだけじゃなく、私にも手を出して欲しいんだけどなぁ」
「私すらまだ手を出されてませんよ……」
「ホムラって純情だもんねー」
シモの会話になるとそれをさせて貰えないセイカとトキが文句を言うように名乗り出る。ホムラは頭を掻き、改めてライア達を見た。
「まずは、取り敢えず気になった事を聞く。処置はその後で考える」
「気になった事?」
「ああ。この集落。こんなに発展している割には近隣の国から放置されているのが気になってな。セイカとトキが集落を調べていたのもそれが理由だ。アンタら、国と何かしらの繋がりがあるのか?」
「……」
ホムラが気になっていたのは、国と野盗の繋がり。それによって報酬の有無も変わる可能性がある。だからこそ改めて訊ねた。
ライアは少し黙り込み、ホムラの方を見て口を開く。
「ああ、ある」
「……」
たった一言。やはりというべきか、今まで黙認されていた理由は国と何処かで繋がっていたから。
別におかしな事ではない。何故なら野盗は金を集めても基本的に奪うので使う機会が無いからだ。
だとしたらその金は何処に行くか。国への賄賂となる。この世界には国の上層部に賄賂を渡し、犯罪行為を黙認されている者も多く居る。ライア達の活動はそれの延長線上なのだろう。
「と言っても詳しくは言えないがな。世間一般から見たら薄汚いアタシらも、義理はある。いや、アタシらだからこそ自分で義理を考えて己の道を行くんだ。誰と繋がっているか、その他の情報は与えない。フッ、精々国に不信感を抱きつつ何も出来ずに散るが良い……!」
「最後まで威勢が良いな。どちらにせよ俺は元々国なんか信用していない。国家転覆させた方がマシって思ってるからな。こんな腐り切った糞みたいな世界。滅びても構わないと思っている。残念ながらアンタの望みは叶わない。正体隠して国にフレイを貰って普通に過ごすさ。世界を敵に回しながらな」
「……っ。フフ……どうやら君の方が何枚も上手のようだ。日常生活では正体を隠して過ごし、その時が来たら迎え撃つ……なんともまあ、臨機応変な者よ」
はっきりと国を信用していないと告げるホムラ。ライアは呆気に取られつつ感心し、メランは恍惚の表情でホムラを見ていた。
「流石は次期魔王様。私はホムラ様に着いて行きます」
「部下に“魔王”を謳われるか。興味深いな」
「それは勝手に言ってるだけだ」
ライアがニッと笑い、ホムラは肩を落とす。
取り敢えずこれ以上は話を聞き出せそうにない。そろそろ行動に移るべきだろう。
「そんじゃま、終わらせるか」
「フッ……一思いに頼む……」
闇を展開し、ライアは目を閉じる。周りの野盗達も叫び声や悲鳴は上げず、グッと身体に力を込めた。
「総員、撃てェ!」
「……!」
──次の瞬間、ホムラ達目掛け、囲むように銃弾が撃ち出された。
ホムラとセイカ達は近くに居たのもあり、闇魔法の自動防御によって食らわない。しかしライア達野盗は全員が撃ち抜かれてしまった。
「……フフ……こう……来たか……、まさか……“国”が直々に……始末……する……とは……せめて……美しい君の胸で……死……」
「おい、アンタ。……。死んだか」
全方位からの一斉射撃。座っているから都合良く当たらないなども無く、ライア達はほぼ即死で絶命した。
遺言とはまた違うが、死ぬ前に言った事。国からの始末。おそらく既に何人かの見張りがおり、ライア達が敗れた事への報告と同時に国からの兵士が来ていたのだろう。
用済みとあらば始末する。それはよくある事。ホムラはそれとはまた別の方面に怒りを抱く。
「……狙いは完全に俺達も含まれていたな。依頼を出して、解決したらそのクエストを受けた人諸とも殺すつもりだったという訳か……お偉いさん?」
「チッ、当たらなかったか。まあいい……この人数で殺せば良いだけだ……!」
(闇魔法の自動防御には気付かれていない……さっさと明かすか)
夜だからか闇魔法による防御はバレていなかった。しかし隠す必要性は無く、力を誇示して存在を広めた方が良い。
あれ以降特に行動も起こしていないのでまたいつ戦争が再開するか分からないからだ。
故にホムラは更なる闇を展開させた。
「個人的にアンタらには恨みもない。国の命令で動いているから悪人でもない。十秒時間をやるから逃げたい者は逃げろ。これは警告だ」
「「「…………っ」」」
兵士達にざわめきとどよめきが起こる。
ホムラの展開した闇魔法が更に広がりを見せ、さながら巨大生物のようになったから。
最後の警告をホムラはした。
「俺の名前はシラヌイ・ホムラ。全世界の敵だ。因みにこれは闇魔法……数えるぞ。10…9…8…7…」
「シ、シラヌイ・ホムラだと!?」
「あれが魔法使い共の中で話題になっている闇魔法……」
「ヒ、ヒィィ……!」
「待て! 逃げる事は許さんぞ! 逃げた者は女王陛下の元、処刑とする!」
「「「……っ」」」
威圧感を出し、逃走を促す。しかし司令官が指示を出して逃げようとした兵士達は立ち止まり、怯えながらホムラに構える。
「3…2…。……心配するな。アンタらが逃げても大丈夫だ。此処に残った、勇気と無謀を履き違えた命知らずはみんな俺が殺すからな。逃げても誰もアンタらを咎めない。逃げるのをオススメする。逃げた方が良い。てか逃げろ。……えーと、残り秒数は……そうだな。話の腰が折れたし、また10秒待ってやる。10…9…8…」
ホムラの殺人対象ではない兵士達。なるべく逃がす為、より魔力を込めて威圧した。
これでも逃げなければやむを得ず皆殺しにする他無い。なるべく逃げて欲しい状況である。
「お、俺は逃げるぞ……!」
「ま、待て! 俺も!」
「ヒィィ!」
「すみませーん! 俺もう兵士辞めます!」
「俺にも家族が居るんだ……すみません!」
「待て貴様らァ! この府抜けたゴミ共がッ! 家族などどうでも良かろう! 任務放棄をした者は一家諸とも……」
「黙れよ」
「……ッ!?」
引き戻そうとする司令官を縛り上げ、逃走の阻止を阻止する。
しかしながら、何人かは逃げたが司令官のような者は残っている。半分近く減ったとしても特に悪気の無い者達を殺めるのは気が引けた。だが、そうも言っていられないのが世界への宣戦布告。胸を痛めながらも殺めるしかない。それが世界を敵に回す覚悟。
「じゃあ、残ったアンタら……今この瞬間に皆殺しだから。これが最後の警こ」
「世界の敵を……撃ち殺せェ!」
「「「オオオォォォォッ!」」」
瞬間、一斉に砲撃。
銃弾に弾丸。その他の遠距離攻撃が撃ち出され、全てがホムラの元に──
「芸がないな」
──到達するよりも前に破壊された。
闇魔法は自動防御。そうでなくとも調整は可能。故に兵器類など何の意味もない。
「ならば剣を取れ! 槍を取れ! 絶対的な悪を殺す為、自分達を省みるな!」
「「「ウオオオォォォォッ!!」」」
「……っ。凄い迫力です……」
「ただ単に自棄なだけだな。その覚悟は素直に尊敬出来るけど……無駄死にだ」
「「「────」」」
そして、武器を取った兵士達の上半身と下半身は分断された。それと同時に、脳が状況を理解して痛みを感じるよりも前に細切れにする。
悪人ではない。なので殺すにしても楽に殺させる。痛みも与えぬ即死が理想。それを遂行する為、鞭のような闇の刃が集落跡地となったこの街に広がる。瞬間、集落跡地は赤い水溜まりとなった。
セイカ達には返り血が飛ばぬように闇魔法による地面で浮かせている。
「悪いな。もう聞こえていないだろうけど、警告はした。アンタらは罪人じゃない。せめてあの世では幸福になってくれ」
溜まった赤い鮮血と肉片の上に膝を着き、その血液を両手で掬って呟くように話す。
目を閉じ、暫しの黙祷。勧善懲悪を謳うホムラ。国の命令でやらざるを得ない兵士達は対象外だったが、逃げてくれた兵士達の安否を完全な物にする為には殺すしかなかった。それも言い訳にしかならない。
そんなホムラを見、ゼッちゃんは疑問を浮かべるように話す。
「ねえねえ、なんでホムラは謝っているの? 今殺したのは敵なのに」
「欲望のままに生きる野盗とは違うからですよ。ゼッちゃん。生きる為に国からの命令を聞かなければならない……あの方達にも家族や友人は居るでしょう。だからこそ敬意を払い、追悼しているのです。あの方達の親族や友人からは確実に恨みを買う。ホムラ様はそれを背負うつもりです」
「ふぅん。何か難しいね」
鉄の匂いが広がる赤い水溜まり。セイカはゼッちゃんに話す。
この集落跡地は後に様々が噂が流れるようになり、その範囲だけに赤い木々が生えたとか。




