異世界召喚! 異世界酒勇者が酒を配る
異世界に召喚された俺は内政に励む。
鉄道ひけと言われて根回しをするが、着工まではいかない。
予定した線路建設が全然進まん。サンドフィールド王立鉄道会社は開店休業で経費だけ出て行く。
王様からは再度おしかりを受ける。俺は鉄道卿という役職に就かされた。鉄道にちょっとでも関わることは全部好きにしていいから、とにかく早く線路引けとのお達しだ。
今までは領内にいきなり高架を引いていたが、今回からはやり方を改める。全国を測量してまわる。
詳細な地図ができてしまったので、商人たちに渡し、王にも将軍たちにも配る。
サンドフィールドという国名のくせに湖沼地方というのもあった。商人もキャシーケイティも知ってた。「みんな」知ってる。またもや知らないの俺だけ?
うちと逆に沼地なんで、迂回するか干さないと高架通せない。どうせすぐには干せないから、ぐるっと迂回する予定で線路通そう。
そこらへんの事情をガタロウに聞いたら、戦闘形態になった。やめろよ怖いから。
「あー湖沼地方は水が悪いんでゲス。
殿がうまく川というか水路ひいて流してくだされば、悪い水が浄化されるかもしれやせん。」
「スンマセン。河童ルールで、湖沼地方から水を引くのに何か禁忌はないですか?」
「ありやせん。むしろ、あの悪い気は抜いて流して清めたほうがいいと思いヤス。」
「そんなに悪いの?大丈夫かなあ。」
そっから水ひければ、沼は干上がって畑になる。うまくうちの領内に引き込むことができれば。うちの領内は俺が働かなくても水が来る。
徳川家康は政権を握ると関東の治水に乗りだしたという。現在の荒川江戸川利根川に土手を築いて流れを変え、掘りまくって、川を付け替え、江戸の治水を改善したらしい。サンドフィールドも大土木工事になるだろうが、時間のある時に川を掘ろう。うちの領地は海に近い。きっとこっちへ引けるだろう。
その前に鉄道開通させろって話だよな。鉄道卿の肩書きだけでは何も進まない。
川を掘るのは誰の許可が要るんだろう?また根回しか。とりあえず鉄道が優先、沼の干拓は後だな。王様にお願いだけしておこう。
業績が上げられず、お願いだけが増えていく。典型的ダメダメな部下や採算とれない事業のパターンだな。うちの領内から近くだけでも少しでも線路伸ばしたいんだが、無限にお願いする先が増えていき、着工もままならない。
サトー館のジェームスさん他によるとこれでも驚異的な速度で仕事が進んでいるらしいから、これ以上加速すると足を引っ張られるかもしれない。
線路通すのと保身とどっちが優先かっていうと保身に決まってる。というわけで、王城で見かけた貴族にはぺこぺこして回るが、どうにも話は進まない。
「蒸気機関酒」っていう蒸留酒作って貴族に配る。異世界陳情酒。何の陳情って、鉄道だよ。日本語だとダジャレになるけどこっちではどうなのかなあ。
上からは鉄道作れって言われ、まわりは協力せず妨害。異世界召喚されて初めて管理職の悲哀を知ったよ。俺は。新規事業部長か。
そこらへんの仕事の動き方わからんな。販売なら店長かブロック長しか見たことないし。工場なら職長、製造課長、くらいしか働きかたの想像つかん。零細企業の工場長と経営者の動きもまあ見てるか。
ま、今の俺はむしろ開拓営業かな。
開拓ならしとるよ、毎日。泥まいて。
蒸留酒蒸留酒、って、いわばウォッカとか米焼酎に分類されるやつだよね。飲んでよし、切り傷の消毒によし。
今まで、貴族にしか出回らない高級ブランデー、それと、少し安めの男勇者ブランデー、女勇者吟醸酒があった。蒸気機関酒はそれより安めの設定ね。
酒をもってペコペコ。持ってくのはサトー館のひとだけど。
俺は王城で貴族見かけるとペコペコ。誰が誰か、大臣以外おぼえられないからとりあえずペコペコ。
ぺこぺこしているうちに貴族が見えなくなると、そこらの衛兵にさっきの貴族聞く。
「あのかたはどなたさまでいらっしゃいましたか?
ああそうですか、そりゃどうも。」
銀貨一粒渡して、名前聞く。衛兵すげえよ、ほぼ全員おぼえてる。あわてて服の袖に名前を書いておく。名前だけだとおぼえられないから、あだ名も書いておく。
シルトラント候 エロジジイシラガハゲ。
あだ名ったって日本語で書いてるからばれる心配はない。
「こういうことがあったらまたよろしく。」
候はこの場合「殿」と同じ使い方の敬称であって爵位ではないので、爵位はあとでサトー館のひとに聞かないとならん。
革の長ランなんか俺しか着てないから、有名になっちゃって、あとで警備隊長にあった時に言われた。
「サトー殿は、他のご貴族の名前を覚えるのに苦労していらっしゃるご様子。兵に心付けはありがたいが、城内で現金のやり取りはいかがなものか。」
「スンマセン。俺、本当に名前おぼえらんないんですよ。じゃあ、まとめて払っちゃっていいですか?」
「隊長が受けられるわけなかろう。」
「そりゃ弱ったなあ。ホントスンマセン。」
「命令しておくので、心付けなきよう。お願いいたす。案内なら聞かれれば返事いたすので、くれぐれも心付け無用。」
あーおこってるのか?
サトー館に戻り、ジェームスさんに状況を説明して対応を聞く。
「スンマセン。こんなことになっちゃって、でもお礼はしたい。どうしたらいいんでしょう?」
「ロックフォード子爵は戦争生き残りの硬骨漢と聞きます。正攻法では難しいでしょうなあ。」
「ウヘー。貴族流?」
「いえ、提案ですが、酒と武具でしょうね?」
「え?酒と武具?」
「まず、酒ですが、サトー領の酒は評判が高く、市販のものでも結構高価な部類に入ります。」
「へー、そうなんだ。」
「王宮警備の近衛兵といえども、兵が飲める酒ではありません。お任せいただければロックフォード子爵を通してか王様を通して、警備兵にまわるように致します。」
「なら大げさなほうがいいな。王様通して。よく迷子になったり、よく貴族の名前わからなくなるから、で、理由大丈夫?」
「問題ないと思います。」
「じゃあそれだ。いつものお礼に皆さんで召し上がってください、でいいのね、王様には。」
「はい。自分の警備隊をほめられて嫌になるあるじは居ないでしょう。お願いいたします。」
「俺がお願いしてるんだけどなあ。ジェームスさんに。あ、蒸留酒は消毒薬にもなるから、大量に収めましょう。
第二発目の消毒液が届いたら、それまでのものは飲んで処分とか、まあ、うまい事考えといて。タノンマス。」
「タノンマス、って、ははは。殿、おたわむれを。
もう一つが武具です。敗戦国ですから、予算もなくなかなか苦労していると聞きます。」
「人数分と予備、うちのドワーフに打ってもらえばいいんだな?」
「その通りですが、こちらも寄付となるとなかなか難しい。」
「え?貴族の体面?くれるんなら貰えばいいじゃん、困ってるんだし。」
「貴族の貸し借りは後々面倒なんですよ。ですから、これも王様に上納したほうが波風少ないと思います。」
「じゃあ必要な量聞いてさあ、代官さんに連絡しといていてくれる?」
「かしこまりました。ロックフォード子爵本人ではなく、調達担当に聞いておきましょう。」
「スンマセン。よろしくお願いします。」
「殿、ざっとで結構ですが、いかほどまでなら出せます?それもロドリゲスと打ち合わせいたしましょうか?」
「いや、ここは言い値の倍まで。槍500と言われたら千。鎧千領と言われたら2千領。値段は無料。品質は量産品の中では最高級。ドワーフがやる。」
「いえ、殿、こちらの持ち出しの額ですが。」
「あっ、予算?俺の?
説明してなかったかな?ベッケン氏が無料でやってくれるよ。ドワーフの。
機関車もレールも何も全部無料なんだよあの人。金なら余ってるから鉄を寄越せっていう奇人。」
「はは、殿がそうおっしゃるなら。でも一度ロドリゲスと打ち合わせをお許しください。」
「全然かまわんよ。この件以外も連絡密にして頑張ってちょうだい。報告、連絡、相談だいじ。段取り八分の仕事が二分。
よろしくよろしくよろしく。三回頼んだからね。」
日本史だと茶坊主というのが江戸時代にいて、大名が登城すると江戸城の中を案内したりお茶を汲んだりしたらしい。
中世のヨーロッパのお城ではどうなっていたんだろうか?メイド服着た少女メイドが案内したんだろうか?ナーロッパ世界のサンドフィールド王国ではそういう係は居ない。
王城もそれなりにデカいんだから案内の役人必要だよなあ。あるいは従者を連れさせてくれ。そうすりゃあ、こんなややこしいことになっとらんのに。
でも、そしたら貴族の俺は、今度は案内役人と貴族しぐさしなきゃなんねえか。それも面倒だな。兵隊に酒、ぐらいが無難か。
うちの行政棟は案内看板とかけっこう充実してるぞ。昭和の大病院くらいにはわかりやすい。王城はね、逆にわかりずらくしてるんだろうな。防衛のためだろうね。
俺が領地に戻って休んでいると突如として王宮警備の近衛兵が新しい村へやってきた。
「緊急の用です。サトー殿はおられるか! 」
お読みくださりありがとうございます。
誤字の指摘いただき幸いです。
意図して書いたものもあり全てを受け入れるわけではありませんが、それでも助かっています。
引き続きお願いします。




