異世界召喚! 貴族連合
ここまでのあらすじ
異世界に巻き込まれ召喚された。領主にしてもらった。作法を知らないのでやらかしてしまい、神妙に自粛をしている。
例によってバタバタしているうちに、王様から怒られてからひと月以上たった。ようやく、王の役人が来た。王都のサトー館を引き払い俺が自粛してる形になるから、届け出た領都にまで役人が正式な書類をもって出張した形になった。
それでも急いだ方だろうな。馬を休めている馭者たちにはヘンリクさんと何か話している。
後でヘンリクさんから聞いたら、 俺が怒られたのは王都でも話題になってる。むろん、ここいらの貴族諸領でも話題になってると馭者たちに聞いたそうだ。毎度ながら馭者たち情報網すげえ。
そして、なんというかやはりというか、キッサ伯が攻めてくると言う。今のキッサ伯だけではない。他の貴族も攻めてくる。それは知ってた。許しがたいのは半減した俺の領地に来た、名前も覚えらんないガンダル系のモブ貴族まで乗っかってやってくるという。
しかし情報が伝わるのが遅い。当然、動きも遅くなる。貴族連合は今から領兵集めるんだそうで、実に悠長に時間がかかる。や、現場は大変だろうと思いますよ。ロクな情報がないうちに準備だけして次に来る命令で移動を開始。なんでも最短でやってのけるとしても、全部の時間合わせると、領主の命令から何十日か経ってからようやく前線に第一陣が到着するペースです。
役人に媚び売ったあと「自粛のために」領境を閉鎖する。城壁の扉を閉めるだけだからこれは簡単だった。三バカ貴族様にかなりの兵隊を貸したので伝令も往復する。その間にもガンガン情報が入ってくる。
まずはキッサの昔からの家来からの忠義の知らせがある。お嬢様におしらせの手紙もあれば、本人が来る場合もある。どっちにせよお嬢さまに信頼度見てもらうから俺としては同じ。本人の場合はそのままうちの役人に来てもらう。なんか仕事あるだろう。ともかく人が追い付かない、スパイかもしれないけど、もう調査してらんない。代官さんに丸投げで、どこかに配置してもらう。
キッサ領民はというと、戦争に向けてさらなる課税が増えたので逃げだしてくる。もとの地域って、もう、人住んでないんじゃないか?
また難民からは、途中のキッサ領では麦の買い付けが大々的に始まったし道端には草が積まれているというしらせがあった。
すまんがサトー領は壁で封じました。難民移民たちには城外にいてもらう。サトー基準の難民キャンプを建てた。こっちの世界では豪邸だわな。
役人の馭者は草の集積には何も言ってなかったそうだ。馭者が見落としたか、馭者が通過後に集積を始めたか。多分前者だろうとヘンリクさんは読む。馬の専門家なのに?まあどっちでもかまわない。
道の草は文字通り道草を食わすための飼料だ。異世界馬が攻め込んでくる兆候。草積むって、そんなにうちと距離ないのになあ。隣接している貴族も多い。
伯爵領どころか、国中にあぶれている元兵士も募集し始めたらしい。あっちはますます時間がかかる。
代官さんからは対応を聞かれる。
「殿、殿からは戦うという事は伺いました。王立鉄道を保護するという名目も伺いました。
こちらから攻めますか?」
「やべーぞ。あいつら本気じゃん。略奪する気満々。それでも負けて見せなきゃなんないの?そんなつもりないけれども。ま、防御に徹したらいいんじゃないの?城壁あるし、足りなきゃ俺が建てるよ?」
「ここは国王様からは謹慎中でも鉄道をという命令がありました。攻めてくる理由としては弱くなりました。
念のため、撃退してしまっていいか、王都に問い合わせたらいかがでしょう?」
「あー、それ、ジェームスさんに聞いてもらってたんだよな?コロッと忘れてた。俺、今から聞いてくるわ。」
「お待ちください。殿は謹慎中で領地にいることになっています。それと、ボルケーノ男爵様、サハラ男爵様、サキュー男爵様にお伺いをお願いします。」
「スンマセン。あいつら領内にいると思うんで、誰か回して。それより代官さん、今から一緒に王都いい?」
ジェームスさんのいる仮サトー館へ行き、相談する。
当然のように三バカが居る。え?領内の守備固めろって言ったじゃん?
サハラが先に話す。
「どうせ領都には取られる物もありません。数少ない家臣は街道から離れたところに伏兵として置きました。
家族は殿のもとで学んでいる者以外はまたもや実家に返しました。伏兵の連中は穴掘って小屋を建てているところです。」
うちの援軍の兵隊の分は既にできてるが、三バカの少ない兵士の家は建設中。三バカの領兵は野宿だけれども食べるものを置いてきたらみんな喜んでいたそうだ。失うものがないって強いな。
早く言ってくれれば俺が掘ったんだけど、こいつらに俺の手の内をどこまで見せてたか忘れてしまった。あとでジェームスさんと代官さんとで答え合わせをしよう。
なお、キッサから三バカにも誘いがあった。即座に拒否したらしい。三バカからは手紙がきた。
こいつら、じわじわと家臣を呼び戻しているにしても、まあ戦力外だ。その戦力外すらどっかに潜んで隠れてる。キッサとしても三バカの兵力を当てにはしていないだろう。キッサ単独で攻め込んだのではなく、周辺貴族連合として攻め込む形を取りたかっただけだ。そのために一人でも多くの貴族を集めたい。でも、名義貸し、危ない。
何だよ、承諾するふりしてキッサ軍を後ろから襲い掛かってくれてもよかったのに。やつらにそんな複雑な動きは任せられないな。
ジェームスさんに聞いても三バカに聞いてもサトー大征伐の王命は下っていないそうだ。叱られたので俺が勝手に自粛している形だってさ。
「ところでジェームスさん、オフィシャルな意味で反撃しちゃってもいいの?そこ大事だと俺は思うんだけど、どうなんですか?スンマセン。」
「おっしゃるとおりです。
内々にですが、領内を暴徒から防衛するのは辺境伯の重要な仕事である。とお指図を国王陛下から頂いています。厳密には私は宮殿に入れる身分ではないのでロックフォード経由ですし、公的な書類もありません。でも、王の言葉として動いてよいでしょう。
つまり暴徒だという形になればよいという意味です。」
「ヨシ、キッサ連合に反撃ができる。」
居城に戻って会議だ。念のためジェームスさんにも混ざってもらう。うちの方針決めないと。
ケイティはキッサ女伯として旗印を掲げ簒奪者を返り討ちにしたいという。つまり、正統はこちらにあるので謀反を起こした反逆者を打つという。少しでも敵を惑わせたいとの提案が出た。や、こっちが謀反人扱いなんだけど。
気が強いなあ。にしてもキッサ以外の小貴族連合には全く意味のない形式だよな。キッサ女伯。だいたいさ、キッサ領からこんなに難民も役人も来ちゃって、領内成り立ってるの?ていう疑問をいつも持ってる。
やつらのやることはおおむね筒抜けだし。
ケイティ自身に出陣させるわけにはいかない。
「スンマセン。戦いというのは勝つ時もあれば負ける時もある。でも今回に限っては城の中に籠っていれば俺らの勝ち。
敵は農繁期になったら敵の大半は帰らなきゃなんない。
そのうち時間切れで赦免が公式に出てきて、敵の攻めこんでくる理由も消滅する。
いま、うちの兵隊もケイティも失うわけにはいかないから。」
必死でなだめた。
かわりに、うちに移籍した旧重臣の中で人望厚かったモブにキッサ女伯代理で出てもらう。
代官さんも自分で出たがってたけど、そうすると総司令官が居なくなっちゃうから、これもなだめた。何でうちの連中は今のキッサ伯爵家を憎んでいるわけ?経済的にも爵位の上でも完全にうちが上回ってんじゃん。余裕もとうよ。金持ちけんかせず。けんかになってるけど。
「スンマセン。ちょっと、うちの奥さんは出せないけど、装甲バス2-3台にキッサの文様を入れて出陣させよう。」
キッサとうちの間にいる貴族は王都にいて、他にもいくつか領地があるやつもいる。ここにしか領地がないやつらもいる。
「そこいらへんどうなの?ジエームスさん。」
「さすが殿。敵の強みと弱みはそこにあります。
王都にいる領主、まあ大体の領主は王都に居たがるもんですが、王都から現地の家臣に命令する、返事が来る。
王都の近くならともかく、ここいらの貴族だと鉄道が無ければ早馬飛ばして、ざっとここまで二か月。殿は30日とおっしゃいますが、ロドリゲスもわたしジエームスも殿のお考えの倍は時間がかかると踏んでいます。
鉄道は殿が止めてしまいましたし。」
「ああ、それで鉄道を止めさせた面もあるのね。なかなか来ないよね。貴族連合。それで?」
「うちの近所にしか所領がない貴族連中、弱小貴族ですが、それでも早くまとまる方でしょう。恐縮ですが、旧キッサの例でお話します。兵を集める。号令では集まりません。領地にいる重臣が納得し、下の者に伝える。村まで話が行き、村から決まった割り当ての人数を出します。
とくに、ちょっと前までうちの領土だったところの中で今は他の貴族の領地になっているところもある。当然、今はその貴族の代官が見ています。しかしその一方で、まだサトーから莫大な支援も受けています。水。油。薬。」
「あー、そうか。うちの旧領、うちに攻め込むっていったら、人を出すかなあ。」
「さて、それはわたしにはわかりませんが、表立って略奪する者はまずおりますまい。後方の裏方仕事ですらいやいや手抜きをするものと、これは期待が混じった予測ですが。」
「あー、そうなってほしいねえ。」
「問題は数か所に所領が分かれている大貴族です。サトーとは関わりのない地方からも兵を呼べる連中です。」
「そうだよなあ。そっちは俺らに遠慮がないよねえ、やばいな。スンマセン、詳しく。」
「ここいらへんの住民ではない兵士を集めることになります。
移動や食料といった準備が、それも王都の貴族館からではなく自分たちの領地からよびますので、時間はさらにかかります。」
「あー、うちもさあ、時々さあ実験ていうか演習するじゃん?あれ大変だもんなあ。」
「そうです。そして、キッサが攻め込んでくるなら、通り道の貴族に話をつけないとなりません。貴族連合の形で行くのですが、どう、話が付くか。
そもそもどこがどれだけ兵を出すか、誰が指揮官になるか、戦利品の分配、など事前に詰めておかなければならないことが大量にあります。
先の王様に申し訳ない言い方になることをお許しください。国王ですら、先の敗戦では、そこからうまくいきませんでした。
今回の目先の欲に駆られた内戦状態では、とてもうまくいくとは思えません。」
「なら助かるな。スンマセンが、そこらへん全部うまくいっちゃって、整然と攻め込んできたとします。最悪の場合ね。
で、その最悪の場合はどうなるんだろう?
さっきから考え込んでるロドリゲスさん、どう?」
Cプランだっけ?
「今のキッサを名乗る連中が、ジエームスが言った条件全部うまくいったばあいですね。
既に集め始めたとして、今日から10日か20日くらい先に集まりはじめます。皆ではなく、早く着く貴族が領の境い目に現れる程度でしょうね。
ここら辺の貴族なら、サトー領に買い物に来なかった貴族は居ないでしょう。少なくとも奥方とお付きの者と護衛の兵士は何度となく来ているはずです。
つまり、皆がうちの富とうちの地理には詳しいです。来ますよ。略奪目当てに。
サトー様懲罰は建前です。目的は略奪です。ならば高位貴族があとから来る前、分配を取り決める前にに、少しでもめぼしいものを奪っておきたいと思うのではないでしょうか。となると小数の貴族がそれぞれの方向から来るでしょうね。
それも含めて貴族連合の全員がすぐには集まらないにしても、声をかけた者のうち50日か60日したら半分くらいは集まるんじゃないですか?
一応の進軍が始まると予想します。
さらに予想の上に予想を重ねますが、その者らの案内で線路沿いか街道沿いに進みます。
目印が大きい分、線路沿いが本隊でしょうね。」
「まあ、そうなるよね。
初期に多方面から少数が来る。そのあと貴族連合が一定のルートで攻め込んでくる。じゃあ、その前提での防衛策と、裏をかかれた場合、両方考えておこう。スンマセン。」
ちょっと話が煮詰まってきたところで、ジェームスさんが提案してくる。おとなだなあ。イケオジ。
「旗印で今思いついたのですがご容赦を。思いつきでしかないのですが、王命ですから、線路引いたらいかがですか?」
「や、敷いたじゃん。」
「はい。
もう、今から間に合うか、逆に今しなきゃならないのか、ちょっと考えかねますが、サトー領全体に線路敷いて城壁都市にします。複々線なんで原則4段、攻めてきそうなキッサ側には8段城壁建てたらいかがでしょう?」
バイパスになる郊外の環状線が複々線。関東だと武蔵野線を立体の複々線にして新快速走らすようなもんか。複線八つって阪神間の阪神JR阪急新幹線がそれぞれ複々線走らす、その倍だぞ。完全に過剰。
「それ、難攻不落の要塞じゃんか。ごめん。そこまで考えてなかったわ。」
「いえ、『王立鉄道』線路予定地です。土手です。王立鉄道の。あたらしく王立鉄道の模様をつけます。」
「聞いた?誰かに描いといてもらって。あとからドワーフにレリーフ作ってもらう。」
三バカ貴族もどうにかならんかな?助けてやりたい。ボルケーノ領は強引に王立鉄道王立造幣局部門鉄道予定地。サキューとサハラどうすっかな?三バカは謹慎してない。
今から何か役職つけてもらえないかな。無難なのは王立造幣局の副官だけどそうすると三バカ内部で上下ついちゃう。これもあとでサキューとサハラに聞こう。あとで考えなきゃ。あとで考えなきゃ多すぎる。
あー商人さんたちにも退去お願いしないとならん。鉄道止めちゃったから海沿いの町あたりまで逃げてもらおうか。それなら領内を臨時列車一本動かせばいいし。
「スンマセン。商人さんたち。多分、戦争になります。海沿いの町まで逃げてくださいますか?あるいは城壁出て商売します?何ならお店を二つに分けて財産は海沿いの町に逃がす、商いは貴族連合でもうちは構いませんが。」
「領主さま、ずいぶんと冷たいおっしゃりかたですね。わたしたち商人は領主さまに頼まれ少しばかりの商いを貴族連合といたしました。おたのみの通り、少し噂も流していました。今になって立ち去れとはあんまりです。」
「スンマセン。そうじゃなくて、ひと段落するまで少し逃げてて、って言ってんの臨時列車出すから。落ち着いたら絶対に連絡するから。」
臨時列車で去ってもらった。
われながらむちゃくちゃチートな戦法で行く。
「王立」建設予定地高架という名の城壁も、皆の意見取り入れて改良する。最大8段。それぞれの高架は少し離してある。
俺らが撃ちおろすために、領内がわの高架をだんだん高くしていったら、最後の砦は30メートルぐらいになった。10階建てのマンションくらい。登るだけで大変だから蒸気エンジンのエレベーターも付けたし、領内がわにはスロープも多数つけた。スロープは他の線路造りで大体慣れてきたところだ。
建設予定地の土手は10メートル前後でマックスが30。ただし前後に空堀あり堀ありで標高差がえぐい。林間学校か何かで山に登り、頂上だと思ったら次の峰があった時の絶望感を覚えている。あれを味わってもらおう。わざわざおりてまた登る。
城壁の前には空堀。5メートルの空堀の底から10メートルの城壁の上まで登ろうとすると15メートルはある。またもや標高差。しかもほぼ絶壁。15メートルというと昭和の5階建て団地がそのくらいじゃないか?団地ならともかく一枚板の鉄板張りに装備なしで登れる奴はいない。階段があったって、四十路の俺は5階建て団地を登り切るのつらかった。
ハシゴだって5メートルかそこらだろう。急造の足場を敵の前で組むとかしかない。こっちの城壁も急造の急造だけどな。ははは。
一段抜かれたらみんな次の段まで下がる。練習の結果、逃げる時が無防備だとわかった。次の段へのトンネルも掘ってもらった。
役人たちがタダメシ食って帰ったころ、頃合いよくキッサ連合軍の連合軍がサキューとサハラのところに到達したらしい。そんなこともあろうかと伝令に頼んでおいたモブ獣人の知らせがあった。ボルケーノは街道から外れた山の中だから誰も通らない。
何度もいらついているが、ひどく情報が届くの遅い。
俺らは既に臨戦態勢を整えている。待つしかない。やつらを襲う大義名分もなければ、略奪するほどのめぼしいものもない。待ち構えてる。
で、サキューとサハラは略奪にもあってない。
勝手に井戸から水を汲まれたが、半分枯れかけている井戸だし、領内の人口は少ない。相手は大軍だから我慢したらしい。
(作者注:キョータは全くわかっていませんが、水は未だに超貴重品です。持ち主の許可なく水をくむのは水泥棒で重罪です。水の略奪にあってます。
お貴族様の私兵だから許される暴挙。私兵もそれをわかってやってます。)
お読みくださりありがとうございます。
誤字ございましたら引き続きお願いします。
感想も歓迎します。プラスの感想は励みになってます。




