異世界召喚! 領主生活開始10日日
異世界に巻き込まれ召喚された俺は、領主になって、領内の水やりをしている。
村に来て10日が経った。水やりを頼まれたとこが増えてきたけど、その家の持ち分の半分だけ水やりしてる。長期的にみて、どうなるかわかんねえから、とりあえず実験だ。全部やってくれと言われるが、そこは譲らない。
長いフリーター生活で責任回避だけは覚えた。
異世界生活激しいな。ただひたすら俺の魔法で水をまき、土を耕す日々が続く。
毎日毎日、猫草とトリのえさを収穫してまた蒔く。スローライフというにはなかなか過酷な、サバイバル生活だ。
村に来てからほぼそれの繰り返し。猫草がすぐに実を結ぶおかげで餓死だけは免れそうだ。猫草(オーツ麦)は種から作ってもちゃんと生えてくる。だいぶ増えてきたので村人にも少し分けてやる。
村では塩害がひどくなるから耕してなかったというが、試しに耕しても大丈夫だったから、さらにすこしスコップで耕す。ちょっと耕しただけで腰が痛い。
いっぺん持病とか一切リセットしてもらったが、体鍛えてないからすぐに痛くなるなあ。本格的に壊す前にやめとこう。猫獣人たちは全くあてにならん。
そんなある日。
「魔物だぁ!」
村人が大声を出した。
「魔豚オークです旦那様!」
魔物が村に入ってきた。猪八戒の悪そうなやつというか、まがまがしい感じの豚面、二足歩行の怪物だ。しかも二匹出てきた。子供向け特撮のブタ怪人といえば大体そんな感じ。
村人たちが総出で棒やスコップで袋叩きするがなかなか当たらないし、なかなか倒れない。さすがフアンタジー世界の魔物。ニコアさんが片手でうまく棒を振り回して戦っているが、他のモブ村人はあんまし役に立ってないな。
オークが棒をふりまわし、村人が数人まとめて吹っ飛ばされる。怪力だな。
俺も半列ぐらい後ろでスコップもって参加していたが、ふと気が付いてブタヤロウの空いている口に水を送ってやる。
オークがガフガフ苦しんで、急にふらふらしたところを猫獣人たちが一気に仕留めた。
「猫獣人たち、ありがとう。村人と俺だけでは勝てなかったよ。」
「シシシ。」「鼻がタカイガー。」「ウヒョヒョヒョー!」「ニャー。」
戦いが終わってみると、俺は足をくじいて猛烈に痛い。
気が付かなかったけど、たぶん避けたときに足をひねったんだろう。同情もされない。キツイ世界だな。むちゃくちゃきびしい。自分で自分に回復魔法かける。治癒魔法か。わからん。しばらくかけてたら痛みが少し引いてきた。
怪我をしたモブにも回復魔法かけてやる。魔法自体の力は弱いのだが、長時間続けて皆治した。ケガしてないやつまで回復魔法かけてくれというので仕方なくかけてやる。
出てきた魔豚を倒すってファンタジー世界の勇者かよ。
そういや俺、ファンタジー世界の勇者だった。すんません。
しかしご都合展開とは全く関係なく猛烈に痛い。自分に回復魔法かけていて気が付いたんだが、無限にかけられる。水と一緒だ。完全に痛みが引くまで、さらに自分にずっとかけ続ける。
「領主さまが魔法を使って村人を癒してくれるなんて聞いたことがないです。今度の領主さまはいい人だな。」
しわくちゃの婆さんが感激してる。オマエラがやれっていったんだろ。戦いの直後の気が立ってる武装した人間にかこまれたら、そらするわ。下手なこと言ったら俺もオークと同じ運命だったかもしれない。
でも、まあ、いまは、それ以前の小さい傷も治ったらしく、大喜びだ。
怪我をしてない村人も回復魔法をかけたが、ごく少し若返ったようだ。腰痛が治った、ひざが痛くなくて歩ける、感謝されまくる。そういえばさっきまで俺も腰痛だったのだがそれも治ったようだ。
血の匂いを嗅ぎつけたのか、すぐに魔狼も一匹でた。
これも、村人総出で駆除する。
魔豚より動きが早い。ステップ踏んで飛びつかれると、目が追いつかない時もある。マジでやばい相手だ。
噛まれた。すごく痛い。すこし毒もあったのだろうか?
今までは村人たちが棒やスコップでバラバラで滅多打ちにしていたが、陣形を組むことを提案した。
スコップで武装して円陣組んで中の人が遠巻きに投石。棒でぶったたく。寄ってきたらスコップで斬る。俺は円陣の中でまず自分に治癒魔法をかけ、怪我人にもかけてやる。
動きが早いから鼻から水でいれんの難しいから、直接肺に水を飛ばしてみる。できた!からだの中で水を出現させることができたようだ。モブ爺さん婆さんが寄ってたかって襲う。
そして獣人が素早くとどめを刺す。
魔獣を続けて倒した異様な高揚感の中で村人に突っ込まれる。
「けどお殿様、そんだけ水飛ばせんなら、わざわざ外で野良仕事しんなくても家の中から水やりできるんじゃね?」
「それは気が付かなかった。雨の日は家の中から水まくよ。」
「お殿様、雨の日は水まかんでもええよ。」
村人みんなに一斉に笑われた。
「そらそうだな。ははは。」
その場ではちょっとむっとしたけど、考えてみたら村人に認めてもらえたのかな。
傷ついた村人を癒してやる。即死以外はかなりの重症でも魔法をかけ続ければ大体はなんとかなることが分かった。俺も充分癒した。
村での俺の呼び方が領主さまとかお殿様になった。だんだん出世してるな。ははは。
で、鹿パーティーに引き続き、村人を呼び寄せ、領主館の中庭でオークを食べる。魔豚だけにマトンバーベキューだ。鳥のえさから出た草と麦で作った七草がゆ風も振舞った。猫獣人に敬意を表して最初に食べてもらう。
魔狼 は食べないそうだ。臭みがあるだけではなく、やはり微量の毒があり、よほどの大飢饉でなければ食べないほうがいいらしい。
ゴブリンなどのザコは猫獣人が狩れる。食用という点では狩ってもだれも食べないが、村を荒らされると困るので駆除をお願いしておく。村のはずれにまとめて埋めとけばあとで肥料になるかもしれない。
猫獣人がゴブリンナイフ(石)使っているので移植ごて渡す。移植ごて研いだ方がいいらしい。
キャンプ用ナイフやなた、出刃関係を全部没収されたのが残念。ま、ホムセンのもんで俺のじゃないけど。
剣スコ研いだらかなりの武器になるが、猫獣人たちには使い勝手悪いらしい。
「移植ごてで充分だシシ。」
「狩れる魔物居たら、狩って食べタイガー。」
その後も引き続き村に出てきた鹿やオークは、猫獣人たちが中心に仕留めてくれる。村でも食べきれないのでどんどん干物にする。獣人は強力な村の戦力になってくれている。
村のお婆さんたちは、魔物の革をなめしたり、骨をいろんな道具にする。だいぶ余裕が出てきた。
今迄刃物が無いし生活に余裕がなかったので、20年くらい昔までやってた皮なめしなどの伝統工芸は、老人たちにはなんとかできるが、若者、と言ってもおっさんたちだが、もうできなくなっていた。
この村は、すべてが悪循環の限界集落だ。失敗国家の転落の過程そのまんま。
生活の知恵を若い人に伝授するように頼む。若い人いないけど。とりあえず肉と謎の麦を食えるようになって、ちょっと先のことまで考える余裕が出てきた。なんとか伝承がつながりそうだ。
革の貫頭衣を服にする。なめしの技術もまだお婆さんたちが覚えていた。ほぼ裸だった来た時から、順番に革服の人が増えてきた。
そんなに高くはないが、獣や魔物の皮も市で売れるらしい。村で余り始めたら現金化するのもいいだろう。
獣肉はすでに余り始めたのだが、干し肉を保管するにしても、獣脂が取れる。脂を取れば、今はまだできないけど原始的な石鹸ができるかもしれない。
村に来てから、激動の10日だったな。




