こめかみが脈打つ(習作)
ユキメの旅の練習作です。
最近、朝四時に目が覚めてしまう。私が起きなきゃいけないのは五時だから、もう一度寝る。特にすることもなく、この島も静けさを保っているから、乱してはいけないような気がする。
すると、どうだろう。眠っているのか、起きているのか判然としないで、それでいてたまに、すうっと、深い眠りに落ちる感覚がハッキリとわかるのだ。まるで体から魂が抜けるかのような感覚。うとうとと、気持ちがいいので、もし、死ぬときもこうなら。なんて考えたこともある。しかし魂は抜けきらないで、私の身体を逝ったり来たりする。
四時五十五分、目覚ましのアラームで体を起こし、土間に向かう。
「おはよう。」と芯のある母の声。このやりとりを、いつから続けているんだろう。父はまだ夢の中か、それとも、静かに新聞を読んでいるか。どちらにせよ気配はない。
朝の仕事を終え、外に出て伸びをした。朝焼けの水色の空と海からの冷たい空気が身体を締め付けた。
哀しいことに、私は幸せになってしまった。気づいてしまった。
細長い私の身体には血液が今日も巡っている。おとなしく脈打つのを感じてこめかみに手をあてた。