異世界召喚! てをはやす
今までのあらすじ
異世界に巻き込まれ召喚された俺は、貝を食った。
貝の刺身食ったら泣けてきた。酢締めだけど。
「善人坊さんも好き嫌いなければどうぞ。」
天狗も最初は警戒してたが、ヒモノと酢締めは食ったら喜んでいた。
「ホレ、こんなうまいものを出してもらって、茶で済ますのか?」
まあ天狗とドワーフは酒だよなあ。
「スンマセン。俺が呑めないんで気が付かなくて。
じゃあ、ありったけの水がめや水さし、どんぶり、たらい、要は液体が保存できそうなの出してくだされば、酒つぎますが?」
許可を得て井戸には水を入れておく。最初に毒見して見せるとこまでがお約束のムーブだ。
んで、空いた水瓶の半分にワイン日本酒ブランデー、残りの半分の水瓶に水を入れておく。でてきたどんぶりには砂糖たした紹興酒や、各種カクテル入れといた。
「スンマセン、どんぶりにはあんまし日持ちしなさそうな酒、水瓶には少しは日持ちしそうな酒を入れておきました。あ、水の瓶もあります。全部酒だと困るでしょ、お好きなだけ召し上がってください。
これは今日の貝のお礼と、次回来た時にまた貝を頂く前払いだと思ってください。おいしい貝をありがとうございます。
あ、スンマセン、ここらの人は、戒律とか文化的にお酒大丈夫ですか?ダメならすいません。大丈夫なら皆さんにもお出しできます。」
「このようにうまい酒を頂くのは生まれて初めてです。酒自体、もう何年も呑んでませんでした。いやいや、今度のご領主は、なんとも豪気なおかたですなあ。
こんないい酒を独り占めしたら、今後村で何を言われるかわかりません。他の者にも茶と酒を配りましょう。
シラフのうちにお話ししておくと、若いものはあまりの貧しさに酒に慣れてないゆえ、酔ったらご無礼があるかもしれません。それはこの爺に免じてお許しを。」
オレ、領主になってる。酒出したら。
村長爺さんが家の外にフラフラと出て行く。もう酔っぱらってる。
「こちらのおひとは、わしらの新しい殿なんじゃそうだ。」
うーん。海沿いの民は漁師でなくても声がデカいなあ。
「わしらの王は戦死、隣のキッサ伯爵も戦死したそうだ。
そして、わしらの新しい殿は貝を食う仲間だっ!
先ほど、うちの、干物と刺身を召しあがった!
貝のお礼に茶と酒を賜った!
ここのお人を、ただの領主ではなく、カシラとみなす!
お前らも皆、カシラから茶と酒を賜わるべし!」
「スンマセン、貝と魚を食べる地方の育ちなんで、さきほどおいしい貝を頂いて、代わりといっては何ですが、お酒とお茶、思う存分召し上がってください。」
「「「オオオオ!」」」
40-50人くらいいるだろうか?出てきた村人は、ごく小さい子供はジュースだけ、他は思い思いに飲み始めた。子供おるなら若い女もいるだろうがどうでもいいや。
「スンマセン!いろいろありますんで、どんどんやってください。なくなったら補充しますから、俺に声かけてください。」
思いついて小さい水差しにポーション入れておく。あれ?俺、ヒールかける必要なくね?
こっそり村全体にヒールかけとく。
かわるがわるモブ村人が来てあいさつするが、もともと黒人系の上に潮焼けか日焼けして、しかもさらに声がデカいんでちょっと怖い。
中にニコアさん同様片腕の人がいる。浴びるように酒を飲んでいる。うっくつが溜まりまくってるんだろうなあ。村人の中でも背が高く、目がぎょろっとしていて一段と怖そうなんでなるべく見ないようにしておく。うちの鬼族のほうが、よほどマイルドだぞ。
「殿様!酒を飲んだら痛みが少し引いた!ありがとう!いい酒だ。」
うわ、一番からまれたくない奴に、からまれた。やっぱそういうキャラなんだよな、俺。殿さまだけど。
「え?あ、ここにポーションあるんで、酒よりもこっち飲んでみてください。」
「ポーション?伝説の薬か?貴族じゃねえからそんなモン払えねえぞ?」
「スンマセン、伝説の薬ならエリクサーではないでしょうか?ポーションなら戦争中に貴族が集めまくったやつが大敗戦で安く出まくってます。これもそのたぐいなんでどうぞ。痛いんでしょ?」
「貴族様は俺に何をさせたい?」
「や、別に。痛み止めに酒を飲んだら体に良くないから、お好みならポーションをどうぞと言っているだけです。酒がいいなら酒でも。お好きなほうで。」
「じゃあ両方頂こう。」
にやりと笑ってポーションも飲んだ。迫力あるなあ。
「うわ、なんだこの水は?いきなり酔いがさめたぞ?」
「スンマセン、毒消しでもありますからね、酔いたければお酒飲んだらまた酔えますよ。(たぶん)
ま、俺は酒が弱いんであんましそこらへん知りませんが。」
「あ。酔いもさめ、痛みも引いた。」
「よかったです。じゃあお酒どうぞ。」
怖いんだよキミ。
「あの、スンマセン、ところで、ポーションなら、ですが、その、うちの村では領民には無料で配ってますんで、全然平気です。すこしおいて帰りますから、痛んだら、またどうぞ。」
無言でぎょろぎょろ睨んできた。怖いんだってば。村長もなんか仲裁してくれよ。
「腕が無くてはお礼のしようもないなあ。大きな借りができちまった。」
「スンマセン、ホント、そういうのいいですから。ポーション、ここらでは大変高価でも、うちの領都の新しい村では普通にみんな飲んでるんです。
次回代官さんに何本か持たせますんで。
あー、あの、スンマセン。伝説の薬、エリクサーの超高級品、ホーリースーパーウルトラハイエリクサーも一人分あるんですが効き目が分かりません。
効き目が分からないから使いどころも分からなかったんですが、なんとなく今の気がします。試しに使ってみます?
あの、効き目が分からないから、下手するときき過ぎで死んじゃうかもしれませんが?スンマセン。全くわからないんです。
村長さん、いいですか?」
「ヘイ。カシラの好きに。」
カシラ決定か。海賊みてえだな。
「スンマセン。ほんと、効き目がわからなくて怖いから、試しに半分くらい行きます?」
「死んじゃうかもしれないなら、いっそ、分量頂く。」
あの、怖いんですけど。
グッとあおった。ギョロ目がいきなり苦しみだした。
「うおおおおおお!
ゥガアアアアアア!」
服裂けた。見たくねえおっさんの全裸。マッパ。類似番組や漫画で半裸になるのは出版上放送上の都合だったわけだな。ヤベーなこれ。
小さいお手てが生えてきたヨ? ヨ?
真剣に怖い。視野が狭くなって、手が震えてきた。さっきの貝食った喜びの震えとは明らかに別。頭痛もしてきた。帰りたい
いまのうちに、ギョロ目の体の中に溶岩流し込んで、逃げた方がいいか???
ギョロ目が、もともと遠くない距離だったのに寄ってきた。近すぎて溶岩流したら俺も火傷する。
近い近い近い。来るな来るな来るな。怖い。怖い。怖い。
「てっ、手が生えてきた!
うぅぅぅ、
ありがとう!!!」
「へ?」
「カシラ!うまく動かないが、手は手だ。」
俺に対する敬称は殿様から、完全にカシラになっちゃった。
勇者殿、あるいは男爵閣下というやつはおらんのか。言われれても恥ずかしいけど。
「アっ、おめでとうございます。」
怖いから刺激しないように当たり障りないことを言うが、ギョロ目が号泣している。
村人はドン引きというか、あまりの出来事にあぜんとしている。あぜんぽかーん。しーん。酒盛り転じて、ドッチラケ。
「オカシラ!何でもするから連れて行ってくれ、これでもモンスター退治には自信がある、オカシラ!一生お仕えする!!」
と言って泣いてすがる。すがるだけで凄く痛いんですけど。怪力だなあ。痛い痛い痛い。痛い、怖い、くさい。オがついてオカシラになったぞ。
「スンマセン、
エー、では領主として命じる。 」
ギョロ目の名前わかんねえや。まあいいや。
「んーと、それでは、あー。 (ヤベー、なんも考えてねえよ。)
次の命令まで、この村にとどまって、村長の指示のもとモンスター退治ほかに従事すること。
また数日したら顔出しますから、少なくともそれまではお願いします。」
ドヤ。大岡裁き。名領主。
「「「「「ウォオオオオー!」」」」」
村中が叫びだす。
怖いけど歓喜のおたけびだよな?
な?そうだよな?
「スンマセン。ほんと、数日したら来ますから、ギョロちゃんみたいにどっか欠けてる人は呼んだら来てください。はえてきた手の具合も知りたいし。
それまでに薬増やしときます。」
うそです。そうしないと帰れないから。
引き留める村人にわび入れて、天狗と俺はさっそうと飛んで帰る。
見えなくなったところで砦作って寝る。
あああ、疲れた。
夢中で食った貝、あたらなきゃいいけどなあ。
なまじ貝食ったから、いろんなもんが欲しくなった。
今は、おもゆ、めんつゆ、味噌汁。液状のものは出せるが固形のものは出せない。炊き立ての飯が食いてえ。チャーハンが食いてえ。生野菜が食いてえ。
ああああ、あったかい米の飯くいてえ。コンビニおにぎりでいいから海苔巻いた梅干しおにぎりくいてえ。
チーズケーキ食いたい。ショートケーキ食いたい。汁粉は出せるから羊羹が食いたい。練り切りが食いたい。桜もちと柏もちと花びらもちが食いたい。雑煮も食いたい。
牛丼は、モンスターの肉を牛丼のたれで煮て食った。アタマだけってやつだ。牛皿風だ。
いろんな食い物の妄想しながら寝た。
お読みくださりありがとうございます。




