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43ページ目 来訪者

 警戒するホムラ達を見、二人の男性は話す。


「セイカ様は確認されたな」

「となるとシラヌイ・ホムラだが……似た少年は居るけど髪と目の色が違うな。もう一人の女性? は誰だ」


「此処は私が……!」

「ううん! 私達だよ!」

「待て待て。早まるな」


 男性達はセイカを確認。しかし色々と見た目の変化があったホムラには、怪しいと思いつつも確信には至らない状態にあった。

 既に臨戦態勢に入ったセイカとトキをホムラは制する。何となく敵意は感じられなかったからだ。


「一つ聞きたいんだけど良いかい?」


「警戒するのは分かるけど……私達は怪しい者じゃない……って言っても無駄か。一応立場を隠す為にローブを羽織っているしな」


 予想通り、敵意は無い。そしてホムラにはその声に聞き覚えもあった。


「成る程な。世界的大犯罪者……「私?」違う。取り敢えず、そんな存在には当然アナタ方が割り当てられるか」


「と言うか君のその声……けど正しいかは分からないんだよね」


「まあ、見た目が違うからね。けど、可能性は高い」


 ホムラは何かを薄々気付き、男性二人も何かしらに気付きつつある。その有耶無耶なよく分からない現状は、即座に打破された。


「ホムラ! 居る!?」

「ホムラ! 居っか!?」

「お邪魔するわ! ホムラ!?」

「やれやれ……貴族足る者、もっと悠然にだな」

「そう言う君も、貴族らしくもっと気品のある格好にしてくれよ。メグミ」


「……まあ、この二人が居るなら可能性は高かったな」


 既に、ある程度の予想は付いていた。

 口調やら声やらローブから見え隠れする髪とやら。一番親しいであろう三人は、変わり果てたホムラを見て声を上げた。


「あ! ホムラ! だよね……? ううん。間違いなくホムラだよ!」

「居たか!」

「あら、イメチェンしたかしら?」


「……まあ、色々あって精神的にイメチェンしたよ。フウ、スイ、リク。話した順ならフウ、リク、スイか」


 ──フウ、スイ、リク。及び四宝者の三人。六人はホムラを前にローブを取り、その素顔を晒す。

 その名を聞いたセイカはハッとし、話には聞いていたトキも反応を示した。


「それでは、この方達がホムラ様のご友人様方……!」

「そうだったの!?」

「まあ、そうだな」


 トキもローブを取り、改めてフウ達の方を見た。そんなトキに対し、メグミ、カイ、ソラの三人は怪訝そうな表情をする。


「……ん? 銀髪に碧目へきがんの女性……彼女はまさか……」


「“瞬盗女王”。ハヤカワ・トキ。……世界的大泥棒」


「数千億の被害を出した存在か」


「そう言うアナタ達はまともな方の貴族が多いって言われる“四宝者”! ウソ!? 四宝者まで出てきちゃったの!? 不味くない!?」


 トキは世界的に有名。そして四宝者も当然有名。

 なので四人は知り合いや友人という訳ではないが、その存在を顔見知り程度には理解していた。


「ホムラ……! セイカ様は分かるけど……何で盗人なんかと一緒に居るの?」


「セイカから俺を盗もうとしているんだ。あ、それとセイカは別に俺と婚約破棄はしていなかったんだと」


「へえ……それは良かったね。けど、世界的な大泥棒ってお金だけじゃなくて婚約者にも手を出すんだ……」


「違うよ! ああいや、そうなんだけど……と言うか君の適応力高くない!? 私の方が驚きだよ!」


 ホムラとセイカとトキ。その三人を見たフウの反応は、特に何とも思っていないような普通の反応だった。

 言ってしまえば不測の事態に慣れているのである。唯一の例外は“虚無の境地”の乱入くらいであり、基本的にフウ、スイ、リクの三人は適応力がある。


「それで、何の用だ? 俺達は見ての通り逃亡生活の真っ只中。いや、手配書によると火の系統を全滅させた極悪人がお姫様をさらっての逃亡か。厳密に言うならそっちの方だな」


「ホムラ……少し性格変わったね……気持ちは分かるけど……」


「気持ち……か。まあ、その他大勢の貴族に言われるよりは信憑性も高いな。それより、フウ達のご両親は無事か?」


「うん、何とか……傷は負ったけど、生きてるよ」


「それは良かった。知っての通り俺の方は全滅したけど……って、そう言うと皮肉に聞こえるな……取り敢えず、フウ達とその両親が無事と分かって凄く嬉しいよ」


「ホムラ……」


 純粋な気持ち。フウ達の両親にホムラは何度かお世話になっている。なので本当に嬉しいつもりで話したのだが、ホムラの境遇からすると皮肉にも聞こえてしまうのが悩みどころだ。

 何にせよ、フウ達が来た理由は分かっている。ホムラはスッと目を細めた。


「それで、そんな極悪人の俺を捕まえるのか? 今なら世界的大泥棒が付いてくるからお得だ」

「え!?」

「ううん。そうじゃないよ。私達、ホムラの力になれたらって思って……」

「……。そうか。相変わらず優しいな。フウ達は」

「私は無視!?」


 横でギャーギャー話すトキは文字通り他所に、ホムラはフウ達の考えを知った。

 フウ達でなければ嘘を吐いている可能性があるが、フウ達なら信用出来る。おそらく本当に何とかしたいと思ってくれているのだろう。

 仮に騙されたとしても、見知らぬ者に騙されるよりは親友達に騙された方が良いとも考えているのでホムラは一切警戒をしていなかった。


「ホムラ。一緒に帰ろう? 一緒に帰って、免罪を晴らさなきゃ! メグミさん達も協力してくれるらしいし、きっと上手く行くよ!」


「かもしれないな。けど、フウ達やメグミさん達はともかく、上の連中は話なんて聞かないだろうさ。自分達の失態を隠す事に必死。虚無の境地の襲撃は世間から見た“恥”になる。前任四宝者と現四宝者が一人死亡。そして火の系統が俺とセイカを除いて全滅……それで俺が免罪だったとなれば元々立つものが無かった面子も更に立たなくなる。一時的に死刑を免れたとしても世界には報道せず、街の中か何処かで俺を殺して脅威は去ったと報告するのが関の山だ」


「そんな──」


 ──事は無い。とは続かなかった。確証は皆無なのである。

 ホムラの言い分はもっともであり、上層部の者達は自分の保身が何より大事。

 フウ達やメグミ達。セイカがいくら主張したとしても多勢に無勢。制圧されるのが目に見えている。純粋な魔法の強さではなく、周りからの評価がそうなるのだ。

 つまるところ、ホムラが帰ったとしたら死刑は間違いなく決行される。本当の主犯は既にホムラが始末しているので押し通されるだけだろう。


「だからまあ、しばらくは戻らない。少なくとも虚無の境地、その他の敵を倒すまではな」


「……! 戻るつもり自体はあるの……?」


「ああ。俺は生きていても……っと、そうじゃなくて。元々俺の故郷だしな。いずれ帰るさ」


「生きていても……何?」


 生きていても意味がない。なので死ぬ為に戻るつもり。

 その言葉をホムラは飲み込み、オブラートに包んで返したがやはり長い付き合いのフウには指摘されてしまった。

 しかしそれについては返さず、別の言葉をつづる。


「そうそう。虚無の境地だけじゃなくて“絶望の象徴”の目撃証言もあったよ。その他の人類の敵も居るだろうからそいつらを倒せば罪に問われなくなるかもな」


「絶望の……!? ううん。そうじゃない! ホムラ! さっきアナタは何を言おうと……!」


「それが解決すれば晴れて街に」

「誤魔化さないで!」


 “絶望の象徴”。

 自分の失言を誤魔化す為に気になるであろう名を出したが、フウは止まらない。

 何とも仲間想いで優しい者だろうか。ホムラは深いため息を吐いた。


「面倒だな。俺は俺のやりたいようにやる。それが終わったら街に戻るって事だよ」


「そのやりたい事って……ホムラが生きていても意味がない事なの!?」


「なんだよ。誤魔化す必要なんか無かったな。流石古くからの付き合いがある幼馴染の大親友……スイとリクも気付いていたみたいだな。“自分達が力になるからそんな事言わないで”って面持ちだ」


「ハッ、分かってんじゃねぇかよ。まあぶっちゃけ、俺がホムラと同じ立場なら同じ事を考えていただろうな。それが男の生き様。そして死に様だ。女にゃ分からねえよ」


「あら、女性にも理解出来るわよ。理解した上で理解不能って結論に至るだけだけどね。自分が満足出来たら死んでも良い……そんなの分かりたくないし、私が許さないわ」


「私も許せないよ……ホムラ!」


 ホムラ達四人は、基本的にツーカーで通じ合っている。なのでホムラの態度や言動からやるだけやり、死のうとしている事も分かった。

 リクはその性格などからホムラを理解しているが、フウとスイは理解しない。した上でしたくない様子。

 死んでもいいという考えは理解しない方が良いかもしれない。


「やれやれ……男という生き物は分からないな。何故子を作り、その子を育てるという未来すら捨てようとするのか」


「それが本能だからね。僕も彼側の思考かな。男性は戦闘、外に出て自分の身を犠牲にしてでも愛する者を護る。女性はそんな男を待ち、愛する者をはぐくむ。生物学的にそうなっているのさ」


「しかしながら、何となく私は女性の考えも分かる。当然男性の考えも。私自身は男というのに不思議だな」


「「ソラは中性的だから」」

「……」


 ホムラ達の言い争いに、メグミ、カイ、ソラの三人も話す。

 男女は互いを理解しているようで理解していない。複雑怪奇な関係のまま子を育み一生を終える。そう言った事が原始の時代から行われている。おそらく人類史では解かれる事の無い難問だろう。

 そんなやり取りが行われ、気まずくなりつつある雰囲気の中、セイカが言葉を発した。


「あの、皆様。よろしければご飯食べて行きませんか? 今から作ろうとしていたところなので丁度良いですよ」


「「「「……は?」」」」

「「「「……え?」」」」


 全員から困惑の声が上がった。同時に誰かの腹の音も聞こえる。それについては皆が貴族及び、元・貴族。指摘しなかった。

 ガルム達も集まっており、夕食を待ちわびている様子だ。


「……フッ、そうだな。腹が減っては纏まるものも纏まらん。戴くとしよう。……いや、まだ準備中か。手伝うよ」


 最初に意図を理解し、名乗り出たのはメグミ。

 それに続き、理解力が高く、良い意味でホムラ達より親しくない他の四宝者が話した。


「そうだね。そもそも買い物をしたのは泥棒トキか。この量、この動物達の分を含めても些か多すぎると思うんだけど」


「何か私のニュアンスが変。これは明日とか明後日とか、その時に備えて……!」


生物なまものはすぐに駄目になる。保存する術があれば良いんだけどね」


「うぅ……何か四宝者の癖に家庭的過ぎない?」


 主にトキへのダメ出しについて。

 しかしその言い分はごもっとも。保存する術が無いのでホムラやセイカはその日の分の食料しか買わないが、トキは張り切ったのもあって多く購入してしまったようだ。

 その流れによって不穏な空気は薄まり、フウ達とホムラも落ち着いた。


「取り敢えず、食べてくか? 見ての通りフウ達の分もある」


「……。そうだね。御馳走になろうかな。まだモヤモヤするけど……お腹が空いちゃっているのもあるかもしれないからね」


「だな。食うのも娯楽の一つだ」

「リク、言葉遣い。相変わらず下品ね。まあ、私も戴こうかしら」


 元々、四人の仲は最高クラス。だからこそホムラへの指摘があったのだが、切っ掛けがあれば仲直りするのも早い。

 今はまだ仲直りと言える状況でもないが、そこまでの争いに発展したりは無いだろう。

 一先ず食事を摂るだけ摂り、後はその後で話す事にした。



*****



「それで、手伝いとは具体的に何をすれば良いのだ?」

「フッ、さっぱり分からないな」

「やれやれ……メグミ、カイ。私もそうだ」


「「「…………」」」

「「「…………」」」


 夕食の手伝いをするに当たって、メグミ、カイ、リクの三人は何をすれば良いか訊ねた。

 そう、四宝者も貴族。元々候補生であり、料理などと触れる機会は無い。故に何も出来ないのである。

 ホムラ、セイカ、トキ。そしてフウ、スイ、リクもそれを見て呆れていた。その瞬間に準備へ取り掛かる。


「スイ。水を入れてくれ」

「良いわよ。“ウォーター”」

「サンキュー」


「フウさん、風お願いします」

「良いよ。セイカ様も火頼みます」

「任せてください」


「コレとコレとコレかな」

「華奢な割にはすげえ力だな」

「まあね~。厳密に言えば力じゃないけど」


 ホムラは水魔法の使えるスイに頼んで水を入れて貰い、丁度良い火加減にする為、フウとセイカが火と風を使う。トキが食料を軽くして運び、それにリクが感心する。

 その様なやり取りは片手間。手際良く料理が作られていく。それを見、メグミ達は呆気に取られていた。


「凄い手際の良さだな……」

「ああ。素直に称賛出来るよ」

「流石、ゴウの弟分、妹分だ。私達の中でも料理などが出来るのはゴウだけだった」

『バウ!』

『ボニャアン』『ニャアブ』

『ニャビュウ』『ニャアゴ』


 作られた料理は並べられ、何も出来ないメグミ達はガルム達を撫でながら食堂の椅子に座る。

 その様な事を話しているうちにも次々と料理が並べられ、見る見るうちに準備が整えられる。

 やって来た追っ手、フウ達三人とメグミ達四宝者。戦闘は起こらず、一週間振りに再会したホムラ達は食前の挨拶のようなモノを交わし、食事を開始するだった。

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