その四十二 「基礎工事着工」
ー温泉宿建設予定地ー
「…千代に八千代に 家門高く広く 立ち栄えしめ給へと 畏み畏みも白すぅ~」
勝治達は施主のガイドや従業員達を集めて簡易的な竣工式を執り行っていた
「大師匠、何なんですか?この儀式は」
「ふむ。これは神様に建築中の安全や建物の無事を願う儀式じゃよ。本来は神主がやるモンじゃがいないでの、ワシが代行じゃ」
「それでそんな格好なんですね?変な帽子被って」
「これは烏帽子じゃ。古来より礼服に合わせて被る帽子じゃな。
それよりホレ、式をじゃまするでないぞ」
「へぇ~い」
勝治は簡易的に設置された神棚に向き直り大弊で地面を祓う
本来は勝治も列席側だが仕方ないので施主のガイドから順に玉串を捧げさせる
一連の儀式を終え勝治は脇に用意された酒席に皆を案内する
「ここで振る舞われるのは単なる酒ではなくお神酒じゃ。宿の繁栄を盛大に祝ってくれ」
「へへっ、俺には酒なら何でも大歓迎だぜ」
「バカ者!この酒には先程お出で下さった神様が宿るとされておるのじゃ!ガバガバ飲むモンではないぞ‼」
「…うーん、何か難しいなぁ…」
ーブルルーン…キィー!ー
「師匠っ!後れ馳せながら参上しました!」
「おぉ、ガルドか。何とか間に合った様じゃの。では席について祝うがえぇぞ」
「これはまた…豪勢ですな」
「まぁ本来は神酒を皆で頂いておしまいなのじゃが宴会も足して賑やかな方が神様も喜ぶじゃろ」
「では頂きます」
こうして恙無く執り行われた竣工式は宴会へとシフトして天鈿女命ならぬガルドとガイドのムサい裸踊りで〆られたのだった
ー翌日ー
朝から勝治達三人は基礎工事を進めている
「師匠、以前仰られていた「伝統工法」と「在来工法」の違いですがもう少し説明をして頂けますか?」
「ふむ。まぁ細かく言うとキリがないでの、簡単に言うとほれ、この基礎工事なんかも大きな違いじゃよ」
「へぇ…」
「昔は基礎は「石場建て」と言っての、石の上に柱を直接置いていたんじゃよ
湿気の多いワシの国ならではの知恵じゃな」
「土地土地の気候に合わせた家造りですな?」
「ふむ、この工程で大切なのは礎石と呼ばれる土台の石に合わせて木材をぴったりと密着させる
「光付け」という加工技術が必要なんじゃ」
「それはどういったモノで?」
「礎石は加工してあるモノだけとは限らんので凹凸がある面に平面加工した木材を置いてもぐらつくじゃろ?
だから石灰等を木材に付け礎石と当たる部分を削っていくのじゃ」
「…それは匠の技が必要ですね」
「それ故に廃れたのじゃよ。古来の技は技術習得に時間が掛かるでの」
「なるほど。で、今行っているのが在来工法の基礎なんですね?」
「建材の進化で「コンクリート」が登場しての、堅牢さから建築技術の大幅な改修が起こったのじゃ」
「この泥が革命を…」
「このコンクリは固まると普通の岩より堅牢になる。石造りやレンガでは手間が掛かる曲線等も楽に出来るからのぅ」
「あそこに用意されている金網は?」
「あれはの、コンクリだけでは脆い部分もあるので補強として中に埋め込むんじゃよ
固いだけでは崩れたら終いじゃからの。粘りを擬似的に再現しとるんじゃ」
「師匠のお言葉は一言一句為になります」
「ほっほっ、あまり誉めるでないわ」
こうして読書を置き去りに小難しい建築論議は進むのであった
昨日全話いけるかと思ったんですが…ちょっと無理っぽいので明日残りを投稿します




