異世界召喚!新しい村にきて三年(その2)
今までのあらすじ
異世界に巻き込まれ召喚された俺は、町を作ったり、水やりをしたり、俺がいた世界のものを複製して持ち込んだり。
3年前には試作品状態だった蒸気機関車だが、今では街道筋に作った楕円形の路線も完成した。環状線と呼ばれている。領内ではさらにふたつ、合計3つの路線が開通している。環状線は急行を通すので複々線に増築した。
すこしずつ様子を見て改良していこうと思ったが、あまりの便利さに需要が爆発したのでこうなった。
機関車は以前のものより優れている。ドワーフたちが全部分解して構造を理解した後で改良した。、すべり弁(と彼らが名付けた部品)の組付け精度をよくしたとか、釜の材料を改善してより高圧の蒸気で動かしているとか言ってる。爆発事故を起こさないようにと願うばかりだ。ブローオフの概念を伝えると、俺が作った機関車にすでに二つの緊急逃がし弁が付いていたそうだ。知らなかった。
当初は旅客メインを想定していたんだが、貨物輸送が大きい。そうか、日本だってトラックが普及する前は鉄道貨物輸送が多かったんだった。荷馬車をそっくり入れ替える形にはならなかったが、荷馬車も駆逐されない。今までの荷馬車の他に、新たに鉄道需要が開拓された感じだ。駅までは荷馬車、駅からも荷馬車、間は鉄道とうまくすみ分けている。
辺鄙な異世界のどこにこんなに貨物の必要があるのかと驚いた。考えてみたら逆だった。今までは交通手段の関係で交易量が限られていた、あるいは輸送コストが高かったので各村で自給自足するしかなかったのだろう。
俺から見たらどこも同じ村で同じモン作ってるようにしか見えないがそうでもないらしい。いずれは適地で適材を作るようにしたい。水やりだってそんなに何か所も回れないからね。
異世界の荒っぽい世の中、特定の地域の食料自給率を下げるのも危険だから、そこらへんは村人と相談しながらやっていこう。
鉄道は他領にも伸ばしたい。商会と相談して、鉄道会社の体をとった。つまり、私鉄だ。うちのの出入り商館たちの情機起案者と共同運営で、鉄道商会を設立することにさせた。当然、神殿にも一割出資させた。これで私鉄に余計なちょっかいを出す奴は居なくなる予定だ。
「鉄道を伸ばした先のご領主さまに吹っ掛けられて上納するより、はるかに得なんでございますよ。」
商売人は発想が違うなあ。
「ま、損にならない程度には貴族さまの顔も立てといてね。」
で、神殿に頼んでエリクサー配布隊は線路沿いを優先した。神官たちも馬車でごとごと進むより、客車に揺られた方が楽だし。馬車で野営して保存食かじるなら、駅近くのガード下の社員寮で休んでそこらの食堂ですませたいよねえ。近郷近在から駅まで来てもらう。
そこまで先を読んでなかったけど、これが鉄道誘致合戦になった。誰だって領内に医療隊を呼びたい。領主が渋っても領民が望む。鉄道断ったとこは鉄道沿いに人が移動し始めた。領主も領土も関係なしに。
つまり、鉄道が通らないところは領民が減り、没落する。
たった三年、たった三年だがその兆しがすでに見えてきた。まともな領主なら鉄道ひきたがる。
鉄道は俺の領内で独占するつもりだったが、仕方ない。各地に作ることにした。
領地ごとに会社を作り、領主からも出資してもらうことにした。鉄の線路を敷くので金属をとろうとする盗賊からも鉄道を守らなくちゃならない。また、一定割合の利益を与えることで勝手な領主の動き、とくに没収も防ごうと思うがまだ構想段階、各領主と話をしている段階なのでいつどんな形になるかはまだ分からない。そこら辺の匙加減は商館主たちに任せる。
まだ計画段階、話の段階だ。いうなら新製品のうわさを聞いて各方面から引き合いがきまくって、とりあえずの見積もりを出した段階かな蒸気機関車。
俺がいた世界とは逆の動きだが、蒸気機関車のパーツ流用して蒸気機関もつくった。井戸やため池の汲みあげ、製粉、何かと動力機械の需要もある。
戦車も作った。これは蒸気とはいかない。電装が複雑だと複製できないだろうから、戦車はアメリカの第二次世界大戦で使われたM4シャーマン中戦車にした。ガソリン駆動は燃料の保管と輸送を考えて断念。デイーゼルエンジン搭載モデルをまずは作った。そんなに量産しなくていいだろうから俺が1台作った。とにかくガソリン駆動は避けたいからね。
結果として機関車と戦車の燃料統一。次はジェットエンジンか?
機関車同様に、一台お手本作って、あとはドワーフが魔改造。装甲も戦車戦するわけでないから薄くして、部品んで入れ替えられるところはミスリルに入れ替えたから、銀色に輝く総ステンレス状態の戦車が9台。大砲はそのまんまにして、機関銃とか、もう弾薬作るの面倒だからやめた。上に箱乗せてそこから弓兵を乗せればいい話だ。戦車は大砲撃つだけ。珍妙な秘密兵器が出来上がった。
戦車と機関車作るときに、コイルバネ、ネジ、ベアリング、製品としての公差、などの概念も教えた。どんだけ誤差を許容するかっていう公差をそれぞれのパーツごとに事前に決めておく。そうしないと共食い整備の部品取りが難しい。予備部品だってそうだ。
最終的にはジェット機や機関銃の量産考えると、いまのうちに概念だけでもお伝えしたかった。
もちろん、相手は職人だから、「逃げ」や「ヒケ」の概念は持ってた。ただ、それを数値化して、製品を互換性のある部品にする、そのことを伝えるのは結構たいへんだった。
全部オーダーメイドの一品物しか作ったことのない仕立屋集めて、ユニク○の服を量産させる、といえば想像つくかなあ。
俺も専門のエンジニアではないが、ほうぼうの仕事を転々として、ごくごくうわっつらの知識だけは持っていて案外役に立った。スゲーぞ異世界ジョブホッパー。ミスター異世界JIS規格マン。異世界ISO規格オヤジ。
板ばねはあったようだ。なんせ鋼鉄が超貴重品だったから、サスペンションとして使おうという気持ちはさーらさらなかったらしい。
そもそもこの世界の鍛冶屋は製鉄からする。かなり高品質な鉄鉱石を木炭と焼く。手間も木も大量に使うやり方だ。鉱脈と木が生えている山から近いところで精錬するほうが都合がよい。
しかしうちの領内はその真逆で、鉱山が無い上に転封で森から遠ざかり木を手に入れるのもひと苦労といった状態に追い込まれていた。
そこへ俺が軽油と製鉄された鉄素材を安価で供給し始めた。鍛冶屋は今までの半分からそれ以下の手間で製品を作れる。同じ人数なら倍の量の製品を作れる計算だ。
サスペンションに鋼鉄の板バネ使うくらいは余裕になった。
木も、鉄道網で簡単に送れるようになった。なんだかんだいって完全に金物と油に完全には入れ替えられないから、結構な量を使う。
戦車の話に戻すと、こっちの世界では対戦車戦は考えなくていいだろうから、装甲薄くする以外色々カスタマイズを進めた。大砲は小さいものに積み替えて、弾の搭載数を優先した。これのほうが脅しが効くだろう。城塞を本気で壊すなら俺が上から溶岩かければいい話だ。
(作者注:10トン前後で動くデイーゼルエンジン駆動の戦車には旧日本軍の軽戦車がありました。大砲も小さいです。しかし、キョータは知らないのでイメージできません。
結果として、信頼性に欠ける当時の日本製よりも、量産性整備性に優れた米国製となりました。)
今んとこ戦車は10台だけにしとく。まあ、俺が瞬時に量産できるんで。習作だな。
そのうちデイーゼルエンジンで動くトラックも量産したい。
話が前後するがジェットエンジンといえば飛行機はパイロットの養成が分かんないからあきらめた。
兵器で言えば巡航ミサイルと自律型のミスリルゴーレムは作れることが分かったけど、使いどころが分からないから量産はしてない。
この調子だとワープ可能な宇宙戦艦に超絶ビーム兵器を積んだのも作れそうだが、宇宙人が攻めてくるまで必要ないだろう。作ったら絶対乗ってみたいし、使いたくなるのも分かってるから試作もしてない。それこそ世界の理に反するだろ、そんなもん。
そういう極端は自重したが、充電済バッテリーは作った。
戦車のバッテリーを複製。ドワーフに見せて、中身は鉛と希硫酸か希塩酸だと思うと説明しておいた。
リチウム電池は先の先だな。俺も仕組みが分からないので出せるけど作り方を教えられない。バラしたって誰もわかんない。
俺が倒れたときのためにレアメタル鉱山をどっかに作んなきゃなんないが、それは先の話。そうだ、それを言ったら今のうちに鉄も銅も何もかも大量に備蓄しておかないと。でもそれも別の話。
バッテリーができたので、持ってきたスマホも充電できた。離宮で充電用の端子をかなり高価で買い付けた。これは俺には作れなそうだ。正確にいうと保管の役人に賄賂使った。電気辞書もおまけに貰って来た。こりゃあ便利だと複製してみたが、どういうわけかスマホも電気辞書も複製できなかった。
ここら辺が世界の理なんだろうか、俺の液体製造能力の限界なんだろうか?
スマホと電気辞書が使えるようになり、あやふやだったりうろ覚えだった知識を思い出すこともできた。
ま、俺がスマホに保存してたゲームをしたかったのが理由だったんだけど。
ゲームは電波が届かないから、スマホが動いてもプレイできないゲームのほうが多かった。
異世界の科学の発展に貢献できたから、まあいいや。リアルで戦車DIYしたほうがおもしれー。
一番の成果は黒色火薬とアンホ爆薬、それとダイナマイトの中身だった。組成が分からなかったのだが、電子辞書で解決した。
いまさら黒色火薬不要なんだけど、硝酸カリウム・硫黄・木炭という組成だそうだ。異世界召喚直後にホームセンターの道具自由に使わせてくれれば、あるいは、新兵器ができて旧王国が勝てたかもしれない。
まあ、あいつら自業自得なんだけどね。
最近、といっても元いた世界での最近。最近の炸薬はニトログリセリンとニトロセルロースの混合物らしい。
アンホ爆薬は、硝酸アンモニウムと軽油の混合物。比率も辞書にあった。
起爆にはダイナマイト。ダイナマイトの比率は書いてないが素材は辞書にあった。いいのか?こんなに詳細に書いてあって?
これらも出してみて簡単な説明してあとはドワーフに丸投げ。エリクサーとポーション大量に渡しといた。でも、即死した場合は効かないから気を付けるようにと念を押した。
案の定、実験に失敗して失明者や片手吹き飛ばされるやつが続出したそうだ。
もう、お約束としか思えん。エリクサー渡しといてよかった。死者が出なくてよかったけど、痛かっただろうなあ。
以前開発したプラスチック爆薬に起爆剤としてのダイナマイトが加わって、俺以外にも起爆できるようになった。使わないですむことを切実に願うが、備えだけはしておこう。
他にも俺が見本作ってドワーフがコピーしたものはいろいろあって、うちの領内は偏りはあるが概ねの話、産業革命どころか戦中戦後くらいの水準までにはなった。
お読みくださりありがとうございます。
引っ越しで手書きの設定資料集をなくしてしまい、おっかなびっくり更新しています。矛盾点あればご教示ください。よろしくお願いします。




