その四十六 (終話)旅立ち
翌朝日が明けるか明けないか位の薄暗い時間からガルドとディーノは必死に家造りに励んだ
時には二人で、時には交代で勝治の世話をしながら
ガルドに免許皆伝を与えてから勝治はみるみる生気を失っていった
「大師匠、ご飯ですよ」
「…うむ、じゃが余り食欲が…」
「何言ってるんですか‼食べなきゃ元気になりませんよ‼」
ディーノは多少無理にでも食べさせようとスプーンでスープを掬って勝治の口に運ぶ
「…すまんのう…」
「そ、そんな弱気でどうするって言うんですか⁉早く食べて前みたいに叱り飛ばして下さいよ‼」
「…うむ…そうじゃの…」
弱々しい返事にディーノは顔を背ける
「…そうですよ?孫弟子の手を煩わせないで下さいよ…」
ーバタンッ‼ー
「師匠‼欄間の細工はこれで宜しいですか?」
「…うむ、見事じゃよ。もう教える事はないのぅ」
「何を言ってるんですか、まだまだ未熟な弟子を鍛えて下さい‼」
「…うむ…」
それから数日、ガルド達は寝る間も惜しんで作業に没頭する
勝治は寝ている時間が多くなっていった
ー更に1週間後ー
「師匠‼ついに俺の家が完成しました‼ご覧になって下さい‼」
「…む?…良し、悪いがまた背負ってくれるか?」
「今度は俺が!」
そう言うとディーノは勝治を優しく背負う
二人は完成したガルドの家をかまなく案内する
「…如何ですか?」
「ガルドよ…」
「はいっ!」
「ワシがいなくなってもワシの技術を継いで後世に伝えてくれるかの?」
「そんな…それは当たり前ですっ!」
「俺だってまだ一人前になった姿を見せていないんですからね?くたばって貰っちゃ困りますよ?」
「ほっ…ほっ…そうじゃったのぅ」
「そうですよっ!まだ頑張って見届けて下さい!」
「…ほっ…そうじゃった…」
「「⁉」」
「師匠?」「大師匠?」
その日の夜、勝治は静かに息を引き取った
「師匠ぉぉ~‼」
「…大師匠…」
勝治は二人の弟子に見守られ笑顔を浮かべながら逝ってしまった
享年八十三、寝たきりで異世界に飛ばされてから一年と八ヶ月後の事だった
ガルド達は家の近くに勝治の墓と奉る社を建てた
勝治の弟子、ガルドはその一番弟子ディーノと共にこの世界に日本家屋の様式を広め多くの弟子を育て上げた
彼らが奉る社、勝建神社は建築の神として勝治が祀られ後世に職人の神として永く信奉される事となった
勝治の駆け足で歩んだ異世界の旅はこうしてこの世界に1つの種を撒き花開いたのであった
(おしまい)
これにてこの話は終話となります
ご愛顧ありがとうございました。
この物語を勝◯さんに。




