99ページ目 行為
──“屋敷内・寝室”。
「話し合いの結果……こうなるのか」
「はい。フウさんを説得しました」
「や、やっぱり少し恥ずかしいよ……。ね、ねぇ。やっぱりさ……ホムラとセイカ様だけでした方が……」
──その日の夜、三人は裸体で向き合っていた。
フウは傷を見せる事の恐怖と、純粋な恥ずかしさからベッドのシーツで覆っている。
上半身を起こしている状態なので片手でシーツを抑え、胸や腹部の一部が隙間から見えている状態。赤面し、少し涙目にもなっていた。
「フウもそう言ってるし……やめておいた方が良くないか? 流石に嫌がる女性と……ってのは思うところがある」
「い、嫌じゃないけど……単純に恥ずかしいの……。お風呂の時はそうでもなかったけど……こう改めて向き合うと……」
「大丈夫です。フウさん。私も最初は不安でしたけど、と言うか今も不安ですけど、きっと慣れますよ! まだ本番には移行出来ていませんけどね!」
乗り気なのはセイカだけ。しかしそんなセイカの顔も少しぎこちない。頬も紅くなっている。
要するに三人の身体は疼いており、互いが互いを求めている状況だが気持ちの整理が付かない状況にあった。
「もう! 私をハブって置いて何その有り様! と言うか、私も誘ってよ!」
「……! ト、トキさん!?」
「いつの間に……」
「また時間を止めてやって来たのか」
そしていつものように、トキもやって来た。
トキを誘わなかったのは単純に勝手にやって来るのを分かっているから。
しかし何とも歯痒く牴牾しい三人を見ていて居た堪れなくなったのだろう。
「……と言うか、トキさん。見ていたんですか? 一体何処から……?」
「あ、それがね! 私って、時空間操れるじゃん! 少し空間を歪めてみたら壁の向こうが見えるようになったんだ! 透視ってやつ?」
「時空間魔法ってそんな感じなんですか……。何となくで使えるようになるって……」
曰く、透視を使えるようになったので壁の向こうから眺めていたとの事。
確かに壁などの類いも、というより基本的な物は空間に存在している。時空間を司るトキの魔法なら応用次第で何でも出来るようになるらしい。
「という事で、私も勿論ホムラに抱かれるから!」
「あ、衣服を脱がないで下さい!」
「もう全部脱いでるセイカがそれ言う?」
トキは既に乗り気。衣服を脱ぎ、小さな胸ながら少し揺れる。無い訳では無いのである。
「そんな事より、“ライトグラビティ”!」
「わわっ!」
「またですか!?」
そしてまた同じようにセイカとフウを浮かせ、自分だけの空間を確立させる。そのままホムラを押し倒し、荒い息でその体を見やる。
そのまま甘えるように妖艶な声を出した。
「ホムラぁ……私も受け入れてぇ……♡」
「ホムラ様! 何故無抵抗なんですか!?」
「……いや、この流れからして、多分今まで通りになるからな」
「え?」
ホムラを誘うトキ。ホムラの身体も求めてはいるが、そうならないであろうという事は薄々分かっていた。
そして予想通り、部屋の扉が開く。
「ホムラ! セイカ! 一緒に寝よ!」
「ホムラ……私も……」
「では、ゼッちゃん。サチ様。私はこれで」
「今回はちょっといつもと違うな。サチも来たか」
やって来たゼッちゃんとサチ。執事はその光景を見ないように頭を下げてこの場を離れ、セイカとフウの重力も元に戻って落下する。
ちょっとした振動が部屋に伝わり、ゼッちゃんとサチはホムラの近くに寄った。
「今日はフウも一緒なんだね! やっぱり裸なんだ!」
「最近暑くなってきたもんね……」
「う、うん。そうだよ。二人とも」
今の状況の意味を知らないゼッちゃんとサチは純粋に話す。
ホムラ達は改めてベッドに向かい、ゼッちゃんとサチも入り込んだ。
「ふふ、そろそろベッドも大きくしなければなりませんね。とうとう執事さん以外の全員が来ちゃいました」
「暑くなる季節なのに、更に寝苦しくなりそうだな。メランは“星の裏側”に帰って良かったよ。多分メランなら混ざるように入って来てた」
「アハハ……そうですね」
「ボクもホムラの隣ー!」
キングサイズのベッドだが、流石にこの人数は多い。
ギュウギュウ詰めの状態で、ゼッちゃんとサチ以外は衣服を着ていないので肌の感触が直に伝わる。
性別的に色々と問題があるホムラはベッドの端の方で背を向けるように居るが、ゼッちゃんがそちら側から入って来て押し込まれる。意図せずともホムラとセイカはベッドの中で向き合う形となった。
「ホ、ホムラ様……その……硬いのが私に……私の胸もホムラ様の胸板に当たってしまっていますけど」
「わ、悪い。流石にキツ過ぎるな。俺だけでも別の部屋に……」
「えー!? ホムラが行くならボクも行くー!」
「私も……」
「……駄目そうだな。別の部屋からベッドを運ぶか」
息が掛かる程の距離で向き合う形になった事によって、ちょっと態勢がああなってこうなっている。つまりそういう事。
このまま致す訳にもいかず、一先ず狭さ問題を何とかする為にホムラは闇魔法を展開。隣の部屋からベッドを運び出して隣に並べた。ついでに寝室の電気も消し、フロアランプのほんのりと小さな明かりだけを残す。
「おー! ひろーい! くらーい!」
「広くなった……暗くもなった……」
「ふう……これで少しは広く眠れるか。結局全員で寝る事になるなら寝室はベッド二つ常備で良いかもな」
「アハハ……私達の関係は一向に進展しませんけどね。まあそれは必ず進展させるとして、眠る時はその方が良いかもしれませんね」
ベッド二つ。広くなり、ゼッちゃんはゴロゴローと転がり行く。
サチもゼッちゃんの後に続いて転がり、向かい合わせになっていたホムラとセイカも離れる。
本格的にキングサイズのベッド二段構えを考えていた。
「ホ・ム・ラ♪ 私も隣良い?」
「トキ。いつの間に背後に来ていたんだ。また時間を止めたのか。あまり驚かせないでくれよ」
「うん、それは私も今分かった……」
背後からホムラに抱き付くトキ。時間を止めて現れたのもあり、驚いたホムラは闇魔法を展開させてしまい、トキの周りを鋭利な闇が囲んでいた。
それを感じ、冷や汗を流しながら苦笑を浮かべる。どうやら驚かせるように現れるのは危険と肝に命じたようだ。
「はぁ……。これじゃまたゆっくり眠れそうにはないな」
「ふふ、苦労しますね」
「私とセイカ。両手に花だよ。ホムラ。ほら、もっと喜んじゃって!」
「両手に花だから困るんだ」
二人のどちらにも当たらぬように仰向けとなってため息を吐く。
積極的な二人が左右に来た。裸体の肌が重なり合う感覚で堪える方が至難の技だろう。しかしホムラには相応の忍耐力もあり、少なくともゼッちゃんの前ではしないように我慢出来た。
「あ、そうだ。トキ達はまだ知らなかったか」
「え? なんの事?」
少し天井を眺め、眠くなるまで待っていたホムラだが一つの事を思い出してトキ、及びゼッちゃん達に話し掛けた。
この場に居ない執事とメランにはまた後日としてトキ達に説明する。
「昨日俺達は一度帰郷しただろ? その時見つけた変な事を一応教えておこうってな」
「変な事?」
それは、昨日“エレメンタリー・アトリビュート”で見つけた不可思議な物。
トキは小首を傾げて疑問符を浮かべ、ホムラは頷いて言葉を続ける。
「ああ。簡単に言えば屋敷が一邸消えていたんだ」
「屋敷が? 屋敷ってバカ貴族のだよね?」
「そうだな。詳しく話すよ」
そして行った説明。
屋敷が消え去っていた事と、周りにあった死体もその周りだけ無かった事。あった事を包み隠さず全て話した。
「──という訳だ。もしかしたらその死体が悪用されて、俺達にも何かしらの影響が及ぶ可能性がある」
「へえ。死体使って何するんだろ? ボクには分からないや」
「私も……」
「私もよく分からないけど、こんな世界だもんねぇ。それについての何かがあるかもしれないって言うのはあり得るかな。頭の片隅でくらいは警戒した方が良いかもね」
目的は不明。何なら誰も仕業かの検討すら付いていない。
しかし、何かしらの陰謀の気配はある。その事を片隅に入れ、話は終わった。
「そろそろ寝るか。ゼッちゃん達もだぞ」
「えー……まだ遊びたい……」
「とか言いながら眠そうだな。ほら、おやすみ。ゼッちゃん」
「うん……ホムラ……」
子供は、先程まではしゃいでいたと思ったら急に静まり返って眠る。内部での切り替えがはっきりしているのだろう。
裸体でセイカとトキに挟まれているのでゆっくりと眠るのは難しいが、まあ眠れない事も無い。
虚無の境地と相対した今日も終わりを迎えた。
*****
──“某所”。
「「「──火の精霊よ。その力を我に与え、標的を撃ち抜け。“ファイアキャノン”」」」
複数の声が響き、同時に中級魔法の火球が的を砕いた。
そこに一組みの男女がやって来、おそらく火の系統であろう顔色の悪い者達が規律よく隊列を整えた。
「流石の火力だ。火の系統。全滅したと聞いた時はどうなるかと思ったが、これなら再興も出来る」
「シラヌイ・ホムラを討伐する為に火の系統を使う……実にイイじゃない。系統の仇討ちと言ったところね」
「闇魔法の根源は分からないままだが、火の系統から生まれている。火の系統をもっと研究出来ればより大きな戦力になるだろう」
この二人は研究者らしく、火の系統の再興を考えているようだ。
それ自体は良い事だが、そんなに良い人は極端に少ないのがこの世界。二人は別室に移動し、その子達を見下ろした。
「うぅ……」
「わーん!」
「パパー! ママー!」
「ハッハッハ! 何を泣いているんだ子供達。何度も言っただろう! 君達は売られてしまったんだ。他の場所に買われたら性的虐待をされていただろうね。安心しろ。僕達なら君達を有効活用出来る」
「何れも外に追放された、他国の火の系統の奴隷。再興するには良い実験体ね。火の魔力器官は少し熱いらしいけど、熱いうちに研究しましょうか」
二人曰く、奴隷である子供達。つまり悲しむ者は誰もおらず、何をしても世間から批評を受ける事はない。
その手の趣向を持つ者は多く、年端も行かない子供の奴隷は人気商品である。
此処に居る子供達も衣服などの類いは身に付けておらず、傍から見たら幼児趣味の男女になるが、この二人はその様な趣向の存在では無い様子。
「さて、幼い子供の魔力器官を調べる事でより多くの情報が入ってくる」
「解剖しましょうか♪」
「ひ……」
「……っ」
「ぐすん」
単なる実験道具でしかない。
衣服を着せないのは解剖しやすいから。当然、麻酔などの類いも無い。そして殺してから解剖するのではなく、生きたまま解剖する。新鮮な内臓の方が研究材料として適切なので当たり前だ。
それに加え、幼い子供の器官なら成長途中であり、大人の奴隷と見比べる事も出来る。実に合理的だろう。
「“ウィンドカッター”♪」
「あ゛あ゛っ……!?」
「「ひっ……!」」
そして、女性が子供の腹部を裂いた。
真っ赤な鮮血が飛び散り、実験室を赤く染める。
その光景を見て二人の子供が恐怖に歪んだ表情をし、女性がとろけた笑顔で子供の腹を探って手を突っ込み、引っ張り出して愛おしそうに内臓を撫でる。
「アハッ♪ やっぱり新鮮で綺麗な内臓♡ プニプニしてて柔らか~い♡ それに匂いも大人よりキツくない♪ 発展途上なのがまた美しいわね♡ ……おっと、惚れ惚れしている場合じゃなかったわ。死体から魔力の器官を抜き取ったら中の魔力も漏れ出してしまうものね」
「そうだね。残りの子供達もさっさと解剖しようか」
「「……た、助け……!」」
男性が子供を見やり、子供達は小さく悲鳴を上げて逃げ出そうとする。それを男性は土魔法で捕らえた。
「逃がさないよ。君達は大切な実験体なんだ。大丈夫。すぐに死ぬ訳じゃない。常に回復魔法を与えてちゃんと生きているうちに実験を終わらせるよ。最終的には死ぬけど、世界の発展の為。必要な犠牲だ。君達のように生きていても性処理やストレス発散にしか使えない存在ですら役に立てるんだ。その為の全ての苦痛を快く受け入れてくれ」
「ゃ、いや……」
「パパー! ママー!」
「アッハッハッハ! そのパパとママに売られたんだよ君達は! 僕が言うんだ間違いない! 人は皆自分第一。実験体に大金はたいたから今頃君達の両親は幸せを感じている筈だ。なんたって奴隷市場の5倍は払ったからね。なに、世界の発展、及び復興の為には安い資金。何より僕達が楽しく実験出来る。──君達は存在価値があるよ♪」
どこまでも優しい、聖母か救世主のような笑顔で男性は子供に笑い掛けた。
実際、救世主とはそう言うものだろう。火の系統を再興するのは世界の為になるのだから。
シラヌイ・ホムラ討伐の為には重要な事である。
もっとも、その後魔法使い達の国が大きな戦力を手に入れてしまうと世界を支配しそうだが。しかし魔法使いの二人にとってはその方が良い。
「さて、実験開始だ。魔力は残っているか?」
「当然。絶対に子供達は死なせないわ。……実験中はね♪」
「流石。君は優しいね」
そして、実験が始まった。
実験室に響くのは子供達の泣き声と悲鳴。二人は可愛い子供が苦しむ姿を見て恍惚の表情になっており、それが原因で身体が火照る発情にも近い状態になった。その感情を発散する為、実験の後二人で致す事だろう。
火の系統の復興。それは世界の為。大事な事。何処からどう見ても聖母と救世主の二人は実験を行うのだった。




