異世界召喚! 強要された自粛ムード
異世界に召喚された俺は異世界ルールにうとくて、うっかり昇進を公然と断ってしまった。
国王への反抗と見なされ自粛を強要される。
「殿――!
冗談を言っている場合ではありませんぞ!
最悪、国王が討伐に来ます。多分、そうはなりませんけど。
でも、そうですね、もしかすると国王の命を受けた臣下が一応進軍してくるくらいなら有り得ます。」
「え?おなじじゃん。」
「いえ、少し違います。こちらは負けて見せる必要があります。領地はいったんは全て没収、平民に落とした上で命だけは助ける。ほとぼりが冷めたころに爵位もまあまあの貰う。この程度なら有り得ます。」
「え?勝っちゃダメなの?」
「そうすると王国全体を敵に回します。降参して見せることが必要なんです。」
「そういう約束事っていうか、文化なのね。」
「ええ。約束事、文化です。」
「はぁ。」
「国王と話が付いたうえでの、お互いのやり取りだというのはお判りいただけたでしょうか?
しかし、もっと面倒なことがあります。反逆人を成敗する名目で近隣の貴族が攻めてくる場合もあるんです。」
「え?話がついてるんじゃないの?」
「それは裏で話がついているというだけで、形式上書類上公式上は反逆犯ですから。」
「えー!スンマセン。それも撃退しちゃダメなの?」
「ええ。謹慎中というか、すまながって見せる場面ですから。
没落した貧乏貴族ならともかく、殿の場合は国中で有名な酒勇者、鉄道勇者、造幣勇者ですから、この富を狙って攻め込んでくる愚か者がいないとも限りません。」
「造幣卿はボルケーノさんじゃん。」
ボルケーノ
「殿が造幣卿にしてくださったんではありませんか!」
サンバカ
「「「ついていきます どうせ2年前に餓死してる 一番槍は任せてください最初に死にます。」」」
重たいなあこいつら どうしたの?
「あ、殿が自粛しているのは、こちらのお三方には関係ありません。ですから、そちらの領軍が勝手に、という形ならあるかもしれません。これもひそかに王様に伺っといたほうがいいかもしれませんね。」
「スンマセン。ちょっと待って。本題に戻ろう。あのさあ、そもそもの話からするとさあ、俺さあ、異世界から連れてこられたおっさんじゃん。なぁ。
そんなさあ、こっちの世界ではどうでもいいやつがさあ、貴族だ役人だって今まで居た人面白くねえじゃん?だろ?だよな?
あーん?違うか?
俺が貴族になった分誰かの領地が減ってるはずだよな?なーんもとれない荒れ地だったとしても。だよな?
土地だけじゃねえじゃん。役職だって同じだろ?違うか?
俺が大臣だか長官だか隊長になったら、それになりたかった人は俺が辞めるまでなれないだろ?
悪く思われて潰されるのかなわないから、 そう思って、色々おとなしくしてたんだけど、全然無駄だったわけね?全然無駄。だろ?違うか?なあ?」
「その頃のことは存じ上げませんが、殿からそう伺っております。近年の自重ぶりは家臣から見ても過大なくらい我慢なさってらっしゃるのもよくわかります。しかし。」
「違わねえんだな?
30人の村から、奥さんとか家臣とか獣人や村人のおかげでさあ、ここまで来たんだけど、おれが悪かったわけ?スンマセンねえ。」
話しているうちにだんだん腹がたってきた。コレ、われながらやばいパターンなり。怒って高ぶってきちゃって止まらなくなった。手が震えてきた。シラフだけど、酔って気が大きくなるアレだという自覚はある。
「スンマセン。違わねえんだな?違わねえんだな?
やってやろうじゃねえか。男爵さんたち、死ぬ必要なし。全部俺が潰す。俺がぶっ殺す。俺の責任で倒す。ついてこれねえ奴は去れ。いい。恨まない。俺はやる。」
いまさら引っ込みつかねえし。
「ま、そうは言っても、攻めてくる前に何日何十日もかかるだろ?鉄道止めちゃったら。あ、君たち領地戻って。
いきなりほかの貴族を襲うのは駄目よ。うちの使いがいくからいろいろ相談してからね。じゃ、スンマセンが、とりあえず領地戻って。」
もう、興奮して優先順位がつけられない。なにがなんだか、とにかく腹がたって、いつもより思考力が下がっている。ダンジョンの幻術かかってるんじゅねえかっていうくらい。怒りの悪循環だ。落ち着けって思うと、今度は落ち着けしか考えられない。深呼吸とストレッチだ。はあぁ。ああ、伸ばしたら足がいてえ。
「あ、ちょっと待って。会議が先だ。ちょっと居て。軍議軍議。スンマセン。っていうか考えまとまらんわ。軍議終ってから帰って。
はあ~。
スンマセン。スンマセン。ガチギレしちゃったんで俺はちょっと考えらんない。まず大原則。王様には逆らわない。ふざけた貴族がうちの領内はいったら自衛のお範囲でぶっ潰す。
領国の境い目で迎え撃つ。開戦まではこっちからは攻め込まない。で、いい?
1.俺利用する。俺前線に出る。
2.三貴族ボルケーノ男爵、サハラ男爵、サキュー男爵の私兵はとりあえず領地で勢力温存。俺からも援軍少し出す。
大きな基本方針はそのふたつ。
ではその線で、ロドリゲスさんとジェームスさん、ボルケーノ男爵どの、サハラ男爵どの、サキュー男爵どのでお話してください。あ、俺が辺境伯のうちにロドリゲスさんとジェームスさん男爵にしちゃっていいのかな?」
しゃべってるうちに整理されてきたが、三バカとロドリゲスとジェームスで話したほうがこっちの世界の常識に沿った戦を考えてくれるだろう。俺はモンスターに溶岩かけたくらいしか実戦知らないし。
「ではジェームスから、これは割と急ぎのお願いです。皆さんの王都館をお借りしたい。このサトー館は謝罪のために引き払わねばなりませんが、一方では王都に拠点が欲しい。皆さんを前にしてあれなんですが、殿から皆さんにお願いしてください。」
「スンマセン。空き家借りていい?」
「「「どうぞどうぞ。」」」
三バカはまだ動いている汽車の終電までに自分たちの領内に戻ってもらう。自分たちの防備を固めてもらうためだ。それとここにいて巻き込まれないため。俺んとこに攻めていく途中で三バカ領内で略奪されたらかなわんからね。王都にも、それぞれの領都にもいちゃダメ。あとで三バカに兵隊貸さないと。
俺とジェームスさん他サトー館のひとだけになったので、ジェームスさんに善後策を聞く。
「スンマセン。腹がたって、高ぶっちゃって、文字通り頭にキてる。何も考えられない。あ?頭にキてる、って表現翻訳されてます?」
「はい。」
「で、やってやる、俺が潰す、怒っちゃったんだけど、その前の話。ジェームスさんが考える一番のやり方って何?」
「そうですなあ。家臣としては、ともかく殿のお考えで行くしか。それと今、話す話しではないのですが、わたしロドリゲスの男爵叙任は後にしてください。殿はいま自粛中の形ですので。」
「でああ、男爵の件はジェームスさんに任せた。
スンマセン。話を戻そう。その前の話。俺がキレてなかったら、ここはどう動くのが一番の得策ですか?あるいは俺がもっともっと若い当主だったらなんと助言を?」
「まずは、情報を集めないと何とも。これからロックフォード隊長にお会いして、王様の真意を伺ってきます。それと、私以外は事務所の引っ越しの作業を。」
「あー、王都も撤収せにゃならんのか。じゃあそこらへんは全部ジェームスさんに丸投げ。
調べて。」
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