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異世界召喚! 無能勇者の今後については続く

 異世界に巻き込まれ召喚されたおれは、なかばお情け・なかば追放の形で辺境の村の領主にしてもらった。


 他の貴族が攻めてきたので撃退した。殺された人間の無念怨念をかぎつけた魔王がやってきたので便宜を図ってもらった。魔王に改めて問われたのをきっかけに今後の方針を整理した。

 魔王カウンセリングの後に改めて今後の流れを自問自答してみた。


 忘れないように紙に書いた。ちょっと、かなり、自信が出てきた。フヒヒヒ。スンマセン。

 書き忘れたけど度量衡含む各種規格の統一というか制定だな。異世界JIS。異世界ISO。後世、キョータ規格と呼ばれるかも。スンマセン、自分で名つけるほど厚顔じゃないです。電気溶接も実現化しなきゃ。

 今や俺の本質は大土木会社。灌漑と土質改良。


 砲台としての役割は考えてみたら宇宙連絡船からもできる。俺は引退というか、予備でいいだろう。宇宙連絡艇が、はるか上から石か爆弾落とせばまず対抗手段はない。宇宙ファイターや宇宙戦艦では過大戦力だから、そのくらいで丁度良い。宇宙ファイターですら予備の予備の予備ぐらい。


 それと研究所長だな。研究所のマネジメントなんかできないから、名誉顧問か上級フエローあたり。俺が案と概ねの道を示す。ドワーフ含む職人集団が実現化していく。発想着想よりも実用化のほうが難しいんだろうけど、まあそこは大人の世界だから。

 蒸気機関などメカはドワーフ。電気物は人間とだんだんすみわけができてきた。どちらも宇宙空母ムサシの艦内コンピューターと工作機使えば一瞬にしてできてしまうのだが、ここは人間の学習を優先したい。

 どれもこれも大至急今作らなきゃならない物ってない。思い起こしてもムサシにはタブレットやスマホ作ってもらったのと、どうしても線路のポイントと安全装置がうまくいかないからヒントだけもらった。


 それで済めばよかったのだが、今度は王国の大公に命じられるという。


「スンマセン。ジエームスさん、大公ってなんぞ?釣りするの?」


(作者注:太公望は大公⦅古公亶父⦆が望んだ人⦅呂尚⦆のことだそうで、古公亶父は別に釣りはしたかしないかわかりません。釣り人をふざけて太公望と言いますが、翻訳の指輪を使ってもそんな古代中国から日本に来た話を異世界語に訳しきれるかどうか。)


「辺境伯と大公は同等です。国境沿いの守りを固め、自分の判断で兵を動かせるのが辺境伯。勇者ひとりが大軍と同等ですから、召喚された勇者は辺境伯になるのが自然です。」


「それ、王様の近くにいるとやばいから、勇者は遠くに置いとくって言う事じゃね?」


「殿のおっしゃる通りです。国境沿いの辺境伯に対し、大公は王のおそばに仕えます、臨時の国王の代理も致します。場合によっては王都から出撃する王軍の総司令官になることもあります。逆に国王が出撃する場合は留守番として王都で国王の代理を務めることもあります。」


「エッ?何それ?俺、王宮になんか行くの嫌だよ。馬鹿にされに行ってるみたいなもんだし。他の貴族は大体馬鹿にしてるし。時給換算でいくらよ?名誉って金にならないんだよね。おれがさあ、俺が大公だ、さあ聞けって言って誰がいう事聞く?

 だいたい、勇者を王都に置いちゃいけないからここを領地にもらったんだし。」


 見よう見まねで異世界エンジニア(実は文系と現場の末端仕事)に励んでいたら、今度は大公に任命だそうだ。聞いてないよ。ついこの前辺境伯にしてもらったのに。異世界勇者をグダグダの王国の内政で疲弊させるって聞いたことねえぞ。そもそも異世界勇者の話なんて知らなかったけど。


「殿が王宮に行かなくても、王様がこちらにお見えではありませんか。」


「スンマセン。そうだった。あれ、名誉といえば名誉なのか。」


 乗り鉄の国王は新路線開通させると必ず乗りに来る。式典にもご案内されてるっていうか、王立鉄道だからな。そりゃ、その場でお褒めの言葉はあるだろ。そういう場なんだから。


 で、それプラス新路線関係とはなく、うちの領の離宮に来る。領都の場合もあり、海沿いの温泉ホテルの場合もある。


 特に、温泉にハマったらしくずーっといる。公式行事でどうしても王都に居なきゃならない時以外は、大体うちにいる。


 何回か、カワサキからの報告が上がっている。やかましい王妃やガンダル派の目がある王宮を避け、うちの離宮に愛人引っ張り込んだり、カワサキから女呼んだりしてるらしい。


 うらやましすぎるぞそれ。でも、そういうのやめてくれよな、俺のやっかみじゃなくて。俺が、困るの。

 貴族は王都に居て国王や同僚貴族と社交したがる。収穫期前後は税収の監督をする都合で領地に行くけど、だいたい王都に居る。だいたい社交。


「俺と王様だけその社交の輪に入らない。まずくねえか?そういうの。

 寵臣ていうのはそのあとが悲惨なんだよ。古今東西。そうだろ?」


「殿の仰せの通り。」


「やべえな、それ。破滅待ったなし。ジェームスさんにはいつも言ってるけどさあ、オレ、調子に乗って大失敗するのよ。毎回。だから、必死で自重してるの。まずい点は忠告してくれ。諫言。注意。頼むね。スンマセン。で、大公って?なんとかならんかねえ。暗躍してくれる?」


 ジェームスさん経由で離宮に貴族全部呼べるようにしようかって王様にお伺いたてたら、それじゃあ離宮の意味ねえだろと却下された。

 まあ、そうだよな。わかってやってんのか王。詰んだかも。俺。


「スンマセン。今回は裏からの準備があって助かった。

俺はボッチです、浮いてます、ってペコペコしてアピールしてるのに、俺がやっかまれるわけ。横に国王が居て風呂入ってるだけなのに。


 国王はなついてくるよ?


 でもさあ俺からすれば、それほどは気の合わないオッサンよ。それほどは。上司と部下ですよ。意気投合というわけでもない。

 魔王とか河童のほうがよっぽど気が合うよ。かわいがってもらってる部下なのは分かるけどさあ、俺の身になってくれっつーの。


 で、他の貴族からのやっかみ。かなわんよ。で、ジェームスさんにいろいろやってもらってんじゃん。」


「えぇ、はい。」


「おれさあ、そもそも異世界召喚前からなんだけど、そういう人間関係が苦手、下手だったの。

 実家のあたりは田舎で、そういう対人関係うんざりしてたわけ。


 こっちにあるのかな?

 祭りの時の委員の序列とか、選挙の時のあいさつ誰から回るかとか、そういう気づかい。どっろどろのねっばねばの人間関係貸し借り序列。

 生まれ育った土地でさえ、誰から酒ついでいいか、四番手ぐらいからもうわかんないじゃん。俺だけ?それ。」


「異世界の事は分かりませんが、殿の言いたいことは分かります。」


「今、俺の領内の学校どうなってるか分かんない。分かんないけど、あのくらいの年って多感な時期じゃん。イキってる連中とギャラリーとモブに分かれるじゃん。俺の本質は陰キャモブなんだよ。


 あれを転生して更にひどい形でやるとはなあ。召喚されて当初は私兵集団とかハーレムとか妄想したけど、人の目とか維持費考えたら大変。や、ハーレムは歓迎しますよ。それと獣人も兵隊も本当によくやってくれたけどさあ、目、ってあるじゃん。よそさまの。やっかみ。ねたみ。そねみ。


 フアンタジー世界はもう少しあっさりしてると思ったんですが、甘かったです。メンツが命だから序列争いが凄い。元いた世界よりきつい。


 だから、俺、そういうの嫌で、酒だして謝ったり鉄道ひいたりしてんじゃん。わざわざお金も配ってる。俺のお金よそれ。姻戚関係も今のキッサの奥さん二人以外作らない。作れない。どことどう親戚でつながるかっていうのもだいじみたいだから、どこの派に属したらいいのか何年たってもまだわかんない。おそらく一生分からないままだろう。


 で、大公?そういうの、ホントやめてくれって。スンマセン。


 こっちで序列とか派閥を間違えると最悪の場合、死ぬだろ?」


 周りが貴族という名の体面だけ整えたイキリのヤカラに囲まれて、まともにやっていける気がしない。そのつもりもない。一発目にカマす異世界デビューも失敗したし。その後も結構グダグダ。だからぺこぺこして無害な鉄オタモブに徹してるのに。元の日本ではそんなに鉄道に興味なくて、むしろ車社会だったから鉄道不便だなーくらいしか考えてなかったんだが。


「まぁ、表立ってはありませんが、かげで暗躍ですとかは聞きます。王様ですら暗殺未遂があるくらいでして。」


「スンマセン。俺、そういうの弱いのよ、王様の暗殺ね?未遂でしたがけっこうな大騒ぎでしたよ、前回のあれ。あんなの毎回あったら驚くじゃ済まねえわ。

 だからといって昇爵断ったら、また殺されそうになったし。おかげでやりたくもなかった人殺しまでする羽目になったじゃんか。逆に。


 むしろ、屁理屈こねてまた下げてくれって。爵位。仕事。そりゃ鉄道は俺しかできねえ感じだから、やっちゃった以上はやれる範囲でやるさ。他は無理だって。


 下手したら貴族より魔王のほうが付きあい楽よ。魔王は頭下げたら髪切ってくれるし。最近は飲食業までやってんじゃん。魔王。持ち上げられない皿にスープ出してきて、吸うときに飲むと喜んでる。頭下げてるからな。ははは。


 線路引きたいから魔物出してくれ瘴気邪気出してくれって言ったら、ノリノリで出してくれたじゃん。まあ、助かってるし。」


「はい。」


「だけどさあ、人族の貴族は頭下げたらますますのっかってくるだろ?


 んで、辺境伯と大公兼務?いやな予感しかしないんだけど。どうなのジエームスさん?


 俺さあ、異世界生まれ異世界育ちでこっちに巻き込まれ転移したじゃん?爵位あがるとか、全く有り難くないわけ。もとの世界じゃ平民でなんら問題なく暮らしてた。平均よりもむしろ下層よ、当時。


 商館就職して、いろんなとこ転々として下働きみたいなことまで落ちてって、大怪我した話したよな?そんで家にいたら、家の近所で巻き込まれてこっち来たんだよ。


もうさ、こっちでは異世界から来た宇宙人とかさあ、昭和の変なガイジン枠に収まりたいわけよ。何かいい手ないかなあ?」


「では、お嬢さま方にも意見を伺いましょう。流星号。流星号。」

無線の呼び出しコールが流星号になっちゃった。ビデオシーバーみたいに蓋も付けてもらった。


「はい、こちら、本部。」

テレビ通話なんだから誰からの呼び出しかわかるはず。いきなり会話からはいって良いのに、なぜかもしもしとか、流星号とかつけたがるんだよね、あれ不思議。異世界でもそうなの?


「お嬢さま、サトー様に大公兼務のご相談がありました。お嬢さま方にご相談と思いまして。」


「それは見に余る名誉だけど、身に余るって危ないわね?会って話したほうがいいわね。殿、王都へ連れて行ってくださいます?」


「スンマセン。その方がいいな。今から迎えに行くわ。」俺がジャンプしたほうが、宇宙連絡機飛ばすより早い。しかも王都のサトー館上空まで宇宙連絡機飛ぶのもまずい。


 奥さん二人と肩組みして、王都のサトー館へ戻る。ああかわいい。いい匂い。何年経っても飽きないな。今夜はトゥナイト、って当たり前だ。熱い夜になりそうだぜ。グフフフ。奥さんたち。

 ちょっと落ち着いた。領都との往復で少し考えが整理できた。


「スンマセン。考えたんだけどさ、うちの奥さんが辺境伯やるとかって無理なの?」


「「「「はぁ?????」」」」


「女当主。

 俺が何でも兼務するからねたまれるんだろ?だったら分散しちゃえよ。キャシーとケイティでキッサA辺境伯。キッサB辺境伯。キッサ伯爵家より格上。

 俺、大公でもなんでもさあ、今の王様のつかいっぱしりと変わんねえだろ?今の時代この国に大公って他にいるの?」


「「「いえ、いません」」」


「じゃ、ちょうどいいじゃん。名ばかりの大公という位につけていただきましたが、あいつは馬鹿でスケベでどうしようもないです、家臣も苦労してるんです、異世界の人間を重い地位においてはなりません。ましてや王都になぞ。常識が無いんです。では押し切れないの?」


「「スケベだけは駄目です。」」

そこか。


「スンマセン。でも、まあ、さ、聞くだけ聞いてみて。駄目ならまた別の手を考えよう。

大公と辺境伯兼務は周りが怖いから嫌。ジェームスさん、それで交渉してみて。

俺を上げるのは駄目。下げるのはアリ。」


「ジェームスが考えますに、他の貴族は体面で生きています。他の貴族は。

少しでも爵位を上げたい。少しでも派手な服を着て賞賛されたい。少しでも王様に近づきたい。」


「スンマセン。そりゃ分かるけど、疲れるし向いてないってば。他の貴族だって面白くないだろう?俺だけほめられたら。

 少しでもいい服の事だけ話すと、俺が元いた世界は金持ちは落ち着いた色の服着てた。使いっパシリの下働きのアンチャンのほうが派手なキラキラした服で、そっちの方が安い。売り場に、こんもりと山積み。いやなんだよ。俺。流行もわかんないし、流行に左右されない落ち着いた色の服でいいよ。」


「それもそうなんですが、サトー家だけ賞賛されている中で、偉くなりたくないというのもまた反感を招きそうです。皆さん毎日少しでも偉くなりたくて必死なんですから。」


「うーん。そこらへん、うまく回してよ。異世界から来て身に余る光栄ですので、本当に身に余ってしまって、とか。いつものパターンでペコペコしたらだめかなあ。あと、形式上は俺勇者で、そう王都に居たらまずいだろ???王都から引き離す辺境伯なんだから。」


「伝手をたぐって聞いてみます。」


「たのむよ。本当に。本当にやばくなったら亡命すっかなあ。ついてきたい奴と鉄道で逃げて荒れ地に籠ったら何とかなりそう。」


「殿が本気になったらできそうなところがおそろしいです。とにかく聞いてみますのでお待ちを。」




 王も考えなしに命じたわけではなく、うちの領内の内政が非常にうまくいっているから、王国全体に広めろ、そういう事だったそうだ。

 早く言ってくれれば、うちの若いのを役人に貸してやっったのに。ごく下級の貴族とかにしてくれればよかったのに。レンタル貴族。期限限定騎士。非正規雇用臨時公務員。いまさらそうもいかねえらしい。ハヨ言えや。ダボが。

お読みくださりありがとうございます。


誤字の指摘いただき幸いです。評価とあわせ、引き続きお願いします。

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