異世界召喚! 王様の帰還
王様が泥酔してグッチグチなんでシラケてお開きににした。
朝、奥さん二人に起こされる。王様はともかく、ため池に水やりをしておかないといかん。
今日は朝から王様の相手か。朝の謁見の作法とかどうなってんだろ?文字通りの朝見だな。チョ-ケン。
とりあえず朝飯の下見に行く。俺の提案で、最初に離宮で食べたような大皿料理を準備してもらってる。銀の皿をアルコールランプで加熱。要はビジネスホテルのバイキングだ。
俺とロックフォードさんと女兵士が毒見として先に食ったが、俺はもう腹いっぱい。ロックフォードさんと女兵士さんは昨夜素面だったせいか、結構食ってる。
王様は二日酔いにもならずにうまいうまいと食っている。変な頭巾かぶっている。衛兵に聞いたら略式の王冠というか、王位を示す被り物なんだそうだ。我ながらなんも知らねえな。ハゲは気になるのか。
午後には大事な行事が控えていて、不在がばれるとまずいらしい。朝飯のあとお茶になり、だらだらと自分語りを続けていつまでも帰り渋る王様を、なだめすかして帰すことにした。
来たときは急だったので俺は知らなかった、だから対応できなかったが、今回は王様専用列車を時刻表にねじ込んだ。
「スンマセン。王様用の用意ができましたんで、そろそろ駅へお願いします。」
専用客車には王様と近衛兵から派遣された番兵が男女一人づつ、ロックフォードさんと俺だけ。ジョーサントス王含めて五人。他の衛兵は後ろと前の車両で警護してもらう。
ボルト留めしてあった椅子を減らしていつもよりゆったりとさせた。
弁当もお茶もここでやってもらおう。
機関車と最後尾の衝突防止パイロン車含め5両要る。増結とか切り離しとかも鉄道好きにはたまらないだろうけど、ポイントができてないから難しい。全部クレーンでやってるからね。それも面白いと思うけど、色々面倒だからしない。使わない車両もカラで連結しっぱなし。
急行部分のその区間は、始発から他の列車をいれないのがベストだろうけど、そんなことしたら大混乱になるだろう。1本運休する形で、2本目に王様専用列車を入れる形にした。一般利用者ビューだと、2本運休と同じだ。ごめんね。
列車の中でも愚痴と自分語りは続く。
「サトー。しがらみのないサトーくらいしか相談できんのだよ。」
「スンマセン、そういわれても、俺も異世界から来た人間ですからねー。なんとかしたいけど、そんなに役に立てませんよ。」
「サトー領は人が増えていると聞く。」
沈黙。
「え。そりゃ、貧しいとこですがね。ドワーフがいてエルフがいていろんなもの作ったりしてくれてますからね、栄えてますよ。天狗もいたでしょ。獣人も居るんですよ。
とりあえず餓死はないんで、いろんなとこから人がきて、増えてるのは確かです。
あ、スンマセン、ドワーフといえば昨日天狗が折っちゃった剣、弁償するって言ってまだですね。明日にでも王宮に持たせますから。王様から下賜してください。」
「それは分かった。それより先ほどの人が増えている件だが、
いざという時に余も難民として扱ってくれればそれでよい。」
「いやいや。いやいやいや。そうもいかないでしょう。
どうしたらいいんだろう?」
しゃべってるうちに考えがまとまってきた。
「スンマセン、万が一の時は王都のサトー館まで逃げ込んでくれれば、あとは何とか致しましょう。三日間サトー館で籠城してください。三日間。それから先は俺が請け負います。
ロックフォードさんにもお願いしておきます。警備隊は討ち死に避けてみんなで俺んとこへ。一人でも多く。いざという時の万が一の話ですからね。その時には。
くぁっ、そうだ。それと俺の領地半分にして構いません。
その、かなり未開の箇所が残ってるんで、こんどお返ししやすいところの一覧をお送りしますんで、王様が気に入った貴族に差し上げてください。飛び地になりますがそれでもいいでしょう。
次の謁見までにいろいろ考えておきますから、また機関車に乗せろと駄々こねてください。せめて二日前に行ってくだされば用意が楽なんでお願いします。」
あとは汽車の音しか聞こえない。
§§§ §§§
へっろへろになって家に帰った。電車酔いしたかも。電車じゃないか。汽車だ。列車だ。忘れないうちに貴賓館を建てよう。何でもすぐ忘れるから、今のうちにやっておかないと。
城壁の外に、ごく小さなお城をもう一つ建てる。隣接して大小ふたつの城壁都市がある形。
王様が使う貴賓館なら俺の行政棟より高くしなきゃならん。昨日慌てて建てた旅館の別館は観光名物として残すが、おおむね同じコンセプトのものを建てる。王様が気に入ってたからね。広く簡素な、しかし堅固な建物の中に、うちの村としては最低限の設備を詰め込んだ。風呂、トイレ、調理場。4階は国王専用スペースとして、3階に貴賓室をおき2階は随行員用1階は食堂台所事務室などとした。
国王や大使節団の場合、下っ端が大量についてくるだろうから、中庭挟んで標準的な兵舎も建てた。風呂があってトイレが水洗なところはあまり標準的ではないかもしれん。
ますますヘロヘロになって家に帰ると、また側室の勧めだ。
「キッサも王家も、嫡男がいないばかりに他家から当主を入れることになってしまいました。
旦那様にはお世継ぎを。」
もう勘弁して。オレツカレテル。
「あのさあ、その話は三年後って、この前話し合ったばかりだよね?同じ話を蒸し返してない?
ところでさ、二人と毎晩のように愛し合ってるのに子供ができないのは俺も苦しく思ってるわけよ。んでさあ、この際だから二つ話すね。AとB。
A。側室は無し。これはさらにいくつかの理由がある。
まず、跡取り産ませるほど信用できる女を見つけるのが難しい。貴族から貰うと政略結婚になっちゃうだろ?で、目上のとこから側室というわけ行かない。キッサ以下になるよな?
うちはかなり綱渡りでそれほど余裕ないだろ?現金は馬鹿みたいにあるけど、でも広い意味での蓄えが全くない。
家臣こそキッサから優秀な人間貰っちゃったけど、そのキッサ組が側室の子大事にするか?『お嬢様』のことを慕ってるんだよみんな。俺はお嬢様の旦那。
あのさあ、俺、お前らが思ってるよりはるかにスケベでクズだけど、危険が多すぎる。
じゃあちょっとどっかで気晴らしの浮気って、それは側室じゃないよね?
あとさあ、本人たち前にして言うの恥ずかしいんだけど、キッサから来た二人は大当たりなんだよ。歯並びが奇跡的にまともだし、学もある方だよな?
獣人やいろんな種族への偏見もさあ、避難してきた時はまあまあああったけど、今はない。」
「まあ、歯が抜けてないのは認めますが、そんなに大事ですか?」
「スンマセン。美人でも歯並び悪いと三割引き四割引きだと思うけどなあ。俺がいた世界は歯並びなおしたり、そこまで行かなくても歯に詰め物したりいろいろだった。
若い女で前歯ないの見たのはこっちの世界来てからだよ。」
「学といっても、わたしたちは実学と言いますか、そっちの知識しかありません。ふたりとも元の婚約者も貧しい貴族、領務を先に学べと父についてオモテの仕事ばかりを小さいころからしていましたので、詩や楽器や社交は全くの苦手。」
「やっぱりお父さんお爺さん分かってたんだなあ。あのなんもない村からここまで持ってこれたの二人のおかげじゃん。楽器と社交だけの人が領主夫人で来てたら、村が回らなかっただろう。」
「それは最初は領主夫人ではなくて客分でしたから。」
「スンマセン。側室は、まあまあの美人で歯並びがまあまあ、毎日ちゃんと風呂に入って臭くなくて、うちの学校出たくらいの知識があればおんのじ。
でも、それが居ないんだよねえ。特に貴族様は。
これから将来の領民なら全部満たすかもしれないけど、それはそれで問題だろう?
で、奥さんだけ、っていうわけじゃないけど、まあ、その、間に合ってるって言ったら悪いけど、間に合ってるし。今んとこ。
俺んちはどうしても継ぐような家じゃないし、キッサは遠い親戚が継いでて、そもそもそれが俺たちの結婚のきっかけじゃん。俺たちの代の間は跡継ぎいなくてもなんとかなるだろ?」
「まあ、仰ることはわかります。」
「その2。B。」
「「はい。」」
「俺さあ、実は、って程でもないけど、異世界から来たじゃん?」
「「はい。」」
「異星か異世界か、異種か知らんけど、とにかくこの星以外から連れてこられたわけで。俺がいた星には、空に月っていうばかでかい星があったのよ。だから別の星なのここ。何度も言うけど。」
「「はい。」」
「そうすっとさあ、そもそも、この星の人との間に子が成せるかどうかっていうのがあるわけ。
馬と人の間に子はできないだろう。獣人と人とかは知らないけど。
で、俺と、この世界の人がどんだけ離れてるかわからない。
手足が四つ、立って歩く、指はそれぞれに五本ずつ、切れば赤い血が出る。エリクサーの利きは同じ。
でも、魔物と人ぐらい離れているのか、馬と人ぐらいなのか、あるいはまったく同じ人同士なのか、これはわかんないのよ。
だからもう少し様子を見ましょうと提案してる。」
「「はい。」」
「お言葉に甘えて、浮気はする。よそで出来たら連れてくる。でも、もうちょっと待ってくれ。」
「「浮気はだめです。」」
「なんだよ、それ。浮気はダメ、世継ぎが要るなら養子でもなんでもいいじゃん。王様んとこから貰ったら安泰なんじゃねえの?」
「「でしたら三年待ちます。養子ならいつでもおねがいできますから。とにかく、」
「「浮気はだめです。」」
なんでそこ声を揃えるのよ?二度も。
お読みくださりありがとうございます。
誤字の指摘いただき幸いです。
意図して書いたものもあり全てを受け入れるわけではありませんが、それでも助かっています。
引き続きお願いします。




