異世界召喚! 異世界会議の進め方
異世界に召喚された俺は内政に励む。
毎日仕事。実験的な演習を終えて反省会をする。
領都に帰ってきてから、領兵会議、といっても領兵が全員出たら混乱するから中隊長に集まってもらう。イシューを明確にしてタスクのプライオリティを上げるためのデブリだ。
いまは副隊長になっているハンス君が司会をする。生真面目なんで、適役だな。毎日会議をするわけではないが。
「これから反省会をします。殿、お言葉を。」
「え?俺?あ、今日の中隊長会議ていうのは、次に生かすために問題をいってもらう会です。反省会。
あー、たとえば、ですが、今回は死者が出なくてよかったですが、訓練で死んだら無駄死にです。戦闘の直前までで、なにか危険な点に気が付いたら出し合いましょう。
つぎに、勝つための訓練でした。ムリ、ムラ、ムダ、気が付いたら教えてください。スンマセン、お願いします。」
モブ中隊長その1が手をあげる。
「あの、村人、全然統率が取れません。」
あえて俺は黙ってる。代官さんが代わりに口を開く。
「今回はあんなもんでも仕方がない。
ただ、たしかにさらに隊を小分けする必要はあるな。
村人中隊にひとりかふたりくらい領軍から回したらいいだろう。」
そういう改善策なしに、ただ全然統率が取れませんっていうやつに、中隊預けたくないな。
ハンス君がメモを取る。
「スンマセン、今、言った人、そう、君だ。
名前を覚えられなくてすまん、何くん?」
「ベッカーです。」
「スンマセン、そうだ、ベッカー君だ。ハンス君がメモを取りながら司会をしてるが両方は大変だろう。今回はベッカー君、メモを取ってくれ。ハンス君も今回はメモも司会も両方やって、次回からそこらへんも考えて。」
こいつ黙らせたい。ハンス君がうなずく。俺の考え分かってくれればいいんだが。
「ありがとう。スンマセン、その前の話から。キッサでは軍の編成どうなってたの?領民とか。どこらへん。」
知ってて聞く。代官さんもわかってて返事してくれる。
「殿、普通、貴族軍で軍専従の者はあまり居りません。司令官は殿。他の家でも貴族家当主です。むろん武に秀でた方たちもいますが、戦争専門というわけではありません。数ある当主の仕事のうちのひとつです。下々も同様。私のような代官だったり、いろいろです。
つまり、村人とそれほど練度は変わらず、移動の速度もさほど変わりありません。うちが異常に練度高いんです。
それと、村人はキッサでは兵の半数を占めてまして、混成だったんです。歩兵にも弓兵にも村人と役人。
ですから、今回のような混乱はなかったのですが、サトーの場合領兵が強すぎますんで、村人とは混ぜないほうがいいと思います。」
「ほう、それで?」
「また、私は初めて5千の兵を動かしました。補給の段取りの重要性、村人への命令の伝達の仕方の確保など、課題は多いと思います。」
「スンマセン、そうかー。ベッカー君、補給の段取りの重要性、村人への命令の伝達の仕方の確保ね。メモって。ハンス君も。
じゃあ、その課題を、もう少し具体的に出してもらえるかな?
領兵と村人は分ける、村人ももう少し小分け、あとなんだろう?ハンス君、よろしく。危険な行動は後回しにしよう。」
モブ中隊長その2がおずおずと言う。
「あの、1万人、1万5千になったら、いろんなことがもっと大変なんじゃないかとおもいます。補給は補給専門がいたほうがいいんじゃないか、と思います。今も、輸送隊長はいますが、あくまでも輸送担当なんで。補給全体を計画する人と輸送は別建てにするか、輸送隊長の仕事減らして補給全体の計画から入ってもらうか。本部が担当するか輸送隊が担当するか?
どっちがいいかわかんないんですけど、他の人の仕事なんで口出しするのもあれかと思いますが、ええ。今回の補給は問題なかったです。輸送も適切でした。必要なものが必要なだけありました。」
「輸送は分かるけど補給はわからないヒヒーーン。」
はい、輸送隊長さんありがとうございます。
「スンマセン、ウマノスケさんの下に誰か計算詳しそうなやつつけるか、商人に頼もう。その線で進めといて。即決はできないな。調査がいる。
あ、本部が担当するか輸送隊が担当するかは何回か実験する、それでいいですか?代官長さん?」
「殿さえよければ。名案だと思います。」
ヤッベ、ロドリゲス氏の顔を潰しちゃったかな?俺はこういう時は部下に話をさせなくてはいけないんだった。
「スンマセン、じゃあ、話つづけて。」
「ハッ。5千、1万、1万5千の補給の演習しないといけませんね。それこそトイレの掘る場所まで考えておかないと。
では、危険だった点を。」
「スンマセン、さっきのにさらに補足します。危険かどうかって実際になんか起きてみないとわかんない。荷が崩れて降って来たとか。で、死んじゃったら、もう反省もできませんね?
ですから、ひやりとした、ハッとした、もうちょっとでアブねえとこだった、そういうのを集めて怪我のないようにしましょう。ひやりとした、ハッとした、ありましたか?」
「村人の槍が危なっかしかったなあ。」
ベッカー、他のやつにもしゃべらせろよ。そっちのKYは不要だ。流れ読め。あと、今までの意見まとめてる?サマリー出せよ、あとで。なるはやで。
「殿、いきなり集めてさあ戦えというのは、少し無理がありましたな。後ろに下げるか、何か考えないといけないかもしれません。」
「そうだね、村人には難しかったかな。槍の件は持ち慣れてないから仕方ないかな。」
まあ普通は後方で雑務してて、追撃戦=略奪になると元気になるとかだよなあ、村人。
「ハッ、この件について何かご意見ありますか?」
沈黙。
心の中で15数えてから言う。
「スンマセン。村人は、無理、それなら、難民にこれから教育するってどうですか?
今来てる人に、お前あともう何年か土地やらんていうのはかわいそうな気がする。
これから来る人に、教育期間の間に軍事訓練もあります、もう教育期間を二年伸ばします。でどうかな?
領軍の話から離れちゃうんだけど、いい?
今の領軍って、朝から少し訓練いれて、昼まではいろいろお勉強だよね?で午後また体動かしてる。
それをさあ、難民教育にも入れたらいいじゃん。2年目難民くらいなら戦場でれるっしょ?」
「殿、教育制度ですとか難民教育の話になるとこの場ではちょっと。」
「スンマセン。領主了解。ベッカー君メモっておいて。そりゃ代官長マターだな。
元に戻ろう。武器の扱い意外に危険なことありました?ヒヤリハット。」
沈黙。こいつら会議に慣れてねえな。
「あ、殿が明かりをつけてくださったんですが、夜明け前に消えてしまったそうです。敵襲かと思ってひやひやしたらしいです。」
あー、それは、ヒヤリハットじゃねえぞ、ベッカー。お前の名前は俺の心の中ではバッカーだ。やーい、やーい、バッカー。
ん?
「あ、スンマセンでした。松明用意するの面倒だから、石に溝掘って油を流して松明代わりにしたんだけど、油きれちゃったか。
はい、次回からは溝を深くして油を増やしましょう。」
「ハッ、では、ヒヤリハット、他にないですか?隊に戻ったら聞いてみてください。次はムリ、ムラ、ムダに話題を移しましょう。何か今回の訓練でお気付きの点ございますか?」
「今回、戦車から大砲撃ちましたが、魔物の大きさによっては装甲車から機関銃でよかったのではと思いました。」
戦車隊長大賀さんが真っ赤になって、なぜか涙ぐんでる。泣いた赤鬼。鬼の戦車隊長。
「あ、あれは一種の景気つけで、村人の前に戦車出して一発撃ったことに意味がある。だから無駄ではない。」
「全力をかけて倒すべきだシシ。」
わかってんじゃん、代官長。獅子頭さん。まあ、過剰戦力ではあったな。模型の魔物レベルには。全長10メートルくらい。なんせ200人が突くから、大きくしたんだが、それでもまだ戦車が相手して撃つには小さいな。
「ハッ、ほかには?ムリ、ムラ、ムダ。」
沈黙。
「ではこれも次回までに各自の隊に戻って聞いておいてください。他に今共有すべきことはありますか?」
ロドリゲスを見る。目が合う。
「じゃあ、なければ、これで。殿のお言葉で終わる。」
「あ?
じゃあ、これからもがんばってください。これは俺だけかもしれませんが、実際にやってみないとわからないことだらけでしたね。前向きにやりましょう。
スンマセンが、次回は規模を拡大して演習をします。細かい日程などはのちほど。それまでに訓練、武器の手入れ、その他よろしく。」
「解散!」
「「「「ありがとうございました。」」」」
準備しない会議は不毛だったが、今回はデブリーフィングとして演習直後の生の感情を共有したかった。まあ、うまくいかなかったみたいだけどね。
血沸き肉躍る痛快な展開にはなかなかならず、ただただ地味なやりとり。結論は「補給体制を見直しましょう。」まあそんなもんだわ。ガンガン回せPDCA。
いざとなったら戦地にも補給用に線路ひきゃあいいだろう。貨物自動車はなるべく出したくない。あ!線路!
国王に言われたまんまだった。メンドクセー。
お読みくださりありがとうございます。
誤字の指摘いただき幸いです。
意図して書いたものもあり全てを受け入れるわけではありませんが、それでも助かっています。
引き続きお願いします。




