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異世界召喚! 三方 1ジョー得

お祭り済んでまた日常。

お祭りすんで、また地味な仕事に戻る。


異世界転移させられてまず水やり、あとは泥だしたり金属出したり。で、何とか生き延びた。その後は避難民が増えてきた。


新住民増えたら領主の仕事が爆増するに決まってる。


 答えが出ない・読めない問題を、ほぼ即決しなくてはならない。アラフォーまでずっと下っ端してた俺は、職歴のせいか、決断をプレッシャーに感じる。自他ともに何も決めずに流されていた。


新住民の受け入れ決定。

住民の裁判。

朝令暮改レベルでの領内ルールの変更。


 なにかと、せわしい。水やりして寝てたのが懐かしいな。


法律でいえば、最初は法三章の精神でやっていた。殺すな、故意に殺したら死刑。事故なら弁償。傷つけるな、傷つけたら弁償。盗むな、盗んだら三倍返し弁償。


30人の村の中でなら、それすら不要だった。ムラ社会のうちうちのルール。しかし領民が増えてくるとなると、だんだんややこしくなってきた。今のところ殺人事件はないが、傷害事故なら時々ある。

けが人はエリクサー飲ませれば解決なんだが、物が壊れてしまった場合の過失割合なんて、俺にもわかんない。

うちの領民がみんな貧乏でたいした持ち物がないのが救い。


今までは双方の言い分聞いて、翌日に裁判してた。俺は他にも仕事あるから、裁判業務減らしたい。ロドリゲスに頼んで、予審官を置いた。


俺は時代劇のお奉行様の役。予審官が調べて、意見をつけて俺に送る。判決だけ俺が申し渡す。お白洲でイレズミ、の気分。いちいち双方のまとまらない主張を聞いてるよりずっと早い。


 最初からこうすれば良かったと思うが、最初は、それだけの事件もなければ役人もいなかった、この時期だから、というのはある。やたらと訴え出ないために、裁判費用も必要だな。


 なんで日本が無料で民事裁判をしてくれていたのかわからん。裁判官の人件費と裁判所の維持費用位取っても構わないだろう。 


 ※ 日本の裁判費用、冗談みたいに低い費用を裁判所に納めます。キョータが知らないだけです。


 この体制でうまくいかなければ裁判官を置いて、領主との二審制にするしかないな。まあその先の話だ。


 あと行政としたらなんだろ、三権分立からいったら議会だな。まずは村長会の意見を少しずつ汲みあげていくところからいこう。領主とその家族、家臣だけでは視野が狭くなる。


 いままでは、とにかく村の行政があてにならなかった。30人の村なら住民票もなんも要らないからね。


 全部全部ぜーんぶ、教育に帰結する。ある程度の教育受けた行政官が複数いないとまともな統治できない。だから、領主の下に騎士とか部下置いて領地与えて丸投げ。そもそも貴族だって国王が統治できるサイズこえてるから領地与えて丸投げ。領地与えて丸投げの循環。


 話は逆なんだろうな。村連合の貴族、貴族連合の王。戦後の昭和平成の人間の俺には、そこらへんの仕組みが分からんかった。


 うちの奥さんたちには、逆に俺の発想が分かんなかったらしく、反論の糸口すらなかったみたい。文化の違いとしか言いようがない。


 行政の書類も5年とか10年とか保存しておかないと後でわけわかんなくならねえのか?特に徴税関係。


 今日は変な裁判が持ち込まれてきた。予審官が調べて、意見をつけて俺に送る仕組みにしたんだけど、意見が「助けてください。」だった。予審書を見て、裁判室に向かう。俺の趣味で、白い砂利が敷いてある。


「二人は、アマガサキ村新規モブ移民のギンジ、同様にコトブキ村新規モブ移民のジューゾー。に相違ないか?」


「「はい。」」


 両方の村長も含め、4人のおっさんが白洲の上で頭を下げる。石の上に直接座ると痛いので、織物の上に座っている。正座の文化はないのでアグラだ。少し花見っぽさもある。


「調べによると、モブ移民のギンジがアマガサキ村はずれの街道で財布を拾った。中を改めると金貨3枚つまり3ジョーと、メモが入っていた。ここまではよいな?」


(新貨幣が結構出回ってるなあ)


「「ええ。」」


「よかった。で、メモを見たら持ち主がジューゾーだとわかったので、ギンジは村長に声をかけたうえで、ジューゾーの家まで仕事を休んで届けに行った、と、ここまでもいいな?」


「違います。」


 眉が太く目つきが悪い、浅黒い男が大きな声を出す。まあね、ここらだと大体のひとが浅黒いんだけど。喧嘩強そう。座ってるからわかんないけど、たぶん身長もある。


「おい、ジューゾー、黙れよ。」


 コトブキ村の村長が慌てて遮るが、これ、もう、ジューゾーに言わさないと収まらないだろ。ウゼー。


「なんだ、ジューゾー、言ってみろ。」


「落とすまでは、確かに俺ジューゾーの財布でしたが、落とした俺に落ち度があるんだから、ギンジとかいう男の物になったんじゃないんですか?


 しかも、聞いたところではギンジは村長にも届けてるし、仕事を休んで俺んとこまで来た。


 これはもう、拾ったものをパクったんじゃないでしょう。正式にギンジのものでしょう。」


 鼻の穴ひろげてる。ドヤ顔が憎たらしい。


「なんだとう?!」

 細身の、すばしっこそうな、いかにもギンジ、って感じのあんちゃんが怒ってる。


「まあ、まて、ギンジ。ギンジにも言い分はあるだろう。言ってみろ。」


「予審官のかたにも申し上げましたが、殿様の領内の法律に、盗むなというのがあると難民教育の時に習いました。殺すな。傷つけるな。盗むな、盗んだら三倍返し弁償。


 ですから、先ほど殿様がお読みになった通りのことをしました。

 

 それなのにああまで言われたら、こちらも引っ込みがつきません。」


「そうか。ジューゾーの言い分も、同意はしないがまあそういう考えなのはわかった。


 ギンジの行いは模範的に手順を踏んているので何ら落ち度はない。たいしたもんだ。


 で、




 ちょっと待ってろ。」


モブ役人の予審官とヒソヒソ話す。

(どーすんだよ、これ?)

(ですから、助けてくださいって。)

(代官さんどうしてんの?)

(演習で遠出してます)

(相場はどうなってんだよ?)

(前例なんかないですよ。だいたいは村の中で内々に済ませてたし、確かに落としたほうが間抜けです。)

(そうなの???


 じゃあ、俺が勝手に決める。後で変更もあり得る含みで、いい?)

(はい。まあ。)

(明らかにこっちの常識から外れてたら、横から言って良いから。じゃあ、言うよ)



「判決!

 その三両は没収。俺が貰う。証拠のこれだな?」


「「へへー」」


「はい。没収。俺のもん。



 ところで、だ。

 三両は没収だが、どんなメモか知らないが、メモと財布はジューゾーに戻す。無きゃ不便だろう。俺も要らない。


 あー、メモが犯罪に関係するものなら、後で、すぐに申し出ろ。今は言いにくいだろうから、後で、すぐに。いいな?」


「ありがとうございます。犯罪に関係するものじゃあありません。」


「ジューゾー、メモと財布の礼をギンジに言え。」


「済まねえ。メモが戻って実は助かった。仕事休んでまで来てくれてありがとう。」


「ギンジ、いいな?」


「へえ。」


「さて、ギンジ。先ほども伝えたとおり、今回の動きは模範的だ。領主から1両。褒美を渡す。」


「え?


あ?


ああ。

ありがとうございます。」


「ジューゾー。財布とメモは戻ってきたものの、カネを落として不便だろう。つっぱらかった態度には思うところがあるが、でもまあ、見舞金として一両、俺から渡す。」


「うぅぅ、ありがとうございます。」


「アマガサキ村の村長!」


「はいっ?」


「スンマセン。おどかしちゃったな。何も罰するんじゃないよ。


 村長が幹事になって、4人で飲みに行くこと。ただし、ひとり二杯ずつ飲んだらサッサと汽車に乗って戻れ。酔っぱらってけんかになっても申し訳ないですから。

 スンマセン、ひとり二杯、四人で合計八杯で解散ね。ここは領主命令。いい?」


「ははー。」


「じゃあ飲み会費用。俺いけないから、4サントス渡しとくんで。


 あと、俺の手元に残ったお金は裁判費用ね。じゃあ、それで終了ね。」


「「「「ははー。」」」」


「スンマセン。じゃあ、飲みに行って。

 この場はオシマイ。


 反論は認めません。この件は全員が納得したという終わり方で。うらみっこなし。」


「「「「ありがとうございます!!!!」」」」


 あー疲れた。奥さんたちにいたわってもらおう。グフフフ。飲みになんか行かないもーん!


お読みくださりありがとうございます。



今回は大岡政談に材を取り、筒井康隆氏の小説を参考にしました。

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