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その四十五 巣立ち


勝治は倒れてから2日後、漸く意識を取り戻した


「…む?ここは…?」


「師匠っ⁉お目覚めですかっ⁉」


「大師匠ぉ~‼良かったぁ~‼」


勝治は突然抱きついてきた二人に困惑する


「…一体何が…?」


「師匠は2日前に急に倒れられたんですよ、覚えておりませんか?」


「…そうじゃったのぅ…どれ、寝ている場合じゃないの…むっ‼」


勝治は体に力を入れるがまるで鉛の様に動かない…そう、この世界にやって来た時の様に。


「まさか…またか?」


「大師匠、大丈夫ですよ‼治ったらまた元気に動けますって!」


そう言うディーノの顔は沈んでいる様に思えた


「…そうか。」


勝治は一言だけ言うと目を閉じた


ガルドとディーノは勝治の気持ちを察して部屋を出て行ったのだった


目覚めてから数日後、勝治は相変わらず病床にあった


ディーノは自宅に引き返し勝治が使っていたベッドを持って来た


ガルドは何かに取り憑かれたかの様に無休で宿造りに取り組んでいる


「…ディーノや、宿の方の進み具合はどうだ?」


「はい、師匠が張り切ってますから予定より少し遅れているだけです。安心して下さいね」


ディーノは勝治をベッドに寝かせ直すと一礼してガルドを手伝いに現場に戻って行った


「…ワシもここまでか…」


勝治は窓の外をボンヤリ眺めていた


ガイドの新しい温泉宿はガルドとディーノの鬼気迫る作業により予定の2週間を大幅に短縮して9日で完成した


「カツジ様…お大事になさって下さいね。

あなた様にはまだまだ教えて頂きたい事が山程ございますから…」


ガイドは勝治の容態を案じていた


「うむ…途中で寝込んでしまってすまんかったのぅ…」


「そ、そんな⁉ガルドさんとディーノさんが後を引き継いで完成させて頂きましたから」


「…そうか…引き継いで、な…」


「えぇ、それはもうお二人ともご立派なモノでしたよ」


「…ガルド、ディーノ…」


「「はいっ‼」」


「お主達の仕上げた宿を見たい…悪いがおぶってくれるかの?」


「勿論ですよ、師匠」


「どこかヘマしていたら遠慮なく叱って下さいよ、大師匠‼」


ガルドは勝治を背負って完成した温泉宿を案内する


「…ガルドや」


「は、はいっ!師匠」


「…見事じゃよ」


「…ぐっ…ありがとうございます」


ガルドは涙を堪えて答える


ディーノも勝治の目の届かない所で涙を流している


「…そうじゃ…お主の家がまだ途中じゃったの…家に戻ろう…」


「は、はいっ!」


ガルドとディーノはガイドに引き渡しを済ませると急いでディーノの自宅へと戻った


ーその夜ー


「…ガルドや…」


「師匠、どうしました?」


「…お主に伝えねばならぬ事がある…」


「何でしょうか?」


「…お主は弟子を卒業じゃ」


「えっ?」


「…免許皆伝という事じゃよ」


「…師匠…」


ガルドは溢れる涙を堪えきれない


「ディーノ…」


「はいっ!」


「お主はあと一歩じゃ。ガルドの教えをキチンと聞くのじゃぞ?」


「…判りました…早く一人前の姿を大師匠にお見せします!」


「ふふっ、その意気じゃて…」


勝治は力なく笑うとそのまま目を閉じた


二人は勝治との別れがそう遠くない事を感じ取って新たな決意をしたのだった

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