異世界召喚! 神官長との戦い
異世界に巻き込まれ召喚された俺は、領主業務に忙しい。
わが領内もだんだんと発展してきた。いくつもの商隊が訪れ、支店を新しい村に構えるところも出てきた。いつの間にか大商館の支店が三軒にもなってる。使用人を一人か二人使ってる行商レベルのやつらに至っては、いったいどのくらいが領内に出入りしているのだろう?
販路を拡げて領外にも売りたい俺は、付き合いができてきた3軒の商館の番頭さんクラスと神官長を夕食に招いた。
領民にエリクサー飲ませて治してやってた。当初はバージョンごとに名前を変えてやっていたが、どうでもよくなって、俺も周りも、いまや「ホーリーエリクサー」だ。
「スンマセン。今日は皆さんにご相談があってお集まりいただきました。
その、まずは夕食を取りながら、その後、よろしくお願いします。」
さすがに商売人は座持ちがいい。当たり障りのない話で場を盛り上げあってる。神官長のことも、おだてて持ち上げてる。
いい加減に食わせて飲ませてきたところで、本日の相談の話題になった。
「今日はスンマセン、皆さん。
その、実は、俺の手元にはホーリーエリクサーが、あります。移民がどこからか持ち込んだんですが、思ったより量が多くて、俺には扱いきれません。
皆さんにもお配りして、助けていただきたいと思い、お集まりいただきました。
えー、とりあえず、100人分、領外にもお分けしたい、そう、考えてます。
でも、これ、いくらぐらいでしょう?大変な値打ちだとはわかるのですが、じゃあ具体的な値付けは、異世界から来た田舎貴族の俺にはさっぱり見当がつきません。
そこで、商いのプロの商人さんと、癒しのご専門の神官さんのお知恵を拝借したくて。」
事実上の一発入札宣言だ。商売人は分かって黙り込む。
「人の命が救える霊薬だ。途方もない高価で取引されるだろうな。」
神官長はやっぱり馬鹿で俗物。余計なことを言う。
「スンマセン。その通りだと思います。相手を見れば、いくらにでも値が付くでしょう。
でも、だからこそ、公正明大、ちゃんとした公定価格を決めたいんです。
そこから、運賃やら手数料やらを考慮して卸価格も逆算しましょう。どこだけに卸す、っていう品物でもないでしょう、これは。」
「さすが領主さま。でも、裏切り者もでるでしょうなあ。」
番頭の一人が言う。まあ当たり障りのない点から攻めるよな。
「あ。エリクサーの逆もあります。そっちは、その、お売りできませんが、公定価格より不当に高く売ったり、なんか違反したってわかったら、ソレ使って、違反した商館全員潰しますんで、そこはご心配なく。」
いまので、話が、ふりだしに戻った。
延々、商人の腹の探り合いが続く。メンドクセーな。俺が直接出ずに、うちの誰かに任せればよかった。神官長の流れ読まない発言にもイラついてきた。
「ま、こういう物があります、お知恵をお借りしたい、というご相談で。
今日、今夜、いますぐ、結論出さなくてもいいかもしれませんが、一方で、こうやって話している間に、救える命も救えない。それでは悔やんでも悔やみきれません。
どうでしょう?みなさん。
明日、またお集まりになれるかたはこの時間にお越しいただく、お越しに慣れなかったかたも、明日の決めに従っていただくという形では?」
無理やり解散させた。
その晩のうちに神官長が神官を遣わして 教団に無料で扱わせろという。あー馬鹿だな。それを言わさないためのさっきの集まりだったのに。
「スンマセン。神官長さまのご意見ありがとうございます。どうか明日お越しください。」
使いを追い返す。オトトイ来やがれだけどな。
◎◎◎ ◎◎◎ ◎◎◎
翌晩。
「お忙しい中、二日続けてお越しくださり恐縮です。
皆さん、あのあと、個別でご相談なさった方々もいらっしゃるでしょう。
神官長さんからは教団に無料で扱わせろというお申し出を頂きました。」
爆弾投げ込んだ。これで、もう、教団とまともな取引する商人はいなくなるんじゃないか?
「教団に無料でとおっしゃるなら、教団さまのほうで神聖癒やしのギフトを何人かに無料でお与えになればすべて解決するのでは?」
あー、昨日発言した番頭とは別のやつがキレちゃった。仕事上、キレて見せてるだけかもしれんけど。
「スンマセン。もう、腹の探り合い、やめましょう。エリクサーの売値と卸値、それと各商館への分配の率を話し合いませんか?」
「今のは教団への侮辱だ!帰る!神の怒りがそちどもにあるぞ!」
「スンマセン。もう、嘘も、やめましょう。ギフトの鑑定できるけど、付与はできないんでしょ?それも神獣さんがしてて、あんたは何にもできない。」
「無礼者!」
逃げ帰っちゃった。
「スンマセンが、商人の皆さんも、今日はお引き取りください。スンマセンでした。
俺の読みでは、ですが、あいつらは暗殺手段をなにかしら持ってます。俺はこれから対決しなくてはなりません。」
「そういうことでしたら、ここが一番安全なのでは?」
さっきの番頭がケロッとして聞いてきやがった。やっぱりキレて見せただけだ。こいつなかなかのキレ者だな。キレて見せただけに。
「スンマセン、正直、俺もそう思います。だけど、みなさんの商館に火でも付けられでもしたら、俺は弁償できません。」
「ご心配ありがとうございます。では連れてきた若い衆は連絡のために帰します。他の商館のみなさんはどうなさいます?」
満場一致で、と言っても三人だが、みんなそうした。
暗殺団が来るなら、まずサトー館、それから三軒の商館を道順に行くだろう。ごく小さい村だし。
「スンマセン。ただ待ってるのもアレですから、さっきの話、条件を詰めといていただけますか?
俺はちょっと席を外して、防備を固めるよう指示を出します。」
「スマン、ハンス君が今日の当直係か。
今、館に詰めてる護衛の獣人と、当直の番兵呼んでくれ。徐放性のエリクサー作ったから全員に飲ませて。要は明日まで効く不死身の薬。
ホントはもっと実験してから渡したかったんだが、緊急事態なんだ。
急いで!お嬢さんたちもだな。この館にいる全員に飲ませて。いろいろスマンがドーベルさんとシシトーさんを俺のところに!」
例の破裂寸前の副作用は無いが、一応全裸にタオル巻きで備えてもらった。忙しいんでお嬢さんたちたちのタオル巻きは見そびれた。しかし今はそういう場合じゃない。気持ちを切り替えていこう。
「お待たせしました。徐放性のエリクサーらしいので、まず俺が飲みます。一時間様子見てなんともないか、暗殺団が来るかしたら番頭さんたちもどうぞ。」
俺もタオル巻きになった。商人たちの目の前で飲む。
「スンマセン、副作用で体が膨れるかもしれません、膨れないかもしれません。そのためのタオル巻きです。」
寒いな。もう少しタオル持ってきてもらおう。あ、風邪はひかないのか。エリクサーを飲んだから。
あー、でも寒い。やっぱし、タオル持ってきてもらおう。
「ところで、さっきの件、どうなりました?」
「領主さまもお人が悪い。さっきのはわざとでしょう?
そして、商館同士で腹の読みあいして、『値段は売値も卸値も領主さまがお決めください』という結論にしかならんのもご存知のうえで。
いやいや、領主さま、まさに、そう、決まりました。」
「ハハハ。スンマセン。そこまで読んでなかったです。でも、それでいいんですか?」
「「「ええ。」」」
「それとですな、これはここにいる商売人共通の読みですんで代表して申し上げます。
手前ども三人は、
『領主さまがエリクサーを作ってらっしゃる。』『瞬時に改造エリクサーを開発したところから、製法も何もご自身が究めてらっしゃる。』『ですから今後もますます改造エリクサーの新品を商人に出していただける。』
そう、読んでます。
これは勝手な憶測ですから、お返事は求めません。
そして憶測ですから、ご領主さまの秘密はよそに言いふらすようなまねもしません。」
おおぎょうに平伏する商人に、なんと返事していいか困っていると、俺の体が急に光りだした。
光り輝くタオル巻きマン。
お読みくださりありがとうございます。




