異世界召喚! 王立鉄道公園造成
らちあかないから鉄道テーマパーク作り始めた。
線路をひいたならば駅前の土地は必ず押さえたい。
何度目かの内々の謁見の時に、王宮警備隊長さんに聞いてみた。謁見というより呼ばれて世間話が多い。俺、忙しいんだけど。
呼び出しは警備隊の一隊が王国の旗をたなびかせてサトー館にやってくる。目立つからこっそりやって欲しい。下っ端の兵隊か文官に呼ばれても行きますって。よその貴族にやっかまれたらどうすんのよ???
最近は小さい部屋で王様、隊長さん、俺の三人が会うことが多い。前はもっと大きな部屋だった。今はお茶が出ることがある。お菓子は出ない。持ってきたら失礼に当たるんだろうか?それと、これ、親密な扱いなんだろうか?
「スンマセン、隊長さん、警備隊の一番弓のうまい人っていうか、この国一番の弓の名手が本気出したらどのくらい矢が飛ばせますか?」
「魔力援助付きの剛弓が国宝にありました。
第一兵団の団長がその弓を引いて2キロ先の敵の将軍を鎧と馬ごと射抜いたことがあります。
その後、団長は戦死してしまいました。弓も失われてしまいました。それは極端な例ですが、そうですねえ、魔法抜きで膂力だけだと斜めに飛ばす集団戦で1キロ、的に当てるような直射で500メートルくらいですかねえ。」
(作者注・異世界の弓を異世界人が引いたときの話です。)」
「スンマセン、ありがとうございます。俺異世界勇者なんですけどね、ホント失格勇者、無能勇者でスンマセン。
じゃあ、王様、安全のため、線路の端から両方へ約1.5キロ幅、合わせて3キロちょっと、これを鉄道用地として鉄道会社領に組み込むことを許してください。弓を線路に射込まれたらかなわないです。」
「スンマセン、もともと荒れ地の国王領を突っ走るつもりですが、他の役所とか貴族の横車を避けたいんです。国王直轄地扱いの鉄道会社領。鉄道会社が代官。国王領内部の担当替えです。
で、線路の幅も含めると3.2キロ幅くらいの細長い土地が、ずーっと続く。王様、いいですか。」
「うーん、ほかの貴族の土地を奪って国王領に編入するなら問題があろう。しかし国王直轄領内の中での担当替えについては問題なかろう。役職を失う者がいないようにうまくやってくれ。」
「スンマセン。ありがとうございます。役職については考えておきます。
で、いいすか?
今日のところはあともうふたつ、お願いがございます。」
「サトーにしては珍しいな。出来るかできないかは別として申してみよ。」
笑ってる。
「スンマセーン、一つは線路を献上させてください。」
「今までその話ではなかったのか?」
「スンマセン。申し上げ方が変でした。おもちゃの機関車を献上します。人が乗れる小さいやつです。離宮の町の郊外に走らせます。かなり多めに土地をお貸しください。」
「下賜ではなく、貸しか。」
「はい。『王立庭園』をお建てします。お建て次第お返しします。おもちゃの機関車の他にいくつか遊べるものをこちらで用意します。
王様に遊んでいただき、飽きたらあとで貴族とか平民にも三日に一回くらい公開してあげてください。」
「それは土地の使用をサトーに任せ、しばらくしたらサトーが献上というか返還というか、まあ余にもどすということだな?よい。貸すとなるとまた悔しがる奴が足を引っ張る。
「異世界の知識を活用した庭園を造れ」という王命でどうだ」
「そりゃあ、ありがたいですけど、庭くらいでそんなんいいんですか?」
「団長、宰相に話を通しておけ。」
「スンマセン、ありがとうございます。」
「で、サトーはそこから一体どういう得が出るのか?」
案外鋭いな。
「王様の前でスンマセンが、正直、鉄道関係でいろんなところへお願いして回るのにウンザリしてます。」
「スマンナ。」
「スンマセン、そうじゃなくて、鉄道の現物があれば話が早いかなと思いました。
王様に絵と模型で説明するのはいいんすけど、毎回別の人にとなると、飽きてきました。絵も模型もみないで全然許可出さない人がいるとちょっと。
あー、密告じゃなくてよその国の話ですよ。異世界の。
なら、乗れる模型作っちゃおうと。
んで、王様のお供として大臣も将軍も汽車に乗ったら、まあ、わかりやすいかな、と。」
「で、スンマセン、今回は得しないんですが、これもそのうち得する形に持ってきますんで商人と相談させてください。」
異世界鉄道公園、思い付きで話したんだが、これもまた商人と詰めないと。遊園地だな。
「もう一つお願いがございます。えーっとなんだっけかな?
あ、二つ目のお願いは、線路を通し始めるにあたり、近所のサハラと、サキューを通します。っていうか、これはご許可の前に作り始めちゃってます。怒られたらサトー鉄道にします。
で、その、線路を通して3キロ幅で領地を削ってしまうと男爵領なんで、領地がなくなっちゃいます。
逆側にある荒れ地に二人の領地を伸ばしてやって欲しいんです。彼らとは王都館も近いので、王都でも領内でも近所なんですよ。
ちょっと気まずい。
これもさっきの国王直轄領内の中での移動に似たようなもんで、領地の境界線の変更でご加増も減知もなし。お願いします。」
サハラと、サキューに関してはそんな幅で領地削られたら狭くなり過ぎちゃうから替地を荒れ地のほうにねだった。実質的には何も無い荒れ地、名目上は国王領の場所が動いたに過ぎない。
領地、特に領都があんまり鉄道から離れちゃうと、彼らにうまみがなくなっちゃうからね、領内のど真ん中を通す形にして、うまく替地貰えた。
で、そんな調整は三バカ以外は面倒だから、他は国王領を通す。無人の荒野を直線で離宮まで伸ばす。
やっぱ沿線は鉄道会社の所有だけど、駅前は俺がおさえておきたいよね。ぐふふふ。各駅の駅前に俺の飛び地領をもらう。
「建ててる間、建設のための人足が止まる小屋とかいろいろ必要です。せっかく建てた小屋ですから、一部は兵舎転用します。兵舎転用可能レベルのちゃんとしたのを無料で作ってあとでお渡しします。
一部は俺に払い下げていただければ。」
ぐふふ。国鉄の駅前はぜんぶ俺の領地。駅から少し離れた線路沿いに近衛の駐屯地。うひひひ。
サハラとサキューは領都の近くに駅を建ててやる。鉄道会社用地寄りギリギリ。そこまでは俺んちが抑えた商店街通るんだけどね。 徒歩20分くらい商会運営の商店街があって、その先に領都の領主館。駅から馬車だと5分なら悪くねえよな。
「スンマセン、商人の皆さんに、変なお願いなんですけど、三貴族領都の商人も潰れない程度にしといてやって欲しいんです。
街道筋だってしばらくすれば線路沿いに移ります。商業の中心は間違いなく駅前に移ります。今までの商人が生きてけるだけのなんと言いうか、お願いします。」
「殿さまにはお世話になりっぱなしなんで、三貴族の出入り商会には、格安で駅前の土地をお貸ししましょう。
そのあとのことはまたご相談しながらで。」
「あーそれで頼みます。キッサはほっとくから。あくまでも三貴族だけね。」
何が何でも、近所のキッサだけは通したくない。サハラと、サキュー通したが、なるべくキッサから離して、サハラとサキューが儲かる形にしたい。ボルケーノの資源も鉄道で運びたいから枝線を通す。キッサの周りをまわる形になる。キッサ領は三線五駅使用可能な素晴らしい土地。どの駅もクソ遠い。駅前も貸してやらない。
キッサ家には日本の鉄道ことわった街の運命をたどってもらう。彼らは別に線路を断ってないけど。
恐ろしくややこしい経緯をとるが、形は王立で実態は民営。国からの補助も遠慮しておく。こんだけかかりそうですという見積もりは出しといた。
王様は原案持ってったら大賛成の大乗り気なんだけど、この国の場合王様の権力ほぼないから進まない。あーだこうだ、いろんな役所や役職持ち貴族の間を話しがぐるっと回って、一年くらいしてようやく第一工区の許可が出た。
国王をちょっと株主にした王立鉄道でもこんなもんか。
サハラ領とサキュー領は当主の許可があったから簡単に通せたんだけど、国王領に入ったとたんに面倒になった。
鉄道の実際面は、俺しかわからないが、そうはいっても俺も鉄道系の趣味は無かったんで、詳しいことはわからない。
最初からそうなんだが、電車が衝突しない仕組みとか全くわからない。
だから、領内に線路を作ったときは単線でうまいこと回せる気がしなくて、複々線の環状線ひいた。全線一方通行だから正面衝突は原理的に起きないしくみにした。
そうえいば子供のころSLに乗ったことがある。弟はまだいなかったかな、兄貴とお母さんと三人で乗りに行った。
駅では列車となんかカバンのやり取りをしていて、それが衝突を防ぐ仕組みらしかった。
カバンもってない列車は、線路通れません。しかしそれがどういう仕組みなんかわからん。もうちょっと聞いておけばよかったなあ。カバンの中にその区間だけは走れる鍵でも入ってたんだろうか?
昔の丸ノ内線は機械的なATCだか何だかで、電車が通ると駒が倒れる仕組みになってたと思う。上京する前のことだから、実物じゃなくてなんかの図鑑で見た気がする。それもどういう仕組みなんか忘れた。駒が倒れるとどうなるのか、どうやったら駒が起きるのか。
赤信号青信号ですらどうやって付けたらいいやら。
うちの領内をいろいろ走らせて、鉄道も高速道路も時速40キロ制限にした。むろん、もっと出せる。機関車の速度計を見ると90キロまで目盛りが刻んであるからそのくらいは出せるのだろう。しかし、今の俺たちの技術では、安全に安全みて40キロがいいところだろう。
ヘンリクさんとウマノスケさんに聞いたら、馬が本気で走ると60キロぐらい。でもそれは20分がいいとこだろうという。
(作者注・異世界フアンタジー馬の話です。
こちらの世界の馬はそんなに強くありません。整備された競馬場で、数秒数十秒、距離にして1-2キロくらい、そのくらいの速度が出た記録がある、競馬馬の最速記録がそのくらいだ、その程度です。)
ということは異世界人類が経験した速度は60キロぐらい。そのうちにそこまで機関車も持っていくとして、いまは40キロにしておこう。
それにしても特急の場合1時間くらい休みなく時速40キロ出し続けるというのは異様なことだそうだ。早馬乗り継いでも追いつかない。20分ごとの距離に馬が待っていて次々に乗り換えたとしても乗っている人間がつぶれてしまう。
例外的にうちの天狗と飛行クラブなら、追い風参考記録なら何とかそのくらい出るんじゃないか?
これは実際に汽車を領内に走らせて分かったんが、どうしても追突の危険性ならある。仮にだけど、前の車両が脱線して止まっているとする。まあ脱線しないように馬鹿に広い幅にしてるけど。脱線じゃなくて故障でもいいや。
後続の列車が時速40キロの場合、前の異常を見かけてから急ブレーキかけてもだいたい300メートルぐらいは止まらないことが分かった。
手動ブレーキだから、ともかくブレーキがきくまでの時間がかかる。運転手が汽笛を鳴らして合図する。ブレーキ手がそれから必死でブレーキかけるからどうしても停まるのに時間がかかる。客車6両として6つのブレーキを三人で手分けしてかけても、それだけかかる。
「停まるのに300メートルかかるのならば、列車から400メートル後ろに異常を知らせる道具を曳いていけばいいのでは?」
ナンシー、お前は毎回天才かよ?
列車の最後尾から400メートルのひもを曳いて警告装置というか、この先400メートルに列車がいますよという標識を付けた。
ほぼ直線区間ばかりだからできる荒業だ。
後続の運転手は前の編成の吹き流しが見えたらブレーキをかければよい。吹き流し車が動いているなら前の車両も動いているはず。吹き流し車はごく簡素な軽い台車にして衝突したら吹っ飛ぶようにした。
吹き流しは色々試した結果、すぐにちぎれてしまったりいろいろ難があることがわかった。夜にもわかるように紅白のパイロンにカンテラという珍妙なものになったが、安全にはかえられない。これで追突もある程度避けれるようになった。
あと、ひもでつないどいて全体が急停車すると前の列車のほうに進んでっちゃう。慣性があるから。かといって緩やかなブレーキかける程度の抵抗くらいではやっぱり付いてっちゃう。強いブレーキだと今度は車も線路も痛むし燃費もよくない。パイロン車にブレーキ手乗せるのではそいつの安全が保障できない。
これもいろいろ試した結果、ひものかわりに、ひもと細い木のはしごの併用にして解決した。
そのうち誰かがもっとましなもん発明してくれるだろう。その前に鉄道電話と鉄道無線だけどなあ。
しかし許認可は遅々として進まない。勝手に地下鉄でも掘ったろか。やればできそうなのが怖い。
いろいろ手を広げ過ぎてこんがらがってきた。領内水やりして、力余ってるから穴掘りまくって丘作りまくって畑作りまくって寝た。
お読みくださりありがとうございます。




