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60ページ目 街の復興

 ──“二週間後”。


「兄ちゃん。木材を運んでくれ」

「ああ」


 絶望の象徴ことゼッちゃんが味方となり、早くも二週間が過ぎていた。

 街の復興は進んでおり、ホムラ、セイカ、フウの三人が魔法使いという事も明かしたので復興の手伝いもしている。

 建物の修復など、平民も出来るような道具はあるが魔法使いは安全性が段違い。元より建設などが得意な土魔法使いは居ないが、魔力を手足のように扱える闇魔法があるので高所など危険な場所はホムラが安全に直せていた。


「じゃ、職人さん。頼んだ」

「任せとけ! こればかりは俺の仕事だからな!」

「建物の構造とか俺には分からないからな」


 ホムラは闇魔法で大工を運び、高所の修繕を任せる。

 簡単な修繕は出来るが、細かい部分などは職人でなければやれない。創造魔法などではなく物の持ち運びが中心なので直すのは専門外である。

 もっとも、例え創造魔法が使えても内部構造や具体的な原理。その他にも専門的な知識がなければ上手く作れないが。


「まさか……世界的指名手配犯が復興の手伝いとは……」

「冤罪と言っていたが、本当にそうみたいだな……」


 冤罪とは言え、印象的には犯罪者。しかし街に貢献する様を見やり、本当に冤罪なのだろうという気概も広がっていた。

 そんなこんなで受け入れられている現在。手伝いを終わらせ、ホムラ達は屋敷へと帰った。


「あれから二週間くらい経ったけど、今のところ通報はされてないな。一応俺の居場所を教えるだけで大金が手に入るのに」


「この街の方々はあまりお金に執着していませんからね。それに、戦争は止まっても野盗被害は相変わらず。ホムラ様が居てくれるお陰で街の安全はかなり保たれていますからその方が良いのでしょう」


「かもしれないな。それに、この街に調査団が来ないのもメグミさん達が近辺を調べた事が知られているし、俺達は少なくともこの街には居ないって思われているのかもな」


「メグミ様方様々ですね」


 時刻は夕刻。二週間経た今ですらホムラ達は普通に暮らせていた。

 諸々の理由からホムラ達の居場所はおそらく世界に伝わっていない。何よりも信用出来る“四宝者”がこの街に寄った情報もあるので注目を浴びずに済むのだろう。

 しかしながら、ホムラが現れた戦場の近場は捜索されている筈。メグミ達が寄ってから数週間経過しているのも考え、この街に調査団が来る可能性もある。

 それは今、


「た、大変です! 街に調査員が!」

「……!」


 すぐでも変じゃなかった。

 いつもの配達人が屋敷の外から報告し、ホムラ達は直ぐ様その人の近くへ行く。


「俺の事がバレたのか?」


「いえ。おそらく街の復興支援かと。ホムラ様方とは別件として、“絶望の象徴”の襲来は上層部に報告していますので……」


「成る程な。街が全壊してから二週間。無能な上層部が動くには早過ぎるくらいだ」


 街に来たという調査員は、ホムラ達ではなく人類の敵、“絶望の象徴”についてのもの。

 人類の敵を謳われる存在だけあり、基本的に事件や事故が起きてから一ヶ月は動かない上層部もたった二週間で動いたらしい。

 何にせよ、ホムラ達にとってはあまり良い事ではないだろう。


「どうしますか? ホムラ様!」

「どうもこうも、この場所に来なきゃ別に問題は無いだろうさ。来たら来たで対処しなくちゃならないけどな」


 この屋敷までやって来るかは分からないが、調査団だけあってそれなりには調べる筈。それを踏まえた上でしかと行動を見極めるべきだろう。


「取り敢えず、俺達は大丈夫だ。貴方は戻っていてくれ。長居すると貴方まで疑われる可能性もあるからな」


「は、はい。では失礼します」


 頭を下げ、配達人は去る。

 同時にホムラはトキの方へ視線を向けた。


「トキなら逃げる事は簡単……街の様子を見て来てくれないか?」


「いいよ! ホムラの役に立てるって事でしょ! バッチリオーケー!」


 そう言い、トキはホムラ達の前から姿を眩ませる。別に今はまだ使わなくても良いのだが、テンションが上がって使いたくなったのだろう。

 その光景を見ていたゼッちゃんはホムラの袖を掴みながら小首を傾げてホムラに訊ねた。


「トキって何かあるの?」

「逃げるのが上手なんだ。トキと鬼ごっこしたら簡単に掴まるぞ」

「へえ。鬼ごっこが上手なんだ!」


 一応トキの魔法については隠す。ゼッちゃんがコピーしたら色々と大変な事になるからだ。

 その大変な事というのは殺人などのような物騒な事ではない。単純にゼッちゃんの年齢が年齢なので悪戯などに使われる可能性があるからだ。

 この二週間。純粋な子供になったゼッちゃんは色々とやらかしている。


【そーれ! 水魔法!】

【ゼッちゃん。や、やめてください……】


 セイカをびしょ濡れにしたり、


【動物さん達……可哀想。殺さなきゃ】

【ゼッちゃん。ダメだよ。そんな事しちゃ。今日のクエストは殲滅じゃないんだから】


 善意から殺害とは別件であるクエストの魔物を無数の斬撃魔法で殺めようとしたり、


【やっぱり大きい方が良いのかな……小さいもんね】

【あんっ! ゼッちゃん! ダメ! って、私は小さくないから!】


 トキの人並みの胸を弄ったり。とまあ、それ以外にも色々あったのでなるべく新しい魔法などはコピーさせないようにしていた。

 世話役の執事はゼッちゃん第一で考えており、特に注意もしないのでセイカ、フウ、トキが割を食うのだ。


(……まあ、話を俺は聞いただけで目の当たりにはしてないんだけどな)


 だが、ホムラはその光景を見ていない。ゼッちゃんもホムラの前では何故か大人しいのだ。

 現在もホムラの袖をギュッと掴んで離さない様子。


「取り敢えず俺達はトキの帰りを待つか」

「そうですね。ホムラ様」

「何も出来ないもんね」


 一先ずトキが行けば問題は無い。ホムラ達は屋敷にてその帰りを待つのだった。



*****



「ただいま! 調べてきたよ! ホムラ!」

「お帰り。お疲れ。トキ」


 それから数十分後、トキが帰って来た。

 メグミ達の時のような尾行をされた形跡も無し。トキの様子から少しの情報は手に入れられたらしい。

 トキは早速それについて話す。


「まず、疑問に持たれていたのは二週間にしては街の復興が早い事と、街の人達がどうやって“絶望の象徴”を追い払ったのかについてだね」


「復興はともかく、絶望の象徴を“殺した”じゃなくて“追い払った”……か。じゃあ、街の人達は少し濁して報告していたんだな?」


「そうだね。街が破壊されて、隠れていたら居なくなってたって調査員に報告してたよ。実際間違ってないから嘘でもないしね!」


「確かにな。街の人達が避難している間にゼッちゃんは止めたし、俺達以外に現場を目撃した人は誰もいない」


「わっ」


 ゼッちゃんの頭を軽く撫で、トキの言葉に返す。

 事実、ホムラが街の人達に教えただけであり、それまでは避難していたら絶望の象徴が居なくなっていたという事に嘘偽りはない。その場合は“ローブの冒険者”が追い払った事になっているだろう。

 なのでこの街にホムラが来た事は隠せている。


「それじゃ、先回しにした街の復興についてだけど……それはどう返したんだ?」


「普通に作業風景を見せてたね。ほら、バカ貴族って基本的に魔法を使っているし、平民は気に掛けないから職人の仕事とか知らないでしょ? 二週間もあればこれくらいは出来ますよってアピールしてたよ」


「成る程な。それじゃ、本当に問題無く誤魔化せたみたいだ」


「そう言う事! けど、郊外にも建物が複数個あるのは知られてるから、この屋敷も問題かも」


「そうか」


 ある程度の問題は大丈夫。だが、此処に来る可能性はあるようだ。

 トキが帰って来た時間と話し合った時間を差し引けば数十分後には来てしまうだろう。


「それじゃ、一旦此処を離れるか。“虚無の境地”についての目星も少しは付けたし、“星の裏側”を回ってそこに行ってみよう」


「そうですね。ホムラ様の本来の目的は虚無の境地ですし」


「オッケー!」

「いいよ」

「あ、キョーちゃんに会うんだ。ボクも付いて行くよ!」

「お供します」


 此処に来る可能性を考え、一旦は離れた方が良さそうという結論に至った。

 相手が調査員なら多分居留守も使えないので、本当に留守にした方が良いと判断したのだ。

 なので当然ガルム達も“星の裏側”へと連れて行く。

 元々の目的はゴウの仇である“虚無の境地”。“星の裏側”に行った事で多少の検討も付いたので会いに行く。──殺す為に。

 ホムラ達六人は魔族に貰った鍵を使い、再び“星の裏側”へと向かった。

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