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異世界召喚! 狼神ベイオウルフ

異世界に巻き込まれ召喚されたおれは、なかばお情け・なかば追放の形で辺境の村の領主にしてもらった。


色々なことが次々と起きた。今後の方針を整理したら案外やっていけそう。

 俺が人間関係で目がまわるほど奔走してると、獣人たちが大さわぎしている。今度は何事だ?


  狼神ベイオウルフが出たそうだ。犬獣人たちの神なんだそうだ。 まだ俺からは見えない。


 神の領域なんで、狼神自身には狩りをする必要はないらしい。しかし魔物を狩って獣人たちに分け与えてくれるんだそうだ。大規模なおごり飯。興奮したドーベルさんが教えてくれた。


  一方で不正や邪悪を許さない正義感の持ち主で、そのために滅ぼされてしまった国もあるしい。


  俺にも見えるところまで近づいてきた。間違いなく領都を目指してやってきている。やばい。


 遠近感を無視したバカデカイ狼。赤い目をした黒い狼。ごわごわでいかにも強そうな感じだ。野生のシベハス。狼犬から犬要素抜いたやつ。やばい。やばい。


全身をしなやかに動かし、もの凄い速度でやってきた。まさに神速というのだろうか。やばい。やばい。やばい。


村の堀も石垣も軽く飛び越え、いきなり俺に飛びついてきた。えっ?ヤベー邪悪を許さない正義感炸裂かよ!俺、滅ぼすべき悪?ガンダル国で大量虐殺しちゃったからなあ。魔王の友だしなあ。死ぬ前に色んな事がムービーで再生されるって本当だな。頭打ったよ。エリクサー飲んでなければそれだけで死んだかも。


「この邪気瘴気を流している者は誰か。」


「あ、俺の知人ていうか、領内の者です。スンマセン。俺はここの領主です。俺がお願いしてここいらのを吸ってもらい、俺がお願いして別のところで邪気を出してもらっています。瘴気邪気の総量としては変わらないと思います。邪気瘴気を流してはいますが、出しているわけではありません。」


「竜を従えるものと称しているのはお前か?」


「周りが勝手に言っているだけで、自称した覚えはないです。汽車や俺が出す煙や炎が竜に見えるらしく誤解されているだけだ。汽車を見ましたか?あれ結構目立ちます。」


「キュウーン、キュウーン。」


「わー、急に飛びつくなよ。クセーなあ。よだれべとべとじゃねえか狼神!。」


「「「「殿!」」」 「「領主さま!」」

 狼神ベイオウルフに押し倒されてべろべろ舐められてる俺を見て村人たちが悲鳴を上げる。


 装甲車が発砲準備に入っているが俺がいるので撃てない。いや、機関銃でどうなる相手じゃないのくらいひとめで分かるだろ。車載の大砲でも無理だろこれ。領兵が槍を構えて隊列組んでるのもあわせて、俺らって士気と練度および忠誠心凄くね?


「キュウーン、キュウーン。 ハァハァ。」


「こうやって見ると前に飼ってた雑種犬のベーちゃんと変わらねえなあ。ハハハ。黒と灰色でよだれ垂らしてるとこまでそっくりだ。」


〈キョーちゃん!キョーちゃん!〉


名前まで知ってるとはさすが狼神。


〈 キョーちゃん!キョーちゃん! ベーです。ハッハッ。 〉 


「えっ?


 え!ええ??ベーちゃん?!なんで異世界に?!」


〈オトーさん、トミコさんを虹の橋のたもとで待ってたら、今から500年ほど前にこの世界に召喚されました。ハッ、ハッ、ハッ。〉


 家族の呼び方聞いてたから、俺の両親をオトーさん、トミコさんと認識してるわけね。で、俺はキョーちゃん、と。両親を異世界で待ってたらなんか知らないけど俺が来ちゃった、と。


「ベーちゃん、すごい偶然だねえ。」


〈いえ、異世界に飛ばされたのは偶然かもしれませんが、ずっとオトーサンとトミコさんの気配を探っておりました。

まさかキョーちゃんの気配がするとは思っていませんでしたが、周りの邪気が凄いのでこの村へ。〉



「そかー。ありがとうベーちゃん。500年も待っててくれたのか。しかも言葉も話せるようになったんだねえ。」



〈召喚特典で狼神ベイオウルフと呼ばれる身になりました。犬だった以前よりは賢くなりました。人間の言葉は話せませんので、念話をしております。〉


「ベーちゃん。みずくさいなあ。俺はお前の飼い主だったんだから、吠えたらわかるよ。」


「ウオオオン!キュウーン。キュウーン。」


「あ?

 やっぱわかんねーわ。」


〈ウオオオン!キュウーン。キュウーン。

あまりにも!ひどい仕打ちです!ハッ、ハッ、ハッ。〉


「ところで俺のオトーサンとオカーサン。トミコさん。俺が召喚された何年か前までは生きてたから。そこからはわかんないけど。500年てどういう事なんだろうなあ。」


「「「「殿!」」」

「ハハハ。スンマセン。俺、こいつの前からの知り合いで、久しぶりに会ったからじゃれてるんです。神なんだって。

 大丈夫。絶対にコイツを攻撃しないでね。ベーちゃんもこの村の人をいじめちゃだめだよ。」


「「「「殿!」」」 

「ベーちゃん???」 

「「領主さま!」」

「ワンワン!」

「「ニャー」」

大混乱だ。

 村人たちがマジでビビってる。狼神が俺を噛んでいる(ようにみえる)のでビビってるのか、俺のことを狼神の前からの知り合いで、ビビってるのかよくわからんが。


「ベーちゃん。気が向いたら、いつまででもこの村に居てね。

なんか別の用事ある?」


〈 特にありません。ハッハッハッ。〉


「ブォーーーン!」

突然、バカデカイ声で吠えた。俺が作った固い固いはずの村の塀が揺らぐ。一部崩れた。こんなのと戦える国家はないだろうなあ。


〈いま、友を呼びましたのでしばらくお待ちを。〉


「えっ?! ベーちゃんの友?だれ???こわいんだけど。」


 うちはベーチャン以外には犬は飼ってない。最初で最後のオンリーワン。犬なだけに。

 家族が犬好きというよりは、知り合いから生まれた小犬を押し付けられたんで飼っただけ。ベーチャンのあとは飼ってない。なんとなく犬飼う気になれなくて。別れが悲しい。犬小屋もいつの間にか朽ちたんで処分した。まー昭和の犬で昭和の飼い方だった。


「ところで何も食べなくていいと言ってたけど、ミルク飲む?」


〈ハッハッハッ。ください。ください。〉


俺の手の上にミルク出して、やる。ベロベロ舐める。マジ、犬くさい。あとで洗ってやろう。コイツ、500年風呂入ってない???


 そういえばこいつがうちに来たときに灰色の犬だと思ったら、洗ったら少し白くなったのを思い出した。なつかしいなあ。洗わせてくれるかな?今のサイズで。


小一時間くらい散々ふざけていて思い出した。こいつはどら焼きの皮が好きだったんだよなあ。


「ベーチャン。どら焼きの皮っていうか、ホットケーキ食べる?」


〈ハッハッハッ。ください。ください。〉


「スンマセン、ちょっと待ってね。」


 キャシーにホットケーキミックス液渡して焼いて貰う。

 居合わせた村人にも振る舞い、ティーパーテイーになった。


〈ホットケーキください。500年ぶり!ホットケーキください。ハッハッハッ。もっともっと。500年ぶり!500年ぶり!〉


「ちょっと、ベーちゃん、どこが狼神なの?」


こいつはハアハア舌を出している時に、なんだかアッカンベーをしてるように見える。そこからベーチャンと名付けられた。その雑種犬の時のまんま。食い意地全開で舌を出してる。


〈ホットケーキください。ください。〉


 ベーチャンは焼いても焼いてもホットケーキを食べ続けた。

 体に悪くない?それ?


「ちょっと、ベーちゃん、狼神っていまなにしてるの?」


〈ホットケーキください。ください。〉


「マテ。食べ過ぎだからもうだめ。またあげるから。

で、ベーちゃん! なに、してるのっ?」


〈ホットケーキ。ハッハッ。ウマウマ! ウマウマ!〉


「「「「殿!」」」 


 ベーちゃんがお手をしたから、周りが驚いてる。


「撃つな。スンマセン。手を出したのは何かくれの合図。殴り掛かったんじやなくて親愛の情。撃つな。

 上手くいってる。撃つな。ベーちゃん、よろこんでる。」


叫んで周りを制止する。こいつに殴られてたらすっ飛んでるだろ、俺様。


「ベーちゃん! 周りが驚いてる。スンマセン。お手もナシ。マテだって。マーテッ。で、いま、狼神ベイオウルフって、なに、してるのっ?」


「悪い奴を懲らしめます。」


「ベーに善悪とか正邪とかわかるの?」


「なんとなくわかるになりました。ウマウマくれないの?」


「えー?ウマウマくれたら善?くれなきゃ悪?」


「ハッハッ。それは違います。本当の善悪正邪がわかります。」


「あー、あとで神獣さんと話してみて。彼もそっち方面の能力あるのかなあ。

あ、スンマセン。俺どうなの?」


「えっ?キョーちゃんの善悪?」


 真顔で見られる。あああああー、軽率な事言った。


 飲み会の場とかで友人に軽い気持ちで仕事頼んだら、いきなり仕事モードになるやつだ。知り合いに仕事頼んじゃいけない。


 邪悪認定されたらどうなるんだろ。今までの人生全部私利私欲。我利我利亡者。聖人ではなかったな。もう少し清く正しく美しく生きればよかった。


「善悪正邪に関しては全然合格。普通一般人の範囲で、けっこう善人寄りの一般人。腹黒くもなれない弱気のおっさん。一般人の中ではちょっとスケベなほう。もう少し勤勉ならなおよい。」


「「「「殿ぉお!」」」 


自ら招いた公開処刑というのもなかなかだな。それと、これ以上は働けないってば。


「ま、お、う!」


 ベーちゃんが魔王を見つけた!

 ベーちゃんの目つきが変わった!

 魔王は逃げようとした!

 魔王は逃げられなかった!ピロリーン!


 魔王もかなりの迫力だったが、その魔王とベーちゃんでは格が違う。


「ワハハ。キョータ。助けてくれ。ひれ伏せ。」


 この期に及んで命令形か。まあそういうやつなんだろうな。それほど付き合いは長くないが、このブレないところはわかる。


「べーちゃん。俺の知人の魔王。ここらの邪気や瘴気ってどう違うのかわかんないんだけど吸ってもらってる。俺がお願いして別のところで出してもらっているっていった魔王。お世話になってるんだけど。」


 ベーちゃんが魔王を睨む。


「ほう、キョーちゃんが言うのが正しいようだ。魔王というわりには邪気瘴気が少ない。無い訳ではないが、キョーちゃんが浄化したの?」


「や、俺が浄化しようとしたら一部溶けちゃったから。決まったとこ、迷惑にならないとこで邪気出してもらってる。」


「しばらくは見逃してやろう。」


「フーハハハ。」


「「ま、お、う?」」


「わかりました。気をつけます!」

 

 なんだこいつ。土下座されるのもするのも得意じゃん。

 これに懲りてくれればいいんだが。


「べーちゃんさあ、いい?」


「はい?」


「魔王なんだけどさあ、さっきも言ったように、ここらの邪気や瘴気吸ってもらってる。

その一点だけは聖女と同じ働きじゃない?その一点だけね。


 見た目こうだし、誰の迷惑にもならなそうなとこで吐き出してもらってるんだけどさ。



 しばらくは見逃して。」


ベーはものすごい目つきで魔王を睨んだが、それ以上は言わなかった。


「魔王もおとなしくしてろよ。領主として命じる。」


お読みくださりありがとうございます。


誤字の指摘いただき幸いです。引き続きお願いします。

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