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101ページ目 クエストの内容

「死者を復活……? そんな事出来るのか?」

「出来る訳無いだろ」

「ああ。心臓も止まっていると思うし、呼吸もしてない」

「そもそも火の系統の死体なんて一体何処から……」


 運ばれてきた火の系統の遺体や目的の真相など疑問は多々ある。

 しかし他の冒険者達は、死体に驚きはしつつも畏怖はしていない。むしろ疑問があるからこそ畏怖する暇もないと言ったところだろうか。

 ペリエントは説明を続ける。


「その為の依頼さ。この世界から火の系統が少なくなってしまった現在、そんな火の系統である君達の力が必要なんだ」


「「「…………?」」」


 ペリエントの話し方に違和感が無くなった。そのまま事を説明する。

 死者を蘇らせる為にその系統の力が必要。理屈は分からないが、その目は真剣その物だった。

 そんなホルマリン漬けの遺体を女性が運び、ホムラ達の前に立って頭を下げる。


「説明の通り、アナタ様方のお力を貸してください。私はメアリー・ティスト。ペリエントの助手をしております。そうですね……私は気軽にメアリーと呼んで下さい」


 その名、メアリー・ティスト。

 曰くペリエントの助手との事。

 聖母のような笑顔。しかし何処か影がある。ホムラとセイカは警戒を緩めず、他の冒険者達が続けるように質問をした。


「力を貸すというのは、具体的に何をすれば良いんだ?」

「私達、簡易的な回復魔法は使えるけどそれだけだよ?」

「そもそも死者蘇生出来る魔法なんか聞いた事もない」

「早く説明してくれ。家族が待ってるんだ」


 それは当然の疑問。

 此処まで一向に概要の説明がされない。炎による力を貸して欲しいというのは、言ってしまえば火の系統に限定して依頼を出された時点で分かっていた事。

 此処までで分かったのはペリエントとメアリーの名。そして目的くらいである。

 ペリエントはその質問に答えた。


「簡単な事です。魔力を少しばかり分けて貰いたい。色々と実験をしてみて、やはり質の良い魔力も試してみなければならないと考えたのですよ。初級魔法で十分です。僕は見ての通り様々な魔法に精通しており、それ専用の装置も作りました。その装置にアナタ様方の魔法をぶつけるだけです」


 そう言い、謎の機械を持ち出す。

 ペリエントが造り出したという装置。それにホムラ達の炎魔法をぶつけるとの事。

 その装置にぶつけるとどの様な反応と変化が起きて死者に影響を及ぼすのかは分からない。だがそれだけならばと冒険者の面々は杖を構える。


「その程度ならお安いご用だけど……」

「本当にそれだけで報酬金が貰えるのか?」

「あの報酬金に対して割に合わなくないか? アナタ方の方が」


「いいえ、その様な事は御座いません。謂わばアナタ様方は被験者の立場。僕の実験に付き合ってくれているのだからね。寧ろもっと払いたいくらいだ。実験の費用に糸目はつけないさ」


「変わっているな」


 特に疑問なども持たずに杖を向ける。

 ペリエントとメアリーは装置を容器に接続して離れ、冒険者は口を開いた。


「「「──火の精霊よ。その力を我に与え、対象を撃ち抜け“ファイアボール”!」」」


 一斉に放たれた火球。それは装置に直撃。魔力が霧散して遺体の入った容器に伝達した。


「おお、やはり良い! 良質な生きた魔力がちゃんと伝わっているぞ!」

「流石、現役の冒険者様方!」


 その光景に称賛するペリエントとメアリー。反応は上場だったらしく、更に促した。


「では次に中級魔法をお願いします。上級魔法は使える存在が限られている上に威力が高過ぎますからね。次で最後です!」


「「「──火の精霊よ。その力を我に与え、標的を打ち砕け! “ファイアキャノン”!」」」


 先程の火球よりも数倍大きく速い火球が放たれ、装置に激突。同時に炎が燃え上がり、前方は業火に包まれた。


「素晴らしい! これならもうすぐ蘇らせられる!」

「やったわね! ペリエント!」


 それを見て歓喜する二人。

 果たして何が成功したのかは装置を知らない者達には分からないが、取り敢えず成功したらしい。

 ペリエントとメアリーは装置を外し、容器を見やる。その前に冒険者達に笑顔で話した。


「では皆様方は一度屋敷の貴賓室に入って下さい。もうすぐ実験は成功します。あと一つだけ役割がありますので、準備が出来次第お呼び致します」


「ちょっとした間食の準備もしております。ゆ~っくりと休んでください」


 貴賓室に案内され、各々(おのおの)で寛ぐ。

 ティーセットと菓子類が出されており、詠唱と魔力の使用で喉が乾いた冒険者の面々はそれを含む。元々貴族の屋敷という事もあってソファーなどの備品は上質な物であり、穏やかな空間が流れていた。

 何があるのかは不明。それは変わらず、ホムラとセイカはどうもあの二人が信用出来なかった。


「どう思う。セイカ」


「はい。ただひたすらに怪しいですね。あの装置が何なのかなど、一番気になる説明は誤魔化されているような気がします」


 総評は“怪しい”。ただそれに尽きる。

 あの二人の説明を思い返してみても、長々と色々語っているが一番大事な部分はよく分からなかった。

 しかしそれっぽい態度とふてぶてしさ。その二つが合わさる事で妙な説得力を生み出す。だからこそほとんどの冒険者は疑問を抱かずに納得してしまったのだろう。


「俺も同意見だ。そもそも本当に死者蘇生なんか出来るのか? 生者の条件は心臓が動いていて脳も働いている事。そして自分の意思を持っている。あの死体は完全に生き物としての機能が停止していた。ホルマリン漬けにされていたのも腐らない為だろうし」


「私達の考える“生”と彼らの考える“生”が違っている可能性もありますね……」


「そうだな。寧ろその方があり得ると言うか。死体を利用しようって時点で完全に他人の命を顧みない性格だった。俺も言えた義理じゃないけどな」


 そもそもの前提として、ホムラとセイカの倫理観とペリエントとメアリーの倫理観が違う可能性も出てくる。

 そこでふと、周りに違和感を覚えた。


「……なんか、静か過ぎないか?」

「そう言えば……一体なんでしょう?」


 先程まで賑わっていた周囲を埋め尽くす程の静寂。

 ホムラとセイカは話をしていたので途中まで気付かなかったが、いくらなんでも静か過ぎる。

 二人は辺りを見渡した。


「……眠っている?」

「みんな揃って仲良くお昼寝……と言う訳では無さそうですね……」

「……。なんかあまり良くない雰囲気だな」


 周りの冒険者達は眠りに就いていた。

 余程疲労が溜まっていた……と言う訳では無く、単純に何かが仕込まれていたのだろう。

 その時、貴賓室のドアに手が掛かる音が聞こえた。二人がやって来たようだ。


「一旦隠れるか。セイカ」

「え? あ、はい……!」


 小声で話、ホムラがセイカの手を取る。

 セイカはまだ状況が飲み込めていないが、セイカ自身が一度似たような事を体験した事もある。

 それについての対応は迅速であり、二人は誰も居ない方向の大きなカーテンの中に入った。


「ホムラ様……」

「少しキツいけど、窓も開いている。多少の揺れも気にされないし我慢してくれ」

「は、はい……。そうではないんですけどね……」

「ん?」

「な、なんでもありません」


 大きなカーテンだが、二人入るには少し狭い。故に密着する形となっており、セイカの胸がホムラに押し付けられていた。

 だが、それくらいなら毎晩感じている事。そもそもベッドでは裸体なので衣服がある分今の方が普通だろう。

 互いに息の掛かる距離なのは許容範囲。二人はカーテンの隙間から貴賓室の様子を覗いた。


「効いたみたいね。睡眠薬」

「その様だ。人数は……まあ沢山居るし最初からこんなもんかな」

「どうせ全員生け贄。関係無いわ」

「そうだね。さっさと運ぼうか」


「生け贄……?」

「やっぱり怪しいですね……」


 睡眠薬で眠らせた冒険者達のローブや衣服を剥ぎ取り、男女問わず一糸纏わぬ姿にした後で二人は何処かへ運ぶ。

 何かしらの行為に及ぼうとしているのはその様だが、衣服を脱がす作業が機械的であり何の感情も無いのを察するに性行為ではない。

 その、“生け贄”と言う言葉や会話の内容を聞く限りあの容器に入った死体と関係しているのだろう。


「何にせよ、放って置く訳にはいかないな。今捕らえるのは簡単だけど、どうする?」


「念の為、何をするつもりなのかの確認はして置いた方が良さそうですね。あの二人だけの犯行では無く、裏での繋がりなどもあるかもしれません。……しかし、冒険者方達の身に何か起こるというなら即座に止めます」


「分かった。セイカの案に乗ろう。全員を運び出すのにも時間が掛かるだろうし、先回りでもしておくか」


「はい。ホムラ様」


 あの二人だけじゃない事を考慮し、ホムラとセイカはあの大広間に先回りする。

 少なく今屋敷に居るのはペリエントとメアリーだけの様子。ホムラとセイカはやる事を確認し、あの者達が部屋を発った隙に大広間へと向かった。



*****



「さて、何をしているのか」

「全員を容器の前に集めましたね……」


 一足先に大広間に着いたホムラとセイカは物陰からペリエントとメアリーの様子を確認する。

 まだ冒険者の者達は何もされていない。間違いなくこれから何かするつもりだろうが、ホムラとセイカはそれを確認したら即座に仕掛けるつもりでいる。


「フフ、もうほぼ完成だ。既に動き、魔法も使えるけど、これで完璧になるね」


「そうね、ペリエント。元々魔力を有した魔法人形。これを使えば火の系統は復活する。まあ、個人的な実験だからそれ自体はどうでもいいけど、私達の研究が正しかったと証明出来るわ!」


「良いね。早く完成させようか。騙し、欺き、多くの尊い犠牲を出した甲斐があった!」


 二人の目的。それは死体を触媒とした魔法人形の製作。

 火の系統を再興させるのも目的の一つではあるが、自分達の研究を証明する事が最優先のようである。

 そして会話からするに裏には誰もおらず、二人だけの行動。更に言えば既に何人も犠牲者を出している。それが確認出来たのでもう問題無い。


「一つ聞きたいんだけど、その冒険者達をどうするつもりだ?」


「「……!」」


 思わぬ方向からの声を聞き、ペリエントとメアリーは勢いよく振り向く。その瞬間にホムラは闇魔法を放ち、二人の身体を縛り付けた。


「……っ。これは……」

「黒い……魔力……!?」


 黒い魔力による拘束。それを見た二人は状況を理解し、確かな頭脳は持ち合わせているのかその正体に気付いた。


「お前は……シラヌイ・ホムラ……!」

「火の系統全滅の主犯……!」


「ああ、世間一般ではそうなっている。以後お見知りおきを」


 挨拶をし、藻掻き苦しむ二人の研究者を眺める。

 不可思議な依頼と暫定悪人のペリエントにメアリー。ホムラとセイカは相対した。

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