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第十八話 迫る影

 一通り歩き回って疲れたマオとレフィは最初の神社の前に戻ってきた。


「……どうしたのレフィ」

「撒いた」

「まいた?」

「なんでもない」

「そうだ、この時間なら良いものが見れるよ。行こうレフィ」


 二人は神社への階段を昇り、最上段になった所で石段に座る。


「ここからの眺めいいでしょ」

「うん、綺麗」

「だよね? あぁ風が気持ちいい」


 今や誰も来ることのない寂れた神社であるが、町一帯の景色が一望できる隠れた隠れた名所だった。

 夕日に照らされて町もオレンジ色に染まる。


「ねぇレフィ、そろそろこの手錠外して欲しいんだけど? 流石にもう腕が着かれたよ」

「キーは家にある」

「うちに寄れ……ってこと?」

「マオ君、レフィはマオ君と“合体”するために来た」


 真剣なレフィの瞳が真っ直ぐとマオを見詰める。


「うっ、うぅちに寄って、ががが合体ぃ?!」

「マオ君がいいならここでもいい」

「ここ、ここここんなとこで合体をっ?!!!」


 飛んでもない事を真顔で言うレフィ。

 マオの頭の中にいけない妄想が駆け巡り、震えた声で激しく動揺する。

 するとレフィは繋がれた手錠を引き、大胆にもマオを自分の身体に寄せた。

 鼻と鼻がくっつきそうなぐらい二人の距離が近づく。


 先日のキスがマオの脳裏に過った。


(違う違う! これはセレス病のせいなんだ! 決してレフィに対してドキドキしているんじゃない!)


 いつものようにマオの身体は尋常じゃないぐらいの心拍数が上がり、全身から汗が滝のように吹き出す。

 また気絶してしまうのか、そう思っていた時だった。


「こんにちは」

「びぃゃあぁーっ!!?」


 背後から突然の挨拶にマオは心臓が飛び出るかと思うぐらいの奇声を叫んだ。

 そこに居たのは黒いジャージ服を来た髪の短いボーイッシュな雰囲気の女の子だった。

挿絵(By みてみん)

 いつの段階から後ろに居たのか階段に座るマオたちを上から覗き込むようにして見ている。 


「あぁっ……あぁ、こんにちは」


 いけない所を見られてしまったのではないかとマオは平然を装うが、顔面が汗でビチャビチャだった。


「……ねぇねぇマオ君、今は昼じゃない。もう夕方だから今はこんばんわ」

「こんにちは、はいつでも使っていい挨拶だよレフィ」

「むぅ」

「あはは、仲良いんだね君たち!」


 ジャージ少女は白い歯を見せてころころと笑う。


「僕の名前はトウカ。最近この町に越してきたんだ」

「へー、そうなんだ?!」

「そうだよ。君と同じ真芯高校の二年、よろしくね?」

「あ……あぁ…………」


 笑顔で握手を求めるジャージ少女トウカであったが、マオは手を出すのを躊躇してしまった。


「はは……ごめんね。いきなり握手とか図々しいよね?」

「いや、そんなことないよ! ちょっと僕は病気で……何て言えばいいのかな」

「じゃあ、そっちの手、その手錠は……何なんですか?」

「えぇ?! い、いやぁこれは……その、ちょっとした遊びでぇ……!?」


 段々、わけがわからなくなるマオはあわてふためく。


「マオー!!」


 すると階段の下からマオを呼ぶ声が聞こえた。

 ミツキとミヤビだ。


「な……ミツキ、ミャー?!」

「いい加減、まーにぃから離れなさい!!」


 眉間に皺を寄せるミヤビの手には使い古された庭木用の巨大なハサミか鈍く光る。

 真宮家の物置小屋にあったものだ。


「大人しくしなさい、まーにぃ……今ちょっきんしてあげるから。ミツキちゃん、まーにぃ押さえて!」

「や、止めろミャー!? そんな錆び付いたのでやったら危ないぞ?!」

「 まーにぃが動かなきゃバキィ! と壊せる」


 にじり寄るミヤビ。

 神社の方向へマオは逃げようとするもレフィはぼんやりとした顔で動かず離れられない。

 その時だった。

 平和を脅かすそれは再び町へと召喚された。


「なんだぁ、地震?!」

「マオ……振り向いちゃ、ダメぇッ!!」


 逃走を止めて町の方へ振り向こうとするマオ。

 するとミツキは突然、自身の着ているワンピースの長いスカートを捲り上げてマオを服の中へ包み込んで覆った。


「は、ふぁぁぁぁッ?!」

 

 マオの目に飛び込んだミツキのふくよかな肢体に面積の小さい黒い下着。

 それをダイレクトに、肌と肌が触れ合うゼロ距離で感じる。


「うぅ……ん……!」

挿絵(By みてみん)

「おぉ、お、お……ぱ…………っ!!?」


 暗く、暖かく、柔らかい。

 ロッカーの時とは違う、初めての生感触を味わったマオが気絶するのに時間は一分も要らなかった。


「いろんな意味でアウトだよ、ミツキちゃん」

「うぅ……マオぉ~」


 服の中で沈黙するマオを抱きながら泣き崩れるミツキ。

 ミヤビはミツキのあまりに大胆で突拍子もない行動に、呆れて開いた口が塞がらなかった。


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