異世界召喚! 王命により
異世界に巻き込まれ召喚された俺は、酒屋を始めた。
何回かの謁見のあと、初めて個別の謁見になった。
いつものように王城に呼ばれる。しかしいつものようにはほかの貴族はいない。王、大臣がひとり、衛兵3人。どーなってんだ?
「サトー辺境男爵を辺境伯に昇爵する。」
突然、王様に言われた。何の下話も聞いてねえぞ?
「えっ?スンマセン、俺、何の手柄も立ててないですけど???」
「サトー殿、王の前ゆえもう少しシャンとされよ。」
大臣がかなり上から目線で言いやがった。
「この度の昇爵は線路建設のお達し、込みである。」
「えっ?えっ?スンマセン、なんすか?」
「サトー殿!
領内に鉄道なるものを考案し、産業が栄えていると聞く、王様の耳に達し、大変お喜びである。」
「そりゃどうも。スンマセン。」
「ついてはサトー領以外にも王国内に広く鉄道を通せとの仰せである。」
「わかりました。
線路作りましょう。
ただ、俺は細かいことはわかんないんです。ドワーフがたてており、俺は領内の酒を飲ませているだけなんで、具体的なことはさっぱりわかりません。
領内に戻って彼らの都合を聞いてみます。間に商人が入ってますから、その者どもに費用を聞いてみます。いつになったらとりかかれるのか、お金がいくらくらいかかるか、全くわかりませんが、取り急ぎ、聞きに戻ります。
いろんなところに鉄道通そうって計画だけはいろいろあるんです。ただ、鉄道作るお金が全然集まらなくて、実際には作れない、そういう状況のところばかりなんです。
あー、場所はどこを通したらいいんだろう?それも含めていろいろ調べます聞いてみます。スンマセン。」
王様が玉座から下りておれに寄ってくる。え?近いんですけど。
「あのな、サトー。最近は失格勇者ではなくて酒勇者と呼ばれているらしいぞ。」
「エ?俺?貴族と付き合いないんで知りませんでした。スンマセン。」
「そうか、それはよい。鉄道を通すにはもろもろの交渉事もあろう。ある程度の爵位がないと難しかろう。そのための昇爵である。頼んだぞ?」
「しばらくお待ちください。とにかく、聞いてまわります。大体いつぐらいまでにお返事、大体いつぐらいから作り始めるのか、王様のお考え、あります?あっ、そもそも家来の俺がそういうの聞いていいんですか?スンマセン。」
「無作法はゆるす。そのうち覚えよ。鉄道は見たこともないものゆえ、その方にまかす。無茶はせず、大体のめどが付いたら教えてくれ。それまでこまめに連絡をよこせ。」
「へへー。」
お約束感がある土下座をしてから、退出しサトー館に戻った。
◎◎◎◎◎◎◎
「スンマセン、辺境伯にショーシャク、それと線路作れって言われたんですけど?」
「殿は今までの辺境男爵だと騎士のみの授爵が許されていましたが、辺境伯というのは辺境だけあっていろいろなことが任されています。いちいち王様の指示を仰がなくても、という趣旨です。男爵までの授爵、王の許可なく領軍を国の内外の領外まで出す権限、他色々あります。
貴族社会ですからもちろん各方面への根回し相談は要りますが、表向きは、はい。そうです。」
「エッ?そうだったの?じゃあ何人か騎士にしてやんねえとなあ。」
「これからは男爵までは殿の一存で授爵して王国に届ければよいのです。もちろん届け出はこちらで作ります。そもそも辺境男爵というのが異例だっただけで、「辺境伯」で一つの爵位です。伯爵ではありません。
権限からすれば公爵なみ、宮中の序列は侯爵の下です。」
そうサトー館の人に教わった。確かに辺境だよね。うちは。
「スンマセン、それは後回しで、まずは王都にいる商人に相談しないと。
都合聞いて数日内に日程調節を頼みます。俺、いったん領地戻って、明日また来ます。」
転移すればすぐに新しい町に戻れるが、それはまだ隠しておきたいので影武者を送る。影武者といってもサトー家の紋章の入ったボロ馬車を領地に戻すだけだけど。誰か監視してるんだろうか?
さ、こっちの世界来て以来、俺の人生でも初の大仕事だ。まずはプレゼン資料作りだな。作ったことねえからキャシーとケイティと代官さんをサトー館に連れてきて一緒に考えてもらう。
「お嬢様っ!」
「あれ?スンマセン、そんなに久しぶりだった?今度からどんどんきて?」
「では殿さま、まずは鉄道について、問題点他を洗い出す第一回目ということでよろしいでしょうか?」
「「「お嬢さま、、」」」
「えっ?なんで泣いてんの?ケイティなんかやらかした?スンマセン。」
「殿、サトー館の者はサトー領の者と違い、滅多にお嬢様がたにお会いする機会がなく、感激しております。このロドリゲスも改めて感服いたしました。」
「「「お嬢さまがあまりにりりしく、あまりにご立派、あまりに聡明で。」」」「「「よかったよかった!」」」
「殿さま、話を進めましょう。まず、そもそも、どこからどこへ鉄道をお考えですか?」
完全スルーのケイティさん。恐ろしいんですが。
「エッ、スンマセン、聞いてこなかった。」
「そうですか、それはむしろよかったです。
そこも含めて検討しましょう。
全てはサトーの都合ですが、サトーの都合ですと既存の線路を伸ばす方がいいですね。
そうすると当面伸ばす先としては離宮の町一択でしょう。
ここまでで何か問題はありますか?」
「スンマセン、みんな意見は?」
「「「お嬢さま、、」」」
あーだめだこいつら。
「代官さん、なんか問題あります?うちと離宮の町伸ばすのに?」
「そうですね、途中キッサ領を通るのであれば、新しいキッサ家に話を通さないといけないですね。まずは最短ルートの測量ですが、それは王様の特許状頂きたいところです。他に測らせずウチで測りたい。
あと、通した土地の扱いですね。国王直轄領にするのかそれまでの領主の土地にしておくのか。
貴族や政府との交渉はサトー家でしなきゃいけないとして、それ以外は商会に丸投げしてください。うちは、とにっかく人手が足りません。
私も代官としてはそれなりの人物だと自負がありましたが、家の発展に追いつける人材がいくらでも欲しい、鉄道まではちょっと、、、
ジェームス、王の意向を確認しといてくださいますか?政府じゃなくて王の。」
(この渋い人ジェームスって言うんだ。)
「ロドリゲス、今の王には伝手が無いんだ。殿が最大のコネを持ってる。」
「スンマセン。そうなの?じゃあ、そこらへん商会の人たちと詰めたらまた謁見するわ。資料持って行って中間報告、順当でしょ?
じゃあ、商人さん来るまで、とりあえずこんな感じで。あと俺のほうでやるアクションて何?商人と話す、王様に会う、以外で。」
「「「「「ありません。」」」」」
「おい、それ傷ついたぞ俺。で、この件で重臣の皆さんと『お嬢さん』がすることは?」
「「「「「ありません。」」」」」
「スンマセン、お疲れさまでした。じゃあ国もと組は明日は休み。サトー館の人も順番に休んでね。 解散!」
妻二人に来てもらって助かった。
「あー帰りがけにスンマセン。離宮の町の周り、国王直轄領ってどのくらいの広さですか?」
「サトー領とおなじくらいですかね?馬で10日くらいの幅に広がってます。」
「そうですか、あとは商会の人に聞きましょう。」
翌日、商館主たちがきた。数日内に日程調節って言ったよね?こないだ領地で会ったよね?おじさんたちも転移の魔道具とか持ってる?
「線路ですか?どうせ殿様がピューっとつくっちゃうんでしょ?」
「そりゃそうなんだけどさ、だから困ってるの。
こういう時の相場とかなんとかあるんじゃないかなあと。普通に建てたらいくらになるんだろ?助けてください。スンマセン。」
「じゃあ、人が石運んで作った場合の積算出しましょう。それならあたしらのお手のもんです。今までの鉄道計画と同じ積算出します。
線路は鉄の値段、サトー領じゃないですよ?王国の標準の値段で考えるとして、あーそうだ、機関車は値段付けられないですよ?」
「スンマセン、まー、そこをなんとか。
この値段だったら余所の領のやつにも売っていいっていう金額をドワーフに聞いて、そこへ儲け乗せて、商会ならいくらで売れるっていう。
んで、さらに三倍くらいで?匙加減任せます。」
「殿って、無欲に見えて時々アコギですなあ。それで見積もり案を出します。」
「アコギっていうか、領内で手一杯なの。俺。こう見えて結構働いてんのよ。ついでに値切られたらやめちゃえばいいじゃん。」
「いやいや。値切られたら、殿が持つ形にしてください。」
「「「「「そこは殿が。」」」」」
「エ?おれ、そんなに持ってないよ?」
「だってただ同然で作っちゃうでしょ?」
「あ、そうだった。
スンマセン。馬車屋とかに恨まれないかなあ。」
「線路のまわりは国王直轄領、んで線路はサトー家の持ち物。駅前に町作ってサトー家の領地。
それができたら、無料で進呈したって元取れます。長い目で見たらぼろもうけですよ?」
あーでもないこうでもないという話になりました。
「じゃあさあー、謁見してよ。
俺馬鹿で商人の話聞いてもわかんねえからって。
念願の王家御用達!」
「やー、貴族貸しってそんなに儲からないんですよ。
踏み倒されかねないですから。」
「あー。踏み倒していいんだ?」
「「「「「ダメです!」」」」」
「スンマセン。」
「サトー様みたいに話の通じるお人ならいいんですが、俺貴族、さあ貸せ、俺貴族、返せないから待て、みたいなお人も多くて。」
「まあねー、領内破綻寸前だとそうとしか返事できないよなあ。で?」
「で、どうにもなんなくって、徴税まで請け負うと、今度はボッタクリだなんだ言われまして、ご貴族様どころか領民にも恨まれるんだそうですよ。」
「えー、じゃあそれ以前に仕入れた者の売掛金とか?与信管理とかどうなってんの?
こっちの世の中は。」
「売り掛けを借金とおっしゃる貴族の方は皆無です。前金はまずなくて。
お殿様、名のある商館で修行なさいました?」
「スンマセン、ええ、まあ、少しはね。
仕事ができなくて転々と仕事を変えて家に戻ったところを異世界召喚って話しませんでしたっけ?
最初はあっちでは名のある商館で修行なさいましたよーん。」
軽く言うがみな黙っている。下賤の出身て言うのは公言してるからいいや。
「えー、その、まさに、与信でして、どの貴族にいくらまでならお立て替えするか、って読めないから怖いんですよ。」
後日、商人たちがますます殿を信用した、とジェームスさんに教えてもらった。失格勇者が失格商人になりましたと言うだけなんだがねぇ。
じゃあ今度は王立鉄道の件を王様と相談だ。
お読みくださりありがとうございます。




