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その六 勝治の1日


「じゃあ爺さん、行ってくるぜ」


ディーノはスクーターに跨がって仕事場へと向かう


昨日この場所の話を聞いてどうやら日本でも外国でもない土地にいる事を悟った勝治は


「さもありなん…」


と考えるのを止めたのだった

そもそも寝たきりの勝治をベッドごと打ち捨てるなど人の所業ではない。

きっと天神様の悪戯でこんな辺鄙な世界に落とされたのだ、と思う事にしたのだ


元々勝治は小難しい事を考える性格ではない。

若い頃は持ち前の腕っぷしと剛胆な器量で浮き名を流していた職人堅気の一匹狼だった


勝治は朝からルームランナーでトコトコと歩行練習をしている

折角見知らぬ土地に来たのだ。

足腰の筋力をつけて物見遊山に出掛けなければ勝治の気が収まらない


「はぁはぁ…しかしいつになるか分からんの…」


勝治はものの数分で気力と体力を使い果たしベッドに倒れ込む


今までだって望んで寝たきりだった訳ではないのだ、急に動こうとしても無理はあった


「さて、気晴らしに時代劇でも見ようかの」


勝治はテレビのスイッチを入れる


ータタター、タッタッタタラー♪ー


画面には勝治の大好きな「鬼○犯科帳」が映し出される


ーズズー…ポリポリ…ー


勝治は漬物をアテに茶を啜る


「祐二や美鈴さんは今頃ワシを探しておるのかの?」


勝治は急に自分の息子夫婦を思い出す。

ホームシックと言う訳でもないが流石に世話になっていた息子夫婦には何とか無事を伝えたかったのだ


「…どうにかして伝えるだけでも出来んかのう…」


そう考えていると犯科帳が映っていた筈のテレビに見慣れた部屋が映し出された


「親父…何処に行ったんだよ…」

「あなた…しっかりしてよ…」


画面には頭を抱えて項垂れる息子の祐二とそれを慰める嫁の美鈴さんが映し出された


「祐二!美鈴さん!」


勝治は叫ぶがこちらの声は届かないらしい


「しかし…ベッドごといなくなるなんて親父1人で出来る事じゃない。誰かに拐われたんじゃないのか?」

「誰がお義父さんを拐うのよ?」


画面には沈黙が流れる


「…だとしたらまた親父の悪戯か?」

「そっちの方が分かり易いじゃない、誰かに頼んで雲隠れしてるんじゃないかしら?」


「祐二!美鈴さん!そうじゃないんじゃ!ワシは異世界に飛ばされとるんじゃ!」


勿論画面の先には勝治の声は届かない


「…なら待っていればいずれひょっこり戻って来るのか?」

「だって着の身着のままベッドごといなくなったのよ?きっとお義父さんの悪戯だし飽きれば戻ってくるわよ‼」


「違う…違うんじゃ…」


「…そうだな‼今までだって親父の悪戯は度が越えてたしこれもきっと悪戯だな‼騙されねぇぞ、親父‼」

「そうよ、お義父さんを信じて帰って来るのを待ちましょう」

「良し‼今日は子供達を連れて寿司でも食いに行くか‼」


「祐二…美鈴さん…」


テレビの画面はいつの間にか元の犯科帳に戻っていた


夕方ディーノが家に戻ると落ち込んだ勝治がしょんぼりしていたが敢えてソコに触れずに仕事場での失敗談を語り

勝治も気を取り直して話し込んでいる内に元気を取り戻したようだ


そして今晩も勝治の出した料理と酒で晩餐を楽しむのだった

今日は6話で終了です。

この物語は都合により投稿速度が可変しますので悪しからず。

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