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47ページ目 戦争の前日

「戦争起こるってさ」

「「「…………!?」」」


 ──その後配達人は帰し、セイカ達を起こしたホムラはテーブルに集め、率直に概要を説明した。

 寝起き直後にそれを聞いた三人は目をパチクリさせ、互いの顔を見合ってテーブルを叩く。


「「「えぇ~!?」」」

「……っ。寝起きで元気だな……」


 耳元で甲高い声が響き、ホムラはしかめっ面で耳を塞ぐ。

 そしてどうでもいい事だが、寝起きの口臭は凄まじいと聞くがセイカ達は全員がそんな事は無かった。口の中はかなり清潔なようだ。


「せ、せせせ、戦争って!?」

「どういう事!? 今から徴兵!?」

「ホムラ様も戦争へお行きに!?」


「待て待て落ち着け。クールダウンだ」

「は、はい!」

「オーケー……!」

「りょ、了解……」


 戦争と聞いたらこの様な反応になるのも頷ける。しかしホムラは三人を宥めた。慌てても何も起こらないからだ。


「今すぐって訳じゃない。いや、まあ世間的に見たら今すぐではあるんだけど。聞いた話だと明日か明後日。少なくとも今日とは言っていなかったよ」


「な、成る程……」

「安心……は出来ないね。すぐにでも起こりそうって話なら……」

「不安だね……」


 納得はするが、三人は不安がっている様子。

 当然だろう。トキは分からないが、ホムラ達は話に聞くだけで実際の戦争を目の当たりにした事は無い。

 野盗の襲撃や、その辺の戦争よりも遥かに脅威的な虚無の境地の襲撃は目の当たりどころか体験したが、実際の戦争がどの様な事なのかは検討も付かない。


「……取り敢えず街の方を見てみるか。多分住人達は避難の準備をしているんだろうけど、ちょっとした情報くらいは得られそうだ」


「そ、そうですね。どの国とどの国が戦争を行うのかは分かりませんけど、情報が無い事には始まりません」


 先ず行うのは情報収集。情報が無ければ動くにも動けないからだ。

 それについては全員が同意。ホムラ達は軽い朝食の準備をし、パンを片手に屋敷の外に出た。



*****



「良いな。ガルム達は。馬よりも融通が利くし、魔物の脚力があるから馬よりも速い」


「それに、私達四人と猫ちゃん達が乗っても物ともしない力強さもありますね」


 今回は事態が事態。なので屋敷を空にしてもガルム達を連れて行く。

 乗り心地は悪くなく移動速度も速い。なのでかなり快適に進んでいた。事態は全く快適ではないが。


「街はパニックだな」

「何処に向かうのでしょう……」

「近隣の街、この街に来る途中にメグミさん達と寄ったけど、ほとんど荒廃していたよ……。逃げるにしても何日も移動しなきゃならなそう」

「私達は何をすれば良いの!? いや、ダメダメ。私がパニックになっちゃ元も子もないや!」


 街に着き、人々はあわてふためいていた。

 それも当然。気の良い者達だとしても自分や家族の命は大事だろう。これでは状況説明を聞く事も出来なさそうだ。


「おう、兄ちゃん達! アンタらも早く逃げた方が良い! この街は戦場になる!」


「……! 店主」


 路頭に迷っていると、酒場の店主が話し掛けてくれた。

 既に荷物は纏めているようだが、それでもホムラ達の心配をするというのは本当に親切である。

 これなら話を聞けるかもしれないと考え、ホムラは店主に話す。


「一体、何処と何処が戦争を? 俺達は冒険者。その立場上、参加する可能性もありますので教えて下さい」


「そうか……確かに兄ちゃん達の実力なら国に呼ばれる可能性もあるな……俺も詳しくは知らないが、最近手痛い目に遭ったって言う“エレメンタリー・アトリビュート”と近辺の大国の話がこじれたらしく、それが戦争の火種になったらしいんだ。“エレメンタリー・アトリビュート”は国に貢献している。だから国側が直接名乗り出たらしい」


「……!」


 ──戦争を行う国は、ホムラ達の故郷である街“エレメンタリー・アトリビュート”の位置する国と近隣の大国との事。

 大国の定義も様々だが、大国と呼ばれる程なので単純に考えてもかなりの強国だという事は分かる。

 この戦争次第ではメグミ達四宝者や、まだ生きているフウ達の両親。そしてスイとリクが駆り出される可能性もある。

 それはあまり考えたい事ではなかった。


「……。分かった。ありがとう」


「おう、徴兵される可能性があるが、逃げても良い! 何とか生き延びるんだぞ兄ちゃん達!」


 それだけ話、酒場の店主は避難する。

 今の話を聞いたホムラ、セイカ、スイは気が気で無かった。


「そんな……わたくし達の街が……国が……」

「メグミさん達とスイ達が……!」

「話が拗れただって……? 何の話だ……」

「えーと……どうすればいいんだろう……私……」


 国を心配するセイカと友人達を心配するフウ。そしてホムラは何が原因で話が拗れたのかを考えていた。

 トキはそんなホムラ達に話し掛けようとするが言葉が思い付かず言い淀んでしまう。


「……。一先ず屋敷に帰ろう。まだ時間はある……ほんの十数時間だとしても、今すぐって訳じゃないんだからな」


「は、はい……ホムラ様……」

「うん、ホムラ……」

「か、帰ろうか……」

『クゥン……』

『『ニャア……?』』『『ニャフ……』』


 事態は重大。魔物であるガルムとカエン達も理解しているのか落ち込んでおり、一先ずホムラ達は屋敷に戻って色々と考える事にした。

 残り時間は少ないが、0()ではない。その時間でやれる事を考えるのが重要である。

 再び加速し、急いで帰宅した。



*****



「戦争の件……多分原因は俺だな」

「「「……っ」」」


 帰宅するや否や、ホムラは戦争の原因が自分にあると話した。

 普通に考えれば街から離れていたホムラが原因になるなどあり得ない事だが、ホムラには確信もある。


「虚無の境地の襲撃。それを手引きした犯人が俺になっている。それで上層部が揉めて実力行使に出た……って所だろうな」


 ホムラが指名手配される理由となった、虚無の境地の襲撃。火の系統の全滅。それがおそらく戦争の火種。

 セイカは信じたくない面持ちで話す。


「そんな……何のメリットが……」


「少なくとも“エレメンタリー・アトリビュート”にはあまり無いな。けど、大国とやらにはある。戦争で戦力になる、広範囲を焼き尽くせる火の系統が居なくなったんだ。戦力は大幅ダウン。王族と貴族単体の街に恨みを持つ者も多いだろうし、自ずと戦争に繋がる」


 “エレメンタリー・アトリビュート”の戦力低下と平民達の恨み。それがあるだけで戦争を起こすには十分。

 ホムラには他にも思い当たることがあった。


「けど、“エレメンタリー・アトリビュート”にもメリットが全く無い訳じゃない。上層部は無能の癖して自分達を過信しているからな。火の系統が居ないくらいで舐められて堪るかという自尊心と、大国の領土や労働力を我が物に出来る可能性を考えて戦争に出たんだろうさ」


「……っ」


 戦争によって失うモノは多いが、それはあくまで兵士となる者にとっては。

 ふんぞり返り、安全圏で下に指示を出すだけの無能共は何も失うモノがない。戦争に負ければそれなりだが、あくまでそれなり程度しか失わないのだ。

 それならば使える物を活用し、人や金。土地などの物を奪った方が良いという判断に至ったのだろう。

 それによって起きる予定の戦争。他の者達が戦争をする為にホムラの名が使われ、現在に至る。これが妥当な線である。


「そんな……どうすれば……みんなが傷付く姿なんて見たくない……! 何とかして止められないかな……?」


「無理だろうな。既に可決されている。だからこそ今日このタイミングでこの街にも報告が入ったって訳だ。そして明日か明後日に起こるかもしれない現状、俺達の国と大国とやらはこの街への被害を何も考えていない。適当じゃなく、テキトーに事を運んで済ませたみたいだ」


 戦争が起こるに当たって、人を動かすとなれば多くの金が必要になる。だからこそこの街に割く人員は無く、報告がこんなに遅くなったのだろう。

 上層部の行う心配は戦争への出費と自分達の安全。保身。紛うことなきクズの集まりだ。


「「…………」」

「「…………」」


 場は静寂に包まれる。どうしようもない事態。仲間や友人が傷付く。

 そんな、もう止められない。被害のみが増える戦争について少し考え、ホムラは思い付いたように口を開いた。


「……まあ、危険は多くなるけど……止めようと思えば止められるかもな」


「「「……!」」」


 ホムラの言葉を聞き、三人は顔を上げて視線を向け、困惑の瞬きをした。

 何かを聞かれるよりも前にホムラはそれを話す。


「セイカ、フウ、トキ。話す前に一つ確認しておきたい。三人とも、どんな事でも俺の言う事を聞いてくれるんだよな? いや、トキは確か違かったな」


 先ずはこれからそれを話すに当たっての最終確認。

 どんな言う事も聞く。確かにセイカとフウはその様な約束をした。トキとはその様な感じの約束ではないが、ある程度は受け入れてくれるだろう。

 三人は頷いて言葉を返す。


「はい……私はホムラ様に全てを捧げます……! 受け入れます! えーと、フウさんもその様な約束を?」


「ええ、しましたよ。セイカ様。……ホムラ。私も大丈夫。ホムラの言う事、何でも聞いてあげる!」


「私も別にいいよ。ホムラ以外の人と交われとかなら断るけど。二人と違って私の約束は軽いかな?」


 どうやらトキもある程度の言う事は聞いてくれるらしい。

 三人は互いに顔を見合わせ、衣服や下着を全て脱ぎ捨て、一糸纏わぬ生まれたままの姿となった。当然、フウは傷を隠している。


「い、いつでもどうぞ。ホムラ様……心の準備はしておりました……!」

「覚悟は出来ているけど……改めてって考えると少し恥ずかしいかな……裸自体には慣れているんだけど……私も初めてだから……なるべく痛くしないで……」

「戦争前の危機的状況。いよいよその気になったんだね」


「ちょっと待て。そうじゃない。衣服は着ろ。ある意味で肉体的に関係あるけど、三人が思っている命令じゃない」


「「「……え?」」」


 三人は大きな勘違いをしていたらしい。ホムラに言われ、セイカとフウは赤面しながら衣服を着用し、トキはつまらなそうにため息を吐く。

 改めてホムラは言葉を続けた。


「今回の戦争で──」


「「「……!?」」」


 そしてそれは、三人が考えていた事ではなかったが、予想外の事ではあった。

 しかし受け入れる手前、一瞬戸惑ったが即座に切り替える。


 ──その翌日、考えていたよりも早いタイミングにて戦争が始まった。


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