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異世界召喚! ボルケーノ卿乱入。ありがとう。でも邪魔。結局、開戦になりました。

ここまでのあらすじ


異世界に巻き込まれ召喚された。領主にしてもらった。

よその貴族が攻め込んでくるらしい。

 開城を迫る連合軍がようやくやってきた。

初手は分散して攻め込んでくる予想だったが、全然来なかった。「鉄道予定地の高架」を見て、分捕りはあきらめたようだ。開城勧告→全軍突撃になるらしい。らしい、というのは城壁の上から敵の陣形を見ての予想だから。一点集中で城門を潰す考えのように見える。まあそれしかないよね。



 待ち構えたから、待ちくたびれたに変わりつつある俺の気持ちをだれかわかってくれるだろうか。


 村びと飛行クラブや獣人たちからの報告で、およその規模はかなり前から分かっていた。遅すぎるわ、連中。

 話には聞いていたが、見渡す限り難民と区別つかん。うちの難民スクールのほうがまだましな格好だ。ほぼ農民一揆だな、こりゃ。

 みんなで逃げてきましたと言っても騙されるレベルの貧しさに見えるが、本当に戦うつもりなんだろうか?


 「殿。うちの村びと・馬・鉄道の速度と装備がどれだけむちゃくちゃかということです。キッサ家からこちらに伺った身としては、敵ながらあのくらいが普通だろうかと思います。

前の戦争の時もキッサ家の領兵をはるかに上回る速さで殿だけ進軍したではありませんか。」 

 

「スンマセン。まあそんなもんなのか。あれは進軍というより飛んだんだっけかなあ。へへへ。」


 しかし雑な格好だな。連中は。せめて、革の服とかさあ。木の棒とか鍬じゃなくて、ちゃんと槍を揃えたほうが効果的だと思うぞ。


「おまえらは王の敵となった。謹慎して立ち去れ!」


 キッサの使いらしき男が叫ぶ。こいつは制服らしきものを着ている。だが、現当主ではないそうだ。

俺も城壁から見てたが、遠くてよくわからん。


 早速、塀の上からベッカー副大隊長が叫ぶ。電気式の物はまだ作ってないから、紙製のメガホンを作って渡してある。


「反論する。この場所は、あー、なんだ?

 あー?王立予定地??


 王立鉄道建設予定地であるっ。帰れ!」


 コイツ、本当にだめだな。駄目だから中隊の指揮取り上げて副大隊長にしたんだった。

まあ声はでかいからな。適材適所。



「我こそは造幣卿、ボルケーノである。通されよ。」


 連合軍の間を縫ってデカイ男が割り込んできた。しかしみんな声が通るなあ、と、くだらないことを考える。

 

 ボルケーノのおっさんじゃん。なんだ?相変わらず従者は無し。そこまでコストカットしなくていいじゃん。


「造幣卿ボルケーノ、国有地、国王領における鉄道の鉄を調査管理保全する。」


 けっこう強引な理由で、ボルケーノ造幣卿がやってきてくれた。領地にいろって言ったのに。(二度目)



 兵力としては援軍にも何もならん。でも、俺の気持ちの上で助かる。国連平和維持軍みたいに紛争地域の真ん中にいてくれる。


 ボルケーノの娘も学校から来る。お前は若いんだから勉強してろってば。休校だって。今日は。創立記念日か?ああいい匂いだ。


「サトー様。暴徒が攻めてきたので臨時休校となりました。

城壁から目をこらしたところ、我が家の旗らしきものが見えましたのでサトー様にお知らせに参りました。」


 美人だなあ。かわいいなあ。

 距離が近いのわざと?俺に気がある?フヒヒヒヒ。


ボルケーノのおっさんが独りで旗を振り回しても、暴徒の連中には全く効果がない。闘牛士みたいにあおってねえか?

あー、せっかくのところにパパがいてもなあ。しかしこんな暑苦しいオッサンから、どうしてこんなかわいい娘さんが???


 ボルケーノがいくら城壁と貴族の間に立って説得しようとしても、だ。造幣卿という職位があっても、キッサから見れば格下貴族だそうだ。これがもののみごとに全く相手にされん。ましてやサキューやサハラなどは役職もない底辺貴族で全く主張が聞かれない。サキューもサハラも来てなくてよかった。

ボルケーノには使いをよこし、うちの城壁の中から「調査」してもらうことにした。


「スンマセン。巻き込んじゃって。危ないからこっちきて。」


「いえ、王立鉄道の調査が。鉄の保全が。」


「スンマセン。気持ちはうれしいんだけどなあ。ありがとう。

 でもさあ、今、怪我したらお嬢ちゃんに怒られるでしょ、俺が。それは困る。」


 うちから回した兵隊はボルケーノ領にとどまり、そいつらの判断で逆襲する手はずだそうだ。うちの軍隊じゃない形を取りたかったんだがなあ。


「ですから、せめて一太刀、助太刀いたす。」

馬鹿デカイ刀を抜く。俺が贈った剣だ。ボルケーノ強そう。


「スンマセン。怖いし危ないから一旦しまって。まずは飯食って。」

どんだけボルケーノが強くても、今回は一方的に城壁から撃ちおろす戦いになるから、剣は要らないかな?


「ありがとうございます。ああうまい。モグモグ。うちの領内だと、これがね、ないんですよね。ああうまい。ありがとうございます。モグモグ。ああうまい。ああうまい。」


 ボルケーノさんが油断しきっている間に。そこらにいたモブ兵士に命じて簀巻きにした。


 「サトー殿、いかがなさった?ボルケーノは殿の味方ですぞ?モグモグ。」


 見事にブレねえな。


「ボルケーノ殿、手荒な真似してスンマセン。新しく作った鉄道はここだけではないので他の箇所も見分をお願いします。ここは本当に危ないから。」


獣人たちに頼んで、かなり遠いところへ送ったら束縛を解くようにした。マジであぶねーし、色々見せたくない秘密兵器もある。人間小さいんでね。スンマセン。ほんと。助勢の気持ちはうれしかった。ボルケーノちゃんかわいい。娘も丁重にお引き取り願う。



 踏みつぶしてしまえと貴族連合が攻めてくる。あれば使う、なければ盗む。盗む力がなければねたむそねむ足を引っ張る。こっちの世界はそうだよね。俺たちが弱いと思ってなめてる。俺の陰キャ暦を馬鹿にされては困る。


 一応俺も言ったほうがいいだろう。


「何度も警告したからね、君たちには。


あー、当職は鉄道卿として、国有地国王領を管理する責任があります。えーっと、管理を妨害する者は、国王に反逆する暴徒と見なします。国王領への立ち入りはお断りします。

 暴徒は排除します。」


聞こえないし、もし聞こえてたとしも聞いてないと思うけど。


ついに兵隊たちというより雑兵、悪くすれば群集か暴徒の群れの程度の連中が城壁に取りついた。さっきは見えなかった制服らしき者もわずかながらいる。貴族連合だからか、制服らしきものも何種類かあるようには見える。

しかし、ほぼ、農民らしき恰好の者たちだ。


 文字通りの鉄壁。その手前に空堀を前にして、いったい、どんな策があるんだ?

それほどのぞき込むことはしない。矢も怖い。高所も怖い。


「殿、これでは大砲が撃ちおろせませんな。」たまたま近くにいたモブ士官に文句を言われる。あとで改善しないといけないな。あとがあれば。


 俺が言い終わると同時に岩の塊が飛んでくる。投石器があるのか。俺の城壁が鈍い音を立てて、塊を跳ね返す。城壁に取りついた兵隊たちに岩の破片が容赦なく降ってくる。同士撃ちだ。フレンドリーファイヤー。現場は全くフレンドリーではない。


 こいつらの返事は岩だな。よし分かった。

 こちらは対抗上、登ってこられないように「王立鉄道橋梁」に油を流す。


これなら岩を転がしたりして大土木工事をして堀を埋めてしまったほうが理にかなっているのではないか?や、相手のすることだから俺は見てるだけなんだけど。

 正確には見ていすらいない。安全な城壁の陰に隠れて、見張りの者の報告を聞いているだけ。俺、城壁の上にいる必要なくない?


そうやって、さっきから砲台役として最前線の「王立鉄道建設予定地」から、敵の動きを観察している。むろん、うちの動きも観察している。大将なんだからどんと構えろという意見もあるだろうが、砲台だから。俺。


 俺の命令を待たずに、サトー軍の反撃が始まった。


「あれ?俺の号令は?俺、領主なんだけど。勇者。酒勇者。鉄道勇者。おーい。」


「それ、殿の命令じゃ!かかれ!やってしまえ。」


だから、まだだってば。


 大勢の叫び声が前から聞こえる。

 しばらくすると、横から鉄砲や大砲の地響きがする。え?さっき大砲撃ちおろせないといっていたのに?震度2か3か。大型トラック化バスが横を通った歩道くらいの揺れ。血の匂い・苦痛のうめき。


火矢が飛んで来たと報告がある。猛攻の部類なんだそうだ。矢も高いからね。群衆を煽るだけなら無料。弓兵を育てて矢を飛ばすには手間もお金もかかる。火魔法を使える人材となると国家レベルらしい。なぜか、うちにはうようよいるんだけど、まあ、魔法よりは火矢のほうがてっとり早い。


 で、その、火矢は俺の城壁のぬるぬる油に引火する。

「スンマセーン。油追加しますから逃げてくださーい。」城壁から軽油を流す。城壁に取りついていた敵が、文字通り火に油。そのまま転げ落ちていく。落ちた先の空堀には渋滞待ちの敵どもが欲まみれ油まみれで押し合いへし合いしている。そこへ火が付いた連中がふってくる。欲まみれ油まみれに火だるまが加わって大変なことになってる。


 立案計画命令した俺がドンビキなくらいの一方的な虐殺になってしまった。


 事前に商人さんたちに頼んでデマ流した。というより本当のことを知らせる。本当のことだから商人さんたちは悪くない。


「これはご貴族様たちだけにお知らせする秘密でございます。サトーの撃つ不思議な弾は真鍮や鉄がメインでございます。

 しかし時々 金 も混ざっているようです。


 ご貴族様、秘密でございますが、弾に困って王国から預かっている金を溶かし始めました。ご内密ご内聞にお願いいたします。

 いや余計なことを申しました。」


あのね、土壌汚染とかいろいろ考えるとね、鉛だめ劣化ウランだめ、鉄の芯に真鍮のカバーとか金の芯になっちゃう。


商人さんたちは「聞かれたから」もし弾を持ってきた場合の買い取り価格までお貴族様たちに「ご相談」をした。


秘密にはならん。さあ悲惨。


戦場で撃たれた奴がまだ生きているうちに、その仲間であるはずの隣の男が小刀で弾をくりぬく。銃弾に対する処置としては正しいのかもしれないが、味方に殺される事態になっちやった。


 俺たちは、まずは指揮官から撃つ。身分が高ければ硬い鎧をしている。見ればわかるらしい。俺にはわからん。服装も違うし、列の後ろにいる。それは分かるがそれも何人かいて、その中のどいつが指揮官かまではわかんない。

 司令官が撃たれると周りの下っ端が寄ってたかって鎧を剥がして滅多刺しにする。

 組織として成り立たないだろそれ。社員の課長店長が倒れたら周りにいたバイトがとどめさすんだよ?部長かも知んない、取締役かも知んないけどさ。あ、俺、昔バイトしてた工場の工場長なら刺すかも。アイツはゆるさん。


 さっきの炎が下火になった。生き延びた欲張りどもが、文字通りに仲間の死体を乗り越えて城壁に取りつく。踏みつけにしている先人から学ばないのか。こいつら。まだ熱いだろうに。


 引きつけといて上からまた油を降らす。鉄板の上だからヌルヌルする。転げ落ちていく。なんか単純作業になってきた。


 人で埋まったら、また火をつける。雑兵だろうが領兵だろうが、略奪目当ての強盗だ。敵とみなす。許さない。莫大な黒煙の壁に炎の壁で、その先でなにが起きているかみえにくくなった。煙幕という奴か。相手側も同様だろう。飛行クラブと獣人たちには回り込んでみてきてもらう。


 石油が燃える以外のイヤーなにおいがして来た。灼熱地獄。阿鼻叫喚地獄。合同火葬大会。


「目が!目が!」


うちの連中にも煙がかかる。いぶす。前がよく見えない中で、敵の弓が目に当たった兵士もいるようだ。横にいた兵士が全部脱がす。

エリクサーをかける。


「ぐわあああああああ」

脱糞している。恥ずかしいなあ、これ。もりもりと目が再生する。グロい。どうも慣れない。


 敵は金の弾目当てで仲間に刺される。こっちはエリクサーをぶっかける都合で仲間に脱がされる。両方とも絶叫している。

俺、もともとはライトに耳が遠く、逆に声がデカかった。こっちに召喚されて耳が遠いのは治っていた。だからこそ、うるさい。


「スンマセーン!オマエラ、静まれ。命令が聞こえない。」


その命令すら聞かれない。そんなに叫んだら明日は喉が痛いぞ。明日を迎えられるなら。


 煙が収まってきた。油切れか。逃げるやつもボウガンや鉄砲で撃つ。撃たれた奴は隣の兵隊に、やっぱり弾目当てに刺される。もちろん刺したやつも撃たれる。むごいなあ。

欲を出して攻め込んできたはいいが、踏んだり蹴ったりだ。ざまあ。


やつらの戦利品は、いまのところ万に一つの金の弾しかない。ハズレの場合は金と思い込んでる真鍮の弾。俺の村に入るどころか、一枚目の壁を越えられない。


さらにキッサ女伯のマークが入った装甲バスが追いかける。城壁の間合いの外に逃れたとしても、やっぱり鉄砲で撃たれる。


「サトー様!早く出たいニャン」ワン」ガル」ブヒー。」

獣人たちも、もう、たぎっている。みなぎっている。河童も天狗も鬼もみんな戦闘態勢だ。


「スンマセン、ちょっと待って。獣人も河童も天狗も秘密兵器。まずは只人が行く。」


「ニャンガルワンガオウブー。」


「スンマセン、これは只人同士の殺し合いという事でタノンマス。他の獣人氏族出て来たら、大戦争になっちゃう。サンド王国の中の只人同士のもめごと。最後の城壁抜かれて市街戦になったら、頼む。」


 装甲バスが追いついて、一方的な虐殺を始めた。まあ、今日は朝から大虐殺なんだけど、容赦がない。


 ちなみに、逃げるほうも追うほうも同じマークだ。キッサマーク。赤地に吠える魔物。しかし乗り物が違う。逃げるほうは異世界馬か徒歩、追うほうはバスだから、見間違えることは絶対にない。そういう作戦だ。作戦通りに進んでいる。


 いや、作戦以上だ。俺が撤収命じたら次の城壁まで逃げろ、順番に8段やろうと言っておいたが、全然その必要はない。


 一列目の城壁の上に上る敵すらいない。誰も登り切れないまま、塀の下の堀の中で焼け死んでいる。あるいはその先で撃たれて死んでいる。


空堀と鉄の壁一列目で皆止められ、倒れていく。あと何万人か来れば堀は埋まり城壁の上まで遺体が達し、乗り越えてこれるかもしれないがそんなに敵はいなかった。もし仮に敵が今度の百倍いても、次の城壁に逃げるだけなんだけどね。


 何千何百、キッサが動員かけてここに来た者のほぼすべてが倒れている。たいした怪我ではないが気絶してしまったやつや死んだふりをしているやつもいるかも知れないが、油かけて焼いてる。概ねお亡くなりになられてらっしゃるだろう。お気の毒に。


 逃げ出したのは一番後ろの貴族と直衛部隊たちくらいだろう。それもうちのバスの餌食になった。


グロすぎて臭すぎて、戻してしまった。鼻の奥が酸っぱい。対魔物の経験ならなんぼでもある。斬り合いにも参加したことがある。しかし、文字通り桁が違う。


 二千か三千か。もっとか。


 俺が、俺の責任で、俺が出した油か機械で殺した。

全部俺。 俺が、何千人の強盗を追い払い責任を取らせた。強盗だ、貴族連合なんかじゃない。何千人の強盗には何人も家族がいただろう。万を超える人間に、俺は殺すと言う形で影響した。


 体感では千人の俺私兵の十倍の敵を倒したくらいの気分だが、実数はどうなんだろう?


 大量の人間の野焼き。


 吐くものがなくなっても胃がでんぐり返りそう。自分が戻したものを見た。又戻す。日本にいたときに人が死ぬのを見たことはないな。亡くなる瞬間はないんじゃないかな。

遺体だってそんなに見たことがあるわけではない。乗っていた電車が、という時には俺は最前列には居なかった。万が一のそれと正面衝突が嫌で必ず2両目より後ろに乗ってる。おじの病院から帰ってきたご遺体をご葬儀の時にお別れで見たぐらい。整えられてた。こっちの異世界は違う。


 今、お亡くなりになった遺体。死んじゃったよ、おい。しかも、たくさん。俺が焼き殺した、出来上がりたてのニュー死体。ころしちゃったよ。ひとごろし。おそらく、俺の人生初だろう。殺人は記憶にない。光線銃を撃ったことはあるが、とどめはほかのやつがさした。殺人現場の瞬間だって見たことない。ぬるい人生送ってきました。異世界の恐ろしさを改めて認識する。生きるか死ぬか、殺すか殺されるかだったんだ。


 「ハァハァハァ。ニャルルさん、ポーションくれ。」

 今日の護衛はニャルルさんだった。震える手でポーションの瓶をつかむ。液体だが、呑み込む感じで飲む。ちょっと落ち着く。息が上がるというか、息が詰まって吐き出せなくなっていたことに気が付く。文字通り、ひといきついた。フー。


 あえて一列目は通して二列目くらいで敵をはめるべきだったな。鶴翼とか捨てがまりだか釣りのぶせだか、なんか必殺法があったはずだ。

 

お読みくださりありがとうございます。


誤字の指摘とご感想いただき幸いです。引き続きお願いします。

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