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その三十七 宿を堪能します


ーカポーン…ー


「ふぅ~…温泉は家でも味わえますが外の温泉はまた別格ですなぁ~…」


「そうじゃのう、ディーノの心遣いもあって更に沁みるのぅ」


「えへへ、喜んでくれて俺も嬉しいっす」


三人は大浴場で湯船にのんびり浸かっている


「それにしても雰囲気がかなり違いますね、こちらの方が何と言うか…」


「ふむ、ワシが作ったのは「和風」だからの、こちらの方がこの世界の基準なんじゃろうの」


「親方の言いたい事は分かりますよ、こっちの方は何か落ち着かないですよねぇ」


この宿の浴室の造りは西洋風で雰囲気的にはローマの遺跡にある「テルマエ」に近い

石造りの柱に囲まれ大理石風の湯船にある種の荘厳さを感じる


勝治の作った「和風」な浴場はそういった華美さはなく木の香り漂う落ち着いた空間だったのだ


「まぁこれはこれで素晴らしいがな」


ガルドは湯船に肩まで浸かりながらそう呟いた


三人が湯船から出て部屋へ戻ると既に料理が用意されていた


「流石だのぅ、頃合いを見計らう仕草が堂に入っておるわぃ」


「へぇー、部屋で食事が食べられるんですね」


「ん?こちらでは珍しいのか?」


「はい、大抵は食堂が併設されていたり宿から出て食事は済ませますね」


「外食とは…趣がないのぅ」


「あはは、普通は道中の宿場町の宿だったり目的地の宿だったりですからね、

宿に宿泊する事が目的ではないのでそうなるんじゃないんですかね?」


「成る程のぅ…色々勉強になるわい」


「親方ぁ、大師匠ぉ、小難しい話ばかりしていないで楽しみましょうよ~」


「おぉ、すまんのぅ。」


「ささ、師匠、先ずは一献。」


「うむ」


「じゃあ頂きまーす‼美味ーい‼」


ディーノはがっついて早速感嘆の声をあげている


勝治とガルドは酒を差しつ差されつその光景をにこやかに眺めていた


ーコンコン…ー


「失礼致します」


ドアを見るとガイドが入ってきた


「如何でしたか?当館の料理は」


「ふむ、美味じゃったよ」


「ガイドさん、この肉はお代わりしたい位旨かったよ」


「ははは、ご満足頂けた様で」


「洋風の風呂も中々に趣深かったですぞ」


「はて?「洋風」とは?」


「あぁ、これは失礼。実は師匠も露天風呂を作っておりましてな、俺達は毎日その風呂に入っているのですよ」


「ほぅ、それは興味がありますな」


「何なら入りに来たら良いぜ、なぁ、大師匠‼」


「うむ、こちらの豪奢な風呂とは違い質素だが宜しければご覧になられたら良かろう」


「おぉ、有り難うございます。実は私も温泉が好きでしてな、年に二回は各地の温泉を巡るのが趣味なのですよ」


「ははは、それは珍しい。自分で温泉宿を営んでいるのに他に入りに行くとはな」


「温泉には泉質と言うモノが御座いましてな、各地それぞれに違う効能があるのですよ」


「おぉ、ご主人は本当に温泉を愛しておられるのじゃな」


「!?カツジ様、貴方は泉質をご存知で?」


「うむ。それ程ではないが硫黄泉、炭酸泉、酸性泉など色々あるのは知っとるぞぃ」


「カツジ様…お分かりですか‼いやぁ~、此処でこれ程語り合える方と巡り会えるとは…」


「ほっほっ、ガイド殿も博識で驚いたぞぃ」


勝治はガイドも酒席に加えて夜更け迄温泉談義に耽るのであった

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