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44ページ目 覚悟

「うむ。やはり静かな食事より明るく楽しく話した方が良いな! 快楽も無いから三大欲求にしてはつまらないと思っていたが、話を出来る食事は楽しい!」


「あ、それ分かるよ! 四宝者さん、私も元貴族なんだけど、何か食事ってイマイチ楽しくなかったんだよねぇ」


「ほう。話が分かる泥棒だな。どうだ? その稼業から足を洗って私の元で働かないか?」


「うーん、私はホムラと一緒に居たいからねぇ。しばらくはいいかな?」


 そんな食事の時間、メグミとトキは意外にも気が合うらしく会話が盛り上がっていた。

 貴族の執り行う食事というものは、静寂かつ悠然な、美意識を高く持つもの。しかしその食事をつまらないと感じている二人だからこそ気が合うのかもしれない。


「ホムラには驚いたな。世界的な泥棒を仲間にしてたとはよ」


「しかも二人目の婚約者! と言うか私が本命!」

「それは貴女が勝手に仰っているだけで御座います。トキさん」


「……まあ、成り行きでな。トキもトキで色々と問題を抱えているんだ」


 トキの存在に対してリクが言い、それについて説明する。

 説明と言っても肝心な、トキが“混血”という事は話していない。それを知ったら流石のフウ達も敵対するかもしれないからだ。

 そうなった場合はどちらの味方に付くかも悩みどころ。傍観に徹すればトキは逃走するだろうが、結果的に裏切る事になる。

 仲間はなるべく裏切らないようにしたいので此処は黙認が最適解だろう。


「そう言えば、トキ。君は一体どうやって私達の目を掻い潜ったんだ? あの時呼び止めようとしたら姿が消えたからな」


「え?」


「それは僕も気になるな。何もない空間から君が突然現れた。だから先に街へ入っていた僕とソラが後を追ったんだ。案の定目的地に着いたけど、君の力は不思議だ」


「私も同意見だ。四宝者として様々な魔法使いは見てきたけれど、君のような存在は異質だからね。純粋に興味がある……って、男の私が言う事ではないな。誤解を招く」


 そんなトキの魔法についてメグミ、カイ、ソラの三人が気になると話した。

 四宝者は様々な魔法使いと出会う機会がある。立場的に当然だ。

 なので不思議な魔法の存在には興味が出るのだろう。


「あ、確かに気になる。移動魔法の一種なのかな?」


「そう言や、重い物も軽々持ってたな。筋力強化とかか?」


「移動魔法に筋力強化……脚力を高めて目に見えない速度で移動とかかしら? 純粋な移動で目に見えないのは虚無の境地がやっていたし、可能性はあるけど……それっぽくは無いわよね……」


 そしてそれは、フウ、スイ、リクの三人も同様。

 元々ホムラ達四人は知的好奇心が高く、何も知らないフウ達だからこそ気になったのだろう。

 トキは揶揄からかうようにその質問へ返答した。


「教えないよ~。私の稼業に関わる問題だからね。君達と話してみて悪い人じゃないのは分かったけど、まだ完全に信用は出来ないからねぇ。いや、うーん……信用ともまた違うかな。取り敢えず四宝者とか、世界的犯罪者の私の立ち位置とか、色々な都合上どうしても話せないね」


「むぅ。そうか。残念だな。確かに私達としてもトキは即座に捕らえなくてはならない対象。ホムラが居るから私情で行動は起こさないが、話すのは君に何のメリットも無いか」


「そう言うこと。魔法とは別に私の事を話すと色々と問題が露見するからね!」


「そう言われると益々気になる……! せめてヒントだけでも!」


「ヒントってそのまま答えに直結しちゃう事だからなぁ。強いて言えば今の返答がヒントかな」


 混血。時空間魔法使い。それ以外にも秘密があるかもしれないが、それだけでも教える訳にはいかない様子。

 メグミはガッカリしていたが納得はし、ホムラ達は食事を続ける。


「あ、そう言えばホムラ。一番()気無げなかったから指摘しなかったけど、その魔物達って何?」


「ん? ああ、ガルムにカエンにスイレイ、センプウとガンセキだ」


「へえ……ガルムちゃんにカエンちゃん、スイレイちゃんとセンプウちゃんにガンセキちゃんかぁ」


 ふと気になった、ガルム達の存在。確かに魔物がしれっと居るのは色々と気になる事である。

 ホムラがその名を話、納得するフウだがスイが肩を落としてツッコミを入れた。


「そうじゃなくて、何で連れてるのかでしょ。フウは流されやすいんだから」


「えへへ……風の系統だから流されやすいんだよねぇ」


「なに上手い事言ってんのよ……。それで、ホムラ。その子達はペット? 使い魔?」


「まあ、成り行きでペット兼使い魔になったんだ」


「また成り行き……何だか成り行きで行動する事多いわね……」


「人生成り行きが9割だからな」


 ガルム達が出会った訳も成り行き。そうとしか言えないので仕方無い。

 成り行きで世界的な泥棒と魔物を連れるようになったホムラにスイは呆れるが、元々のホムラの性格を理解しているので深くは言わなかった。

 色々と変わった様子だが、やはりホムラの根本的な部分は変わらないのだろう。

 その様に、言い争いに発展しそうだった状況が変わって和やかなムードとなる。

 ホムラ達の行う食事は楽しく続くのだった。



*****



「さて、ホムラ。ホムラにまだ戻るつもりがないのは分かったよ。それと、ホムラの覚悟も……私達はそれを尊重するよ……」


「そうか」


 食事を終え、空の食器が並ぶテーブル。そこでホムラに向け、フウは“まだ”という部分を強調して話す。

 納得はしていないようだが、ホムラの覚悟は伝わったのでそれ以上は何も言わないようだ。

 しかしフウは「けど」と言葉を続ける。


「その代わり……私もホムラ達に同行する……!」


「「……!」」

「…………」


 フウがホムラの旅に着いて行くとの事。

 リク、スイ。メグミにカイとソラはそれを容認していた。が、セイカとトキが反応を示す。

 口を開こうとしたがそれはホムラが止め、フウは言葉を続ける。


「ホムラの事は昔から知ってる。それに、私はホムラやセイカ様の助けになる魔法を使える……役には立つと思うよ……!」


 戦力としては申し分無い。精神力も高く、ホムラの行う殺処分を見ても対応出来るだろう。

 既に相応の覚悟は決めている。だからこそ着いて行くようだ。

 フウに続いてリクとスイも言葉を発した。


「俺達も既に同意してるぜ。何なら俺達も一緒に行きたかったが、全員で纏まっても意味がねぇからな」


「ええ。私達は私達で虚無の境地の捜索を行うわ。ゴウお兄様の仇なのは私達も同じ……許す訳にはいかないもの……!」


 着いて行くのは、あくまでフウだけ。

 というのもホムラ達の人数はホムラ、セイカ、トキの三人とメグミ、カイ、ソラ、フウ、リク、スイの六人。

 計九人。虚無の境地を追うとしたら人数的、戦力的に考えても四人と五人に分けるのが一番。いつ話し合ったかは不明だがそう判断したようだ。


「……。別に構わない。けど、フウが思っている以上に苦難の多い過酷な旅になる。個人的な意見として、フウ達にはあまり無茶して欲しくない。それはセイカと……まあ一応トキも同じ条件だ。けど、セイカ達はそれでも行くと言っているからな……セイカとトキは俺に何されても良いと考えているんだ。変だろ? 覚悟があるのも分かったけど俺はフウに」


「ホムラ」

「……?」


 別に構わないが、やはり出来れば着いて来て欲しくない様子。

 それについて遠回しに言おうとしたが、フウは杖を構え、風を起こしてホムラの目を真っ直ぐに見つめた。


「──“カーム・ゼーハ・カエルム・ミストラル・フードル・ウィンド”。ウィンド家の長女、カゼカミ・フウ。それが私の真名。風魔法で他の皆の耳は塞いだよ。私の家族以外で、私の真名を知ったのはホムラだけ。これが私の覚悟。私もホムラの為なら何をしても構わない。何なら今夜しても良いよ。“混血”を孕んでも良い……私だけなら迫害されても良い。ホムラに私の身も心も好きにさせる……これが、私の覚悟……!」


「……。……成る程な。てか、何で全員自分の体を売ろうとするのか気になるな」


 杖を持ち出したのは他の者達の耳を風で塞ぐ為。そして真名を告げ、自分の覚悟という事を強調して二度言った。

 それと同時に風魔法の耳栓を解く。フウの覚悟は伝わった。


「……え? あれ……」

「何か一瞬風が強くなったような……」


「……ま、そんな事もあんだろ」

「そうね。風の音って結構響くもの」


 風の耳栓が解かれ、セイカとトキは困惑して事情を理解しているリクとスイが補足を加えた。

 何はともあれ、フウの覚悟は確かに伝わったようだ。


「分かった。来なよ。セイカとトキが良ければフウの同行を許可する」


「あ、私は構いませんよ。話してみて気も合いそうでしたし」


「うーん……まあ、婚約者とかそう言う立場じゃないし、人数は多い方が楽しいから良いかな」


「ありがとう。ホムラ! セイカ様! 泥棒さん!」


「せめてトキって呼んで!」


 元々、否定はしていない。ただ単にフウの身を案じていただけ。

 なのでホムラは了承し、セイカ。そしてトキも若干思うところがある様子で話しつつ同行を許可した。

 フウは笑顔で返し、メグミ達も優しく笑う。


「さて、それじゃ今晩はホムラ達の屋敷に止めさせて貰う。折角だからな。それと上には報告せず、私達は虚無の境地について調べるとしよう」


「そうだね。ホムラ君、今日は僕達が泊まっても良いかい?」


「良いですよ。この屋敷は見ての通りそれなりの大きさですから」


 メグミ達は折角だからと今日は此処に泊まるらしい。

 宿くらいになら一生住める資金は持っているだろうが、全ての疑問に対する返答が“折角だから”なのだろう。

 別に断る理由も無いのでホムラは了承した。


「さて、私はどの部屋にしようか。君達の中で私と子を作るつもりのある者は?」


「ねえな」

「無いね」

「NO」


「子を……!? ホ、ホムラ様は私の人ですので……!」

「オイオイ」


 ナニを基準にするつもりなのか、メグミはホムラ達男性陣に訊ねた。

 メグミは混血も容認派。混血の悪人が居ればそれを裁く側だが、差別や迫害はしない。

 そして本人の底知れぬ結婚願望と性欲が相まり、今のように不審な言動へ近付くのだろう。


「むぅ、居ないか。致し方無い。しかし一人で寝るのは寂しいぞ。……よし。トキよ。私と共に来てくれ」


「え゛……名指しで私……!?」


 一人になりたくない様子のメグミは、トキを指名した。トキは露骨に嫌そうな顔になる。

 男性陣の反応や今さっきの言動。それによってメグミと相部屋は良くないのであろう事も理解しているようだ。が、


「じゃ、トキとメグミさんだな。九人居るし、適当に割り振りしよう」

「では、ホムラ様。参りましょう」


「うーん……私もホムラが良いけど、一緒に寝る人はセイカ様が居るもんね。婚約者の邪魔は出来ないや。スイ。一緒に寝よ!」

「良いわよ、フウ。女の子二人……丁度良いじゃない」


「んじゃ、俺らは男同士でだな。ホムラも入れてェが、邪魔するのは無粋だ」

「まあ、僕は別に構わないよ。ソラは?」

「私は逆に一人じゃないと眠れないんだ。すまないね。カイ、リク」

「んじゃ、しゃーねェですね」

「そうだね」


 次々とパートナーが決まり、引くに引けない状況となっていた。

 各々(おのおの)各々(おのおの)の部屋へ向かう中、仕方無くメグミと共に部屋へ向かうトキは、念の為。一応、万が一に備え、石橋を叩くように、確認の為の質問をした。


「土の四宝者……さん。貴女って、別にそう言った、女の子もイケる! ……とか無い……ですよね……?」


「フッ、案ずるな。私は快楽を感じたいんだ。野盗とか下衆な奴らによってと言うのは御免だがな。取り敢えず快楽を与えてくれるなら男でも女でも構わないとは思っている」


「え゛……」


「良いものだぞ。土は様々な形に変える事が出来る……。新たな世界を開くのもまた一興と言った事だ」


「あの……私やっぱり一人で……」

「此処まで来たんだ。今更部屋を探す必要も無いだろう」

「此処までって……まだ食堂出てから数メートル……」

「さて、行くとしよう。君には前から興味があったんだ。なに、別に取って食おうとかではない。純粋に君の体に興味がある」

「た、助けてー! みんなー! ホムラー!」


 その恐怖から時間を止めるのも忘れ、メグミによって引き摺られる。

 もっとも、時を止めて脱出したところでメグミの、トキの服を掴む力が強いのでどうしようも無いのだが。


「フフ……夜はこれからだ」

「私の貞操まだ無傷なのにぃ~!」


 悲鳴にも近い声が響き、ホムラ達は何とも言えない表情でたった今定めた自室へと入って行く。

 そもそもこの屋敷を手に入れたのが今日なので、誰の部屋という事も決めていない。

 何にせよ、トキには色々な意味で試練が降り掛かりそうである。

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