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64ページ目 野盗の集落

 ──“野盗の集落・近隣”。


 野盗の集落、その近辺へとやって来たホムラ達は近くの木の上から内部の様子を眺めていた。

 夕刻というのもあって人通りは少ない。だが、道行く者達は全員が全員凶器などを所有しており、見るからに治安の悪い雰囲気だった。


「……当然のように、平民が捕まったりしているな」

「酷いです……」

「何で近くの街は放置しているんだろう……」


 そして当然、連れ去られたであろう人々も居る。

 やはりというべきか女性が多く、ロクな衣服を着せられていない。既に凌辱の後。事後である者もチラホラ。ホムラ達には見慣れた光景だが、何度見ても胸糞悪くなるだけで腹立たしい光景である。


「どんな感じなの~?」

「いえ、特に変わった様子はありませんよ。ゼッちゃん」


 そして、まだ幼いゼッちゃんにはそんな光景を見せられる訳もなく、執事が上手く隠しながら誤魔化していた。

 手慣れている様子があり、どうやらゼッちゃんが世界を襲撃していた時からその様な光景に直面する機会があったのでその度に執事は隠していたのだろう。

 今はもうゼッちゃんによって腕が切断され、片腕しか無いというのに執事という役割を全うするその様は感銘を受ける。


「取り敢えず、裏で義賊とかしていて、国からも黙認されているって訳じゃ無さそうだな」


「そうだね。真っ黒みたい」


 発展しているにも関わらずお咎め無しの理由。その一つに野盗というのは表側だけで、実は裏では良い事をしていると言う考えもあったがそうではない様子。

 他の野盗と同じように悪行三昧のようだ。


「さて、じゃあさっさと悪党を全滅させるか」


 そう言い、ホムラが乗り出そうとした時、セイカがその袖を引いた。


「お待ち下さい。ホムラ様。まだ全員が悪と決まった訳ではありません……今一度、確認の時間を下さい……!」


 それは、何かしらの確認を行うという事。

 それについてホムラは訊ねる。


「……。何か考えがあるのか?」

「はい……!」

「……そうか。なら試すと良い」


 許可を出し、セイカはトキの方を見て笑う。


「では、トキさん。行きましょう」

「え? 私も?」

「はい♪」


 此処は野盗の集落だが、さらわれた者以外の全員が“悪”というのは確かに早計。だからこそ心優しきセイカがそれを確認したいと告げたのだ。

 ホムラは一旦襲撃を取り止め、今のうちだけはセイカの考えを見てみる事にした。


「ホムラって結構セイカ様の言う事に賛成するよね。ちょっと意外。話に聞く限りそんな関係性じゃないのに」


「別に、一理あるなって考えただけだ。深い理由は無いさ」


「ふふ、そうなんだ♪」

「なんだよ……」


 セイカはホムラの言う事なら本当に何でも聞くと契約している。

 だが意外とセイカはホムラに意見し、ホムラが大体了承するという関係性が築かれていた。それについてフウが笑い、ホムラはバツが悪そうに頭を掻いた。


「けいやくって?」

「約束……のようなモノですね」

「へえ。ホムラはセイカに何の約束してたの?」


「まあ色々だ。ゼッちゃんにはまだ早いかもな」

「なあんだ。つまんないの~」


「よし、これで良さそうですね」

「本当に大丈夫かな……。私、セイカの体をどうこうは出来ないけど……逃げる時は“クイック”を掛けて相手を“スロー”にするくらいかな」

「十分ですよ。私も戦えますし!」

「杖を取り上げられる可能性もあるでしょ……」


 その様な事を話しているうちにセイカ。そしてトキの準備が出来たらしく、ローブに身を包んで集落の方へと向かった。



*****



 ──“野盗の集落・内部”。


「ん? なんだありゃ?」

「小汚ぇローブ」


 顔を隠し、セイカとトキは集落へ入る。遠目ではまだよく分からない様子だが、次第にザワつき始めた。


「オイオイ、待てよ。片方は女じゃねえか? しかもローブ越しでも分かる程のナイスバディ!」

「いや、もう片方も女じゃねえか?」

「ん? あー、確かによく見りゃ膨らみっぽいモノが……」


「……っ!」

「ト、トキさん。落ち着いて……」


 一先ず二人の姿は確認させられた。

 トキ的には色々と思うところもあるようだがセイカが小声で宥め、二人で膝を着く演技をする。

 それを見やり、ニヤニヤと笑う男共が近付いて二人を囲んだ。


「ケヘヘ……どうしたんだ。お嬢さんら」

「そのボロボロ具合……長旅みてェだな」


「は、はい……道に迷い……途方に暮れていた所この街に辿り着き……」


「ど、どうかお恵みを……(でいいのかな?)」


「スゲェ美人だ」

「こりゃラッキー!」


 シチュエーションは道に迷っていたところ、たまたま辿り着いた街が此処と言うもの。

 セイカはともかく、トキはかなり大根演技だが欲望にまみれ知能が低下しているこの者達を欺くには十分だったようだ。


「そうかいそうかい……」

「なら、俺達の家でゆーっくり、じーっくり休んで行かないか?」


「そうですね……それではお邪魔します」

「う、うん……(本当に行くの……?)」


 下心剥き出しでセイカ達を誘う。少なくともこの者達は“善人”の類いの者ではないだろう。

 もっとも、セイカとトキの容姿を見、理性を保てる者の方が少ないかもしれないが。


「……。取り敢えず、セイカとトキは侵入出来たみたいだな。俺達はまだしばらく待機か? 何となく、セイカが連れ込まれるのは気分が悪い」


「ふふ、ホムラ。多分それはホムラが私やトキさんに言い寄られた時のセイカ様と同じ気持ちだよ」


「そうなのか? 何とも言えない感覚だ」


 セイカが自分の意思で連れて行かれる。それについて少しモヤっとした気持ちになるホムラ。

 ホムラ的には自分と一緒にならない方が幸せになれると思っているが、やはりセイカには異性としての好意も持ち合わせているのだろう。

 しかしそれについて、まだ本人は理解し切れていない。

 好意を抱いているのは分かっているが、セイカの誘いに応じない。まだ覚悟は出来ていないようだ。

 そしてそれとは別に、フウも少し複雑そうな表情をしていた。


「けど、何か私もたまにモヤってする事あるんだよね……。ホムラは大事な、大切な友達だけど……ホムラが他の女の子と居るとたまにそんな感じに思うの」


「そう言えば、トキもそんな事があるって言ってたな。呪いかと思っていたけど、俺の闇魔法が原因なら俺に影響が及ぶのはおかしい……なんなんだ?」


「なんだろうね。私も、理屈は分かるけど理屈しか分からないや……不思議な感じ」


 将来と婚約者を定められた貴族のホムラとフウには分からないこの感覚。まだ暫くは気付かないかもしれない。

 そして、野盗の家に連れて行かれたセイカとトキは複数人の男達を前にしていた。


「ローブを取ってくれよォ~。その顔、目元だけで美人って分かるからなァ~」


「はい」

「私は遠慮しとく」

「ウヒョオ~。マジで超絶美人じゃねェかよ!」

「片方は貧相な体だが、それはそれで楽しめそうだ!」


「……っ」

「トキさん、気を沈めて……」


 言われ、トキと違って世界に顔が広まっていないセイカはローブを外す。

 男性の反応はともかく、トキは別方面でイラッと来ていた。

 此処まではまだ何もされていない。しかしその発言から、少なくともこの者達はよく居る野盗のようだ。


「……やはりまともな方居ませんでしたか……」

「そりゃそうだよ。だって野盗だもん」


「ケヒヒ……片方の女もそのローブと、衣服も全部脱いじまいな!」


 野盗が襲い掛かって来た瞬間、セイカとトキはその場から消えるように立ち去った。


「あ、あり……?」

「何処行きやがった!? あの上玉!」


 時空間魔法の一部は、セイカ自身には作用しない。なので作用する“クイック”などのバフ魔法で身体能力を強化して建物の外から出たのだ。


「あ、出てきた」

「あの様子、駄目だったみたいだな」


 出て来て肩を落とすセイカを遠目から見、駄目という事を理解する。しかし二人はまた他の野盗に話し掛けては肩を落とし、話し掛けては肩を落としを繰り返した。

 流石にもう駄目だろうと、ホムラは闇魔法を展開する。


「まだその現場を目撃した訳じゃないけど、さっさと終わらせるか。国の方に報告だけをすれば後から此処を捜索する時に分かるだろう」


「あ、ちょっと待ってホムラ! あれ!」

「……ん? 女盗賊か」


 集落を消滅させようとした時、半裸の女盗賊と思しき者がセイカとトキに話し掛けていた。

 一旦闇を収め、声は聞こえないが遠目から確認する。


「おやおや……助けを求めては突然居なくなる美人が居ると聞いて来てみれば……本当に美しい娘達だね」


「あ、貴女は?」

「アタシは。ライア。この集落のカシラだ」

「……! 女性なのに……ですか?」


「ああ、そうだ。醜いアタシの部下に襲われそうになったんだろ? ならアタシが面倒見てやる。来い」


「あ、ありがとうございます……」


 部下の不始末は理解しているのか、セイカとトキを誘うライア。

 善人かどうかは分からない。しかしながら現状行くしかない様子。二人はライアの後を追う。


「何話していたのかは分からないけど……今までとはやり取りが少し違うね」


「……ああ。けど、本当に大丈夫かどうか……俺達もそろそろ移動を開始するか」


「そうだね」


「ホムラー。あの人達は殺しても良い人ー?」


「時と場合によるな。クエストの名目は野盗の討伐だし、周りの野盗は見るからに悪人だし、もう少し様子を見てから決めるか」


「分かった!」


 ゼッちゃんは、殺人については躊躇いはない。既に何度も殺しているからだ。

 それを踏まえた上でホムラに殺生の許可を取る。前までなら即座に殺していたのだが、ゼッちゃんも少しは成長したのかもしれない。

 ホムラ達もこっそりと、物陰や木々に隠れてセイカ達の後を追った。



*****



 ──“ライアの屋敷”。


「此処がアタシの拠点だ。しかし、君達、見れば見る程に美しい存在だな。ほら、遠慮せずに飲め飲め。私の取って置きの酒だ! 酒が無理なら果実を絞った新鮮な飲み物もある!」


「あ、ありがとうございます……では果実の方を……」

「私はお酒を……けど、他の建物と比べて凄い豪華……」


「当然だ! 頭をやっているからな!」


 女頭の拠点へ一足先に入ったセイカとトキは出された飲み物を口に含みながら周囲に目配せしていた。

 金品珍品名品。多種多様な物が飾っており、かなり豪華な内装。鏡の類いが多く、光や宝石類が反射してキラキラと光っていた。


「しかし、君達は一体どんな経緯でこの街に? まあ、街と呼べる程に整備はされていないがな」


「えーと……道に迷ってフラフラしていた所を……という感じですね。それで……」


「うん……それで……。…………」


「成る程。よく居る放浪者……浮浪者? 取り敢えず旅人か。君達は運が良い。その美しい顔に免じてアタシが面倒見てやろう!」


「美しい……ですか。ライアさんもかなり御綺麗な方とお見受けしますけど……」


「嬉しい事を言ってくれるな! 美しくないモノに存在価値は無いからな! アタシの部下達は醜い者ばかり。アタシにすら襲い掛かって来る馬鹿共だからな。まあ、それなりには色々と役に立つから雇っているが、正直頭という立場も辞めたいよ」


「アハハ……そうなんですか」


 頭という立場上、ライアもかなり苦労しているようだ。

 頭だろうと関係無く襲い来る部下。それに気が滅入っているのだろう。


「全く……君達みたいな存在が部下なら目の保養にも最適なんだがな。しかも、特に君は凄い発育だ。何を食べたらそんなになるのか……重くないのか?」


「そ、そんなに見ないで下さい……。けど……その……ライアさんはもっと衣服とか着ないのですか?」


「ん? ああ、これか。腰巻きとか着ているだろう……というのは野暮なツッコミだな。野盗として様々な街を襲うから、動きやすい格好をしているんだ。それでまあ、森とかも行くから枝や葉で衣服が切れてしまってな。肌を傷付けたくはないが、なんやかんやあってトップレスの半裸に落ち着いている」


「へえ……」


 野盗も野盗で衣服的な問題があるのだろうと分かり、セイカは苦笑を浮かべながら相槌を打つ。

 そこでふと、先程から話していないトキの方に視線を向けた。


「すー……すー……」

「あ、トキさん眠っちゃってま……す……あれ……私も……急に……」


「疲れているのだろう。そんなにボロボロだからな……なに、安心して眠ると良い……アタシの所に来れば悪く無い思いが出来る……君達は興味深いからな……」


「一体……なに……が……」


 異常な眠気によって意識が消え去り、セイカとトキは眠りに付く。

 ライアは舌舐めずりをして二人の体をかかえ、奥の部屋へと入って行った。

 そして呟くように、誰にも聞こえないように話す。


「ようやく効いたか……酒は回りが早いんだが……やはり果実の飲み物じゃこれくらい掛かるか」


 いとおしそうに二人の体に触れ、チラリと横目で二人の飲み物に仕組んだであろう睡眠薬を見た。

 セイカとトキ。親切かと思った野盗の女頭によって二人は連れ去られた。

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