異世界召喚! 領主生活開始初日 異世界第二章
異世界に巻き込まれ召喚された俺は、村をひとつ貰った。
70日目 村初日
旅はひと月ほどかかり、領地へ着いた。覇気のない、弱った色黒の老人たちが俺に視線を浴びせる。
騎馬の隊長さんが老人を呼び寄せる。
「ンゴバ、こちらは新しい領主さまだ。」
「スンマセン、オレ、領主です。」
「それは、どうも。よろしく。」
われながら間抜けな挨拶だが、ずいぶんそっけない村長だな。
騎馬の隊長さんに王様の任命書を読み上げられ、渡される。
「勇者キョータを辺境男爵に命じ、領地を与える。」
みじかっ!俺の称号勇者なのね。知らなかった。
任命書の読み上げは、本当は途中で別れた文官の仕事だろうな。手抜きしやがって。旅費浮かせてどっかの町で時間つぶしてるんだろう。
1頭立て荷馬車2台とそれを引く駄馬2匹は貰えた。他は来た道を帰っていく。道中仲良くなった御者たちも当然といえば当然だが引き上げていく。観光に来たらしいがあまりに何も無いので唖然として帰っていった。
なんかいろいろピンハネされてる気がするが、証拠もなければ取り返す方法も無い。仕方がない。弱気かつ暗い俺はいじけるだけだ。
ホームセンターから持ってきたものは使い道が分からないのか、全部無事だった。
初対面の領主と領民(村人の老人たち)双方スゲー無言。なんか異世界来てから無言圧にさらされる場面多くね?心折れるわ。
「ンゴバ、さん、すいません村のこと色々教えてください。」
「どこから話したらいいですかなあ?村人の人口は30です。僻地の廃村というやつで、皆人族(黒人)の老人ですね。わずかに若者扱いされる中年がいます。」
「ありがとうございます。」
心身ともに弱った人たち。不衛生、明らかな栄養不足、皮膚病、ぼろきれまとうだけの半裸の人の村。ジスイズマイ領地、マイ領民。
村人たちは大家族制で、土で作った家の中に住む。見た目、土塀の中にいる感じ。屋根は草ぶき。
離宮の町とは大違いだ。辺境とはこんなもんか。
恐ろしく大きいぼろい、10人くらい住んでる家が3軒ある。全部で30人。
さらにぼろい空き家が7軒あった。
「ンゴバ、さん、すいません空き家が7軒て今まで何をしていた家ですか?その人たちは?」
「前の領主さんの悪口は言いたくないが、ともかく全部持って行ってしまうたちのおひとで。」
一家逃散、一家餓死、若者は出て行き老人は死に絶えるなどのいくつかのパターンがあるが、結局は貧乏過ぎて再生産が行えないということに尽きる。過重な収奪が村をだめにしてしまったようだ。限界集落というか失敗国家だな。領地経営の失敗例だ。
隣の村まで徒歩で1週間位かかる僻地で、しかも周囲に街道なし。山を目印に移動するが、村人たちはなんか勘でわかるらしい。
交易も無理、特産品もなし。ただの荒れ地じゃねえかこんなとこ。
荒れ地に無理やりしがみついてる30人の限界集落の領主って、何をどうすりゃいいんだ、、、、
離宮の街では南欧系しか見かけなかったが、ここは黒人ばっかり。いわゆるナーロッパからいきなりの辺境です。何が辺境男爵だよ?まあ、辺境だけど、領主ってもう少し領民いるんじゃねえの?領民30ってなんだよ?
俺の地元の町内会のほうが人数多かったぞ。貴族だぜ、俺。
痩せた土地で畑からの収穫はほぼ望めない。大人が山すそに入っていって採集するが、魔物に襲われるが仕方がないそうだ。
むろん、村人たちに手持ちの現金は無い。
とりあえず空き家Aに泊めさせて貰った。野宿よりはましだろう。飯はないという。
もう馬車に乗らなくていいのは助かった。
万が一想定してドッグフードトキャットフードを貰ってきたが、さすがに、村に来て初日に食べる気にはならない。腹が減ったまま眠る。さよなら俺私兵団。さよならハーレム。