異世界召喚! 領主生活開始3日日
異世界に巻き込まれた俺は、領主として水やりをしている。
腰痛とともに目が覚める。自分で治癒魔法かける。
領主さまが独り暮らしでは不便だろうと、ンゴバさんが手配をしてくれて。通いでばあさんが家事をしにきてくれることになった。
おかしいなあ、スゲー美女が腰もんでくれて朝飯作ってくれるんじゃないのか異世界勇者は?
来てくれるお婆さんはサラさんといって村長の姉だそうだ。おかゆも持ってきてくれる。ンゴバさんも毎朝飯を一緒にするのはうざいのだろう。
70代くらいの婆さんだと思ったら40代後半らしく、俺と同じ年代だな。むちゃくちゃ老けてる。
村長も弟だから大体そのくらいの年らしい。ただし正確な暦とかそういうのはわかんないらしい。王国には暦があるが、ここら辺では戸籍制度も無いので、正確な生年はわかんなくなっちゃってるんだそうだ。ずいぶん文化程度が低いんだなあ。
頼まれた朝の水やりをしておく。あいかわらずチョロチョロしか出ないが、以前に比べればあきらかに出が良くなったようだ。なんか回路が開いてるんだろうか?こうやって僻地の村で水を配り続けて朽ちていくのか俺は。
そういえば虫はうようよいるが、刺されたことが無いな、毒虫はいないようだ。これもまたいわゆるナーロッパ設定なんだろう。
後ろ向きに水やりしていたら、やわらかい何かが尻にぶつかった。えっ?見たら、ライオンとヒョウとトラとバカでかい猫に囲まれてた。
「くさをかじりタイガー。」ああ。猛獣が吠えてる。もうだめだ。
え?
「を?しゃべるの???獣人?」
「草を かじり タイガー。」
トラは語尾にタイガーをつけるらしい。
「すんません。その草かじられちゃうと、作物ができないから。
かわりにキャットフードあげるから、その草は勘弁して。」
「うヒョー。キャットフードって何?」
ヒョウは語尾にヒョウがつくのか。
「この水やり終わったら、キャットフードあげっから、もうちょっと待って。」
「うシシ。」ライオンは語尾にシシがつくのか。獅子なだけに。
こいつらは猫草のにおいを嗅ぎつけたらしい。猫か。まあネコ科だな。ホームセンターのペットコーナーからマタタビ持ってくればよかった。いまさらだし、こいつらに効くかわかんないけど。
猫獣人といっても見た目が猫なのは白黒猫だけ。あとはどう見ても豹獣人と虎獣人とライオン獣人だ。
家に戻り、キャットフードを開ける。一番安そうなやつを出す。
遠慮もクソもなく、さっそく食い始める獣人たち。しきたりとか根底から違うんだろうな。刺激して狩られないようにしよう。
「いいねえ。うシシ。」
「うヒョー。うまうま。」
「これは今まで食べたことのない味だタイガー。」
ああ、俺の非常食が減っていく。ネコ科獣人にかみ殺されるよりはましか。
飯を食って上機嫌な猛獣さんたちにすりよられる。すごく生臭い。
「ヒョー。世話になった、村にいるとなったら名乗ったほうがいいでヒョー?
俺の名前はグイ、、」
「この村では名前変えてお願いします。っていうか居座るんですか?」
かぶせ気味に言い切った。やばい!怒られるぞそれ。
「豹頭さんは兵頭さんでお願いします。
滞在するなら村長のンゴバさんに聞いてみないと」
「ウヒョー」
「あのう、ライオンさんのお名前聞いてもいいですか?」
「シシトー。獅子頭、シシ。」
ああこっちは怒られない名前だった。シシトーさんね。
「俺もここに住みタイガー。」
虎仮面っていうか虎頭にマッスルボデーもやばいだろ。いったいどこから文句が来るかわからん。
虎仮面の名前はトラさんだそうで、もうなんだっていいや。書籍化は無しだな。ご出身は葛飾なんだろうか。
白黒猫さんはニャルルとしか聞こえないのでニャルルさんにしてもらった。
「すんませんみなさん。俺はキョータ。すんません。まじで猫草かじらないでくださいよ。オーツ麦ってうまくできたら、おかゆにして食べますから。なきゃ死ぬんで俺たち。」
「それは仕方ないな。我慢するタイガー。村に居タイガー」
「もうちょっと語尾抜かしてくれません?それとも翻訳指輪のバグなんすかねえ?」
さっそく村長ンゴバさん、助役ニコアさんに相談したら、獣人族と人族は仲が悪く普通は村に入ってこない。こういうギリギリの村だから、逆に、絶対に村に迷惑をかけないというなら、領主が責任持つなら村にいていいというので、村長ンゴバさん、助役ニコアさん、猫獣人交えて相談して、集落の一番端の空き家Bへ住んでもらう。すくなくともネズミは出なくなりそうな面子だ。
猫獣人が引っ越したその日に、鹿が村の近くに迷いこんできたが、猫獣人たちが瞬殺。くれた。キャットフードのほうがいいそうだ。鹿肉の干し方も教えてくれた。
俺と獣人だけでも食べきれたかもしれない。だけどお近づきのしるしにせっかくだから、村のみんな呼んで焼き鹿と鹿のもつ煮大会にした。ホームセンターで貰った鍋が役に立った。
「すんません、みなさん、猫獣人さんたちがこの村に住みたいそうです。さっそく、しかを狩ってくれたのでみんなで分けましょう。」
「昔は大家族ばっかりで、どこの家にも大鍋ぐらいあったんですが、だんだん人数が減って使わなくなってきたし、鍬や鎌がだめになったときに修理代の代わりに大鍋を出してしまって。」
もつ煮を食いながら、村長ンゴバさんが涙ぐむ。
ただの抜け目ない爺さんかと思ったらこういう情にもろい面もあるんだな。敵は領主ではなくて貧困だ、というのを徹底しよう。
みんな久しぶりに肉を食ってしかも満腹したらしい。鹿なだけに。俺が領主になって、少しは良かったことが起きたかな。焼き鹿鹿鍋大会だけだけど。
あっさり獣人たちも信用されたんで、猫獣人に依頼して自警団を依頼する。何するって、村を拠点に狩りをするだけなんだけど。
ハーレムはまだ無理だが私兵団の始まりくらいにはなったかもしれない。戦力としてはすごそうだけど、命令はたぶん聞かねえだろうなあこいつら。
持ってきたキャットフードがなくなるまでは猫獣人たちにやることにした。それから先のことはまた考えよう。
鳥の餌から 何だかわからないが芽が出てくる。これも楽しみだ。
大満足で家に帰る。
ここんとこ激動の日々だったが、しばらく風呂に入っていないことに気が付いた。離宮の町で勇者の残り湯、ここに向かう旅の宿屋で暖かいタオルで拭いた。村に入ってから拭きもしていない。
空き家に入って、服を脱ぐ。足に泥が付いたらシャワーの意味ないから、一応の用心でテーブルによじ登って念じる。
「シャワー!」
「ヒッ、冷てええええ!
温水シャワー!適温!」
やった!温度調節もできる。
石鹸ないけどとりあえず全身洗う。さっぱりはしたが着替えがないので今までのを着る。早急に服を手に入れないとダメだな。離宮の町で貰った服は最低限しかなかったうえに、困窮している村人にあげてしまった。
半裸の爺さん婆さんたちから見たくないモノがはみ出ていたので、後先の考えなしにくれてやってしまった。今更返せとは言い難いし、洗濯だってどうするんだかわかんない。
満腹して、シャワー適温だっただけで良しとしよう。




