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49ページ目 宣戦布告

「ホムラ様……大丈夫でしょうか……」

「ホムラなら大丈夫だとは思うけど……やっぱり不安だな……」

「此処からじゃよく見えないもんね……遠見道具何か持ってくれば良かった……」


 ホムラが戦地に立つ最中、セイカ、フウ、トキの三人は戦場がギリギリ見える近くの森におり、遠目から今の光景を眺めていた。

 声は聞こえず姿も分からないが注目の的になる事は成功したという事が分かり、三人は息を飲む。


「……まさかホムラ様……あの様な事を申すとは……」

「ホムラだからこそなんです。セイカ様。ホムラは昔も結構無茶をして私も助けてくれたんです……だから今回は、自分を犠牲にして街を救おうと……」

「形がどうあれ、一時の世界平和は築けるもんね……闇魔法を知る人がホムラの存在を知ったら……全人類が団結して魔王ホムラを倒す事になるかも……」


 三人はホムラに言われ、待機している。出来れば手伝いたいが、ホムラの考えからして待機せざるを得ないのだ。

 そう、あの時ホムラは──



*****



【……今回の戦争で、俺は闇魔法の使い手として全人類の敵になる。んでもって俺が居る間は戦争とかが起きないようにする。それが考えだ】


【【【……!】】】


 ホムラのやる事は、全世界の敵として君臨し、今回のみならずホムラが生きている間だけは戦争などが起こらないようにする事。

 それはつまり、ホムラが世界中から命を狙われる事柄。今の拠点であるこの街にも、もう居られなくなる可能性も高い。元々主犯扱いだった者が闇魔法を身に付けて現れたら、闇魔法を知る者はホムラを殺さなくてはならないと言う判断に至る筈だからである。


【そんな……ホムラ様は元々冤罪。闇魔法の存在が知られれば……!】


【もう二度とその冤罪は晴らせなくなる……! そんなのって……!】


【世界的な泥棒の私よりも遥かにマズイよね。それ。私も生死問わずの罪人だけどさ、君の場合はもっと悲惨な……】


 その様な事になればホムラの居場所は世界中から無くなる事になる。それによって戦争が止まったとしても、ホムラの利点がそれしかないのだ。

 自分ではなく他人の為に世界を敵に回す。おおやけになれば四宝者、メグミ達とも戦わざるを得ない。そんな事、ホムラに好意を抱く三人はして欲しくなかった。

 だが、ホムラはニッと笑って言葉を続ける。


【俺の言う事、何でも聞いてくれるんだろ? 俺の行動を否定しないでくれ】


【【……っ】】

【……】


 ホムラの言う事を何でも聞くと言う、奴隷のような契約。それを使って実行したのは、戦争を止める為に自分が全世界の敵となる事。

 セイカ、フウ、トキの二人は約束した手前言葉を返せず、既にホムラと同じような立場であるトキは黙認した。


【けどまあ、セイカとフウは街に帰る事も出来るんだ。メグミさん達の性格的に、まだ俺の仲間になった事は知らされていないだろうしな。だからその時は──】


【私とホムラの二人旅だね! これで24時間ホムラの色んな世話を──】

【【私も乗(ります)!】】

【わあ……凄い反射神経……】


 別にトキと二人旅になる事は確定していないのだが、セイカとフウは即答にも近い早さでホムラの行動を了承し、自分達の同行を決意した。

 つまり、これで決定である。


【……そうか。二人には迷惑を掛けるよ。もし仮にメグミさん達やリク達以外に見つかったら戻れなくなる。良いのか? もう引き下がれない】


【構いません! 私はホムラ様に仕えるのが最上の愉楽……! 故に、ホムラ様行く所ならあの世でさえもお供します!】


【私もそんなところかな。セイカ様とは少し違うかもだけど。だって、友達が困っていたら見捨てる訳にはいかないでしょ? それで私が迫害されてもね!】


【肉体関係を持ちそうな時点で友達の幅は越えているような……ま、仲間が多いのは嬉しいからオッケー!】


 全員が覚悟は決めている。ホムラ的には何とかセイカとフウくらいはまともに過ごして欲しいが、どうやらそれも叶わない。本人達の意思によって叶えるつもりが無い様子。

 なのでそれの決行が決まった。


【それじゃ明日、戦争が激化してくる頃合い、兵士達が興奮状態になった後で印象を強く残すか。セイカ達は……まあ、来るかは分からないけどいざという時の為に少し離れた場所に待機していてくれ】


【はい!】

【うん!】

【いいよ!】


 戦争が激化し、そこに乱入すれば印象が強く残る。それによってホムラの思うように世界は動くだろう。

 ホムラ達は戦争の時、全世界の敵になる事を決意した。



*****



 ──その様なやり取りの末、行動に出たのが現在。激化し、白熱したところに現れた闇魔法の使い手。印象付けは完璧だった。


「闇魔法……!?」

「人類の敵だと……!?」

「大罪人……シラヌイ・ホムラ……!」


 闇魔法の事は伝わり、目的も伝わった。そしてホムラの存在も理解させた。

 これ程までに目立てたら目的は大凡おおよそ達成。後は場を荒らして此処から逃げ仰せるだけだが、それは闇魔法を使えるホムラならかなり簡単な事である。

 仮に、万が一失敗しても時間と空間を操れるトキが居る。時間停止中はホムラも動く事が出来ず、トキがホムラを動かす事も出来ないが、単純なバフも起こせるので逃走は可能だ。


「……っ。よく分からんが、魔法使いだ! 撃て、撃てェ!」


「「「…………!」」」


「……。そうか、平民からなる兵士には闇魔法を話しても意味無いな。そう言えば」


「……!? あ、当たらんだと……!?」


 平民側の指揮官による指示が出され、音速に匹敵する火薬弾丸が撃ち込まれた。

 しかし闇魔法の自動防御によってその弾丸は消滅し、ホムラは無傷。指揮官と兵士達は狼狽うろたえる。


「闇魔法……大罪人……! 貴様は死刑だ! シラヌイ・ホムラ! “ランドバレット”!」


「……。別に詠唱しても良いんだぜ? ……って俺のキャラじゃないな。こう言うのの役割は虚無の境地だ」


 土魔法からなる弾丸が撃ち込まれ、それも闇魔法が自動的に防ぐ。魔力の土は風に巻かれて消え去り、変わらずホムラは無傷だった。

 二撃を受けても何とも無い様子のホムラを見、周りの兵士達は敵国ではなくホムラの方へ集中を高める。この時点で強さの印象付けも終了。後は本当に軽く、なるべく殺さない程度に暴れるだけである。

 基本的に国から命令されて動かざるを得ない兵士達。ホムラから見た極悪人は多分、おそらく、きっといないので命を奪う程ではない。


「詠唱……格好は付くし、より印象も付けられるけど面倒だな。闇魔法の詠唱は文献が無いから自分で考えなきゃならないし……そもそも詠唱による魔力上昇の付与は要らないよな。今の時点でオーバーキルどころかオーバーオーバーキルもいいところだ」


「何をブツブツと! 詠唱ならしてやろう! ──土の精霊よ、その力を我に与え、悪の王を粉砕せよ! 大地を以て敵を滅ぼせ──“降岩六地”!」


「……。だって、詠唱無しでこの力だもんな」


「なっ……!?」


 詠唱による魔法の強化。魔力の増幅。それによって上から落とされた巨大な複数個の土塊を微動だにせず闇魔法で逆に粉砕した。

 土塊の砂はサラサラと辺りに落ち、土の系統の兵士は驚愕する。


「まさか……上級下位とは言え、紛れもない上級魔法だぞ……!」


「逆に持て余す。俺がまだまだ未熟って事か……文字通り手足のように使えるようにならなきゃ自分の身を滅ぼし兼ねないな……あの時のように……!」


 ホムラは、今よりはコンディションも悪かったが、感情によって威力の高まった闇魔法をもちいてもなお、ダメージすら与えられなかった虚無の境地について思い出す。

 虚無の境地に与えられたダメージはホムラを仲間に誘う時の、警戒もせず油断し切った腕を斬り飛ばしたくらい。

 まともに戦えば即座に間合いを詰められ、敵意も出されずに意識を奪われた。あれがまともに戦っていた時ならばホムラは既に死んでいただろう。

 それでは虚無の境地に、絶対に勝てない。例え片腕だけだとしても、絶対にだ。

 だからこそ闇魔法もより洗練する必要がある。


「撃て! 撃てェ!」

「「「…………っ!」」」


「……。大砲……威力で言えば中級魔法程度……だけど詠唱も何も無く、装填するだけで中級魔法相応の力が複数個放てるのは便利だな」


「くっ……やはりダメか……!」


 複数個の大砲は闇魔法によって切断し、空中で爆発した。

 威力はそれなりの兵器。しかし闇魔法の前ではそれも無力である。


「……さて、俺の魔力も無尽蔵じゃない。ちょくちょく魔物を拝借して魔力を上げていたけど、ぶっちゃけ不味くてそんなに食べられなかった。持って三時間ってところか」


 闇魔法を常に展開しているが、ホムラの魔力自体は人並み。長期戦には向いていない。

 女性の子宮を取り除いた時は五時間程持ったが、あの場合は展開の範囲が狭かったので何とかなっただけであり、戦場に展開し続けるのは無理がある。

 今はあくまで自分の範囲数十メートル程度に留めているが、それでもそんなに持たないというのがホムラの見解だった。

 そして当然、それは呟くように話した為、他の者達には聞こえていない。聞こえたらこれから君臨するに当たって問題が生じるので言わない方が良いだろう。


「これからは好き嫌いを無くして魔物をなるべく多く食べるとするか……オエ……考えただけで嗚咽が……」


「何を言ってやがる! 皆の者、掛かれ、掛かれェ!」


「元より大罪人! 容赦せず殺せェ!」


「「「ウオオオォォォォ!!!」」」

「「「ウオオオォォォォ!!!」」」


 結果的に、両兵士達が団結した。これで一先ずの目標は達成だろう。

 ホムラは迫り来る兵士達に向け、


「なら……。…………。………………。うん。何も良い決め台詞が出てこないな……」


「「「…………!?」」」


 闇魔法を鞭のように薙ぎ払い、一掃した。

 殺してはいない。前述したように殺す程ではないからだ。意識は失っただろうが、ちょっとした擦り傷や打撲。一、二本の骨折程度で済むだろう。人体は脆いが、人間は思ったよりは頑丈である。


「たった……一撃で……」

「これが……闇魔法……」


 そして、全員を吹き飛ばした訳ではない。全員の意識を失わせては前後の記憶が飛び、ホムラの存在を示せなくなる可能性もあるからだ。

 何人かは残しており、その力をより実感させるものとする。

 ホムラはまだ意識のある者達に向けて言う。


「そうだ。これが闇魔法……アンタらも分かっていると思うけど、今の攻撃でアンタらは全員生きている……やろうと思えば殺す事も出来たんだ。けど、それじゃつまらないからな。生かしてやったって事を肝に命じてくれ。理由は……。……。……フッ、考えなくても分かるだろ?」


「いや……」


「そうか。じゃあ考えとけ」


 ホムラも、取り敢えず悪役ムーヴを起こしてみたが自分でも何を言っているのかはよく分からなかった。それっぽい事を言えば敵と認知されると言う考えの元、そう演じているのだ。

 “戦争を止める為に悪を演じている”。などのように正直に言っても意味がないのでトコトン悪っぽさを追求する。因みに参考は虚無の境地。

 不慣れなのもあって支離滅裂。それを指摘されるよりも前に更に言葉をつづった。


「取り敢えず、俺は今から全人類を敵に回すから世界中にそれを伝えておけ。戦争とかしていると全部横から掻っさらうからそこんとこ宜しく。また行方は眩ますから捜索しなきゃな。じゃ」


「……! 待て!」


 闇を展開し、ボロを出して都合が悪くなるよりも前にその場から立ち去った。

 おそらくそれっぽいムーヴは起こせた。後は世界が戦争を止め、ホムラ対策の連合でも組んでくれれば御の字である。その後どうなるかはその時に考える。基本的にそのスタイルは変わらない。

 戦争の最中さなか、突如として現れた闇魔法を扱う世界的犯罪者(仮)。そのニュースは瞬く間に千里を駆け、世界中に広まった。


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