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100ページ目 怪しいクエスト

 ──“翌日”。


 次の日、いつものように目覚めたホムラ達は一先ず衣服を着て準備をする。

 ゼッちゃんやサチ以外は色々と溜まっているので早めに衣服を着る事でそれを何とか抑えていた。


 そのまま朝食なども終わらせ、資金集めのクエストを受ける為に街の酒場へ行く。今回やって来たのはホムラとセイカのみ。

 そこからある程度のクエストを確認して選ぶのだが、今日は一つ気掛かりな物があった。


「……“炎の魔法使い求ム”? 不思議な依頼文だな」

「火に関する何かで困っているという事でしょうか?」


 それは、炎の魔法使いに宛てられた物。

 貴族の街“エレメンタリー・アトリビュート”は世界的に魔法使いを排出しており、各国でその街の出身者が活躍している。それは四宝者を含めての話。

 そんな街から火の系統が全滅し、世界的に火属性不足になっているのは分かる。分かった上で不思議な依頼だった。


「……何で依頼の詳細が書かれていないんだろうな。魔物の討伐とか手伝いとか、具体的に書かれていなくちゃ何をすれば良いのか分からない」


 それは、重要な事が何も書かれていないという事。

 書かれているのはただ二つ、前述した炎の魔法使いへの要請と“現地で”という文字だけだった。


「怪しいですね……どうしますか? ホムラ様……」


「何にせよ名指しでの依頼。何か裏があるかもな。裏があるなら状況次第で自分なりの行動をする。少し調査してみるか。……店主、このクエストと、あとこれとそれとあれを受けるよ」


「オーケイ! いつも多くの依頼をこなしてくれてありがとさん!」


 見るからに怪しい。怪しいのは逆に興味をそそる。

 なのでホムラはこのクエストを受け、その他にも色々と受けて酒場を後にした。



 ──“屋敷”。


「そんな訳で、今日は俺とセイカだけでこの怪しいクエストを受けてみるよ」


「またホムラと二人きり? ズルいなぁ。セイカ。私も一緒に居たいのに」


「ボクもボクもー!」

「私も……」


「悪いな。今回のクエストは名指しなんだ。また別の日には一緒に行こう」


「仕方無いかぁ……」

「ざんねーん……」

「無念……」


 怪しいクエスト依頼を見せ、トキ、ゼッちゃん、サチの三人は不平不満を言う。

 しかし今回は内容も内容なので三人も理解し、各々(おのおの)は自分の受けるクエストを手に取った。


「じゃ、行ってくる。皆も頑張ってくれ」

「おー!」

「うん、頑張るよ」

「今度はホムラとだからねー!」

「私も……」


 今回の編成はトキとフウ。ゼッちゃんとサチ。

 トキとフウもかなりの実力者だが、ゼッちゃんとサチの二人を相手にする存在は堪ったものじゃないだろう。

 ちなみに、それもあるので執事は留守番。今日は屋敷の掃除や庭の手入れ。ガルム達の世話をしてくれるらしい。

 ゼッちゃんとサチはまだ幼さも残るが、ある程度の経験を積み、やって良い事と悪い事の違いも分かり始めている。なのでそれの実験を兼ねた実習と言ったところだろう。

 ホムラ達六人は二人一組のパーティを組み、行動を開始した。



*****



 ──“道中”。


 パーティを編成し、依頼の先に向かうその途中。ホムラに向けてセイカが話す。


「ホムラ様……もしかして依頼主は以前私達の街で確認した屋敷消失の関係者では無いでしょうか……?」


「かもしれないな。この世界その物から火の系統は一気に数を減らした。とは言え、いくらなんでも来て欲しい人材が限定的過ぎる。俺達は一応“星の裏側”を拠点にしているって言っているけど、釣れる可能性を考えて俺達の情報から推測。火の系統をおびき寄せようって魂胆かもな。それか普通に火の系統が必要なのか。そのどちらかか、第三者もあり得るのか」


 今回の依頼内容から考えて、色々と不審な点は多い。

 限定的な指名。以前目撃した不可思議な現象。もしも屋敷と一部の死体が消えた事件が近日に起きていた事なら、その関係者が今現在行動に乗り出してもおかしくない。

 

「そのどちらにしても指定の場所に行くのが一番の解決法だからな。敵なら倒すか殺す。普通の依頼ならこなす。どっちでなければ臨機応変に対応する。それだけだ」


「はい、ホムラ様」


 警戒はしているが、行かない事には始まらない。なので先を急ぎ、ホムラとセイカは指定地点にやって来た。

 そこにはホムラとセイカ以外の人物も男女問わず何人かおり、全員が依頼書を持っている。

 その為、笑い意味で有名な二人はお互いの名を呼ぶ時は周りには聞こえないように注意していた。


「俺達だけじゃないのか。依頼を出されたのが各国や他の街問わずって考えたら変じゃないけど」


「報酬金もかなりありますもんね。ホムラ様によって戦争などが一時的に無くなっている今の世界。クエストも少ないのでこれに参加するのも分かります」


 どうやら今回のクエストは世界各国に出されていた物らしく、報酬金もかなりの高額なので依頼を受ける者が多いのだろう。

 そんな指定地点。目の前にあるのは豪華な屋敷。整備された煉瓦レンガ造りの歩廊が連なっており、道筋が少しダメージのある屋敷の方へと伸びていた。

 周りは屋敷以外の建物などが無い草原で、近隣の街からも離れている。

 あまり良い考えではないが、仮に此処で何人かが死んでも問題無い立地である。

 冒険者達が集まる屋敷前。その中から依頼人と思しき男性が胡散臭い笑顔を向けながらやって来た。


「やあやあやあ。ようこそようこそ冒険者の皆様方々。よくぞいらっしゃい参りました。僕が依頼人のロバート・ペリエント。勿論仮名です。気軽にペリエントさんとでも及び下さいませ。以後お見知りおき宜しくお願い申し上げます」


「……。凄い早口な依頼人だな」

「そうですね……。それに微妙に言葉がよく分からないと言うか……」


 男性は白衣のような服を着ており、眼鏡を掛けている。

 その髪の色は薄い茶色。目の色も髪とほぼ同色。その特徴からするに土の系統なのかもしれない。

 その言い回しには違和感があり、薬物でもやっているかのようなテンションの高さだった。

 ホムラとセイカ以外にもざわめきが聞こえるが、ペリエントはその様子を確認する。


「フムフム成る程、なぁるほどぉ。確かに皆様火の系統の様子。ローブ着用可と示していましたから顔を隠していらせられる方々も何人かお見受け致せますね。髪や目が分からずとも皮膚の質感に色合い。その他にも火の系統であろう特徴が御見えになっておりましています」


「「「……!」」」


「「…………」」


 これ程までの冷静な判断力。テンションがおかしいだけで正常ではあるようだ。言い回しは本当に変だが。


「では、ご案内を致しましょうでしょうか」


 何はともあれ、案内係を兼任した依頼人。ホムラとセイカ、及びその他火の系統の面々は屋敷の中へと入って行った。


「いやはや、まさかこれ程までの火の系統様方々が御協力してくださりますとは。感銘で御座いますです」


「い、一体何が目的なの?」

「依頼内容は“現地で”だが、まだ何も話されていない」

「ちょっと! どうなの!?」

「この屋敷を見るに貴族の類い。報酬金はちゃんと出るんだろうな?」

「此処に居る殆どの火の系統は貴族から堕ちた身。堕ちてなお冒険者として他者に貢献しようとしているんだ。ちゃんと払う物は払ってくれよ?」

「俺は平民の出だ。平民の中で珍しく魔力が高かったから冒険者になれたが……家族を食わせる為にも金が居る。大丈夫なのか?」


「ええ、御心配無く。御無用で御座いますよ。払う物はしっかりとお払い致しましょう。何せアナタ方はこの世界の将来に関係しますから」


「……?」


 妙な言い回し。

 相変わらずの言葉遣いもだが、世界の将来に関係するという事がである。このクエストはそれ程までに重要な事なのだろうか。

 しかしそれを気になったのはホムラだけのようであり、依頼人は大広間へと全員を案内した。

 そこは殺風景な所。いくつかの柱やテーブルと椅子以外は何も置かれておらず、“貴賓室”という感じでもなかった。


「広い場所だ」

「けど殺風景」

「あ、ヒビ入ってる」

「少し空気も悪いね」

「此処に何が?」

「依頼内容の説明がされるのか?」


「ええ。ご説明致しますとしましょうですか」


 ずっと変な言い回し。だが説明してくれると言うので場の者達は静聴する。


「皆様知っての通り、火の系統は著しく数を減らしております。大罪人、シラヌイ・ホムラの手によって」


「「…………」」


 火の系統は世界的に数を減らした。それは周知の事実。

 仮に世間一般や不特定多数の総評を“正論”とするなら、確かに伝わっている情報の中ではホムラが火の系統を全滅させた首謀者になっている。

 他の者達から意見は出ず、当のホムラとセイカも黙り込んでいた。

 横目で見てみればセイカは怒りで震えているが、此処で変な行動に出る訳にもいかない。ただひたすら説明を聞く。


「そこで僕は、いや、僕達は国から一つの依頼を受けたのです!」


「国からの依頼?」


「ええ、ええ! それがこの、火の系統再興プロジェクト!」


「……!」


 ババーン! という効果音と共に男性の背後に現れた女性。

 そしてその女性は、ホルマリン漬けにされた火の系統と思しき者達の死体を運んで来た。

 会場となった大広間にはざわめきが走り、困惑の声が上がる。


「なんだアレ……!?」

「赤い髪……火の系統か……!」

「し、死んでるのか……?」

「見るからに死んでいる……」

「一体なんなの!?」


「そう! それこそ世界の希望です!」


「希望?」

「ホルマリン漬けの死体が?」

「気味が悪いわ……」

「説明をしてくれ!」


 ペリエント曰く、世界の希望があのホルマリン漬け。

 火の系統の冒険者達は一歩後退り、ペリエントは何処までも優しい、胡散臭いが裏表の無い笑顔で口を開いた。


「彼らを生き返らせ、火の系統を復活再興させるのです! 希望は何度でも蘇る!」


「「「…………!?」」」


 ジャーン! と効果音でも聞こえてきそうな態度で手を広げ、女性がペリエントの背後から七色の水を放出させて演出を行う。

 女性も茶髪の茶眼。土の系統っぽいが、何故か水魔法を使っていた。


「ホムラ様……」

「ああ。まず間違いないみたいだな。この屋敷とあの死体……全部俺達の街にあった物だ」

「一体どうやって……」

「さあな。分からない事は多い」


 謎は深まるばかり。ペリエントの示す復活とは如何様になるのか。

 死体を拝借している時点でロクなものではないだろう。

 ホムラとセイカ。考えるまでもなく、また大きな事に巻き込まれてしまった様である。

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