ささやかな願い
何度も読み直して、おかしな文章、文法に注意を払っていますが
へんな文章があれば、コメントください。
それでは第二話をよろしくお願いします。
5/22 5:07 加筆、修正
* * *
「シシア、ゼンは、また洞窟か? 」
シシアと呼ばれた女性は、性格も外見からも優しく柔らかな雰囲気をもち亜麻色の髪は腰まであり日中陽の光を浴びるとキラキラと輝くことで更に映えてみてくるほどだ。
今はいつものように家事作業のため、庭で軽く鼻歌を歌いながら洗濯物を干していた。
シシアは干した服を軽くはたきしわを伸ばしたところで、声の主の方に身体を向けると髪全体が軽く風に揺れてキラキラと陽の光に浴びて輝きだす。
「はい、ヴァーガス様。今日も採掘場にいますよ」
「様はやめてくれって言ってるじゃろ、偉くもないし。シシアよ、おまえはもううちの娘とかわらんし、あの子親じゃ」
「……ありがとうございます。つい気を抜いてしまうと癖がでてしまいますね」
ここにきてそれなりだというのにシシアは軽く頭をさげ謝罪する。
彼女の距離を置く言動に軽い嘆息しながらも仕方ないことじゃのと、性といえばそれまででシシアにあった視線は空に向けられて漏れてしまう。
「もう四年か、早いもんじゃ……」
ヴァーガスのひとり言とも取れる言葉に、これまでの事に思いをはせてしまう。
シシアの存在からすれば瞬きにもならない時間だが、これまでの四年は眩しく辛かったとしてもゼンがシシアに向ける笑顔で救われて、そしてゼンの祖父、祖母にあたるヴァーガス夫妻に助けられて平和に暮らすことができている。感謝しても感謝しきれないものだ。
「しかし、ゼンの事は心配にならんのか? 」
感謝の念に浸っていたシシアはヴァーガスの一言に引き戻され、ヴァーガスの方に視線を戻すと思わず笑いそうになるのを堪えてしまう。
ヴァーガスの言葉こそ普通に聞いてきてはいるが一部を除いて、不安を訴えていた。
両腕を組みその腕から規則正しく動いているものがまるで、遭難者が救難信号を送るように見えて心配アピールを隠せてませんよ? と思い、思わずシシアはさ笑いそうになる。
「ふふ……大丈夫ですよ。あの子の傍にはいつもフリアが付いてくれています」
「もう一人の母親の存在か。まぁたしかに……そうなんじゃが……」
理解はしていても、ヴァーガスは内心は心配でいっぱいで、ブツブツと聞き取れないレベルで漏らす声は、代わりに指が更に主張していた。
孫の事になると、ヴァーガスもここがどの島国よりも安全であるシーヴァリアだという事忘れてしまうらしい。
ゼンは近場で遊んでいたが、ここ最近鉱山にまで足を運ぶようになった事には最初はシシアも驚いたけど、フリアが常に傍にいて守ってくれるという安心からあまり心配をしていなかった。
その話を聞いた時のヴァーガスは驚きを隠せず思いっきり顔にでていたが、言葉は強気で『フン、石を見極めるにはその辺の石を見るより勉強になるじゃろ』とゼンに言うものだから、真に受けてそれからずっと鉱山に足を運でいることは本人も知るところでヴァーガスのせいであった。
思わず思っていることを口にしようと思ったがヴァーガスの背後に忍び寄る人影に気づき、どうなるのか理解して両手で耳を閉じると同時に会心的な一撃がヴァーガスの背中を打ち付けられる。
「ぐぁあっ」
「そんなに心配なら、教えてあげればいいでしょうがぁ」
その場で膝をつくヴァーガス、心配でかけよるシシア、声の主が誰だかわかっている二人、苦笑いのシシア、痛みを堪えながらゲンナリするヴァーガス。
シシアは心配の声をかけながらヴァーガスの背中をさする。
ヴァーガスの膝まづく姿の前に堂々と凛として立つのは、ゼンの祖母ことエレミネである。
「心配なものは心配なんじゃぁ。悪いかぁ」
「ぁあ? 自分でそうしろと言うたの忘れたか? ボケたか? 」
「ぐぅう……」
まさにぐうの音も出すが反論の余地もないとはこの事で、シシアはいつまでも元気な二人のこのやり取りも平和な日常のわずかに許された幸せに、感謝をしてしまう。
この幸せをいつまでも忘れずにいたい。だからシシアは笑いだす。
「うふふ……あははは、あははは」
シシアが笑うと、孫であるゼンの次に幸せなのかヴァーガスとエレミネは一緒になって笑うのであった。
いつものやり取り、ゼンが鍛冶師になりたいという気持ちをヴァーガスは受け入れないことでこうなっているが、誰もそれを本気で責めたりしない。
シシアはヴァーガスの気持ちをどこかで理解し心のどこかで同じことを思っている。宿命を課せられた存在であったとしても願わずにいられない。ゼンを託されたあの日からいつかはくるその時が今ではなく先に、もう少し先であってほしい。
レプリシアである私が、理を捻じ曲げてでも今を過ごしたい。この幸せな家族の中で暮らしていたいと――
* * *
一方、談笑が行われている所から遠く離れた鉱山洞窟内部では、最終カーブに差し掛かっていて、少年ことゼンの目先に明るい光が差し迫っていた。
一切の不安がなくなり、絶叫のごとく喜声をあげて風を切り坑道を滑り落ちていく。ゼンの内心はどこにむかっているのかとワクワクするまでになっている。
「あっ、あかりだぁ……」
と、声を上げたときにはもう抜けきっていて、あたりの明るさに目が耐え切れず薄めに視界を確認するが周りには何もなく、ゼンの視界に視認できるものが何もないのだ。
ごつごつした岩はないことを理解した。次は下に視線を恐る恐る向けることにする。
「え、えっ……え? 」
思わずゼンはバタバタと手足を動かすも空をきるだけで何の抵抗もなかった。お決まりのようにその後は、落下をするだけだ。
「あ――、ああああ、ああああああああ、うぁぁああぁああああ」
さっきまでの喜声はどこにいったのか、恐声に変り、今は真っ逆さまに落ちて落ちて、どんどん高度が下がっていく。
頭から落ちていくゼンはもう目に涙を浮かべながら、視界に移るのは緑敷き詰められた森林があるだけで、降下中のゼンの頭にはなぜ洞窟の中に森があることに疑問を持つことなんてできずそのまま森林に突撃していった。
枝や葉がゼンの身体を触れるたびに、折れてすれ落ちていくがゼンの身体に纏われた不思議な力は健在でゼンの身体を傷つけずにいる。
落下するスピードは森林に突っ込んだと同時に木の枝が衝撃を吸収し僅かずつだが緩やかに変化させていく。ゼンを纏う力がそうさせるのではなく、枝事態が吸収してくれていた。
さらに不思議なことに、折れた枝や葉がゼンの落下ポイントに集まり衝撃に備えて組み立てられていく。
ゼンの身体ほどの大きさに組み上げられたクッションに突っ込むと同時に大きな柔らかな衝撃音を鳴らし、枝葉のクッションが空を舞い踊っていた。
「いたぁ……っ、ってあれ? 痛くない? ん? ん? 」
枝葉のクッションから身をおこして、身体をまさぐり不思議に思っているところに声がかけられた。
「大丈夫か? 少年? 」
ありがとうございます。
よもぎ